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学園生活、1年目 ~春季休暇~
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しおりを挟む冬から春へと変わり、新学年ももう少し。
そんな中、ゼクスさんの上の妹さんから招待状が届いた。
アナスタシア・タロットワーク。
現在は王国近衛騎士団団長に嫁いでいるという。
剣の腕前は王国騎士に引けを取らず、『姫将軍』という通り名を持つ女騎士だ。
嫁いでからも騎士団に名を連ね、今でも現役で最前線に出ることもあるらしい。勇猛すぎる。
ゼクスさん曰く『怒ってなくても怖い』…って…
「アナスタシア様からでございますか。あの方は強くお美しく、騎士としての鑑のような方ですよ」
「セバスさんとどちらが強いでしょうね?なーんて」
「どうでしょうか。私が隠形していても悟られそうになる事もしばしばありましたから」
「・・・(最強なのでは?)」
招待状には『まだ一度もあった事がないので、是非学園が始まる前に顔を見せては貰えないか?』という内容。
それは構わないのだが、指定された場所が何故か近衛騎士団の訓練施設。
「・・・お屋敷、とかじゃないんですね?」
「おそらくアナスタシア様は剣舞でも見せてくださるおつもりなのではないでしょうか。お得意ですし」
「い、一応もてなしてくれるって事ですよね?私に剣の稽古付けようとかじゃないですよね?」
「いえ、あの方は『女子供を守るのは騎士の務め』という事を体現するような方ですのでそういう事はないかと」
ま、まあいいか。良ければ三日後に迎えに来る、となっているので私はセバスさんにお願いしてお返事をしてもらった。通信魔法って基本的に知っている人にしか飛ばせないからね。できないこともないらしいけど、それはそれでまた別の材料とかが必要になるらしい。
********************
当日。私は一応動きやすい格好をする。
シャツにパンツ。ショートブーツ。ロングカーディガンを羽織って、寒さ対策。
お迎えを待っていると、来てくれたのはいつぞやの特別授業に来てくれた騎士さんだった。
「よお、迎えに来たぜ!」
「・・・」
「なんだなんだ大丈夫か?」
「いやあの、近衛騎士団団長自ら何して・・・?」
「そりゃアナスタシアが『お前が行ってこい』と命令・・・いや、頼んで来たからだ」
今、命令って言わなかった?
この人、アナスタシアさんの旦那様なんだよね・・・?
愛する妻には逆らえない、という優しい旦那様という事にしといた方がいいですか?
そこにセバスさんも登場。途端に近衛騎士団長さんはピシッと姿勢を正した。
「これはクレメンス様。本日はコズエ様のお迎えに来てくださったのでしょうか?」
「ご無沙汰しております、セバスチャン殿。我が妻、アナスタシアに依頼されまして、本日は姫君の護衛を勤めさせていただきます」
「そうですか、クレメンス様でしたら安心ですね。くれぐれも傷一つ負わせる事の無きよう、お願いします」
「無論、心得ました」
セバスさんはにこやかに対処し、私にいってらっしゃいませ、とお見送りをしてくれた。
そういえば馬車とかないよね?と思えば、ゴルドが綺麗な馬を一頭こちらへ引いてきた。
「もしかして・・・」
「おう、馬車もいいが今日は俺の愛馬に乗せようと思ってな?」
セバスさんがいなくなったからか、団長さんはにこやかに私に話しかける。
ここへ来てからゴルドに愛馬をいったん預け、休ませてもらったらしい。
ゴルドもいい馬ですな、なんてニコニコして団長さんへ手綱を渡す。
「あの、私馬に乗った事・・・」
「ん?気にしなくていい、俺が乗せるんだ、危険な事なんてある訳がない。お嬢は安心して俺に任せていればいいさ」
う、うーん?大丈夫かな?私、マザー牧場で手綱引かれて一周したことくらいしかないけど?
でも手綱取るのは団長さんだし、私は単なる荷物だと思えばいいのか?
