143 / 197
森の人編 ~魔渦乱舞~
142
獅子王とステュー。2人と話していると、不意に2人揃って怪獣バトルの方を向いた。
私も促されるように視線を向ける。すると、決着が着いたようで、ヤッ〇…ゲフンゲフン、雄々しい角鹿がぐったりした金色の竜種らしきものを銜えていた。
スタスタと私達の方へ近づく。
『苦労をかけた、愛し子、それに人族の戦士達よ』
「・・・それ、大丈夫なの?」
『もう悪さは出来まい。世界樹の魔力を吸い込み、己の欲望に突き動かされ道理を外れた者だ、永劫の闇へと送る』
なんか怖い事を言っています。永劫の闇ってなんですか?それってあの世へ送るって事ですよね?そう思いたい。なんかそれ以上救われない所へ送られる気がする。
ぐっ、と噛み砕くと、光の粒子となって散った。
あれだけ異彩を放っていた渦の統率者は、世界樹の守護者によって討伐された。
…ん?これ、依頼は達成した事になるの?
『森の子供達よ、お前達にも面倒をかけたようだ』
「とんでもございません、森の主よ」
振り返ると、私と獅子王、ステュー以外のエルフ達は皆、頭を垂れていた。族長のディードさんのみが膝を着いた格好。オリアナ?いつの間にかいませんでした。一足先に戻ったのかな?
と、耳元に獅子王の声が。
「先に、二陣と三陣に声をかけるってよ。郷に戻って休める支度をしておくそうだ」
「そ、そう」
耳元に囁かれるのは慣れない。シオンもそうだけど獅子王の声もイケボなので、こんな時ではあるがドキッとする。
『我はこのまま世界樹の元へ戻る。暫しの間であったが、其方の傍は楽しかった。またおいで、愛し子よ』
「あっ、はい。ありがとうございました」
『礼を言うのはこちらだ。ディードリット、後は任せる』
「我等は常に森と共に」
『森と共に』ってきっと決まった挨拶なのよね。
そういえば最初、リーファラウラさんもディードさんへそう言っていたっけ。
ようやく収束した、渦。
私達も動けるようになった人から、ゆっくりと郷へ向かって帰るのだった。
********************
郷へ戻ると、待っていたエルフさん達が歓喜の声を上げて迎えてくれた。私はこっそり皆さんの間を塗って、族長宅へ戻る。
こんな時にイヴァルさんは全力で隠密スキルを使ってくれました。
オリアナが先に戻ってくれていただけあって、食事の用意からお風呂まで至れり尽くせりでした。
私もすとんと眠りにつき、清々しく次の日の朝を迎えた。
「昨日はお疲れ様でした、レディ」
「おはようございます、イヴァルさん、ディードさん」
平穏な族長宅での朝ごはん。
焼きたてパンに、野菜スープ。燻製肉…鶏肉でした。
「ははは、私達は蛇肉の燻製肉でしたが、レディはもう嫌だろうと思いましたから。これは鶏ですよ」
「すみません・・・」
「いえいえ、なんでもぐるぐる巻きにされたとか。それはちょっと所ではなく嫌でしょうからね」
「そうですね・・・一生分見たと思います」
「うーん、そうするとあまり外に出るのは避けた方がいいでしょうね」
「皆、終わった事に嬉しくなって、革の処理に精を出していますけら」
「うぐっ・・・」
どうやら、この郷に集まってきたパイソンスネーク。全て討ち取ったのはいいが、さすがに処理しきれなかった様子。
しかし、渦が終わった事で、戻ってきた狩人さん達がパリピ状態になったとか。
皆さんで解体作業中だそうです。あれだけ見たのに捌けるとかどんなメンタルしてるの?凄くない?
