悪役令嬢になりたくないので婚約を阻止しようとしましたが、いつのまにか王子様に溺愛されています。

えるる

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第二章 <断罪阻止>

閑話 <肉食系侍女>

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「はぁ……ったく。俺を振り回しまくりやがって……」

 この学園には、流石王族まで入学する学園というか、貴族の従者が暮らす棟がある。
 リコラスにも一応部屋はある。といっても、リコラスは従者でありながら護衛でもあるので、アシュガの寮の一室で寝ることがほとんどだ。

 リコラスは今、その従者棟に来ている。他ならぬリリーに会うために!

「……あ、待て。俺入れないじゃん」

 しかし、リコラスは忘れていた。
 従者の部屋であろうと、女性のフロアには入ることができないことを。

「どうすっかなぁ……」
「……リコラス。ご機嫌よう」

 すると後ろから、いつもの感情の無い声が聞こえてきた。

「リリー。ちょうど会いたかった。今、暇か?」
「えぇ。誰かのせいで今日の予定は無くなりました」

 にっこり。リリーの背後には、急な予定変更に対する怒りのブリザードが吹き荒れていた。
 怖えぇ!! リリー怖えぇよ!!!

「お、おう……そ、そうか。」
「はい。お詫びの一つでもしていただきたいものですね」
「……何か、奢る」
「結構です」

 物凄い速度の返事。
 ……いやどうしろってんだ。

「じゃあどうすりゃいいんだ……?」

 すると、グイッとリリーとリコラスの距離が縮まり……

「ぐっ……!?」

 リリーが片手でリコラスの襟を掴んで、二人の顔が限界まで近付いた。

 ……え、まてどうなって……!?

 混乱するリコラスの間近で、リリーはふわりと笑って言う。

「リコラス、貴方を私に寄越しなさい」

 ……は!?

 ☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+

「いやまて落ち着けどういうことだ!?」
「取り乱しているのは貴方ですよ、リコラス」
「いや寧ろ俺が落ち着いてたらおかしいからな!?」
「はぁ……。」
「なんでため息!?」

 これは俺がおかしいのか……!?
 いやそんなはずはない!!

「え、まず俺がほしいってどういうことだ」
「そのままの意味です。私と恋人になりなさい」
「どんな告白だよそれ!?」

 つか、普通に辛い。
 まさかのリリーから告白されるなんて……俺、男としてのプライドを物凄く傷つけられたような……?

「いいでしょう。私の恋人になって下さい」
「……え、ちょっと待て。俺心の整理が」
「これ以上待てないので待たせるというならなかったことに」

 妖しく笑うこの侍女リリーは、本当に怖すぎる!!

「は!?」
「どうするんですか、なかったことにしていいんですね」
「いやそれはだめだ」
「そうですか」

 沈黙。
 そしてとうとう折れたのは、リコラスだった。

 ……もう、どうにでもなれ!!

「わかった。よろしくな、リリー。」

 少々ぎこちなく笑い、手を差し出す。

 内心は、これからの自分を想像して酷く怯えているのだが。

「ええ、よろしくお願いします」

 と言うと、リリーはリコラスの手を払いのけた。
 驚いた表情をするリコラスに、リリーは……

「ん……!?」

 リコラスの唇を奪った。
 してやったり、とばかりにニヤリとするリリー。

「では、また」

 放心状態のリコラスを放置して、リリーはローズの為のチェリーの砂糖漬けを仕込みに行った。

 廊下に残ったリコラスは、

「……まて、どうしてこうなった。いや俺がおかしいのかこれは?もしかして夢か?夢なのか?」

 そして、ふらふらとアシュガの部屋に向かった。
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