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149話
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あれから数週間、師匠の養子となった俺は変わらず平和な日々を過ごしている。
後から知ったことだが、みんなが俺を避けていたのは、養子の件を悟らせないためだった。
ほかにも聖人という肩書きのせいで、シリウス公認の手続きが必要だったり、色々と面倒が多かったらしい。
そんなことはさておき今日は久しぶりに師匠が屋敷に帰ってくる日なのだが――。
「リッツ様、そろそろですよ!」
「わ、わわわかってる……大丈夫、落ち着け俺……相手は師匠、全力を出すんだ……」
すっかり日も暮れ始め、ハリスはキャレットとルル、そしてみんなと外で宴会の準備をしている。
師匠やみんなに今までの感謝を込めて開こうと俺が提案したものだ。
決してやり返してやろうなどとは思っていない。
外からアンジェロの声が聞こえるとしばらくして扉が開かれた。
「あら、二人共そんなところでどうしたの」
「か、か、義母さん! おかえり!」
「おかえりなさい、お義母様!」
ど、どうだ!
ついに言ってやったぞ!
恥ずかしさのあまり顔から火が出そうだが、この日のために練習を重ねた甲斐があった。
ちなみにニエとは婚約したわけではない。
シリウスの余計な一言のせいだ。
「ワフッ」
口をあけたまま停止している師匠の腕でアンジェロが返事をする。
「……し、師匠?」
「よく聞こえなかったわ。もう一度言ってくれるかしら?」
「へっ? おかえりー……なさい?」
「リッツ様、そこじゃありません。初めからやりましょう」
ニエはそういうと師匠を外に出し扉を閉めた。
横にニエが戻ってくるとアンジェロの声が聞こえ扉が開かれた。
「おかえりなさい、お義母様!!」
「お、おかえり――義母さん?」
なんだこれ……訳が分からないし師匠と言うべきか迷ってしまった。
というかもう師匠でいいじゃん。
「ただいま。リッツ、ニエちゃん」
師匠が俺たちの頭を撫でる。
思えばいつぶりだろう。
なんだかちょっと恥ずかしい気もするな。
「リッツ様、今は私たちしかいません。遠慮なんていらないんですよ」
「遠慮って……俺はもうそんな歳じゃ」
そういった瞬間、師匠は黙って俺を抱きしめた。
「し、師匠……?」
懐かしい感覚と同時に思い出が蘇る。
『今日からあなたはこの子のお兄ちゃんよ』
『小っちゃい手ー』
『いいかリッツ、この子を守ってあげるんだぞ』
『うん! 父さんも母さんも、エリナもみんな僕が守ってあげるー!』
あのときはまだ世界が大きく、見るものすべてが新鮮だった。
俺は父さんと母さんによく抱きしめられ、妹が成長するとそれは次第に減っていき、代わりに頭を撫でられることが多くなった。
よくやったと――。
「父さん母さん、ごめん……エリナを……約束を守れなかった……っ!」
何百、何千と考えたが何かが変わるわけじゃない、それはわかっている。
それでも俺は自分から逃げるように誤魔化してきた。
誰かの代わりに死ねれば許されるんじゃないかと。
師匠は俺の頭に手を置くともう一度抱き寄せた。
「あなたは立派にやったわ。さすが、私たちの子ね」
「ぐっ……ううぅっ……」
溢れ出るものを抑えきれず泣き出した俺を師匠は抱きしめ続けた。
――――
――
ひとしきり泣き終えるといつの間にかいなくなっていたニエとアンジェロが戻ってくる。
「リッツ様、みんな先に始めちゃってますからそろそろいきましょう!」
「あ、やべ。そうだった……」
ニエは特に何かいうわけでもなくいつもの笑顔をみせた。
アンジェロはよほどお腹が空いてたのか涎がヤバい。
すぐにいきたいところだが……さすがにこの顔でいくわけにもいかないだろう。
「悪い、顔を洗ってくるから師匠と先にいっててくれ」
若干恥ずかしくなった俺は逃げるようにその場を後にした。
後から知ったことだが、みんなが俺を避けていたのは、養子の件を悟らせないためだった。
ほかにも聖人という肩書きのせいで、シリウス公認の手続きが必要だったり、色々と面倒が多かったらしい。
そんなことはさておき今日は久しぶりに師匠が屋敷に帰ってくる日なのだが――。
「リッツ様、そろそろですよ!」
「わ、わわわかってる……大丈夫、落ち着け俺……相手は師匠、全力を出すんだ……」
すっかり日も暮れ始め、ハリスはキャレットとルル、そしてみんなと外で宴会の準備をしている。
師匠やみんなに今までの感謝を込めて開こうと俺が提案したものだ。
決してやり返してやろうなどとは思っていない。
外からアンジェロの声が聞こえるとしばらくして扉が開かれた。
「あら、二人共そんなところでどうしたの」
「か、か、義母さん! おかえり!」
「おかえりなさい、お義母様!」
ど、どうだ!
