タンタカタン

こはり梅

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第2話

第2章 ロアからの依頼

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 ゴールデンウィーク最初の土日、この2日間は僕の中では準備期間だ。本番である水曜日から日曜日まで――5日間の連休でやりたいことを遺憾なくやり切る。そのためには入念な準備が必要となる。
 「この本と、この本も読んで……映画も2……いや3本は観たいな……あ、このゲーム、まだ開けてなかった」
 やりたいことを計画している時間は、何故か無性に楽しくなるし、自然と不適な笑みがこみ上げてくる。
 漫画本が完結済みのもので27冊、小説6冊ゲームソフト2本が部屋のテーブルに積まれる結果となった。
 今日の残り時間と日曜日、本番である水曜日から日曜日までの5連休という限られた時間の中で、このテーブルに積まれた私欲を消費する事だけ――それのみを考えよう、他の全てを排除してでも。
 僕は固く心に誓った。なので、先ほど――準備の途中から何度も掛かってきているスマホの着信、これには出たくない。
 チラッと目を向けると、画面には『ロア』の名前が表示されていたので、僕は尚更出たくないくなっている。
 
 着信の合間に手際よくマナーモードに切り替えて、僕はスマホをベッドの上に投げ、代わりに漫画本を手に取った。
 この漫画自体は『ブブーッ』新しく買ったものでは無いが、繰り返し『ブブーッ』読んでも飽きが来ない。ダークファンタジーに『ブブーッ』分類されるが、ギャグ要素なども盛り込まれていて『ブブーッ』非常に楽しめる作品だ。『ブブーッ』

 うるさいっ!
 全く話が入ってこない。絶えず鳴り続けるスマホのバイブレーションが、絶妙なタイミングで邪魔をしてくる。
 ここで、僕は頭の中で天秤に掛ける――このまま例え、ゴールデンウィーク中スマホが絶えず鳴り続けても無視を決め込み、着信履歴は『ロア』の名前で埋まり続ける。もしくは、今出て終わりにするか。圧倒的に後者のほうがだと思えた。

「ハァ……まったく、面倒事は勘弁してくれよ……」
 誰にいうでもない、願望に誓い祈りの言葉をボソボソと独り言の様に呟きながら、今も尚鳴り続ける着信を知らせるために震えるスマホを手に取る。謎の緊張感――というか嫌悪感を持ちつつ「ふぅっ」と短く息を吐いて、画面の受話ボタンをタップして電話に出る。
「…………もしもし」
 始め、何と言おうか迷い数秒の間が空いたが、電話と言えばの台詞から無難に始めることにした。
『あ、出たっ! もしもし、傘音くんですかっ?』
 聞き覚えのある声だ、一言声を聞いただけで嫌な予感をひしひしと感じる。
『お忙しい所すみませんっ、ちょっと手伝って欲しいことがあるんですが、今お時間大丈夫ですかっ?』
 悪意があるのか無いのかは分からないが、礼儀だけは正しい。基本的に紳士的な振る舞いだから、さっきまで着信無視してたこちらに、ちょっとだけだが罪悪感が湧いてくる……。
「まあ、大丈夫だよ……どうした?」
『ありがとうございますっ、実はちょっと手伝って頂きたいことがありまして、絡みで少し面倒なk』
「断る」
 話の途中だったが、通話終了のボタンを押した。
 今、確実に『怪異』と聞こえた。それに、ロアが持ってくる怪異絡みの相談で『手伝って欲しい』は、大体面倒事だ。場合によっては伝承系の凄い危険な怪異がやってくる可能性だってある。
 
