夢見るディナータイム

あろまりん

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「あれ、さっきの子、帰ったのか?」



ひょい、とオフィスに顔を出した大亮さん&晴明。
きょろきょろ、と2人して見回している。



「うん、さっきね」

「すごい剣幕だったよな。なんだってんだ?」
「さっきの女の子か?そんな凄かったか?」

「ああ。響子さんが後ずさってた」

「ちょっと!そこまで引いてなかったでしょ?」

「横から見てたら、結構押されてたぜ?」
「へえ。そうなのか?響子」

「・・・・・確かに、ちょっと負けてたかも」



旭さんの必死さが伝わってきたのは事実だ。
しかもあの小動物のようなキラキラした目。

『うお。』と思ったのは本当だけどね。



「んで?雇うのか、アルバイト」
「おっ!!!可愛いウェイトレスさんか!?」

「うん、明日から来るって」

「それはまた」
「いきなりだな」

「ふふふ、総悟君のスイーツがお気に召したそうよ?」

「僕のスイーツがどうしたって?」



きい、とドアを開けて登場したのは、プリンを片手に持った総悟君。
ここまで届けに来てくれたらしい。



「はい、響子さん」

「ありがと。美味しそう。しかもアラモードになってる」

「ただのプリンじゃ勿体ないでしょ?」



はい、とスプーンをくれる。
そのままぱくり、と一口。



「ん、美味しい」

「ありがと」

「なあ俺達のはねえの?総悟」

「大亮さんとハルさんのは冷蔵庫。好きに食べて」

「よっしゃ」
「大亮、まだ話終わってねえのに行くのか?」



今にも飛び出しそうな大亮さんの首根っこをぐい、と引っ張る晴明。
ブレーキ役は健在だね。



「何の話?」

「明日っからウェイトレスが入るんだってよ」

「ふうん」

「その子ね、総悟君のケーキが物凄く気に入ったんですって。
だから、ここで働かせてくださいって」

「へー」

「へー。って総悟・・・・・」
「クールだな、お前・・・・・」

「だって、そういう子多いし。前にちょっと働いてたとこでも多かったよそういう子」

「慣れっこ、って事?」

「まあ、ね。大抵、僕の態度に興ざめしてすぐ辞める子が多かったけど。
今度はそういう子じゃないといいなあ。響子さんに迷惑掛かっちゃうしね」

「うーん。平気じゃないかしら?この店の雰囲気も気に入ってくれたみたいだし。
でも可愛い子よ?リスみたいな」

「・・・・・まあ、確かに」
「そんな感じだったな」
「そうなんだ。・・・・・じゃあ、明日からは1人分ケーキ増やせばいい?」

「うん、ゴメンね」

「いいよ、そんな大変じゃないし。大亮さんと康太の取り分がちょっと少なくなるだけだし」

「・・・・・そこで調整してたんだ」

「だって、放っておくとすっごい食べるんだもん2人とも」

「仕方ねえだろ!止まらないんだからよ!!!」
「いやそれは仕方なくねえだろ・・・・・」



ぎゃいぎゃい、と騒ぎ出す2人。
それをやれやれ、と眺める総悟君。

そこへ店を閉めてきた浩一朗と山崎君が加わった。



「おいうるせぇぞお前等」

「・・・・・賑やかですね」

「あら、ご苦労様。下はもういいの?」

「ああ、閉めてきた。ほら、売り上げ」

「ありがと。行く手間が省けたわ」

「んで、何騒いでやがるんだ」



そこで、2人にも旭さんがスタッフに加わる話をした。
皆、ソファに座って話し出す。



「なるほど。雇ったのか」

「ええ。賃金少ないよ?って言っても構わないって。・・・・・総悟君のケーキでチャラにしといたわ」

「はは。気に入られたな、総悟」

「僕、というよりケーキでしょ」

「ま、いいんじゃねぇのか。
そいつが出ることで響子がフロアに出なくていいなら、今までどおり経営に集中してもらえるし」

「だな。レジと客管理にいてもらって、フロアはその子・・・・・旭さんだったか?
彼女に入ってもらえばいいからな」

「いいなー!潤いだよな!!!」

「あ、それでね。彼女、ストーカー被害にあっていたんですって。
だから、それとなく気をつけてあげてほしいのだけど・・・・・」

「なんだ、まだ付きまとわれてんのか?」
「大変だな」
「殴っていいのか?」
「大亮さん、そういう事じゃないから」

「うーん、どうかしら?なんだか双子のお兄さんが追っ払ったって話だったけど。
でも、ウチで働くようになって、また来ないとは限らないでしょう?
彼女、結構そういうの気付かない方かもしれないから」

