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2度目の夏至祭
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しおりを挟むついに来てしまった、夏至祭。
例年通り、1日目は『星姫』のパレード、2日目は合同結婚式、そして3日目最終日が王宮で夜会のある星夜祭である。
「キャズ!久しぶり!」
「コー・・・、っ、コズエ、久しぶり!」
「今何で詰まったの?」
「そりゃそうでしょ?有名よ、『コーネリア姫』?」
さすがは冒険者ギルドのルーキー。キャズはギルドの職員をしながら、冒険者稼業もしているそうだ。
ギルドの職員とはいえ、一定の腕っ節がないとやってられないらしい。討伐なんかにも加わるそうだから。
「キャズさん、わかってるねー、その格好」
「派手すぎる?これでも他の冒険者よりは地味なのよ」
「いやいや、そのミニスカ具合がいいわよね」
「あんた言うことオッサンね」
この夏至祭の2日間だけ私は『コーネリア姫』ではなく『コズエ』だ。
2日後の星夜祭で、私は正式に『コーネリア・タロットワーク』として社交界にお目見えする。
そこからはこうしてお忍びはできても、『コズエ・ヤマグチ』という一般市民として振舞うことは難しいだろう。
だからせめてもの時間として、今日と明日。
キャズやディーナと過ごすこの2日だけは『コズエ・ヤマグチ』として過ごす事を許された。
…残念ながら、ドロシーとメグは都合が付かず。
他の街から来てくれたキャズと、王国騎士団に所属するディーナだけは王都で落ち合うことになっている。
ちなみに今日は、2人ともタロットワーク別邸にお泊まりである。この空白の1年の事を報告し合うのに、1晩かけても足りないかもね。
「・・・ねぇ、護衛とか大丈夫なの?」
「えっ?キャズとディーナいるじゃない」
「さすがに、本職が来たら守りきれないわよ?
自分の腕にそこそこ自信はあるけど、自惚れる程じゃないんだから」
「平気平気、どうせその辺りに控えているんだろうから」
「・・・そうよね」
いるかどうかなんてわからないけど、多分前と同じようにターニャかライラがくっついて来ているはずだ。
広場で場所取りをしていれば、人波を掻き分けてディーナが来た。
長い髪をポニーテールにして、動きやすそうな私服。
「ディーナ、こっちよ」
「久しぶりー、ディーナ」
「コーネ、コズエ!キャズ!」
「危ないわね」
「私より危ないわ」
ツルッと言ってしまいそうだったのでは。
ディーナはギリギリ名前を呼ばず、私を『コズエ』と呼んだ。こんな所で呼んでも気づかれやしないと思うけどね。
『コーネリア』なんて名前そこらにいるんじゃない?
「危なかったな」
「ホントよ全く!ヒヤっとしちゃったわ」
キャズとディーナは、お互いに頻繁に連絡を取り合っているらしい。冒険者ギルド職員のキャズ。王国騎士団のディーナ。ギルドと王国騎士団はあまり仲が良くないみたいだけど、本人達には関係ない。王都周りの魔獣の出没情報だとか、そういう差し支えのない類いの情報交換をしているみたい。
ディーナは私の方を向き、やんわりと抱擁してくれた。
「久しぶりだ、コズエ。元気そうで何より」
「久しぶりね、ディーナ。連絡しなくてゴメンね」
「いや、仕方ないだろう。コズエもたいへんだろうからな。とはいえ、私から訪ねることもできなくて済まないな」
なんて紳士なの、ディーナ。こういう所は変わりないなあ。
私とキャズ、ディーナの3人で話に花を咲かせながら、星姫の山車が来るのを待つ。
「今年もアリシアさんが『星姫』とはねえ」
「さすがに3年連続とは思わなかったな。今年はもう1人神殿の巫女頭が『星姫』らしいよ」
「へえ、巫女頭って、巫女さんのトップよね?
前は3人いたけど、今年は2人なの?」
「去年もそうだったわ。もう1人選べるんだけど、あの2人と並べると見劣りするのよ。2日目に合同結婚式あるじゃない?『星姫』はあそこで『祝福魔法』を使うんだけど、ね」
「去年も3人選ばれてはいたんだよコズエ。でもリハーサルでバランスが取れなくて、最終的にアリシアさんと巫女頭だけで行ったんだ」
「それにしてもよ?ホントかしらね『聖女』認定の話」
「神殿上層部がかなり推してるらしい。反対派もいるようだけど、押し切られるだろうというのがウチの見解だ」
「こっちもよ。ま、仕方ないのかもね」
「え、ちょっと、2人だけで盛り上がらないでよ」
「あんたって平和よねえ」
「それだけ重要視されているって事じゃないのか?キャズ」
2人…めっちゃ…仲良くない…?
