44 / 44
第二章 <断罪阻止>
第27話 <隣国旅行>
しおりを挟む
アシュガがローズへの執着をより深めたことなど、まったく気付いていないローズ。
そんな彼女はたった今、アシュガとの"約束"に顔を引き攣らせている。
「えっ、隣国のパーティーですか……?」
「そうだよ。父上が私に行けと言ってきてね……。ローズも将来の王太子妃なのだから、一緒に行こうね。もちろん、私としては来てくれなくても……」
「いえ、行かせていただきますわ!!」
ニコニコとして言うアシュガ様だが、目は笑っていない。
目は口程に物を言うとはまさにこのこと。来なければどうなるかわかってるよね?と言っている。……ああ、あの風魔法使いの命が灯火が消えてしまう……。
「……一つお聞きしたいのですが」
「なんだい?」
「……パーティーとは……」
「もちろん、隣国、ヤグルマの皇宮が開催するパーティーだよ」
ですよねええええええええ!!
ヤグルマ皇国では、年に一度大規模なパーティーが開かれる。
そこに招待されるのは、皇国内でも一部の貴族、そしてその他の国の王族や筆頭貴族などの、その国のトップクラスの人物のみである。
お父様やお母様は毎年参加しているはずだが、私でもまだその場に踏み入ったことはない。
そんなパーティーに、私が……。
「……タ、楽シミニシテマス」
「そうは見えないけれど」
「オホホ、ソ、ソンナマサカー」
ローズが死んだ目で言ってから、暫くして。
本来の予定であれば、今頃アシュガと共に船に乗っている時間……のはずだが。
「リリー……船って、こんなにも酔うのね……」
「耐えてください」
「ひ、ひどい!!」
どうしてこんなことに……と、ローズは数日前を思い出していた。
☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+
学園祭が終わり、あっという間に残りの数日は過ぎて行った。
「リリー、とうとう明日から夏休みなのよ!」
「そうですか、頑張ってください」
「……聞いてる?」
リリーは私が学園に行っている間に荷造りをしていたらしく、部屋からは少し物が減っている。
荷造りとは言っても、部屋から減るのはお気に入りの普段着を数着、アシュガ様から頂いたもの、それから課題に使う教科書くらいなのだが。
向かう先は実家なので、大抵のものは揃っている。
それに、休み中もこの部屋の掃除は定期的に行ってくれることになっている。
「聞いていますよ」
「その割には返事が嚙み合ってないし、私のクッキーをむしゃむしゃ食べてるわよね!?」
そう言うと、リリーは優雅にクッキーを皿に置き、
「ローズ様。私は『むしゃむしゃ』食べたりはしていません」
「いやだとしても食べてはいるわよね」
「それに、返事も間違っていません。ローズ様が夏休みに頑張らなくてはいけないのは何も間違いではないです。それに巻き込まれて私も――」
「あーーーー、それに関しては私も不本意なのよ!!」
リリーがいつもよりほのかにひんやりとした声音で言い……切る前に、ローズは顔をしかめた。
「でも、こうしないとほんとにあの子が殺されそうだったんだもの」
「殺してしまえば良かったと思います」
「リリーまで!? だめに決まってるわよ!?」
あの子とは、シャンデリア事件の犯人である。
事故なんだし、私にもなんともなかったのだから、みんなして怒りすぎだと思う。
「……とにかく、アシュガ殿下は上手に立ち回ったということですね」
「…………それにまんまと乗せられた私は……」
「いつも通りです」
一刀両断である。
いや、なんとなく、気付いては……いたけど……!!