団長さんの愛馬は、黒色の大きな馬。私が見た事あるマザー牧場にいた馬より大きい気がする。
じっと見ると、馬は私に顔を寄せて来た。
「・・・大人しいですね」
「お、黒主もお嬢が気に入ったみたいだな」
「黒主?この馬の名前ですか?」
「ああ、こいつは軍馬でな。気位が高いんだが俺には懐いているいい馬だ」
なあ?と団長さんが黒主を撫でると、気持ちよさそうに目を細める。確かに馬と乗り手の相性はいい様だ。
団長さんは私をひょいと馬の背に乗せると、自分もさっさと跨って手綱を引く。
黒主も心得た様に手綱に従い、別邸を出発した。
********************
王都内を馬に乗って疾走する。王都内は石畳の道と、土の道とがある。なので馬で走るのには悪くは無い。
いつもの馬車とは違い、風を切って走るのはとても気持ちがいい。しかし目線が高い!最初走り始めた時は怖かったけれど、怯んだ私に気づいた団長さんはグッと腰に手を回して私の体を固定した。
「怖いか?お嬢」
「す、少しっ」
「俺にしがみついていろ、と言いたい所だが、せっかくだから前を向いていたらいい。黒主の背に乗せて落とすなんて真似はしないから、俺の腕に身を預けていろ」
確かに、力強い男性の腕に固定されていたら、体の揺れも落ち着く。次第に馬に乗る揺れにも慣れてきて、頬に当たる風の心地良さときたら他にはない。
近衛騎士団の施設に着く頃には、すっかり楽しくなってしまっていた。
カポカポ、と駆け足から並足へと速度を落とし、近衛騎士団の施設へと門をくぐる。
歩哨に立っていた騎士がぎょっとして見ている。ですよね?だって団長さんだもんよ…
奥手に入ると、団長さんはサッと馬から降り、私を抱え上げて降ろしてくれた。お、重くないのよね?気にしてしまうよ…団長さん…
と、奥から女性にしては少し低いハスキーな声が響く。
「ようやく来たか!」
「へっ?」
声のする方へ振り返った瞬間、バフっ!と柔らかな体に抱きとめられる。ぎゅむ、と頬に押し付けられる感触。こ、これは確実に!!!
「ぐむむむむ!」
「よく来たな、我が姫!ようやく会えて私は嬉しいぞ!」
「アナスタシア、お嬢が胸に埋もれて苦しんでないか?」
や、やっぱり胸ですか!?これはかなりの巨乳ですよ!
感触としてはご馳走様です!と言いたいが、今それどころじゃなく息が…息が…!
じたばた、と暴れはしたものの、がっしり抱き締められているため全く意味がありません。
ぱっと体が離され、見上げるとそこにはプラチナブロンドの美しい人が。
髪は長く煌めくウェーブがかったプラチナブロンド。目はグレーのパッチリとした瞳。少しつり上がった勝気な色。
女性にしては長身だろう、175センチくらいか?モデルさんのように引き締まってはいるが出ている所は出ている、とても羨ましい体型です。
「よく来た、我がタロットワークが守護せし姫よ。私はアナスタシア・タロットワーク。ゼクスレン兄上の妹だ」
「はじめまして、コズエ・ヤマグチです」
「こうして会うまで一年近くかかってしまったな。私も早く会いたいと思っていたのだが、如何せん仕事が忙しく王都にいる時間が短くてな」
「・・・え?アナスタシアさん、今でも騎士のお仕事してるんですか?」
外から室内へ。騎士団長の執務室へと団長さんとアナスタシアさんに連れられて向かう。何故か私はアナスタシアさんに手を繋がれています。
しかしアナスタシアさん、団長さんと結婚したんだよね?でもタロットワークって名乗ってるよね?
団長さんと結婚して、クレメンスの家に入ったのと違うのかな?
執務室へ入り、ソファへと座る。アナスタシアさんは私の隣、団長さんは向かいへと追いやられていた。
「私は前王家に産まれはしたが、ダンスや裁縫をするよりも剣を振り回している方が生来の気質に合っていてね。亡き父上からよく怒られたものだ。しかし剣術指南役の騎士達も私には手温くてね」
「アナスタシアはお嬢くらいの頃から、騎士団に出入りして正騎士達を負かしていたからな。俺も何度ぶちのめされたか」
「私のような女に負ける程度の腕ならばいない方がよかろう?」
フッ、と笑う姿も格好良すぎです、アナスタシアさん。
しかし本人はニコニコして私の隣に座っている。
…なぜ気に入られているのだろう…?
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