ちなみに生きてる杖は広場でまたもや観葉植物状態です。毎朝皆さん拝むそうです。プチ世界樹ですね。あれこのままにして帰ろっかな。
教えた燻製肉の作り方は、皆にも広まり、燻す木を変えて色んな種類を試すのだという。凝り性のエルフの事だ、美味しいものがたくさんできるに違いない。
蛇革のお財布については、何故かがま口財布を作り続けている。がま口財布、気に入ったのかしら。
郷にいるのも目のやり場に困るし、暇なので、ディードさんがいい所に連れていってくれると言い出した。
なので、着いていく事にしました。エルフの皆さんには今日中になんとか捌いてもらって、明日は外に干さないようにしてくれるそうです。…ごめんなさい皆さん。
「皆、手が早いですから、捌くのは終わります。革や肉だけになってしまえば、レディもそこまで嫌ではないと思いますし」
「頭付きだとさすがに・・・辛くて・・・」
捌かれてしまえばね、まあなんとか。
頭付きでゴロンと転がってるのがね。子供達とか叩いて遊んでますけどね。ほんとに大丈夫なのね、恐れ入るわ。
「ところで、何処に向かってるんです?」
「ええ、世界樹の庭に」
「・・・ハイ?」
「あれからですね、世界樹の守護者様より念話がありまして。レディを連れてきて欲しいと」
ここです、と大きな木の幹に、虚がある。
…ここ入ったらあのフクロウみたいな不思議な生き物の森に行ったりしませんか?お土産はドングリですか?
「えっと、その」
「すみません、私は許可されてないのでここまでです。帰りは森の主が示してくださいます。獅子王殿やオリアナ殿にはお伝えしておきますので」
申し訳なさそうに謝られる。
これは拒否できないやつ。仕方ないか。
私はそーっと虚の中へ。
屈んで通れるトンネルになっていて、向こう側から光が。
ずりずり這いずるように進み、トンネルの向こうへ抜ける。…トンネルの向こうは雪国ではありませんように。
********************
トンネルを抜けた先は、お花が咲き乱れる草原でした。
見上げた先には、透き通るほどの空の蒼。
丘の先に、見事な大樹。てっぺんが霞みがかり、虹が出ている。…あれこそ虹の橋、なんじゃない?
その大樹を見つめながら、ゆっくり草原を歩く。
花が咲き乱れ、こここそが桃源郷のようだ。小動物が走り回る場を見ると、彼等には幸福の地なのかもしれない。
『ようこそ、愛し子』
「お招き、ありがとうございます」
『其方には見せておきたかった。
─────この樹が世界樹。私の分身だ』
「これが・・・」
悠久の大樹、そう呼ぶのが相応しい。
枝にはあの花が咲き、時折吹く優しい風には、ステューが見る風景のように金の粒子が見える。…魔力が可視化する程に強いということかしら。『塔』の研究者達が狂喜乱舞しそうだわ。
世界樹の守護者は、あの時見た大きな角鹿の姿のまま。そっと毛並みを撫でるとフサフサして気持ちいい。
『あの時、世界樹の葉と花を与えてもらって助かった。葉だけでもよかったが、まさか花までとは。言葉が聞こえていたようには見えなかったが』
「ああ、あれは少し前に花を取ってしまって。使い道がなかったので食べるかな、と」
『あれで完全に戻る事ができた。感謝しても足りぬな。離れた地で世界樹が花を咲かせるとは思わなかった。さすがは愛し子よな』
「偶然、かと思っていましたが」
『この世に偶然などない。あるのは必然だけだ。
─────人の世では理解するのは難しかろうが』
「必然、ですか」
では、私がまたこちらへ来たことにも何かの『意味』があっての事なのだろうか。なんの力もない私に?確かにここへ来て『タロットワークの始祖の王配』と血が繋がっていると知ったけれど、あちらではごく普通の一般人でしかなかった私。
地球で生きる人は、皆こちらへ来たら大きな力を持つのだろうか?
あなたにおすすめの小説
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
「お前がいると息が詰まる」と追放された令嬢——翌週から公爵家の予定が全て狂った
歩人
ファンタジー
クラリッサは公爵家の日程管理を一手に担う令嬢。前世の社畜経験を活かし、行事計画、来客対応、予算管理まで完璧にこなしていた。
だが婚約者ヴィクトルは言った。「お前がいると息が詰まる。もっと華やかな女がいい」
追放されたクラリッサが去った翌週、公爵家の予定が全て狂い始める。
舞踏会の招待状は届かず、外交晩餐会の料理は手配されず、決算書類は行方不明。
一方クラリッサは、若き領主の元で「定時退社」という夢を叶えていた。
「もう、残業はしません」
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。