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2度目の夏至祭
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しおりを挟む神殿前へたどり着くと、そこには…
「ひ、人っ、すごくないっ!?」
「そうよね、合同結婚式前だもんね、そりゃ当の本人達だけじゃなくって家族とか友人とか祝いに来てるもんねって、キャッ」
「キャズ、はぐれるなよ?コズエは大丈夫か?」
「私は平気、ディーナの腕掴んでるし!あれ?キャズ?」
「ちょっとふざけんじゃないわよ、あんた私のお尻触っといて知らん顔してんじゃないわよ!潰すわよ!」
「ああ、あそこにいるな」
「ていうか何を潰そうとしてんのよ、キャズ」
合同結婚式は神殿内の大きな講堂で行われる。そこには当人達だけでなく、それを御祝いする人たちも入れる。
もちろん講堂内部、中央はステージのように1段高くなっていて、そこに新婚の夫婦達が。講堂前方にも2段ほど高くステージがあり、そこに『星姫』達が。周りをご家族や友人が囲み、皆で祝福を受ける…といった具合だ。
なんていうの?ドームツアーとかだと、ステージにアーティストいて、中央アリーナ部分と、一般席に別れるじゃない?まさにそんな感じ。
ステージに『星姫』、アリーナに新婚夫婦、一般席に家族や友人。とすると、関係者席には神殿のお偉いさんとかがいるのかもね。
「まったく、タダの痴漢だったわ」
「よくあいつだとわかったなキャズ」
「当たり前よ!舐めないでもらいたいわ!」
どうやら人混みに紛れてお尻タッチされたらしい。キャズはすぐに気がついて、犯人の腕を捻りあげて神殿の警備に突き出した。手早い。
「しかし・・・これで私達はアリシアさんに会えるのか?」
「こんな所にアリシアさん出てくるわけないし・・・とはいえ、中には入れないわよね?関係者じゃないし」
「うーん・・・通信魔法で『来たよ』って言ってみよか」
混み合う神殿前の広場から、少しだけ脇に寄る。
そっと通信魔法を発動し、『神殿前に来たけど人が凄くて!アリシアさんと会うにはどうするの?』と聞いてみる。
魔法の鳥はしゅぱ!と飛んで行った。急げ!って思ったからかな?
すると、すぐに返事が返ってきた。『迎えを行かせるので、少し待っててください!』との事。
「迎え。・・・迎え?誰が?知り合い?」
「そうなんじゃないの?」
「とはいえ、誰が?私達がわかる人間がいるのか?」
3人で『?』となりながらも待機。知り合い…ねえ?神殿に私の知り合いなんていないし。もしかしたらキャズやディーナを知ってる人とか?
と思っていると、神殿正面扉ではなく、横の方にある小さな扉から1人の騎士が出てきた。その人はきょろきょろ、と周りを見渡し、私達に目を止めるとこちらへ近寄ってきた。
「失礼します、アリシア・マール様のご友人でいらっしゃいますか」
「あ、はい」
「どちら様ですか?なぜ私達だと?」
私が返事をすると同時に、キャズが前に出て騎士さんに質問した。
同じようにディーナも周りに注意を払いつつも私の隣に付く。
すると、騎士さんはちょっと驚いたように目を瞬くと、スっと騎士礼を返した。ん?この騎士礼って、近衛騎士団のやつ?
「・・・失礼致しました。私は近衛騎士団所属、副官麾下、ジェイク・グランツと申します。恐れながら、以前姫君や皆様には見覚えがありまして。今回道案内を志願致しました」
近衛騎士団、副官麾下…ってことは、シオンさんの直属の部下って事だ。この間試合していたオルガさんって人と同じかな?
ジェイクさんと名乗った騎士さんは20代後半あたり。赤毛に緑の瞳のイケメンさんだ。マッチョさんです。ディーナの目がなんだか違う気がする。
こそっと告げられた内容に、キャズも警戒を解いた。いきなり見つけられてちょっと気が立っていたのだろう。私はキャズの手をぎゅっと握って、ジェイクさんに向き直る。
「お勤めご苦労様です。アリシアさんの所に案内してもらえますか?」
「はい、お任せ下さい、姫君」
「あ、えーと、一応今は『一般人』として来ているので、その呼び方はちょっと」
「なるほど。・・・では参りましょうかお嬢さん方。正面は無理なので、裏から入ります。付いてきてくださいね。
クロフト、後ろは任せていいかな?」
「は、お任せを」
ディーナは私服でありながら、ジェイクさんに呼ばれてぴしっと王国騎士団の騎士礼を返した。不思議だけど、王国騎士団と近衛騎士団って騎士礼が微妙に違うのよね。これはアナスタシアが教えてくれた。
裏口から神殿内に入り、ジェイクさんが先導して上に上がる。アリシアさん達がいるだろう部屋の前には、数人の騎士が詰めていた。
こちらを見ると、皆、騎士礼をして出迎える。頭を垂れたまま。
…えーと、私にじゃないよね?ジェイクさんにだよね?