 怪異とは『概念』――人が抱いたイメージは、怪異という形をかたどって生まれる。より多くの人が抱くイメージは、それがそのまま怪異の力となる。つまり有名な妖怪や、世間一般的な病気なんかは、知名度がそのまま強さになったりする。
 例えば病気で言うと風邪、これだと定義が広すぎるから怪異にはならない。アナタの風はどこから? なんて台詞があるが、その人によって抱える症状がバラバラだし、抱くイメージも異なる。
 鼻からの風邪、喉や熱など症状が様々で、特定の病気というわけでも無い。こういうのは怪異には成り難い。
 怪異になり易い例としてはインフルエンザや天然痘、黒死病。これらは特定の病気を指し、誰に聞いても特定のイメージを起こす。怪異はこの『イメージ』を象って形を成し、怪異となる。
 特定の病気で無くても、伝承に残っているような妖怪などの類いは、そのまま形を成して怪異となり易い。
 考えてみて欲しい。水木しげる先生や京極夏彦先生が描いた妖怪たち、それらが実際に目の前に現れ、伝承通りに襲ってくる光景を。
 伝承とは大抵、慣習や戒めなんかを後世に残す意味合いで作られる。その危険が形を伴って自分の身に降りかかる、それこそ恐怖そのものだ。
 ロアは非常に効率よく、そういう類いの怪異を連れてきては『厄介事ですっ』、『面倒事ですっ』と言って、僕に手伝わせる。
 実際に手を焼く怪異で困っているのか、僕へので、反応を見て楽しんでいるのか分からない。

『ブブーッ……ブブーッ……』
 電話を切って三分ほどだが、途切れること無くスマホは震え続けていた。
 ハァ、と溜息をもう一回吐いてから通話ボタンを押した。
『傘音くん、本当に困ってますっ、手伝って頂きたいのですっ』
「分かったよ、ロア……ただ高校生にとっての土日休みってのはとても貴重なんだ、話は週明けにしてくれないか?」
『えぇ、もちろんですっ! 助かります、傘音くんっ』
 今、土曜日だぞ?急ぎじゃ無いのか?困ってるんじゃ無いのかよ……。
『では、また月曜日っ……あ、もちろん放課後で大丈夫ですからねっ』
 そういうとロアは、向こうから通話を終了させた。
 困っているが、急ぎじゃ無い。なんだろう、怪異絡みって言ってたけど。
 考えても分からないので、とりあえず静かになった自分の部屋で、改めて漫画本を開き、読み直すことにした。
 
 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 本来であれば、今日と明日の2日間だけ学校に行けば再度祝日に突入し、僕が楽しみにしていたゴールデンウィーク5連休のはずだった。だが、土曜日に掛かってきたロアからの『困っています』の所為せいで、僕の心には少しの焦燥感があった。
 ロアの言う困り事を、この2日間の間で解決させる。間違ってもゴールデンウィークまで引きずってはならない。そう、これは所謂いわゆる使命ミッション』である。
 漫画本を読み終えた後でやったゲームに影響されたのか、語り口調風にブツクサ考えながら、その日の学校生活をこなす。
 放課後、早速ロアの元へ向かおうとノートやら筆記用具やらを鞄に詰め込み下校準備をしていると、教室の扉近くから「鷺淵さぎぶちくーん」と呼ばれた。
 まだ下校前、ダラダラと教室内に残っている生徒も居る中、珍しいお客様に教室内が少しざわめいた。
 僕は呼ばれた方へ顔を向けると、そこには呼んだ相手がどこに居るのか、男子生徒一人一人の顔を確認するようにキョロキョロする妃慈ひなりさんがいた。
「妃慈さん、ここだよ」
 僕の席は一番窓側にあるので、教室の扉とは正反対に位置していた。なかなか見当たらない僕のことを見付け、そのまま「失礼します」と律儀に言ってから、妃慈さんは僕の席まで向かってきた。

