【番外編】異世界に来たからといってヒロインとは限らない

あろまりん

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誰がために鈴は鳴る

中編

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そんなこんなで始まった、私の人生第二ステージがスタート。

王城勤めとなると、これまでとは扱いも変わる。
貴族令嬢ではあるが、使用人となるからだ。

とはいえ、そこらの貴族のお邸勤めとはまた違い、王族の住まうお城勤めとなる為、それなりの扱い。身元もしっかりしており、選別されて来る訳だから礼儀作法や常識も兼ね備えた才色兼備(は言い過ぎかもしれない)が集まる。
…それこそ、旧王族ともなるタロットワーク家の侍女ならぱ話は違うだろうな。

しかしあそこは現在の伏魔殿だ。
忍び込んで生きていられる者はいないらしい。
どんな仕掛けがあるのやら…興味はあるが、そんな事をしていたら命がいくつあっても足りないだろう。
こんな話も、王城勤めの同僚から聞いた話である。やはり女が集まれば噂話には事欠かない。



「ねぇ聞いてよ、この前大広間でね」
「最近、あの官僚が幅きかせてるみたいで」
「ああ、私今週あそこの当番なのよね、やんなっちゃう」

「お嬢様達も噂話大好きよね」

「ねぇ、マリーベルさんも知ってる?王国騎士団なんだけど」
「ドラン公爵の息子さんが入ったんですって」
「あら、兄君がいらっしゃらなかった?」



一声話を発すれば、どこからともなくわらわらと集まりどんどん話が膨れ上がっていく。
しかし、今回の噂話は私の推し、オリヴァー様の話となっては聞かずにはいられません。




「オリヴァー・ドラン様ですよね?」

「マリーベルさんもご存知よね。ええそう、まだ学園生のようだけど、騎士団にお入りになったようよ」
「まあ、有望株という事ね」
「学生のうちから騎士団に入る方はそうはいないものね」



皆様、私よりも遥かにお詳しい。
しかしこちらとしても助かるところもたくさん。

どうやらヒロイン枠の『アリシア・マール』はどのエンディングにも到達しなかったようで、現在『STELLA DEARM』はファンディスクへと突入している。

1stは学園編。ヒロインが学業を頑張りながら、学園で様々な恋愛候補と仲を深め、将来を誓い合うという内容。
もちろん、恋愛エンディングとは別に、『皆さんとお友達のまま』『進学して官僚コース』『村に帰って幼なじみと結婚』などがある。
何周もしてパラメータを上げると『星姫となり、神殿へ入る』コースもある。まあこれは相当魔力パラメータを上げないと出てこないコースだ。

今回…と言ってはなんだが、今いるの『アリシア・マール』はノーマルエンディングの『進学して官僚コース』を選んでいるように見える。
でもこれって、結局恋愛候補と仲を深められず、それなりのパラメータの高さがあれば選べるルートなのよね。

ここはゲームではなく、現実リアルだとわかってはいても、私としては『第二王子を射止めてプリンセスルート』も見てみたかった。
ていうか、学園内では結構噂もあったし、かなり頻繁に2人でいる姿も見かけていたけれど。

だが私の推しコースは、『オリヴァー・ドラン』との恋愛ルート!
『アリシア・マール』がそれを選ばなくてラッキーというものだ。
モブでしかない私だが、まだ望みはある。

なぜなら、ファンディスクの舞台は王城。
そしてヒロイン枠は『貴族令嬢』。3人の中からキャラクターを選び、進めるものだった。
キャラクターの1人は『伯爵家の三女』だった。ていうか私条件に入ってるじゃない!?これはもしやもあるかもしれない!

───そんな打算的な考えもありつつ、毎日の侍女勤めに奔走していたある日、私は気づいた。

攻略相手…ではなくとも、王城勤めしている男性陣が、チョロい。

例えば重いものを運んでいると、どこからともなく『大丈夫ですか?手伝いますよ』と男性が現れる。
休憩時間に王城の解放スペースを散策すれば、声を掛けられる。
そして、決定的なのが、メインキャラに遭遇する率がやたら多い!!!