「天然か?」

「・・・・・近いかも。なんていうか、箱入りのお嬢様って感じ?」

「ま、気をつけておくさ。帰る時は、大亮か康太、山崎が駅まで行きゃいいだろ」

「おう!任せとけよ」
「わかりました、気をつけます」

「総悟君も、ちょっと気にしてあげて?」

「わかった。ま、これだけ男がいればそういうのも少ないとは思うけどね」

「なあ響子?彼女は寮に入れるのか?」

「ん?それはまだ。だって大学卒業してないし。
卒業後、ディナー時間も働いてくれるようなら、正式に雇おうかと思うけど。
そうしたら寮を薦めようかな。今はご自宅住まいのようだし」

「そうか。まあ、寮に入るなら、誰かしら一緒に帰るから心配ねえしな」

「うん。でもまだ先の話だし。・・・・・ストーカーさんも出るかどうかわかんないしね。
とりあえず、明日からよろしく。苛めないでよ?」

「・・・・・ああ」
「わかってる」
「おうよ!」
「多分ね」
「・・・・・了解しました」



なんだろう、今ちょっと心配な返事があったような・・・・・?



◼︎ ◻︎ ◼︎



次の日。
彼女は時間通りに来た。



「宜しくお願いします!」

「はい、じゃあ上に行きましょう。火原君、ここお願いね」

「あ、え、ハイ!」



どもってるよ・・・・・。
朝からそわそわしっぱなしだもんね、康太君たら。

やっぱり、歳の近い女の子とくればドキドキしてしまうのは仕方ないコトだよね。



「えっと。こっちがオフィス。この間お話したところね。
私は大抵、ここで仕事かな。何かあったら相談にも乗るから」

「はい」

「で、奥がロッカーなのだけど。旭さん以外のスタッフは皆男性なの。
だから貴女のロッカーはオフィスの奥に用意したから。そっちは入らなくていいわ」

「あ、ありがとうございます」

「さすがに一緒はね?もっと女性スタッフがいるのなら、別部屋とかも考えるんだけど。
私は家で着替えてきてしまうから、考えてなかったのよね」

「え?お家、近いんですか?」

「ん?ああ、隣の家が私の自宅なの。だから」

「そうなんですか!?」

「うん。だから旭さんはこっちでね。
・・・・・一応パーテーションと本棚で見えないようになってはいるんだけど。不自由ないかしら?」



はい、と案内した一角。
着替えスペースというよりは、ちょっとしたデッドスペースだったのだけど。
パーテーションを用意して、彼女が着替えられるようにしたのだ。

・・・・・パーテーション、使い道なくて邪魔だったから丁度良かったのよね。



「はい、十分です!」

「そう、よかった。で、制服。着方はわかる?」

「はい!店長さんみたいな感じに着ればいいですよね?」

「ええ。じゃあお着替えしてきてくれる?」

「はい!」



いそいそ、と着替えをする彼女。
髪も邪魔にならない感じだし。そのままフロアに出してしまおう。

ランチは終わるし、後はカフェタイムだ。

ケーキ屋で働いた事があるのなら、難しくはないだろう。
そこまで客がいるわけでもないし。
テイクアウトの客も来るけど、それは彼女にとっては慣れた作業のはず。



着替えを終えて、一通りチェック。
うん、可愛いなぁ・・・・・。



下に降りて、キッチンへ直行。
とはいっても、中に入れるというよりはお客様のいるフロアとキッチンを繋ぐ中間部分だ。

そこでみんなにさっと紹介。
ちゃんとは後でもいいでしょう。



「旭  万理さんです。フロア担当。・・・・・金子君、任せていいかしら?」

「ああ。よろしくな。金子  晴明だ」

「よ、宜しくお願いします!旭  万理です」

「で、こっちが同じフロア担当。火原  康太君と、森谷  大亮君。」

「よ、よろしく!オレ、火原ってんだ」
「森谷だ、よろしくな?万理ちゃん・・・・・でいいのか?」

「あ、は、はい!」

「一応、仕事中は『旭さん』でね。後では構わないけど。