そう思う事にして気にしない。…いえ、気になります。分かってます、私にですよね?知ってます。あー、これにも慣れなきゃいけないんだろうなあ。
「皆、頭を上げろ。本日姫はお忍びで来ていらっしゃる。通常の扱いをお望みだ。神殿に来ていることを悟られるな」
「はっ!」
「すみません、姫。彼等は皆、近衛騎士団より警備の為に神殿へ来ている者達です。『星姫』とお話している間に周知させておきますのでこの場は御容赦を」
「いえ、構いません。我儘を言いましてすみません」
「いやー、楽なものですよ。団長の我儘に比べたら」
「ですよね」
「楽なもんですよ」
「こらお前達」
他の騎士さんはジェイクさんの部下なのかな?
皆、見ると若い人ばかりだ。服装は制服に近いけれど、少し礼服に近いような意匠となっている。こういう式典用のものがあるのかもね。
どうぞ、と促されて部屋に入ると、そこには大きな応接セットに座っているアリシアさんがいた。
「コーネリア様!本当に来てくれたんですね!すみません!」
「あー、今日はそっちじゃなくて『コズエ』でお願いします」
「あ、なるほど!お忍びですね?」
「うんまあ、そんな感じ」
「ふふふ、でも来てくださって嬉しいです!キャズさんとディーナさんも!お久しぶりです!」
「こんにちはアリシアさん。その服素敵ね」
「久しぶりだ、アリシアさん。『星姫』として板に付いてきたな」
「えへへ、そうですか?」
立ち上がり、くるりと回ってみせるアリシアさん。
『星姫』として合同結婚式に祝福を贈るため、今はもう薄布をふんだんに重ねたふんわりしたドレス姿。くるりと回ってみせれば、ドレスの裾が翻り妖精のよう。
「・・・しかしお胸の谷間が際どい」
「そうね、それは確かに」
「男達にとってはいいご褒美・・・いや、絶景なのではないか?」
「も、もう!気にしているんですからこれ!」
確かに数年前ならば気にはならなかったかもしれない。しかし今のアリシアさんは素敵なボイン。それ故にちょっぴりデコルテラインが際どい。女神様の衣装が元々そういう胸元際どい感じのデザインなので仕方ないといえば仕方ないのだが。
『星姫』が着るドレスは、女神像が纏っているドレスが再現されたものだからだ。
女神像…そこまでボリューム感満点の像じゃないからな…
「あのですね!相談したいのはそこじゃなくてですね!」
「ごめんごめんつい」
「コズエが言うからついね」
「つい目がいってしまってな、すまない」
「う、うう・・・隠そうと思ったんですけど、衣装デザインに手を入れちゃいけなくて・・・シフォン素材やレースで隠したかったんですけど」
「大丈夫、喜ぶ人しかいないから。むしろそれで護衛の騎士さんに惚れられるかもしれないし」
「それはそれで問題なんじゃない?カーク王子どうすんのよ」
「むしろそれが起爆剤にならないか?」
「あっ、そうね、だったら丸く収まるわね」
「だろう?これで情勢も落ち着くからな」
なにやらキャズとディーナの間で結論が出た。
この2人もメグやドロシーを加えて、私が学園から留学でいなくなった後、アリシアさんとカーク王子の恋模様をじれじれしながら見ていたらしい。
『さっさとくっつけばいいのよじれったい』(キャズ)
『男なら決める時は決めればいいのにな』(ディーナ)
『まったく判断力のない殿方なんて。そんな事では商機を見逃してしまいましてよ』(メグ)
『やっぱり子供はダメよ、ダンディーな大人の男でないと』(ドロシー)
という有様。さっさとくっ付いてしまえば、エリザベス嬢も動くのが楽になるだろうに、と気を揉んでいたとの事だ。
なにやら2人ほど言ってること違うような気もするが、気にしてはいけない。彼女達はちょっと個性的なだけなのだから。
しかしメグはお金が恋人のようなものだが…ディーナにはいないのかな?素敵な人。騎士団で憧れている先輩とか。後でこそっと聞いてみよっと。
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