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学園生活、2年目 ~前期~
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しおりを挟むカーク王子と話していると、一人のメイドがこちらへやってきた。そろそろ王妃様が参ります、との事。
それを聞いてカークは立ち上がる。
「なら俺はそろそろ失礼するか。これ以上いると、兄上に殺されるかもしれないからな」
「シリス殿下?なんで?」
「ここに来る前も、『・・・いい度胸だね』と微笑まれた」
その一言で弟を脅す兄、やるなぁ…
でも蓬琳の皇女来てるんじゃなかったっけ?
と、思っていると三人の人が近づいてきた。
カーク王子とそちらを見ると、カークまでもが眉をひそめた。
「・・・兄上と、蓬琳の皇子達か?なんでここに?
お前がいる事は知っているはずなんだが」
「廊下とかから庭が見えて、話の流れから案内を断りきれなかった、とか」
「それはありえるが、今日ここは母上のお茶会、として立ち入りを禁じているはずだ。兄上が知らない訳はないし、他国の王族といえども無闇に入っていい訳ではないだろ」
「でも来ちゃってるじゃない?」
ポソポソ、と話をしているうちに、東屋まで彼等は来てしまっている。
そういう理由ならばシュレリア様が来る前に、彼等をここから遠ざけないといけないのでは?
エル・エレミアと蓬琳国の外交事情はわからないけど、許可を得ないで王妃のプライベートイベントに入ってきちゃいけないような気がする。
先に目が合ったのは、シリス殿下。
少し困ったような顔をして、蓬琳の皇女をエスコートしている。その少し後ろに高星皇子。
皇子と皇女は二人とも国の衣装なのだろう、豪華な刺繍と飾りがアクセントの中華風の衣装。
皇女は長い髪を緩く結い上げ、簪のような飾りを幾本も刺して飾る。
あの楕円のピアスは高星皇子だけのようだ。
皇女は感動したように声を上げる。
「まぁ!なんと素晴らしい東屋!ここでお茶ができるだなんて素敵ですわ!ワタクシもここでお茶がしたいわ、ねぇお兄様?」
「庭は見学だけ、と言ったはずだが?あまりシリス殿下を困らせるな、花麗」
「それはそうですけれど。もったいないではありませんの、昨日の夜も素敵だったけれど、昼の庭園も素晴らしいわ!」
感動したように話す皇女様。歳は12~3というところか。
少し幼い言動に聞こえるけれど、顔立ちは大人びているので黙って立っていたら年頃の娘さんに見えなくもない。
皇女殿下は私に目を止めると、にっこり微笑んで手を振る。
「あなた、そこを譲ってくださらない?」
彼女にしてみれば、ごく普通の事なんだろう。私も普段着で来てるし、頑張っても貴族のお嬢様には見えまい。
だから私に場を譲れと言うのは、彼女にとってみれば当たり前の行動。
しかし、ここは私じゃなくてシュレリア様が用意した茶席なので、おいそれと彼女に譲ってあげる訳にもいかない。
どうしたもんかなぁ、と思っているとシリス殿下が皇女を諌める。
「花麗皇女、申し訳ないが彼女は母上の客人。そしてここは今日母上が彼女を招く為に用意した席ですのでそれはできません」
「あら、シリス様ったら。ワタクシの事は花麗と名前で呼んでくださいと申し上げたはずですわ?」
「すみません、女性を名前で呼ぶのは伴侶のみ、と決めていますから」
サクッと笑顔で『君の事は呼ばないよ?』と断るシリス殿下。その微笑み、ステューに近いものがあるよ…?
