植物学者の僕は嫌われ者の獣人さんのことを好きになってしまいました

先崎

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植物学者の僕は嫌われ者の獣人さんのことを好きになってしまいました。

獣人と子ども

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 ヒガシノ村は王都からかなり離れた小さい小さい村で、家が7軒のほかに小さい店が1軒あるだけだ。住んでいるのは大体中年から高齢者だが1人だけ7歳の男の子、レオンがいる。村に1つだけある店を営む老夫婦の孫で遊び相手のいない彼は専ら外を走り回って虫を取ったり草木をむしったりよくわからない実をとって食べたりに時間を費やしていた。しかしそれも飽きがくると、ついにこの前大人達が入ってはいけないといっていた森に挑戦することにした。大人たちの話では森の中には少し前から獣人が住んでいて、夜な夜な人をさらったり食ったり、家畜を盗んだりしているらしい。
 武器として虫取り網を片手に鬱蒼とした森を歩いて行く自分はさながら勇者になった気分で獣人が出たらこれで退治しようとすら考えていた。ぶんぶんと網を振り回しながら進んでいくうちに、ズル……ズルッ……と何かを啜るような音が聞こえてきて、少し怯えたレオンだったが虫取り網を掲げながら音のするほうにそっと近づいてこっそりと木の影から様子を伺うと身体の大きい狼の獣人が地面にしゃがみながら夢中で何かを啜っていた。

 (もしかしてチャンス?)

 頭に網をかけて驚いている内に体当たりして倒す!という彼のなかでは完璧な計画を実行しようとレオンは走り出した。

「うわああああ覚悟おおおおお!!!」
「あん?」

 レオンの叫びに獣人が振り向くと、その顔は口元から顎先まで赤黒く染まっていて、ポタポタと同じ色の雫が顎先の毛から滴っていた。

「ひゃあああァああああ!!!」
「おい!!待てガキ!!」

 その姿を見たレオンは甲高い声をあげてUターンをするともの脱兎の如く逃げだした。しかし獣人の声が後ろからしたと思った瞬間には既に横に追いつかれていた。

「おい!! ……あ?」

 肩に獣人の手が触れると、レオンはそのまま恐怖で気絶した。

「……面倒クセェなぁ、なんで親父がウロウロしてる日に限ってこんなガキひとりで森に来てんだよ……」

 獣人はブツブツと呟きながらレオンのことを片手でぶら下げながら森の入口まで送ると虫取り網とともに転がしておいた。

 ◆

「セゾさん、ここまでありがとうございました」

 村の近くまで来て、セゾがホタルをそっと降ろすとホタルは深々と頭を下げた。

「あぁ、そんでアンタ次はいつ来るんだ。昼頃に迎えに来てやる」
「えっと3日後に行きます。僕がいない間に水やりとかお願いしてもいいですか?」
「アンタ結構図々しいな。ついでだからいいけどよ」
「へへ、ありがとうございます」

 ホタルが笑うと、セゾはホタルの耳の横の髪の毛を梳くように触った。

「わ、どうかしましたか?」
「いや……アンタやっぱり……」

 セゾが何か言おうとすると木陰からいきなり小さな影が飛び出してきた。

「人間のくせに裏切り者!!!」

 飛び出してきた影はレオンで、そのままホタルの背中へ飛び蹴りをかますとホタルは「わぁっ!」と声をあげながらセゾの方へ倒れ込んだ。

「おいコラ!!」

 セゾはホタルを受け止めると走って逃げるレオンへ向かって叫び、ホタルが慌てて諌める。

「セゾさん、相手は子どもですよ!!」
「チッ……ガキだからってちゃんと躾けとけ……そんでアンタもいつまでくっついてんだ!」
「あうっ」

 僥倖とばかりにベストの間からもふもふと盛り上がっている胸毛に顔をうずめていたホタルはシャツをつかまれて乱暴にはがされると露骨に残念そうな顔をした。

「チッ……村に近いと目立つからもう行くぞ」
「えっ、あ、」

 何かを言おうとしていたホタルを置いて、セゾは飛ぶように帰って行ってしまう。ホタルはその背中へ向かって手を振りながら「ありがとうございました!!」と大きく叫んだ。
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