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29皿目
しおりを挟む「・・・・・なあ、なんか変じゃねえ?」
「なにがだ?康太」
「万理。さっきからため息ばっかなんだよ」
「はっはぁ~~~?康太、お前・・・・・」
「んなっ!ちょ、大亮さん!!!変な目で見るなよ!!!」
「おいおいおいおい~~~春が来たかぁ~~~?」
「あのなぁ!オレは心配で!」
「またまたぁ~~~」
「あーもう!!!大亮さんに言ったのが悪かった!!!」
フロアの中央で地団駄を踏む康太。
おいおい、ガキじゃねえだろうが・・・・・
「何してんだ、康太。せっかく掃除したのにホコリが立つだろ」
「ハルさん!」
「な、ななななんだよ」
物凄い速さで俺に寄ってきた。
しかも真剣な顔で。
「な、万理、変じゃねえ?」
「万理?・・・・・いや、気がつかなかったが・・・・・どうかしたのか?」
「なんかよ、康太が言うには万理ちゃん、ため息ばーっかついてんだとよ」
大亮がモップの柄に顎をもたれて言う。
康太が『そうなんだよ!』とぶんぶん、と頭を振った。
「・・・・・ため息、なあ?」
そう言われると、そうかもしれない。
当の万理はといえば、さっきからレジのところでポップを描いているんだが・・・・・
ペンのキャップを外しては、『・・・・・はぁ』と息を付き。
またキャップを付けては『・・・・・はぅ』とため息。
描けなくて悩んでるのかと思ったが・・・・・。
「ポップ、描けなくて悩んでるんじゃねえのか?」
「いや、でもフツーに描いてんだよ。オレさっき見たけど」
「・・・・・他にアイデアが出ないとかか?」
「うーん・・・・・というよりは、何か思い悩んでんのかと思うんだよな」
「何か思い当たるのか?康太」
「いや全然」
「「おい」」
「・・・・・でもさ。響子さんがちょっと元気ねえかも」
「・・・・・そうか?」
「・・・・・確かに」
大亮は『気が付かなかった!』と言ってるが・・・・・
康太は結構人の機嫌を伺うのが巧い。
着眼点が鋭いってのか・・・・・メニューとかを悩んでる客もすぐわかる。
そういうときも、さりげなく寄っていって、一言言ったりするんだが。
「関係あるのか、ねえのか、わかんねえけど」
「・・・・・なんだろうな?」
「・・・・・それよか、お前等バイトじゃねえのか?」
「「あっ!!!」」
ヤバイ!!!と言いながら上へ駆け上がっていく2人。
程なく着替え終わり、『じゃあまた明日!』と去っていった。
そんな2人をぽけーっとして眺める万理。
・・・・・しょうがねえな、ちょっとつついてみるか。
◼︎ ◻︎ ◼︎
「万理」
「あ、金子さん」
「どうかしたのか?」
「え?」
きょとん、とする万理。
そうやっていると、本当に小動物みてえだな。
響子が前にリスみたい、って言ってたのはこういうのだな。
「康太がな、『悩みがあるみたい』って心配してたぞ」
「あ・・・・・」
さっ、と顔が曇った。
おっと、ど真ん中突いちまったか?
「悪い、下手な事聞いたな」
「あ、いえ・・・・・」
「何かあるんなら、遠慮なく言ってくれていいんだぜ?
まあ、プライベートで言えない事なら、響子にでも言えばいいだろうし・・・・・」
「響子さんには、言えないです・・・・・」
「? どうしてだ?」
「・・・・・」
ぷつん、と口を噤んでしまった。
俯き、一点を見つめたまま。
・・・・・聞き方が不味かったな。こりゃ。
どうするか、と思っていると総悟が来た。
「あーあ。ハルさんが万理ちゃん苛めてる」
「苛めてねえっての」
「そ、そうです!金子さんはいつも優しいですっ」
「なにそれ。じゃあ僕は意地悪って訳」
「え、あの、そんな」
「ふうん?『違います』って言わないんだ?