ついに言ってやったぞ!
恥ずかしさのあまり顔から火が出そうだが、この日のために練習を重ねた甲斐があった。
ちなみにニエとは婚約したわけではない。
シリウスの余計な一言のせいだ。
「ワフッ」
口をあけたまま停止している師匠の腕でアンジェロが返事をする。
「……し、師匠?」
「よく聞こえなかったわ。もう一度言ってくれるかしら?」
「へっ? おかえりー……なさい?」
「リッツ様、そこじゃありません。初めからやりましょう」
ニエはそういうと師匠を外に出し扉を閉めた。
横にニエが戻ってくるとアンジェロの声が聞こえ扉が開かれた。
「おかえりなさい、お義母様!!」
「お、おかえり――義母さん?」
なんだこれ……訳が分からないし師匠と言うべきか迷ってしまった。
というかもう師匠でいいじゃん。
「ただいま。リッツ、ニエちゃん」
師匠が俺たちの頭を撫でる。
思えばいつぶりだろう。
なんだかちょっと恥ずかしい気もするな。
「リッツ様、今は私たちしかいません。遠慮なんていらないんですよ」
「遠慮って……俺はもうそんな歳じゃ」
そういった瞬間、師匠は黙って俺を抱きしめた。
「し、師匠……?」
懐かしい感覚と同時に思い出が蘇る。
『今日からあなたはこの子のお兄ちゃんよ』
『小っちゃい手ー』
『いいかリッツ、この子を守ってあげるんだぞ』
『うん! 父さんも母さんも、エリナもみんな僕が守ってあげるー!』
あのときはまだ世界が大きく、見るものすべてが新鮮だった。
俺は父さんと母さんによく抱きしめられ、妹が成長するとそれは次第に減っていき、代わりに頭を撫でられることが多くなった。
よくやったと――。
「父さん母さん、ごめん……エリナを……約束を守れなかった……っ!」
何百、何千と考えたが何かが変わるわけじゃない、それはわかっている。
それでも俺は自分から逃げるように誤魔化してきた。
誰かの代わりに死ねれば許されるんじゃないかと。
師匠は俺の頭に手を置くともう一度抱き寄せた。
「あなたは立派にやったわ。さすが、私たちの子ね」
「ぐっ……ううぅっ……」
溢れ出るものを抑えきれず泣き出した俺を師匠は抱きしめ続けた。
――――
――
ひとしきり泣き終えるといつの間にかいなくなっていたニエとアンジェロが戻ってくる。
「リッツ様、みんな先に始めちゃってますからそろそろいきましょう!」
「あ、やべ。そうだった……」
ニエは特に何かいうわけでもなくいつもの笑顔をみせた。
アンジェロはよほどお腹が空いてたのか涎がヤバい。
すぐにいきたいところだが……さすがにこの顔でいくわけにもいかないだろう。
「悪い、顔を洗ってくるから師匠と先にいっててくれ」
若干恥ずかしくなった俺は逃げるようにその場を後にした。
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