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18皿目
しおりを挟む「だからって、何でお前はそんな訳のわからない奴から貰ったモンを食うんだよ!!!」
「だって、美味しかったんだもの!!!」
「毒でも入ってたらどうすんだよ!!!」
「入ってなかったもの!!!」
「食った後だからだろそれは!!!」
「・・・・・まあまあ、落ち着けよ巽さん」
開口一番怒られた。ひどい。
◼︎ ◻︎ ◼︎
「まあ、確かに知らない奴から物貰って食うのはどうかと思うぜ?響子?」
「そうね、ごめんなさい・・・・・」
「いいさ、平気だったんだろ?心配するんだから、気をつけろな?」
「わかったわ・・・・・」
「おい、なんだって晴明にはそう素直なんだ」
「人柄?人徳?」
「コノヤロウ・・・・・」
「待て待て、巽さん。妬いてくれるのは嬉しいけどよ」
「「違うそれ」」
あの後。店に来た2人に、ビスケットくれた青年の事を話したのだ。
もちろん、貰ったビスケットも食べてもらった。
「・・・・・しかし、旨いな」
「でしょう?どこで売ってるのかな?」
「俺は知らねえなあ・・・・・巽さん、宛てはあるか?」
「ねぇな。こんなキッチリしてんの久しぶりに食ったな」
「そうなの?やたら美味しいとは思ったけど」
「生地にナッツの粉末かオイルでも混ぜ込んでるんだろうな。
それがまた、香ばしさを引き立ててる。・・・・・考えてるな」
「紅茶に合うな、これ」
「だよね~~~こんなの、お茶請けにしたら最高だと思う」
「・・・・・そいつが作ったってのか?」
「わかんない。単に持ってきただけかもしれないし。売ってたのをくれただけかも」
「・・・・・なんにせよ、だ」
浩一朗がぽつりとこぼす。
「連絡が来ねぇと始まらねぇ。・・・・・ま、もう少し待つとしようぜ?
ランチの客も、そこそこ落ち着いてきたしな?」
「そうだな、結構入るようにもなったし・・・・・売り上げもいいんじゃねえのか?」
「うん、結構波に乗ってきたかも。このまま、パティシエを入れることが出来れば、営業時間を延ばしてカフェタイムを作れると思う。・・・・・いいわよね?」
「ああ。問題ねぇ」
「俺もだ。・・・・・17時くらいまでか?」
「うーん、ディナーをやるまでは18時くらいでもいいけど。
そうすると、みんなのバイトがキツイだろうから、17時くらいが妥当かな。少し早いけどね」
「その辺りは大亮や康太次第か?俺はバーに出るのは20時くらいだから構わねえけどよ」
「そうだね、ちょっと聞いてみないことには・・・・・」
そう、何にせよパティシエさんを入れない事には始まらないのだ。
おかげさまで、ランチは好調。
毎日、決まった人数が来てくれている。
常連のOLさん達も多く、客足が落ちる事はない。
近所の奥様の集まりなんかも来てくれることも多いのだ。
そして、その数日後。
私はまた、あの青年に会う事になる。
「あ」
「や。こんにちは。今日は制服?可愛いね」
営業が終わり、皆がバイトに行った後。
浩一朗も、晴明も帰っていった後の事だ。
私が制服姿のまま、家に入る前に塀の貼り紙をチェックしようとしたときに会った。
「この間の、美味しかった?」
「あ、あれ!スッゴイ美味しかった!!!」
「そう、よかった。じゃあ今日はこれね」
はい、とばかりにまた私の掌に包みを置く。
この間と同じ、白い包み。
じゃあね、と帰る彼の服をむんず、と掴んで引き止めた。
「・・・・・何?」
「何?じゃなくて。どうして私にこれ、くれるの?」
「あげたいから」
「う、いや、ありがたいんだけど!!!これ、どこで買ってるの?誰が作ってるの?」
「僕」
「はい?」
「それは、僕が作ってるの。」
「・・・・・え?」
「売ってないよ?だって、僕が家のキッチンで作ったんだから」
えええええ。嘘!?これ、目の前の彼が作ったの!?
でもって、これ、作ってきてくれたって事!?
あまりの衝撃に言葉が出ず、ぱくぱくするだけ。
そんな私を見て、くすり、と悪戯っぽく笑って近づいてきた。
頬に、唇の感触。
ちゅ、とリップ音を立て、私にキスをした。
「え、あ、ちょ、」
「ふふ、可愛いんだから。・・・・・またね。その感想聞かせて?」
「あ、やだ、ねぇ、名前!!!」
「総悟」
「えっ!?」
「僕の名前。忘れないでね」
またね、お姉さん、と手を振り、歩いていってしまった。
・・・・・。
・・・・・・・・。
はっ!!!!!
現実逃避しちゃった!!!!!
しまった!!!!!!!
連絡先も聞いておくんだった!!!!!!
ガックリしつつ、家に帰り。
包みを開けば、今度はクッキーが入っていた。
かり、と齧れば。
「・・・・・・・文句のつけようがない」
今度は、バタークッキー。
クリームのように、キュッと絞って形を作る、おなじみの形のクッキーだ。
でも、すごく美味しい。
サクサクしてて、何個でもいける。
「・・・・・これは珈琲が飲みたいかも」
なんだろ、あの子。
カフェに出すもの、くれてるのかな?
もしかして、もしかしなくても。
貼り紙の端っこ、破って持っていってくれたのは、あの子なのかな?
◼︎ ◻︎ ◼︎
数日もしないうちに、店に3本の電話があった。
全て、私が銀行やら不在のときにあったらしい。
『お店の貼り紙を見た。話が聞きたいので、お邪魔したい』
と。
早速、本人にコールバックして、日取りを決めた。
そのまま面接して、雇ってしまおうと浩一朗が言い出したからだ。
確かに、その方が早いかもしれない。
面接と、実技試験。
私と、浩一朗と、晴明の3人でする事にした。
他の子達は、バイトがあったりで来れないからだ。
まあ、土日にやるように決めてしまったのは私なのだけどね。
平日だと、ランチが終わってからになってしまうし。
次の日の仕込みやらなんやらあるから、出来るなら土日の方がいい。
でも、来てくれる人がどうだろうかと思ったのだけど、皆OKしたのだそうだ。
連絡も、晴明がしてくれていた。
手早くて助かります・・・・・。
でも私は、あの彼が気になっていた。
ビスケットと、クッキーをくれた彼。『総悟』と名乗った彼の事。
・・・・・。
できれば、彼にやってもらいたい、なんて思うけど。
それは私のワガママだよね?
会えるとは限らないのだし。
そうして、パティシエ採用の面接当日がやってきた。
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