そういう悪い子にはこのケーキはあげないよ」
「ああああああっ!!!」
皿に乗ったロールケーキ。
総悟のお手製スイーツだ。
それを見るなり、万理の表情が百面相のようにコロコロ変わる。
『ど、どうしよう!でも!』って思ってんのが丸見え。
「さーて。響子さんにあげてこよっと」
「あうあうあうあうあう」
「僕が降りてくるまでに言う事考えておくんだね」
すたすた、と目の前を通りすぎて2階へ。
綺麗に盛り付けてあると思ったら、響子用の特製プレートだったらしい。
フルーツなんかが付いてて、ちゃんとデコレーションもしてあった。
「ど、どうしましょう・・・・・」
オロオロする万理。
食べたいけど、何を言ったら許してもらえるのかわからない。
困ったような視線を俺に向けるが、俺も総悟に何を言えばいいのかわからねえ。
なので困ったように笑い返すしかねえ。
そうしているうちに、総悟が降りてきた。
「さて。言う覚悟はできたの?万理ちゃん」
「え、あのっ」
「さっさと言いなよ。ここで言えないんならキッチンにおいで。ほら」
ぐい、と腕を引っ張って連れて行く。
あわわわわ、と引きずられていく万理を見つつ、俺も後を追った。
◼︎ ◻︎ ◼︎
「・・・・・おい、何連れてきてんだ」
キッチンに入れば、巽さんの声。
総悟はキッチンの中央へ万理を連れて行った。
オロオロする万理。
「何って。万理ちゃんが生意気にも隠し事をしているからお仕置きですよ」
「・・・・・はあ?隠し事?」
「何言ってるんですか、泉さん」
「ほら万理ちゃん。何隠してるのか言ってごらん。じゃないと今日のおやつはお預けだよ」
「ええええええええ」
「僕がさっきのハルさんとの会話、聞いてないとでも思ったわけ?」
・・・・・どうやら、さっき俺と万理の会話を聞いていたらしい。
悩み事がある万理を追い込んで、喋らせようというのだろう。
好物のスイーツをダシにして。
「・・・・・万理。早く言っちまえ」
「え、えっと」
「何も取って食おうとしてる訳じゃねえ。ずっとため息付いてたら気になっちまうだろ?」
「・・・・・」
それでも迷う万理。
業を煮やした巽さんが動き、万理の顎を持ち上げた。
「っ、キャ」
「旭」
「は、はいっ!」
「言え」
睨みつけるような、紫の瞳。
止めようとした山崎を、総悟の翡翠の瞳が射抜く。
『邪魔したら、わかってるよね?』とでも言うように。
「あ、あの・・・・・」
「さっさとしろ。俺達も暇じゃねぇんだ」
「は、はいぃ・・・・・」
そうして、万理はぽつりぽつりと話し出した。
昨日、響子と買い物に行った時の一部始終を。
「・・・・・・・・・・・それで、響子さん、その女の人をじっと見てて。
なんていうか、諦めっていうか、傷ついたっていうか・・・・・
ちょっと泣きそうな顔をしたんです。だから、気になって・・・・・」
「「「「・・・・・」」」」
「どうしたんですか?って聞いたんですけど。
私を見た途端、いつもの響子さんに戻っちゃって。何でもないよって。
でも、何でもないなんて事、ないです。あの女の人、きっと知り合いだったんじゃないかって」
巽さんが口を開いた。
「おい、旭」
「はい」
「その女、どんな女だった」
「え・・・・と・・・・・」
「思い出せる範囲でいい。髪形や、顔立ち。ぼんやりでもいいから思い出せ」
「・・・・・」
そうして、万理が何かを思い出すような顔になる。
総悟も、山崎も、勿論俺もそれを見守った。
・・・・・話を聞いていて、俺は1人の女が浮かぶんだが、どうだかな・・・・・?
「えっと、巻き髪、ていうんでしょうか。
茶色の髪で、こう・・・・・背中の真ん中あたりまでの髪でした」
「後は」
「コートは・・・・・白で。
えっと、ファッション誌とかに出てくるような、お姉さん系の格好で・・・・・」
「なにそれ、どこにでもいるじゃん」
「まあ、そうですね」
「・・・・・」
「・・・・・なあ、万理」
万理が俺の方を向く。
「その女。誰かと一緒だったんじゃねえのか。・・・・・男とか」
「あっ、そうです!彼氏だと思うんですけど・・・・・腕を組んでいましたから」
ビンゴ。
恐らく、その女は・・・・・
「巽さん」
「ああ。・・・・・あの女だな。それに一緒にいたのはあいつの彼氏か」
「だろうよ。ショックを受けるなんてそれくれえしかねえだろ」
「え?何それ?」
「どういうことですか?」
「あ、あの・・・・・私、いけない事を言ったんでしょうか?」
「いや。ありがとな、万理。教えてくれて感謝だ」
「ああ。よくやった。・・・・・後は俺達がなんとかする」
俺と巽さんの発言に、総悟も山崎も万理も?という顔だ。
まあ当たり前だな。
簡単に、それがどういう事か教えてやった。
「え」
「まさか」
「そんなのって!」
「ま、そういう事だ。・・・・・内緒にしておけよ?
響子だって嬉しい事じゃねえだろうしな」
黙り込む3人。
いや、総悟は怒りを湛えた瞳をする。
・・・・・コイツは、響子に少なからず惚れてるみてえだからな。
そんな『彼氏』が許せねえんだろう。
ま、それは俺も巽さんも同じなんだが。
◼︎ ◻︎ ◼︎
山崎がバイトの為、帰った。
万理も一緒に上に行かせる。なんでも、兄貴が駅まで迎えにくるそうだ。
「・・・・・で?どうする?巽さん」
「決まってんだろ。仕置きが必要だな」
「勿論僕も混ぜてもらえますよね?巽さん。そんな男、二度と響子さんに近寄れないくらい叩きのめしておかないと気が済まないんですけど、僕」
「・・・・・初めてお前と気が合ったな、総悟」
「いやだなあ、恋敵には違いありませんよ?」
「おい2人とも、そういうのは後にしてくれ。
・・・・・んで、どうするんだよ?響子の事だから、思いつめたらあっさり振って終わりだぜ?」
「んな勿体ねぇ事させる訳ねぇだろうが」
「そうですよハルさん。向こうの2人には地獄を見てもらわないと」
「・・・・・なんていうか、総悟が言うと犯罪に聞こえる気がすんだが」
「大丈夫ですよ、ギリギリを見極めるのは得意なんで」
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