アイコンタクトで意思疎通ができるっていうのは…なんですか?相棒なんですか?
そこんとこ詳しく、と食い下がろうとしていると、周りからわあっ!と歓声が上がった。道の向こう、『星姫』が乗った山車がやってくる。
「あー、来た来た!この話は後にしましょ!」
「そうだな、楽しまないとな!」
「・・・そうよね、アリシアさんかわいいわー」
おもいっきり話を逸らした感。
いいやもう、夜にでも聞いておこう。
目の前の道を、ゆっくりと山車が引かれてくる。
警備には王国騎士団の人が立ち、道に観客が溢れてこないようにしている。
『星姫さまー!』
『巫女様ー!』
と歓声が飛ぶ。2台の山車はゆっくりと進み、上に乗った『星姫』が花のコサージュを撒く。それは壮大なフラワーシャワー。これは前と変わらないわね。
アリシアさんが先に来て、後ろから巫女頭様だろう。銀髪を結い上げた女性がにこやかに手を振り、花を撒いていた。
アリシアさんはまたも私達に大量の花を巻き、手がちぎれるほど振りまくっていた。大丈夫か、あの子。
「変わらないわねえ、毎年ああよ」
「それが彼女のいい所でもあるんじゃないか?」
「ふふ、またこれ持って帰ろうか。お風呂に浮かべましょ」
********************
その夜は、持ち帰った花をお風呂に散らし、贅沢なフラワーバスを楽しんだ。
キャズとディーナには客室を用意し、そこに3つベッドを入れてもらって私も一緒に寝ることにした。
寝る、とはいえ、3人で長いことお互いの事に付いて語り合った。
私が学園を去り、蓬琳皇国へ行ってからの学園の事。
アリシアさんの頑張りや、周りの状況。
キャズやディーナ、ドロシーやメグのそれぞれの進路について。
「私は2年で卒業して、冒険者ギルドで働くって決めていたからね。そんなに迷いもしなかったわ」
「私もそうだな。領地に帰ることも考えたんだが、王国騎士団に入って自分の力を試してみたかったし。女性で近衛騎士団に入る人もいると聞くし、数年は機会を伺うつもりだよ」
「ディーナなら入れそうね。確か3年目くらいで入団試験が受けられるって聞いたよ?」
「確かにディーナなら入れそうよね」
「ふふ、頑張ってみるさ。キャズもかなり早く昇格してるって聞くぞ?もうD級ライセンスを取ったんだろう?」
冒険者ギルドは実力性。キャズは職員として働くだけじゃなくて、クエストをこなしてライセンスも取っている。どこまで行くつもりなのやら。
「まあ、地道にコツコツとね。とはいえ、ここからが狭き道だから踏ん張りどころよね。両方できるスーパーウーマンを目指すわ!
そして、憧れの『獅子王様』に会うんだから!」
「えっ、誰それ」
「はあ!?あんた知らないの?・・・ってそうよね、コズエだもんね」
「コズエ、『獅子王』っていうのはS級冒険者の1人なんだ。キャズはずっとその人に追い付きたくて頑張ってるんだよ」
「そうなの?」
「私の初恋の人なのよ!あの人と一緒に冒険するのが目標なの」
キャズの初恋。なんでも12歳位の頃に、盗賊に襲われていたのを助けてもらったらしい。馬車で移動していたけれど、街道の途中で盗賊の襲撃にあったのだそうな。
危なく連れ去られるところを、これまた通りかかった『獅子王』に助けられて事なきを得たらしい。
キャズ…君もテンプレな物語のヒロインだったとは…
しかしその人の話をするキャズの可愛らしい事よ。
それなら、学園で他の男子生徒に見向きもしなかったはすだ。
もう心に決めた『王子様』がいたんだものね。
夜遅くまで私達はお喋りし、眠りについた。
ああ、学園に行ってよかったな。かけがえのない友人を得た事は、本当に宝物だと思う。
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