廊下、階段、庭…。
1番遭遇率が高いのは、第二王子だ。
まあ確かにファンディスクでは、まず『第二王子』と親密にならねば他のキャラが出てこない。
『第二王子』とある程度仲良くなると、その場にその他の攻略キャラクターが『王子、そろそろお勉強の時間です』『剣の教練の時間です』などなど、攻略キャラクターが現れる。
そこから出会いが分岐するので、まずは『第二王子』との仲を深めなければならないのだ。



     □ ■ □



「・・・・・という訳なのです、お母様」

「まあまあ、やはりマリーベルは王城勤めをして正解ね」

「と、言いますと?」

「王城勤めに上がる貴族令嬢というと、それなりの教養と礼儀作法が身に付いているという証でもあるのですよ。身元も確かでなければ、王城に入る事は許されません。
となれば、王城勤めをしている方にとって、妻とするには最適な条件を備えているということ」

「・・・・・だからお母様は王城勤めを勧めたのですね」

「ええ。わたくしの友人にも幾人もご縁を頂いた方もいますもの。わたくしは親の勧められた方とご縁を結び、クランストン伯爵家へ嫁いで参りましたけれど、華やかな王城勤めも憧れたものですわ」



うふふ、と少女のように微笑むお母様。
意外に思えはするが、母親も伯爵家出のお嬢様。学園に通い、同じように友を得て、学園生活を送った事だろう。
親に決められた縁談も幸せだろうが、外の世界に出てみたいという気持ちももちろん少しはあったに違いない。

自室に帰り、よくよく考えてみれば、確かに王城はお見合い会場みたいなものだ。

私と同じように、侍女勤めをしている方々は『このままずっと王族にお仕えします』という方と『数年お勤めしたらご縁のある方と結婚して辞めます』という方に別れる。

王城勤めをしてはや半年。既に侍女仲間は数人ほど城を去っている。
どこからかご縁を結び、寿退職という形だ。

ここで私の身の振り方を考える。
口説いてくる男性を見繕い、寿退職をするか。
はたまたヲタクの道を突っ走り、私の推し『オリヴァー・ドラン』を落とすか。



「・・・・・そんなの、一択よね?」



     □ ■ □



まずは、『オリヴァー・ドラン』を出現させなければ話にならない。
私は全力で、攻略対象を出現させるフラグを立てることにした。
なりふり構ってはいられない。既にファンディスクとしても時間はたっている。出現時期はもう満たしているのだ、後は第二王子の親密度をクリアすれば!!!

もはや『マリーベル』というより『桃子』の執念が勝っているような気がしてならない。

推しへの愛を舐めてもらっては困る。
緻密な親密度計算を駆使し、途中同郷の女の子と偶然の出会いをするというイベントもあったが、私はやり遂げた。



「・・・また会ったな。手は治ったか?」

「はい、ドラン様が下さったお薬がとても良く効きました」



にっこり微笑み、そっと手を握る。
心無しかオリヴァー様の頬も染まる。よし!このくらいで引いておかなければ!

何度も選択肢を間違えながらオリヴァールートをクリアした私に不可能はない!!!

奥手なオリヴァー様を攻略するには、少々の強引な押しと、適度な恥じらいが必要である。
…ゲーム通りの攻略法がこんなにハマるとは思わなかった。というかこれを実践するには私にもかなりの心のダメージが来る。いやがんばれ私。

侍女としてのお勤めもこなしつつ、オリヴァー様への親密度を重ねていけば、互いに通わす気持ちもあるというものだ。

その間に、周りでは旧王族タロットワークに直系のお姫様がいて社交界デビューしたとか、第二王子の婚約者が第1王子の婚約者になるなど、色々と目まぐるしく変わっていった。

…意外だったのは、悪役令嬢の『エリザベス・ローザリア』が全く機能しなかった事よね。
そこはゲームとは違うところかな、と思っている。

なんたって、私がオリヴァー様の婚約者となれたのだから。

王城勤めとなって2年。
私にも、とても素敵な春がやってきました。












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