旭さんも、彼等を呼ぶときは苗字に『さん』付けでお願いします」

「はい」

「キッチンの方を紹介してくるから、その後はよろしくね?」

「ああ」
「オッケー!」
「うっす」



◼︎ ◻︎ ◼︎



そのまま、キッチンへ。
ランチが終わっているから、片付け時間。

パティシエも殆ど作り終わっているから、忙しくはしていない。



「皆、集まって?」



3人揃ったところで、ご挨拶。



「今日から新しくフロアを手伝ってくれる子です。
旭  万理さん。よろしくね」

「旭  万理です。宜しくお願いし



・・・・・。

・・・・・。

噛んだ。



「噛んだな」
「噛んだね」
「・・・・・いや、あの・・・・・ですね」

「みんな冷静に突っ込まないで!!!大丈夫?旭さん」

「だっ、大丈夫、ですっ」



真っ赤になる旭さん。
・・・・・まあ、恥ずかしいよね。わかる。



「と、まあ。よろしく指導してあげて頂戴。
彼が、メインシェフの巽  浩一朗」

「よろしく。ま、あんま気張るな」

「はい!」

「シェフ見習いの山崎  晋君。」

「よろしくお願いします」

「こちらこそ、宜しくお願いします!」

「で、彼がパティシエ。泉  総悟君」

「どうも」

「はいっ!宜しくお願いします!!!」



・・・・・力入った。
あの美味しいケーキを作った人!!!と思うのも無理はない。

・・・・・総悟君は無表情だけどね・・・・・。



「入る事もあるでしょうから、お世話になるでしょう。
キッチンは、巽さんにお任せしているから、わからない事は彼にね?」

「はい、わかりました。」

「巽さん、山崎君、ランチになれば彼女がサーブすることもあるからよろしくね。
泉君、彼女はケーキ屋さんで働いてたから、テイクアウトのケーキを包むのもお任せしたいの。
その辺りはお願いしてもいいかしら?」

「うん、いいよ。・・・・・君、こっち来て」

「あ、はいっ!」



ててて、と総悟君に付いて行く旭さん。

ウチは、レジのところにウインドウがある造りじゃないから、テイクアウトはキッチンへ回って取りに行くしかない。
本来は、総悟君にやってもらう事も多いけど。
彼が他を作っている最中なら、彼女に入ってもらって持ってきてもらうしかないのだ。

康太君や、大亮さんとかもやっているから、彼女にもやってもらう。

それを総悟君に教えてもらおうという訳だ。
だって、その場所は彼の領域テリトリーだからね?



「平気そうか?」

「ん?フロアのあれこれは晴明に頼むから。
後は、大亮さんや康太君にフォローを頼めばバッチリでしょ?」

「そうだな」

「で、ランチの時はキッチンでの動き方は貴方か、山崎君が教えて。
フロアの人間が入ってもいい位置とかあるでしょ?」

「ああ。まあ、後でな」
「わかりました、お任せください」



総悟君の方を見れば、仏頂面をしているけどあれこれ教えている。

あまり最初から詰め込んでも仕方ないと思っているんだろう。
すぐにこっちに戻した。



「んじゃ、後はその時に」

「あ、はい!ありがとうございました」

「じゃあ行きましょうか。それじゃあ、皆後は宜しくね?」

「ああ」
「はい」
「うん」



◼︎ ◻︎ ◼︎



フロアへ戻り、晴明にバトンタッチ。



「よし。んで、どこまで教えていいんだ?」

「任せるわ」

「・・・・・」

「ふふ、頑張ってね?私は上にいるから」

「あいよ」
「はい!」

「んじゃ、最初はレジか?丁度出る客がいるから、やってみるか」
「はい!」



・・・・・ま、平気そうだ。
晴明は教えるの上手そうだし、放っておいてもいいでしょう。

彼等とうまくコミュニケーションを取ってもらえた方がいいだろうし。

さて、売り上げチェックしないとな~~~
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