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第二章 危険な依頼と怪しい依頼人
危険すぎる奪還ミッション〜トゥルース〜
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「で、どういうことか説明してくれるんだよな?」
あれからおれは当然のように龍ケ崎の会社に連れて来られた。
もちろん影山さんも一緒に、だ。
車の中では殺伐としていたので何も聞くことは出来なかったが、今はだいぶ落ち着いたようなのでずっと言いたかったことを口にする。
これでまた何の説明もなしならさすがのおれも大激怒だ。
「組織として使える奴なのかどうかお前を試していた」
「は?」
「お前を組織に無理矢理入れた所で能無しじゃ意味が無いからな」
龍ケ崎は事も無げに言った。
自分から無理矢理連れてきたくせに能無しならお祓い箱ってか?
おれはふつふつと沸いてくる怒りを抑えて続きを待つ。
「そんなときだ。千崎渉が龍ケ崎家先祖代々受け継ぐ銃を盗んだのは。お前を試すのにも丁度いいと思いつきでお前に依頼したが、本当に丁度良かったな」
「何が丁度良かっただよ。下手すりゃおれ死んでたわ!」
「でも生きてるだろう?」と龍ケ崎は眉一つ動かさずに言った。
こいつ……!
おれはぎゅっと拳を握り締める。
耐えろ、おれ。
こいつはそういう奴だ。
それにさっきの一件でわかったが、おそらくおれが本気で龍ケ崎に害をなそうとすれば周囲の奴らに撃ち殺されて終わりだ。
「お前の力量を見れたうえに、銃も奪い返したんだ。結果としては合格だ。まぁお前は最後まで千影の変装に気付かなかったみたいだがな」
龍ケ崎の視線の先にいる影山さんに目線を向けると、影山さんらしからぬ表情でにっこりと微笑んだ。
やっぱりこの笑顔千影さんと一緒だ。
影山さんをじっと見ていると、影山さんは突然ふはっと吹き出した。
「やっと気付いたんだ?」
影山さんはほら、と言わんばかりに銀髪のウィッグを外して見せた。
さらりとした黒髪が現れる。
つまりこのチャラくて態度悪い影山さんは千影さんの変装、というわけで……。
「いや、分かんないって……!だって口調と声も違ったし」
「ふふ、今の機械ってほんと便利だよね~」
影山さん、もとい千影さんがワイシャツの襟をくいっと下げると黒いチョーカーが見えた。
千影さんはそのチョーカーに触れながら口を開く。
「ここのボタンを押すだけで声変わるんだよね~、ほら」
「……な」
ボタンをひとたび押せば千影さんの声に、再び押せば影山さんの声に声色が変わる。
なんでもアリすぎる。
「それじゃ、影山さんと会った後によく千影さんが拉致……迎えに来てたのは」
「僕が歩夢くんの一番近くにいたからね~。変装解いて何食わぬ顔で歩夢くんに会いに行くの楽しかったなぁ」
最後の一言におれはがっくりと肩を落とす。
……あぁそうかい、おれはまんまと騙されてたってわけね。
けれど違和感は感じていたはずだ。
カラコンはまだしも動作がどこか上品だったり身に付けている物が上質だったり、引っかかる言い方だったり他にも色々……。
「洞察力はまだまだだな」
龍ケ崎の小馬鹿にしたような言い方に腹が立つ。
その通りなんだけど!
しかも何でも屋みたいなことをしているおれ的にはなおさら悔しい。
「でも本当に驚いたよ。歩夢くんに千崎家の求人情報教えようとしたら家にお呼ばれしてるんだもん。ねぇどうやったの?あいつめちゃくちゃ警戒心強いんだよ?」
そうだったっけ?
「調査方法については詮索しない約束でしょう?」
「でももう影山じゃないからさ~。これだけ教えてよ~」
「私も気になりますね。それともう一つ、ビー玉さばきについてもお教え頂きたいですね」
「あはは……」
眼鏡をクイッと上げて日下部さんも会話に入ってくる。
日下部さんまで……?
どうやら小型カメラで様子を見ていたらしい。
ねぇ~?と千影さんは尚も食い下がってくる。
まぁお呼ばれしたことくらいなら言ってもいいか。
「……大したこと何もしてないですよ?」
「うんうん」
「千崎は男色家だと聞いたので」
「うんうん」
「わざとぶつかって、その……ハニートラップ的なことをしようとして」
「な、なるほど」
「まぁ失敗したんですけど、逆に気に入られたっぽくて抱き締められて……それで」
「あ、歩夢くん」
説明していると焦った表情をした千影さんがおれの服の裾を引っ張ってくる。
一体何かと思えば、何やら横から痛いほどの視線が突き刺さっている気が……。
「……あいつ、やはり撃っておくべきだったな」
地を這うような低い声を出したのは龍ケ崎だった。
なんか怒ってる?
隣に座っていた龍ケ崎は不機嫌をあらわにしたままおれを引き寄せた。
「おい、なんでくっついてくんだよ」
抗議の声を上げると龍ケ崎はムスッとした顔をしてこちらを見つめてくる。
なんなんだよ。
「さて、僕はそろそろお暇しようかな~」
「私も書類のチェックが……」
「……」
何かを察したらしいみんなはあさっての方向を見ながら立ち上がる。
「え、この状態で置いてくの!?」
話が終わったんなら帰りたいんだけど!
しかも龍ケ崎の雰囲気的に逃げないとまたセクハラされる!
助けを求めるおれをよそにみんなぞろぞろと部屋を出ていく。
待っ……。
おれが伸ばす手も虚しく龍ケ崎に掴まれる。
「どうやらお前は自分がどんな立場か解っていないみたいだからな。俺が直々に教えてやる」
「はぁ?」
本っ当に意味がわからない。
だってここでおれの服に手を突っ込む必要ないんだから。
「安心しろ。お前が明日の午前中半休取ってることは知ってる」
「だからなんで知ってんだよ!じゃなくて……あっ」
服の中を這う龍ケ崎の手が乳首を掠めた。
龍ケ崎はしたり顔をする。
「おい、離せ変態痴漢傲慢男!」
おれは一瞬自由になった右腕でその頭上に天誅をお見舞いしてやったのだった。
あれからおれは当然のように龍ケ崎の会社に連れて来られた。
もちろん影山さんも一緒に、だ。
車の中では殺伐としていたので何も聞くことは出来なかったが、今はだいぶ落ち着いたようなのでずっと言いたかったことを口にする。
これでまた何の説明もなしならさすがのおれも大激怒だ。
「組織として使える奴なのかどうかお前を試していた」
「は?」
「お前を組織に無理矢理入れた所で能無しじゃ意味が無いからな」
龍ケ崎は事も無げに言った。
自分から無理矢理連れてきたくせに能無しならお祓い箱ってか?
おれはふつふつと沸いてくる怒りを抑えて続きを待つ。
「そんなときだ。千崎渉が龍ケ崎家先祖代々受け継ぐ銃を盗んだのは。お前を試すのにも丁度いいと思いつきでお前に依頼したが、本当に丁度良かったな」
「何が丁度良かっただよ。下手すりゃおれ死んでたわ!」
「でも生きてるだろう?」と龍ケ崎は眉一つ動かさずに言った。
こいつ……!
おれはぎゅっと拳を握り締める。
耐えろ、おれ。
こいつはそういう奴だ。
それにさっきの一件でわかったが、おそらくおれが本気で龍ケ崎に害をなそうとすれば周囲の奴らに撃ち殺されて終わりだ。
「お前の力量を見れたうえに、銃も奪い返したんだ。結果としては合格だ。まぁお前は最後まで千影の変装に気付かなかったみたいだがな」
龍ケ崎の視線の先にいる影山さんに目線を向けると、影山さんらしからぬ表情でにっこりと微笑んだ。
やっぱりこの笑顔千影さんと一緒だ。
影山さんをじっと見ていると、影山さんは突然ふはっと吹き出した。
「やっと気付いたんだ?」
影山さんはほら、と言わんばかりに銀髪のウィッグを外して見せた。
さらりとした黒髪が現れる。
つまりこのチャラくて態度悪い影山さんは千影さんの変装、というわけで……。
「いや、分かんないって……!だって口調と声も違ったし」
「ふふ、今の機械ってほんと便利だよね~」
影山さん、もとい千影さんがワイシャツの襟をくいっと下げると黒いチョーカーが見えた。
千影さんはそのチョーカーに触れながら口を開く。
「ここのボタンを押すだけで声変わるんだよね~、ほら」
「……な」
ボタンをひとたび押せば千影さんの声に、再び押せば影山さんの声に声色が変わる。
なんでもアリすぎる。
「それじゃ、影山さんと会った後によく千影さんが拉致……迎えに来てたのは」
「僕が歩夢くんの一番近くにいたからね~。変装解いて何食わぬ顔で歩夢くんに会いに行くの楽しかったなぁ」
最後の一言におれはがっくりと肩を落とす。
……あぁそうかい、おれはまんまと騙されてたってわけね。
けれど違和感は感じていたはずだ。
カラコンはまだしも動作がどこか上品だったり身に付けている物が上質だったり、引っかかる言い方だったり他にも色々……。
「洞察力はまだまだだな」
龍ケ崎の小馬鹿にしたような言い方に腹が立つ。
その通りなんだけど!
しかも何でも屋みたいなことをしているおれ的にはなおさら悔しい。
「でも本当に驚いたよ。歩夢くんに千崎家の求人情報教えようとしたら家にお呼ばれしてるんだもん。ねぇどうやったの?あいつめちゃくちゃ警戒心強いんだよ?」
そうだったっけ?
「調査方法については詮索しない約束でしょう?」
「でももう影山じゃないからさ~。これだけ教えてよ~」
「私も気になりますね。それともう一つ、ビー玉さばきについてもお教え頂きたいですね」
「あはは……」
眼鏡をクイッと上げて日下部さんも会話に入ってくる。
日下部さんまで……?
どうやら小型カメラで様子を見ていたらしい。
ねぇ~?と千影さんは尚も食い下がってくる。
まぁお呼ばれしたことくらいなら言ってもいいか。
「……大したこと何もしてないですよ?」
「うんうん」
「千崎は男色家だと聞いたので」
「うんうん」
「わざとぶつかって、その……ハニートラップ的なことをしようとして」
「な、なるほど」
「まぁ失敗したんですけど、逆に気に入られたっぽくて抱き締められて……それで」
「あ、歩夢くん」
説明していると焦った表情をした千影さんがおれの服の裾を引っ張ってくる。
一体何かと思えば、何やら横から痛いほどの視線が突き刺さっている気が……。
「……あいつ、やはり撃っておくべきだったな」
地を這うような低い声を出したのは龍ケ崎だった。
なんか怒ってる?
隣に座っていた龍ケ崎は不機嫌をあらわにしたままおれを引き寄せた。
「おい、なんでくっついてくんだよ」
抗議の声を上げると龍ケ崎はムスッとした顔をしてこちらを見つめてくる。
なんなんだよ。
「さて、僕はそろそろお暇しようかな~」
「私も書類のチェックが……」
「……」
何かを察したらしいみんなはあさっての方向を見ながら立ち上がる。
「え、この状態で置いてくの!?」
話が終わったんなら帰りたいんだけど!
しかも龍ケ崎の雰囲気的に逃げないとまたセクハラされる!
助けを求めるおれをよそにみんなぞろぞろと部屋を出ていく。
待っ……。
おれが伸ばす手も虚しく龍ケ崎に掴まれる。
「どうやらお前は自分がどんな立場か解っていないみたいだからな。俺が直々に教えてやる」
「はぁ?」
本っ当に意味がわからない。
だってここでおれの服に手を突っ込む必要ないんだから。
「安心しろ。お前が明日の午前中半休取ってることは知ってる」
「だからなんで知ってんだよ!じゃなくて……あっ」
服の中を這う龍ケ崎の手が乳首を掠めた。
龍ケ崎はしたり顔をする。
「おい、離せ変態痴漢傲慢男!」
おれは一瞬自由になった右腕でその頭上に天誅をお見舞いしてやったのだった。
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