 教室の扉から僕の席まで、教室内の生徒が皆扉側を向いていたはずなのに、妃慈さんが通り過ぎると、今度は窓側を向いて妃慈さんのことを目で追っていた。
 「なんで鷺淵と?」「あそこって仲良かったの?」「え、もしかして……・」
 色々ヒソヒソと話しているのが聞こえてくる。言っとくが付き合ってないぞ、恐れ多い。
 「鷺淵くん、突然ごめんなさい、今日この後、なにか予定ってあるかしら?」
 僕の席まで近付いてきた妃慈さんは、淡々と、ただ嫌な印象を与えない言い方で聞いてきた。
「あ、うん……大丈夫だよ」
 なんだろう……先週だって、その前だって普通に話していたのに。他の生徒に見られているという状況だと、やけに恥ずかしく感じてしまい、言葉が上手く出てこなかった。
 照れくさいのを隠すように、痒くも無い頭を掻きながら答えた。
「良かった! この前は急に手伝って貰って、時間も少ない中で喫茶店に誘っちゃったから、改めて先月のお礼をさせて欲しくて」
 パァッと明るい笑顔を見せながら、両手をパンっと叩いて喜んでいるようだった。
 ネズミの仕掛けを手伝った時から、立て続けにお礼をさせてしまって申し訳ないな、別にまとめて1回の『お礼』って事で良かったんだけど。
 あっ……、ロア。

「ごめん、妃慈さん……この後、用事あった」
「あ、そうだったの……それは残念です……」
 見るからにシュンと肩を落として残念がっている。しまった、悲しませてしまったかも知れない。
 教室内の連中も、シュンと肩を落とす妃慈さんを見ると、視線を少しズラし、やけに恐い目で僕を見てきた。
 その焦りからだろう、かなり慌てた様子で僕は「ロアに呼ばれてて」と付け加えた、すると。
「あ、ロアさん? ロアさんにも改めてお礼をしなきゃと思ってたし、それなら一緒に行っても大丈夫かな?」
 少しだけ明るさを取り戻した笑顔で聞いてくる妃慈さん。
 その様を見て「どうなんだ?」と僕のことを見てくる教室内の奴ら。
 いちいち反応するなよ。
 
 ロアは面倒事と言っていたが、どうなんだろうか。
 妃慈さんは別に怪異について無関係というわけでは無くなったけど、事件とかであればわざわざ巻き込む事も無いし、んー……。
 頭をポリポリと、痒くも無いのに掻きながら考えていた。が、気付くと妃慈さんが「迷惑だったかしら」と言わんばかりに、少し困ったような顔をして僕の返答を待っていた。
 後ろの連中は、依然僕の事を「どうなんだよ⁉」といった形相で睨んでくる。こわい……。
「と、とりあえず電話で聞いてみるよっ」
 スマホを急いで取り出し、電話帳からロアの名前を探し出す。急いで発信を押して電話を掛ける。
 1回……・2回……3回……コール音が鳴るが中々出ない、いつもよりも鳴る回数が多く感じたり、コール音とコール音の間が長く感じたり、兎に角早く出てくれと思うとジワッと体が熱くなり汗をかいたような感覚になった。

『……もしもしっ、傘音くんですね、どうかしましたかっ?』
 出た!
「もしもし、ロア! 今日これから向かおうと思うんだけど、妃慈さんも連れて行って問題ないか⁉」
 思わず早口で、自分が想定しているよりも大きな声で話してしまった。
『妃慈さんですか? まあ、一緒に来て頂くのは大丈夫ですが、怪異絡みですよ? 良いんですかっ?』
 それは分かっているが、妃慈さんの困った顔を目の前にすると、これ以上は困らせられないし、話を聞くくらいなら大丈夫だろう。
「あぁ、それは大丈夫! じゃぁ、今から向かうから!」
『分かりましたっ、ではお待ち……プーッ……プーッ……』
 何か言いかけていたが、これまた焦ってしまい、こちらから電話を切ってしまった。
「妃慈さん、大丈夫そう!」
 焦ったまま、妃慈さんに伝える。困り顔を止めて貰わないと、教室内で僕は、何か敵対される対象になってしまいそうだった。
「迷惑じゃ無いかしら、突然行ってしまって……大丈夫そうかな、鷺淵くん?」
 困り顔が直らない、後ろの連中の睨み顔も直らない――それは僕が困る!
「大丈夫!今回はロアの方から呼んでるし、電話でも『大丈夫』って言ってたから!」
 わざとらしく親指を立てるジェスチャーをしてみる。
「じゃあ、お邪魔するね」
 そう言うと再び明るい笑顔を見せる妃慈さん。その後ろに見える教室内の連中の顔も、ホッとしたような顔になった。いちいち反応するな、うっとうしい。
 「妃慈さん……とりあえず行こうか」
 一連の流れでドッと疲れが出てきた気がする、それに何とも居心地が悪かったので、残りの荷物を鞄に押し込んで、立ち上がる。
「荷物置いてきちゃったから、取ってくるね!」
 そう言い残すと、笑顔のまま鞄を取りに自分の教室に向かって足早に出て行く妃慈さん。それを目で追う教室内の連中は、妃慈さんが見えなくなると、揃えたように一斉に僕の方を向いてきた。
 
