異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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学園生活、2年目 ~前期~

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目覚めたアナスタシアさん。宝物庫で見つけた本は、一度父親の国王やゼクスさんが一読して調べ、その後アナスタシアさんに預けられた。

魔術書はゼクスさんの管轄になったが、始祖マデインの日記はアナスタシアさんに預けられたそうだ。

そしてアナスタシアさんは変わった。
大人しい子供が、活発な子供に。メキメキと剣の才能を伸ばしていく。

それからすぐ王位をアルゼイド王家へ委譲し、タロットワーク一族は臣下の座となる。
ゼクスさん25歳、アナスタシアさん7歳の時だったそうだ。


「アナスタシアさんが、私を『護るべき者』と認識しているのは、その時の夢からって事ですか?」

「というより、始祖マデインの残した日記からですな。
日記の中には、未来に異世界から客人が訪れる。その人の力となってどんな権力や危険からも守ってもらいたい、と記されておりました」

「なんで、始祖さんは異世界から人が来るって知っていたんでしょう?」

「・・・それはですな、始祖マデインのいた時代にも同じ事があったそうです。そしてマデインはその異世界人に恩を受けた。だから我等子孫にもその時の恩返しを、との記述でしたぞ」

「えっ!?異世界から人が来てた!?」

「はい、そのようです。今回は儂も関わった召喚魔法のイレギュラーでコズエ殿はこちらへ来ましたが、その時はどうだったのでしょうな。
そこまでは詳しく書かれてはおりませんでした」

「そ、その人は帰れた・・・んでしょうか?」

「すみません、儂が読んだ日記にはその記述はなかったと記憶しております。もしかしたら別の日記や書き付け、古文書には書いてあったりするかもしれませんが」

「わ、私にも読めますか?」


心臓がバクバク言ってる。だってこれまでこんなに核心に迫った話出てこなかったじゃない!?
ゼクスさんも言ってこなかった。…帰還方法の記述がなかったからガッカリさせないように言わなかったのかもしれないけど。

ゼクスさんはセバスさんに目配せし、机の上から一枚の紙を持ってくる。


「これがその日記の記述の写しです。読めますかな」

「・・・あ、はい、読めますね。書けないことは確実ですけど」

「なんと。古代語も読めますか。これは今まで以上に手伝っていただきたいことが増えますな」

「読める・・・というか、意味が分かる、が正しいと思います。声に出して読んだら発音は違うかもしれませんよ」


こちらの言語を見た時と一緒だ。読み方や書き方はわからないが、意味は私の知る日本語に変換されて伝わる…というよく分からない状態。

だから単語とかもそのまま言うと、『それは何のこと?』と聞かれる事もある。だから私に理解できるように勝手に翻訳されているとしか思えないのだ。

差し出された日記の記述…そこにはアナスタシアさんが私を『護るべき者』とした内容が書かれていた。


『遠い未来、異世界から客人が訪れる。それは少女の姿をしてはいるが、精神は大人である存在。
客人の知識や知恵は、私達と違う価値観を持っているかもしれないが、それもまた我等にとって修練と考え、吸収する事を考えておいてもらいたい。

異世界よりの客人には、偉大なる精霊の加護がある。
その力を借りる変わりに、我等の力を惜しむことなく助力するよう。我等の力が及ぶ事の無い程にその大いなる加護は国にとって僥倖となるだろう。

その力故に、危険が起こる事も予想される。異世界からの客人が無事帰るべき場所へと帰る事ができるまで、守り抜く事を望む』


「・・・驚きましたね。こんなにはっきり書かれている」

「儂もこれを読んだ時は疑心暗鬼でしたな。ですが、コズエ殿が来られて確信に変わった。アナスタシアはもっとそう思った事でしょう」
「僭越ながら、私も同感にございます」

「始祖マデインは、おそらく今の儂等のようにその異世界から来た客人に随分と世話になったのでしょう。
でなければ、大いなる精霊の加護と記述があるはずもない。国を興す時に助けとなったのでしょう」


な、なるほど。ゼクスさん達が言うようにその『大いなる精霊の加護』ってのは対象者である私達異世界人がいる場所を起点として周囲に安定した気候や恵みをもたらす物だ。であるならば、国を創ろうとする場合、かなりのプラスになりそうだ。

今でも私がこの国にいる事で、治世にはプラスになっているのだろう。私本人には全くその感覚ないけどね!


「コズエ殿、元の世界への帰還方法は、始祖マデインの日記に隠されているかもしれません。
儂等が読んだ時には気付きませんでしたが、コズエ殿が読んだら何か気付くことがあるかもしれません」

「その日記は、アナスタシアさんが持っているんですね?」

「ええ、そうです。アナスタシアから借りるといいでしょう。儂等には読めなかったページもあります。コズエ殿ならば、それが読めるかもしれませんからな」


そうか、見て見ないことにはわからないけど、その可能性もあるか。ゼクスさん達は読めないからそのまま放置したのかもしれないけど…さすがに『日記』だもんね。プライベートな事が書いてあったりするんだろうし、そこまで魔術書並みに研究したりもしないんだろう。

ちなみに、聞いたところによるとランタンや王城のあちこちにある魔法の仕掛けは、その時見つかった魔術書に記載があったりしたそうだ。

ゼクスさんはそちらの魔術書の研究を今でも続けているそうだ。何せ膨大な量で、読み解くにも時間がかかるそうで…


「すみませんのう、それくらいしか力になれなくて」

「えっ!?いやいや、家に置いてもらって、生活の面倒見てもらって、身の安全も保証してくれて、勉強できる環境もくれてるんですよ!?
私の加護がどんなもんかわかりませんけど、ものすごい破格の待遇だと思ってますけど!」

「・・・」
「コズエ様、破格どころか、この程度でいいのかと思うのはこちらなのですよ。コズエ様が来てからこの国はとても安定しています。いつもならば天候が荒れる事も、不作になる作物もあるのです。しかしこの一年そういった事はほとんどない。それは何にも勝る事です」

「そ、そうなんですか?」


この世界アースランドって平和だなー、って思っていたんだけど、それはどうやら違うらしい。
安定しているのはこのエル・エレミア王国と、その僅かな周囲だけで、諸外国はそれなりに天候異常や、魔物の発生など毎年何らかの事が起こっているそうだ。

…それって、私がいることによる反動とかじゃないよね?
もしそうなら、申し訳なさすぎるんですけど。

しかしゼクスさん達によると、その心配はないそうだ。私が来る前も、各地でそういった異変は当たり前のことで、このエル・エレミアでも全くない訳ではなく、通年よりも小規模な為、王都まで異変の状況が上がる前に地方だけで片がつく規模だという。

うーん、でもなぁ…バタフライエフェクトとかあるじゃない…?怖いよね…?
大型の竜巻とかないよね…?大旱魃とかイヤだよ…?

長時間、日付が変わるまで話した。

私は明日、学園の授業の後に、アナスタシアさんの所へ行くことにした。
始祖マデインの日記を借り、読んでみよう。

何か手がかりがあるかもしれない。

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