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植物学者の僕は嫌われ者の獣人さんのことを好きになってしまいました。
セゾさんの昔話
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夜が明けてすぐに家族揃って港へ歩向かってきはじめた。父の友人だというワニの獣人が船長を務めている船に乗るらしい。
「彼も人間の女性と結婚したから、同じような境遇の家族を多く乗せてるらしいよ。人間も多いし君も安心だろう」
「あら……じゃあセゾにもお友達ができるかもしれないわね」
そう言って頭を撫でてきた母の手が気持ち良くて目を細めた。
港へ着くと大きい船が泊まっていて、近くには獣人や人間が何人も集まっていた。
「じゃあ僕は着いたことを報告しに行くから、少し待っててくれ」
父がそう言って船へ向かってから、ふわりと昨日の女性の花のような香りが鼻を抜けた。振り向くと、歩いて来た道に長い茶髪が揺れている。
「あ……」
「セゾ!」
母の手を振り払ってその女性を追いかけた。最後に挨拶くらいしてもいいだろうと思ったからだ。
「……いない」
女性の向かった方向へ走って行ったものの見つからず、匂いも途中で途切れていた。そのとき、トン、と後ろから肩を叩かれて期待を込めて振り向くと良い身なりをした人間の男が立っていた。
「ハァ……子どもか……」
男はため息をついて腰のベルトから長い剣を抜くと、自分へと向けてきた。
「え?」
「恨みはないがすまないな」
わけもわからず固まっている自分に剣が振り下ろされ、思わず目を瞑ると生暖かいものが顔にビシャビシャと降り注ぎ、どん、と何かが肩へ乗った。
「大丈夫?」
「……母さん?」
「……良かった、ずっと一緒だからね……」
◆
「その後駆けつけた親父は暴れまくってお袋を切りつけた男を殺して、後から同じような服の奴らがうようよ出てきてあいつらが騎士だって知ったよ」
セゾがそう語っているとホタルの心臓の鼓動がバクバクと不規則に動く音が耳に届く。
「なんだ?」
「いえ……あの……騎士ってことは王の命令で?」
「あぁ……親父が暴れてたときに王がやれって言ったんだとか叫んでた奴がいたな。結局殺されてたが」
「そうですか…………」
「俺が呆気に取られてる間にアイツらが全員殺されると親父はこっちにやって来てお袋をボリボリ食いはじめたよ」
「え……」
「そんでガキの俺は……怖くなって港まで走って逃げた。親父の友人だっつー船長に船に乗せて貰ってその後の生活も面倒見て貰ってだいぶ世話になったな」
「…………」
「そんで何年か前にこっちで暴れまくってる狼の獣人がいるって噂が流れてきてな。親父だったら俺がどうにかしてやろうと思ってまた戻ってきたんだ」
「でも、そのまま外国で暮らしてたら安全だったんじゃないんですか? この国はまだわりと獣人差別がありますし……」
「まぁ、ここにいるよりは楽な暮らしだがよ。親父だってお袋と結婚するくらいには人間好きだったしな。お袋も親父が人間襲いまくって殺してるなんて知ったらあの世で悲しむだろ」
セゾの言い分を聞いて、ホタルはやっぱりセゾは優しいと思ったがいつもなら勝手にべらべらと出てくる言葉が出ず、口からは代わりに謝罪の言葉が出た。
「ごめんなさい……」
「あん?」
「セゾさんの気持ちも知らないでお父さんと話そうとして……」
セゾの話から、もう父親に人間を傷つけたり殺めたりしてほしくないのだということはホタルにもわかり、唇を震わせながら言葉を紡いだ。
「あぁ……別に。アンタがめちゃくちゃなのは最初からだろ。でも今夜は絶対こっから動くな」
「はい……ごめんなさい……」
やけに殊勝な態度だと不思議に思ったセゾがホタルを見るとホタルの顔は真っ青だった。
「ごめんなさい…………」
「彼も人間の女性と結婚したから、同じような境遇の家族を多く乗せてるらしいよ。人間も多いし君も安心だろう」
「あら……じゃあセゾにもお友達ができるかもしれないわね」
そう言って頭を撫でてきた母の手が気持ち良くて目を細めた。
港へ着くと大きい船が泊まっていて、近くには獣人や人間が何人も集まっていた。
「じゃあ僕は着いたことを報告しに行くから、少し待っててくれ」
父がそう言って船へ向かってから、ふわりと昨日の女性の花のような香りが鼻を抜けた。振り向くと、歩いて来た道に長い茶髪が揺れている。
「あ……」
「セゾ!」
母の手を振り払ってその女性を追いかけた。最後に挨拶くらいしてもいいだろうと思ったからだ。
「……いない」
女性の向かった方向へ走って行ったものの見つからず、匂いも途中で途切れていた。そのとき、トン、と後ろから肩を叩かれて期待を込めて振り向くと良い身なりをした人間の男が立っていた。
「ハァ……子どもか……」
男はため息をついて腰のベルトから長い剣を抜くと、自分へと向けてきた。
「え?」
「恨みはないがすまないな」
わけもわからず固まっている自分に剣が振り下ろされ、思わず目を瞑ると生暖かいものが顔にビシャビシャと降り注ぎ、どん、と何かが肩へ乗った。
「大丈夫?」
「……母さん?」
「……良かった、ずっと一緒だからね……」
◆
「その後駆けつけた親父は暴れまくってお袋を切りつけた男を殺して、後から同じような服の奴らがうようよ出てきてあいつらが騎士だって知ったよ」
セゾがそう語っているとホタルの心臓の鼓動がバクバクと不規則に動く音が耳に届く。
「なんだ?」
「いえ……あの……騎士ってことは王の命令で?」
「あぁ……親父が暴れてたときに王がやれって言ったんだとか叫んでた奴がいたな。結局殺されてたが」
「そうですか…………」
「俺が呆気に取られてる間にアイツらが全員殺されると親父はこっちにやって来てお袋をボリボリ食いはじめたよ」
「え……」
「そんでガキの俺は……怖くなって港まで走って逃げた。親父の友人だっつー船長に船に乗せて貰ってその後の生活も面倒見て貰ってだいぶ世話になったな」
「…………」
「そんで何年か前にこっちで暴れまくってる狼の獣人がいるって噂が流れてきてな。親父だったら俺がどうにかしてやろうと思ってまた戻ってきたんだ」
「でも、そのまま外国で暮らしてたら安全だったんじゃないんですか? この国はまだわりと獣人差別がありますし……」
「まぁ、ここにいるよりは楽な暮らしだがよ。親父だってお袋と結婚するくらいには人間好きだったしな。お袋も親父が人間襲いまくって殺してるなんて知ったらあの世で悲しむだろ」
セゾの言い分を聞いて、ホタルはやっぱりセゾは優しいと思ったがいつもなら勝手にべらべらと出てくる言葉が出ず、口からは代わりに謝罪の言葉が出た。
「ごめんなさい……」
「あん?」
「セゾさんの気持ちも知らないでお父さんと話そうとして……」
セゾの話から、もう父親に人間を傷つけたり殺めたりしてほしくないのだということはホタルにもわかり、唇を震わせながら言葉を紡いだ。
「あぁ……別に。アンタがめちゃくちゃなのは最初からだろ。でも今夜は絶対こっから動くな」
「はい……ごめんなさい……」
やけに殊勝な態度だと不思議に思ったセゾがホタルを見るとホタルの顔は真っ青だった。
「ごめんなさい…………」
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