 何か言われる前に、鞄を急いで肩に掛けて、僕も教室を早足で出て行った。
 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 何とも居心地の悪い教室だった。妃慈さんの一挙手一投足、全てに反応しやがって。下手すればたった一言間違えただけで教室中の嫌われ者になるところだった。
 4月の聞き込みの時、妃慈さんの人望や人気については把握したつもりでいたけど、まさかここまでだったとは……。
 そんな事を考えながら、隣を歩く彼女を見てみる。本人には一切そんなつもりが無いんだもんなぁ、これが止まり木になった所以ゆえんなのかも知れないけど。
 
「鷺淵くん、前回ロアさんに会いに行った神社とは反対方向に来ているけど、道は合っているの?」
 考え事をしながらではあるが、妃慈さんの方を向いていると急にこちらを向いて尋ねてきたので、反射的に目を逸らしてしまった。
「あ、あぁ! ロアは市内の整備されてない神社とか寺を整備してるからね、転々としてるんだよっ」
 ついでに声が上ずってしまった。
「前回のお寺は掃除だけで終わりらしい、今は別のお寺でまた掃除してるらしい」
 僕と妃慈さんが通う高校は綾織あやおり市、そしてお互い住んでいるのは隣市の「尾生丹おぶに市」。今回の目的地はこの尾生丹市内にある。
 今、ロアが居るのは主要駅である『尾生丹駅』から見て南側――田畑が広がる地域の中、点々と立っているお寺の1つを整備しているとのことだった。

「妃慈さん、着いたよ」
 僕が立ち止まると、それに合わせて妃慈さんも止まる。
「えっと、ここ……?」
 僕らの目の前に広がるのは、上方は空が両側に生い茂る草木で隠され、草木に覆われ日陰の部分が多い所為か苔むしていて、薄暗い十数段の石階段が前方に伸びていた。
「ここ上がった先にロアが待ってるはずだから、行こうか」
 一瞬、妃慈さんは躊躇ったが、ツカツカ言ってしまう僕に遅れまいと2,3歩駆け足で追いつくと、また同じペースで石階段を上り始めた。
 段毎に整備されておらず、本当に石を切り出しただけのようになっている石階段。段毎の幅、高さまでバラバラだった――なんなら僕は一度つまずき転びそうになった。
 石階段を上りきると、本堂に入るための小さい五段ほどの石階段に腰を掛けているロアがいた。
「ロア、整備するなら入り口からやりなよ、石階段ボロボロだったぞ」
 冗談半分で挨拶がてらの憎まれ口を叩きながら歩み寄る。表情が分かる距離まで近付くと、いつになく真剣な顔をしたロアがいた。
「傘音くん、待ってましたよ」
 いつもの言葉癖も無く、少し俯き気味の顔――視線だけをこちらに向けてくる。こんなロアは初めて見た。
「よ、よぉ……どうしたんだよ、いつになく深刻そうにして……」
「いえ、今回ばっかりは少し手こずりそうな問題でしてね……」
 ロアから醸し出される空気感に気圧されてしまい、思わず息を飲んでしまった。
「妃慈さんも、こんにちは……その後はお元気そうですね」
 作り笑いと分かる笑顔で、僕の陰に立っていた妃慈さんにも挨拶をするロア。やはりこういう所は律儀だ。
「急にお邪魔してしまって、すみません」
 返事代わりにお詫びの言葉、こちらも律儀な人だった。
「えぇ、もちろん大丈夫ですよ……ただ、ちょっと難しい話をしてしまうので、それだけ許して下さいね」
 ヘラッと作り笑いで答えると、ロアは僕の方に向き直り、話を切り出した。