溜め息を吐きつつも、ローズは夏休みに心躍らせていた。
(理由はどうあれ、アシュガ様と旅行だもの)
ローズとて恋する乙女なのだ。
愛する婚約者との旅行は、ドキドキもワクワクもする。
……そう、ローズだってドキドキワクワクしていた。
「リリー、アシュガ様が先に行ってるなんて聞いてないぃ……」
「仕方ありません」
すぐに会えると思っていたのに、アシュガ様は早めに行かなくてはいけなくなってしまったらしい。
おまけにこの船酔い。……船酔いは怖い。馬車酔いは降りれば休憩できるが、船酔いは降りれば海だ。
「リ、リリーは平気なの……?」
「もちろんです」
――嘘だ。
実は、リリーも今直ぐにでも陸に降りたいと思っている。
それを一切表情に出さないのは流石というべきか。
(……できることなら、空でも飛んで帰りたいですね)
そんな瀕死の二人だが、まだ船に乗ってからまだ少ししか経っていない。
それに、この船はもうすぐ港に着くのである。
この程度でここまでの船酔いを起こす人間はそう多くないだろう……が、今の二人にそんなことを言ってはならない。
少しの間だったとしても、船酔いは辛いのだ。
☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+
「ローズ! 待っていたよ」
「アシュガ様!? どうしてここにいるのですか?」
短い時間ではあったが、二人にとってはようやくヤグルマ皇国の港に着くと、居るはずのないアシュガ様とリコラスが居た。
予定では、皇宮で落ち合うはずだったのに。
「うん、思ったより早く前の予定が片付いてね。ローズを迎えに来た」
「……お前が無理矢理終わらせたんだろ。」
「何か言ったかい?リコラス」
キラッキラな笑顔でリコラスを見るアシュガ様。
――そのエフェクトが、真っ黒に見えるのは気のせいでしょうか、アシュガ様。
「とにかく、皇宮に行くよ。疲れただろう?大丈夫かい?」
「は、はい……。大丈夫ですわ、アシュガ様……」
「……大丈夫には見えないけれど」
パーティーの参加者……特に王族などの国のトップは、皇宮で泊まることになっている。
今までローズが両親に付き添ってきたときは皇宮ではなく別の場所に泊まっていたため、ローズにとっては始めてだ。
なんて、考えていたのだが。
「やぁ、アシュガ君」
どこか聞き覚えのある、穏やかで、けれども少し冷たさを感じる声が飛んできた。
そんな彼女はたった今、アシュガとの"約束"に顔を引き攣らせている。
「えっ、隣国のパーティーですか……?」
「そうだよ。父上が私に行けと言ってきてね……。ローズも将来の王太子妃なのだから、一緒に行こうね。もちろん、私としては来てくれなくても……」
「いえ、行かせていただきますわ!!」
ニコニコとして言うアシュガ様だが、目は笑っていない。
目は口程に物を言うとはまさにこのこと。来なければどうなるかわかってるよね?と言っている。……ああ、あの風魔法使いの命が灯火が消えてしまう……。
「……一つお聞きしたいのですが」
「なんだい?」
「……パーティーとは……」
「もちろん、隣国、ヤグルマの皇宮が開催するパーティーだよ」
ですよねええええええええ!!
ヤグルマ皇国では、年に一度大規模なパーティーが開かれる。
そこに招待されるのは、皇国内でも一部の貴族、そしてその他の国の王族や筆頭貴族などの、その国のトップクラスの人物のみである。
お父様やお母様は毎年参加しているはずだが、私でもまだその場に踏み入ったことはない。
そんなパーティーに、私が……。
「……タ、楽シミニシテマス」
「そうは見えないけれど」
「オホホ、ソ、ソンナマサカー」
ローズが死んだ目で言ってから、暫くして。
本来の予定であれば、今頃アシュガと共に船に乗っている時間……のはずだが。
「リリー……船って、こんなにも酔うのね……」
「耐えてください」
「ひ、ひどい!!」
どうしてこんなことに……と、ローズは数日前を思い出していた。
☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+
学園祭が終わり、あっという間に残りの数日は過ぎて行った。
「リリー、とうとう明日から夏休みなのよ!」
「そうですか、頑張ってください」
「……聞いてる?」
リリーは私が学園に行っている間に荷造りをしていたらしく、部屋からは少し物が減っている。
荷造りとは言っても、部屋から減るのはお気に入りの普段着を数着、アシュガ様から頂いたもの、それから課題に使う教科書くらいなのだが。
向かう先は実家なので、大抵のものは揃っている。
それに、休み中もこの部屋の掃除は定期的に行ってくれることになっている。
「聞いていますよ」
「その割には返事が嚙み合ってないし、私のクッキーをむしゃむしゃ食べてるわよね!?」
そう言うと、リリーは優雅にクッキーを皿に置き、
「ローズ様。私は『むしゃむしゃ』食べたりはしていません」
「いやだとしても食べてはいるわよね」
「それに、返事も間違っていません。ローズ様が夏休みに頑張らなくてはいけないのは何も間違いではないです。それに巻き込まれて私も――」
「あーーーー、それに関しては私も不本意なのよ!!」
リリーがいつもよりほのかにひんやりとした声音で言い……切る前に、ローズは顔をしかめた。
「でも、こうしないとほんとにあの子が殺されそうだったんだもの」
「殺してしまえば良かったと思います」
「リリーまで!? だめに決まってるわよ!?」
あの子とは、シャンデリア事件の犯人である。
事故なんだし、私にもなんともなかったのだから、みんなして怒りすぎだと思う。
「……とにかく、アシュガ殿下は上手に立ち回ったということですね」
「…………それにまんまと乗せられた私は……」
「いつも通りです」
一刀両断である。
いや、なんとなく、気付いては……いたけど……!!