けれど皇女殿下はそれに気付かず、『ううん、つれない人!』と言っている。そうかまだそれには気付かないか…
「王妃陛下のお茶会なら、ワタクシが参加してもよろしいのではなくて?ワタクシは蓬琳を代表してこの国へ来ているのですもの、ねぇお兄様?」
「・・・だからお前を連れてくるのは嫌だったんだ。済まない、シリス王子。愚妹は私が連れ帰る。手を煩わせて申し訳ない。そちらの姫君もいずれ正式に挨拶させて頂こう」
「っ、きゃっ、お兄様!離してください!」
呆れたように溜息を付いた高星皇子。
皇女殿下の腕を掴み、スタスタと庭を出ていった。皇女は『離してくださいませ!』『シリス様ぁ!』と賑やかだったが、やがて声が聞こえなくなった。
残された私達。最初に動いたのはカーク王子で、私に『後は頼んだ』と囁いて逃げるように去っていった。
「・・・なんだあれ」
「全くカークと来たら。私に気を使ったつもりなのでしょうね」
「え?」
ふわり、と耳元に花の感触。見上げると、シリス殿下が優しく笑って、私の髪にエレミアの花を飾る所だった。
「思った通り、よくお似合いだ」
「っ、あ、ありがとう」
薄いピンクのエレミアの花。ハーフアップにしていた髪に、いつの間にか採られた花が一輪飾られる。
ちょっとした髪飾りのように見えるだろう。
「本当はカークに任せず、私が姫の相手をしたかったのですが。先程の蓬琳の皇女につきまとわれて参りました」
「つきまとわれて、って。蓬琳の皇女はシリス殿下の正妃の座を射止めに来た、って噂ですよ?」
「そのようですね。けれどあのように幼いのでは、残念ですが無理ですね。私の伴侶となりたいのであれば、貴方の様に己を省みることのできる、自制心のある女性でなければ任せることができません」
「・・・買い被りすぎですよ、私も我儘ですもん」
「貴方の我儘は、我儘なうちに入りません」
くす、と笑うシリス殿下。なんでそんなに高評価!私そこまでできる女でもないし、好きじゃない事は基本適当ですよ!
自制心?別にあるというよりも周りのお嬢様達よりは質素で、貧乏性なだけ!
なんとか言い返さなきゃ、という私にシリス殿下はハッキリと宣言した。
「私は今のところ婚約者を選ぶ気はありません。私の心の中にはすでにコズエ殿、貴方がいる。この想いが報われるかどうかはわかりませんが、私は貴方を惚れさせられるようにいい男になります。コズエ殿が学園を卒業まで勝負はお預けにしませんか?」
「しょ、勝負、ですか?」
「ええ。コズエ殿が学園を卒業する時までに、私は成長していい男になって必ず迎えに行きます。ですからそこから一年。コズエ殿が私に惚れるかどうか勝負しませんか?」
え?・・・えーと、私が学園を卒業するまであと二年。その間にいい男になるから、私が学園卒業した時スタートで、惚れるかどうか勝負って事?
言われたことを飲み込み、内容に驚いているとシリス殿下は屈んで私と視線を合わせる。
ロイヤルブルーの瞳。真剣に私を見る目に、嘘はない。
「そのくらいの勝負は、受けてくれますね?レディ。
母上と共謀して私に正妃候補を選ばせようとしてるでしょう?知ってますよ」
「え、でもあれはシュレリアが」
「言い訳しない」
「ハイ」
「他の姫君ももちろん『候補』としては吟味します。この国を共に背負う相手ですから、選定に数年かけた所で異議を申し立てられる事もないでしょう。すぐに私が王となる事もありませんしね。ここ数年内に私は王太子となりますが、その時に正妃を迎えていなければならない訳ではないですし。
・・・それに、コズエ殿?貴方を正妃候補として見ない理由が私にはない」
「待って待って待って、だって私は」
「異世界人であろうと構いません。私がコズエ殿を選ぶ第一の理由は、貴方が私と『同じ目線から国を見る』事ができる器量を持っているからなのですから。
王と同様の考えで物事を見ることのできる『王の女』は貴重であり、出会ったことが奇跡なのですよ」
…な、何その『王の女』って!
私はそこまで高尚な事を考えて生きてませんよ!
「何より、私は『まだ』本気で貴方を口説いた訳じゃないんだけど?」
「っ!」
耳元に囁かれる言葉。イケボで囁くのは反則!!!
ばっ!と耳を抑えて下がる。シリス殿下はそんな私を見て笑っていた。
シュレリア様が来たのを見て、にっこり笑って礼をし、帰っていく。
…お、恐ろしい子!!!
しかし二年も経ったらあれ以上にイケメンになるのでは…?私、危うし!!!
ようやく来たシュレリアも、シリス殿下と同じようなことを言う。『私がシリス殿下に惚れなければいい』って簡単に言ってくれるわ…シュレリア様…
まあ、二年後のことを今から行ったところで始まらないし、それはその時考えよう。
その間に何があるかなんてわからないんだし!
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