「傘音くん……今、市内でネズミが大量発生しているというニュースはご覧になっていますか?」
「あぁ、スマホとかで見たな……今朝はテレビのニュースでも少し取り上げられてたし……それが今回の話と関係してるのか?」
 僕の返答を聞いた後、ロアは「えぇ」と軽く返事をした後、話を続けた。
 
 25日から始まった停電騒ぎは、体力テストまでの2日間で3件。その後も妃慈さんと喫茶店に行った木曜日、翌金曜日、そして日曜日と5日間短期間に続けて発生しており、合計で6件にも上る。
 どうやら怪異絡みであるとのことで、とある機関からロアへ対して、相談兼調査の依頼が来たそうである。ただ規模が大きく、ロアでも手を焼きそうであるため、僕に協力を願い出たとのことだった。
「珍しいな、ロアが手を焼くほどの怪異なんて」
 怪異についてであればロアは、かなりの知識を有していた。それは先日の妃慈さんの事件でも披露された事だが、それ以外にも仏教、神道、その他にも各地の伝承や妖怪、魑魅魍魎などについても膨大な知識を持っている。
 また、怪異が関連する事件を多く解決しているため、経験も豊富で並大抵の怪異であれば基本的にロア一人でも何の問題も無く解決できる。
 それなのに、今回のロアはいつもの軽薄さを見せないように、いかにも真面目に事件の概要を話してくる。逆を言えば、そのレベルで危険であると言う事になる。
 話を聞きながら、僕も段々と事の重大さを理解し始める。
「分かった、手伝うよ……」
「手伝ってくれますっ?」
「あぁ、ロアがそこまで言うって事はかなり大変なんだろ? 手伝うよ」
「いやぁ、助かりますっ! 今回の怪異、数が異常に多いので傘音くんの能力の方が相性良くてっ」
 
 こいつ、やりやがった……。
「やっぱり断る! ロア、お前全然困ってないだろ!」
「困ってます、それは本当ですっ」
「知るか! 数が多くたって、別に負けないだろ! 解決できるだろ! そもそもお前が困ってるとこなんて見たこと無かったんだ!」
「ありますよ、困ることくらいっ」
 徐々に僕がヒートアップしているのが分かる。ただ、先ほどまでの演技がムカついてしょうがない。
 「分かりましたっ、手伝ってくれたらお礼しますからっ」

「……お礼?」
 少し考える。その間は誰も言葉を発しなかった。ロアでさえ、空気を読んだのだろう。次に僕が発する言葉を待っていた。
「寿司、食わせろ」

「お寿司……ですかっ?」
 そんなもので良いの? そう言いたげな顔だった。
「え、えぇ……もちろんっ、良いですともっ! 解決までお手伝い頂ければお寿司をご馳走しますよっ」
「回転ずしとかじゃ無いからな……」
「え、はいっ……じゃあ、どこの?」
 ロアがキョトンとヘラヘラを混ぜ合わせたような顔で、僕を見ている。

「駅前の寿司屋、あそこの本まぐろ、食わせろよ!」
 駅前に『寿司屋』という居酒屋がある、そこのお寿司が絶品らしく気になっていた。僕はここぞとばかりにロアを利用させてもらうことにした。
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