溜め息を吐きつつも、ローズは夏休みに心躍らせていた。
(理由はどうあれ、アシュガ様と旅行だもの)
ローズとて恋する乙女なのだ。
愛する婚約者との旅行は、ドキドキもワクワクもする。
……そう、ローズだってドキドキワクワクしていた。
「リリー、アシュガ様が先に行ってるなんて聞いてないぃ……」
「仕方ありません」
すぐに会えると思っていたのに、アシュガ様は早めに行かなくてはいけなくなってしまったらしい。
おまけにこの船酔い。……船酔いは怖い。馬車酔いは降りれば休憩できるが、船酔いは降りれば海だ。
「リ、リリーは平気なの……?」
「もちろんです」
――嘘だ。
実は、リリーも今直ぐにでも陸に降りたいと思っている。
それを一切表情に出さないのは流石というべきか。
(……できることなら、空でも飛んで帰りたいですね)
そんな瀕死の二人だが、まだ船に乗ってからまだ少ししか経っていない。
それに、この船はもうすぐ港に着くのである。
この程度でここまでの船酔いを起こす人間はそう多くないだろう……が、今の二人にそんなことを言ってはならない。
少しの間だったとしても、船酔いは辛いのだ。
☆.。.:*・゜*:.。..。.:+・゜:.。.:*・゜+
「ローズ! 待っていたよ」
「アシュガ様!? どうしてここにいるのですか?」
短い時間ではあったが、二人にとってはようやくヤグルマ皇国の港に着くと、居るはずのないアシュガ様とリコラスが居た。
予定では、皇宮で落ち合うはずだったのに。
「うん、思ったより早く前の予定が片付いてね。ローズを迎えに来た」
「……お前が無理矢理終わらせたんだろ。」
「何か言ったかい?リコラス」
キラッキラな笑顔でリコラスを見るアシュガ様。
――そのエフェクトが、真っ黒に見えるのは気のせいでしょうか、アシュガ様。
「とにかく、皇宮に行くよ。疲れただろう?大丈夫かい?」
「は、はい……。大丈夫ですわ、アシュガ様……」
「……大丈夫には見えないけれど」
パーティーの参加者……特に王族などの国のトップは、皇宮で泊まることになっている。
今までローズが両親に付き添ってきたときは皇宮ではなく別の場所に泊まっていたため、ローズにとっては始めてだ。
なんて、考えていたのだが。
「やぁ、アシュガ君」
どこか聞き覚えのある、穏やかで、けれども少し冷たさを感じる声が飛んできた。
10
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
婚約が白紙になりました。あとは自由に生きていきます~攻略対象たちの様子が何やらおかしいですが、悪役令嬢には無関係です~
Na20
恋愛
乙女ゲーム"この花束を君に"、通称『ハナキミ』の世界に転生してしまった。
しかも悪役令嬢に。
シナリオどおりヒロインをいじめて、断罪からのラスボス化なんてお断り!
私は自由に生きていきます。
※この作品は以前投稿した『空気にされた青の令嬢は、自由を志す』を加筆・修正したものになります。以前の作品は投稿始め次第、取り下げ予定です。
※改稿でき次第投稿するので、不定期更新になります。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
何やってんのヒロイン
ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。
自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。
始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・
それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。
そんな中とうとうヒロインが入学する年に。
・・・え、ヒロイン何してくれてんの?
※本編・番外編完結。小話待ち。
悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません
れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。
「…私、間違ってませんわね」
曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話
…だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている…
5/13
ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます
5/22
修正完了しました。明日から通常更新に戻ります
9/21
完結しました
また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます
久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。
その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。
1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。
しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか?
自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと!
自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ?
ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ!
他サイトにて別名義で掲載していた作品です。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる