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学園生活、1年目 ~春季休暇~
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しおりを挟む実技訓練、とは名ばかりの一方的なしごき。
この光景は近衛騎士団の施設ではよく見られる光景。
訓練を付けてくれる上官があの『姫将軍』と呼ばれるアナスタシア様であれば仕方がないとも思えるが。
しかし近衛騎士団に入れなければ、あの方と剣を交えることすらも許されない。
「今日もやってるな、近衛騎士団」
「アナスタシア様、お綺麗だな」
「お?クレメンス団長もいるじゃないか」
俺は先輩方に連れられ、近衛騎士団の訓練に参加しに来た。学園が休みであるこの期間は、こうやって訓練に参加をしている。
学園がある時は土日しか訓練に参加できないし、近衛騎士団の訓練には王立騎士団でも認められないと参加出来ない。俺は今回ようやく参加資格を得る事ができた。
「ドラン、お前も見てみろ。クレメンス団長とカイナス副官が試合するみたいだぞ?」
「本当ですか」
開けた教練場。そこでは近衛騎士団団長のクレメンス様と、副官であるカイナス様が剣を交えていた。
そして離れた所で観戦するアナスタシア様。
…ん?横にいるのは、確か前に話をした平民生徒では?
目の前で繰り広げられるレベルの高い剣さばきにも目が行くが、俺は見覚えのある平民生徒が何故ここにいるのか謎で仕方ない。
気がつくと、クレメンス様の剣がカイナス様によって弾かれ、それが平民生徒へと飛んでいった。
「っ、危な、」
咄嗟に声が出るが、次の瞬間アナスタシア様が動き、一筋の剣閃が閃くと飛んでいった剣が弾き飛ばされる。
凄い、と驚愕すると同時によかった、とホッとした。
********************
「すまん、アナスタシア」
「全く、私がいたからいいものの。姫に当たってでもいたらどうなると思っているのだフリードリヒ」
「それは直後に俺が天に召されているんだろ?」
ひょい、と肩を竦めたクレメンス団長。
え?なんで団長さんが天に召されるの?
するとアナスタシアさんがその通り、と言うように鼻で笑った。
「そうだろうな、兄上の魔法具ならばそれくらいは容易かろう」
「えっ!?これそんな反撃するものなんですか!?」
ばっ、と私は左手にしていたブレスをガン見する。
ちょ、そんなの危ないじゃない!学園生活中にもしもの何かが起こったら、死人出ちゃうのでは!?
「しっかし、お嬢の魔法にゃビビったな?ありゃなんだ?」
「え、あのこっそり能力低下魔法を・・・」
「それであの威力か・・・」
「さっき俺には身体強化魔法かけませんでしたか?」
「あ、はい。私、有効な支援魔法はそれくらいしか使えませんから」
「・・・それくらい、ね?」
「言ったろ?お嬢が補助に回ったら俺が負けるって。能力低下魔法も呪詛魔法かと思ったよホントに」
えっ?呪詛魔法って何…?
そのネーミングのエグさからすると冗談でも人にかけちゃいけない魔法っぽいんですけど?
「えっ・・・呪詛魔法って人に向けて使っちゃいけないネーミングの魔法に聞こえますけど」
「まあそうだな、だがさっきのお嬢の魔法はそのレベルだったぞ?使った事ないのか?」
「だって自分に試すの嫌だなって」
「おいおい」
「確かに自分に向けて試す魔法ではありませんね、能力低下魔法は」
「すでにモヤシなのにそんなの試したら動けなくなりそうでしたし・・・そもそも身体強化魔法だって私に使っても階段三階までダッシュしても息乱れないくらいの効果しかないですし」
「どうだった?シオン」
「いや冗談じゃなくアレあったら御前試合で勝ち抜けますよ?文句なく。新兵でも俺とやり合える程度にはなるんじゃないかと」
「さすがは私の姫だな」
「そんなお世辞ですよ、アナスタシアさん。本気にしないでくださいって」
真剣に考え込むクレメンス団長とカイナス副官に、誇らしげなアナスタシアさん。
まさかそんな効果ないって…褒めるのもやり過ぎると貶されてる感じよね。私はパタパタ手を振って答える。
けれど私の魔法を直に体感した二人は全く意に介さない。
「自覚がないのも困りもんだな」
「自分に使ってもそこまで効果が見られない事が原因なのでは?そんなはずないんですがね」
「・・・ふむ、姫、私に能力低下魔法を使ってみてくれないか?」
「え?身体強化魔法ではなくて?」
「それは後で試させてもらおう。どのくらい私の能力が低下するのか試してみたい」
そ、そうですか?本人の許可あるならいいか…
私はアナスタシアさんに能力低下魔法を発動。途端にアナスタシアさんはピクリ、と眉を寄せた。
「・・・なるほど」
「そういやお嬢?詠唱どうした?してないよな」
「えっ?お嬢さん、魔法使ったんですか」
「あ、簡単なやつは詠唱なくても大丈夫なんです」
「そりゃ楽だ」
「・・・参りましたね。まさか魔法全般無詠唱で発動できるんですか?」
「え、でも私使える魔法手の指で足りるくらいしか使えませんよ?」
おっと?無詠唱で魔法使えるって特殊なの?
ゼクスさんもセバスさんも、私の周りはほとんど詠唱なんてしていない。さすがに上級魔法ともなるとそうはいかないだろうし、私が使えるのはほとんど生活魔法だ。
支援魔法も使えるようになったけど、それも初級の身体強化魔法や能力低下魔法くらいで、他は教わってないし無理。
それ以上は学園で他の生徒と同じように教わる方がいい、って言われてるし。
この二つは体力作りの一環でおまけとしてセバスさんに教わったものだ。
鑑定魔法と探索魔法は、魔法研究所でお仕事の手伝いをする時に『便利だから』って事で教わったんだし。通信魔法はもう携帯電話代わりというか…
乾燥魔法についてはターニャやライラが私の髪を乾かす時に使ってたやつだ。二人の手を煩わさなくてもいいように教えてもらった。ドライフルーツなんかも作れます。
回復魔法については、怪我した時に自分で使える方が安心って事で魔法の授業を始めた最初に。
照準魔法に関しては特別授業の時にクレメンス団長に教えてもらったんだし。
「そう言われりゃ俺が教えたんだっけな」
「何してるんですか団長」
「だから私、それだけしか使えませんよ?」
「それだけ、ねぇ・・・」
「お嬢さん、それだけとはいえあの効果なら充分ですよ」
「確かにな、フリードリヒが呪詛魔法と思うわけだ。これは思うように動かせん」
「だろ?さすがにヤバいと思った。結果一本シオンに取られちまったからな」
「でもさっき言ってた呪詛魔法って、攻撃魔法なんですよね?私、攻撃魔法は一切使えないので」
「は?」
「え?」
「・・・確かに、兄上もそう言っていたな。他の魔法はすんなりできるのに、攻撃魔法だけは発動しないと」
「そうなんですよ、よくわからないんですけど。まあ困らないからいいかなって。今他の魔法考え中なんです」
某忍者マンガのお母さんくノ一がやってた忍術、魔法で再現出来ないかなー?と思って。
捕縛用の鎖を魔力で精製して捉える、なんて出来たら私クラピカじゃない?これはテンション上がる!
そんな話を聞いて、クレメンス団長とカイナス副官は密談を始めた。おやおや?何を相談してるのかな?
そこにアナスタシアさんが一言、二言。よからぬ事を考えてなければそれでいいんですけど…?
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