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植物学者見習いの僕と嫌われ者だった獣人さんは好き合っているらしいです
異国の眼差し
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「ここが大陸ですか……すごい……」
船から降りたホタルは胸を高鳴らせながら港を見渡した。インゼルとは比べものにならないほど多種多様な人々。見たことのない獣人や、珍しい装いの人間が行き交っている。
「いろんな人がいるんですね」
「特にここは港町だからな。色んな奴が流れてくる」
「へぇ……」
ホタルの視線が、歩きながらあっちこっちへと飛び回るを、セゾは苦笑いで見守っていた。
「わー……綺麗」
「すご、上手いですね」
「可愛い!」
飴細工の屋台や、道で楽器を演奏しているグループ、手縫いのぬいぐるみが並べられている露店。ホタルは興奮しているのか、目に入ったもの全てに感想を漏らしている。
「あんまよそ見してると転ぶぞ」
「あ、すみません……」
言われたそばから、ホタルの視線は前を横切った大きい虎の獣人へと吸い寄せられた。
肩幅や胸板の厚い逞しい肉体、輝く黄金の毛並み。それを引き締める黒の縞模様。
「おぉ……」
ホタルが思わず感嘆の声を漏らす。
「僕、虎の獣人さんってはじめて見ました。あんなにカッコいいんですね」
その瞬間、隣から低い声が落ちてくる。
「アンタ……よく俺の隣でそんなこと言えたな」
「え? そんなことってなに……」
そこまで言いかけて、ホタルは口をつぐんだ。目つきが鋭く、セゾの顔は明らかに怒気を含んでいた。
(あ……僕、なにか変なこと言ったんだ……)
ホタルはおそるおそる左手を伸ばしてセゾの服の裾をきゅっと握った。
「あ?」
「ごめんなさい……僕、はしゃいじゃって。何も考えずに色々言ってたから……セゾさんのこと、傷つけるようなこと言っちゃいましたか……?」
さきほどまでの興奮は消え、ホタルは不安げにセゾを見あげた。
「……チッ」
セゾは頭をガシガシと掻きむしり、深いため息をついた。
「アンタが、別のオスのことカッコいいとか言うから……嫉妬しただけだ」
「嫉妬……あっ、その。でも、今のカッコいいはセゾさんに思ってるカッコいいとは違って、ただすごいなって感じで……」
「……俺に思ってるカッコいいはどんな感じなんだよ」
「セゾさんに思ってるのは……」
ホタルは言いかけて、言葉を探した。さっきの獣人を見たときのカッコ良いは、巨大な船を見たときのような、大きくて迫力があって純粋な感動だった。
(あれ……でも前にセゾさんに思ってたカッコいいも、なんとなくそんな感じに近かったような……)
けれど、今のセゾを見ると、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。青みがかった灰色の綺麗な毛。鋭い牙。口は悪いけれど、優しくて隣にいると安心する。見ていると触りたくなるし、触ってほしいと思う。
(なんか……前に思ってた好き、とか、カッコいいと今の気持ち、全然違う……)
「おい?」
黙りこんでしまったホタルにセゾが声をかけるとホタルは肩をビクリと震わせた。
「あっ……えっと……セゾさんに思ってるカッコいいっていうのは……なんていうか……もっと、その色々……」
そう言いながらホタルの顔はだんだんと赤く染まっていく。
(そうだ、前はセゾさんと近くてもなんともなかったのに、今はすごく緊張して変だって思ってた……僕、セゾさんのこと前よりもずっと……)
「色々ってなんだよ」
「あの……セゾさんのカッコいいていうのは……もっと、ドキドキするような……僕が、変なかんじになるカッコ良さっていうか……」
「変な感じって……どんなんだよ」
セゾの顔がぐい、と近づく。
ホタルは反射的に下がろうとしたが、腰を強く引き寄せられて逃げ場がなくなる。
「ち、近いです……」
「変な感じするか?」
「……はい」
首元にセゾの息がかかり、ホタルは思わず震えた。
低く、甘い声が耳元に落ちる。
「ホタル……」
名前を呼ばれ、心臓が跳ねる。
「なにあれ?」
その瞬間、周囲からざわめきがあがりはじめた。
セゾはハッとして、ホタルの腰から手を離し、周りを見渡す。
ついさっきまで明るく賑わっていた通りが、急速に冷え込んでいく。
「無理矢理?」
「でも、そういう雰囲気じゃない?」
「抱き寄せてたし……ずっと二人でいたよな」
遠巻きにこちらを見ていた男と視線が合うと、ギロリと睨まれ、ホタルは慌てて視線を逸らす。
「……行くぞ」
「は、はい」
低く押し殺した声をだし、セゾはゆっくり歩き出す。
歩き出しても周囲の視線が自分たちに突き刺さっているのがわかった。
さきほどまで明るく呼び込みをしていた露店の店主たちはホタルたちが近づくと急に黙り込む。アクセサリーを売る店では、品物に布を被せ露骨に背を向けられる。
「男同士でベタベタして気持ち悪い……」
「頭がおかしいんじゃない」
わざと聞こえるように侮蔑の声が投げかけられる。
(インゼルでも、男同士って聞くと驚く人はいたけど、こんな空気じゃなかった……ここでは僕とセゾさんの関係って本当に異常なんだ……)
船から降りたホタルは胸を高鳴らせながら港を見渡した。インゼルとは比べものにならないほど多種多様な人々。見たことのない獣人や、珍しい装いの人間が行き交っている。
「いろんな人がいるんですね」
「特にここは港町だからな。色んな奴が流れてくる」
「へぇ……」
ホタルの視線が、歩きながらあっちこっちへと飛び回るを、セゾは苦笑いで見守っていた。
「わー……綺麗」
「すご、上手いですね」
「可愛い!」
飴細工の屋台や、道で楽器を演奏しているグループ、手縫いのぬいぐるみが並べられている露店。ホタルは興奮しているのか、目に入ったもの全てに感想を漏らしている。
「あんまよそ見してると転ぶぞ」
「あ、すみません……」
言われたそばから、ホタルの視線は前を横切った大きい虎の獣人へと吸い寄せられた。
肩幅や胸板の厚い逞しい肉体、輝く黄金の毛並み。それを引き締める黒の縞模様。
「おぉ……」
ホタルが思わず感嘆の声を漏らす。
「僕、虎の獣人さんってはじめて見ました。あんなにカッコいいんですね」
その瞬間、隣から低い声が落ちてくる。
「アンタ……よく俺の隣でそんなこと言えたな」
「え? そんなことってなに……」
そこまで言いかけて、ホタルは口をつぐんだ。目つきが鋭く、セゾの顔は明らかに怒気を含んでいた。
(あ……僕、なにか変なこと言ったんだ……)
ホタルはおそるおそる左手を伸ばしてセゾの服の裾をきゅっと握った。
「あ?」
「ごめんなさい……僕、はしゃいじゃって。何も考えずに色々言ってたから……セゾさんのこと、傷つけるようなこと言っちゃいましたか……?」
さきほどまでの興奮は消え、ホタルは不安げにセゾを見あげた。
「……チッ」
セゾは頭をガシガシと掻きむしり、深いため息をついた。
「アンタが、別のオスのことカッコいいとか言うから……嫉妬しただけだ」
「嫉妬……あっ、その。でも、今のカッコいいはセゾさんに思ってるカッコいいとは違って、ただすごいなって感じで……」
「……俺に思ってるカッコいいはどんな感じなんだよ」
「セゾさんに思ってるのは……」
ホタルは言いかけて、言葉を探した。さっきの獣人を見たときのカッコ良いは、巨大な船を見たときのような、大きくて迫力があって純粋な感動だった。
(あれ……でも前にセゾさんに思ってたカッコいいも、なんとなくそんな感じに近かったような……)
けれど、今のセゾを見ると、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。青みがかった灰色の綺麗な毛。鋭い牙。口は悪いけれど、優しくて隣にいると安心する。見ていると触りたくなるし、触ってほしいと思う。
(なんか……前に思ってた好き、とか、カッコいいと今の気持ち、全然違う……)
「おい?」
黙りこんでしまったホタルにセゾが声をかけるとホタルは肩をビクリと震わせた。
「あっ……えっと……セゾさんに思ってるカッコいいっていうのは……なんていうか……もっと、その色々……」
そう言いながらホタルの顔はだんだんと赤く染まっていく。
(そうだ、前はセゾさんと近くてもなんともなかったのに、今はすごく緊張して変だって思ってた……僕、セゾさんのこと前よりもずっと……)
「色々ってなんだよ」
「あの……セゾさんのカッコいいていうのは……もっと、ドキドキするような……僕が、変なかんじになるカッコ良さっていうか……」
「変な感じって……どんなんだよ」
セゾの顔がぐい、と近づく。
ホタルは反射的に下がろうとしたが、腰を強く引き寄せられて逃げ場がなくなる。
「ち、近いです……」
「変な感じするか?」
「……はい」
首元にセゾの息がかかり、ホタルは思わず震えた。
低く、甘い声が耳元に落ちる。
「ホタル……」
名前を呼ばれ、心臓が跳ねる。
「なにあれ?」
その瞬間、周囲からざわめきがあがりはじめた。
セゾはハッとして、ホタルの腰から手を離し、周りを見渡す。
ついさっきまで明るく賑わっていた通りが、急速に冷え込んでいく。
「無理矢理?」
「でも、そういう雰囲気じゃない?」
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「……行くぞ」
「は、はい」
低く押し殺した声をだし、セゾはゆっくり歩き出す。
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