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第一章 王城の闇
土に愛された少年
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その少年は生まれたときから特別だった。
色素が薄く、肌は白く髪は銀、目が赤かった。
言葉を覚えるとすぐ精霊と会話しはじめた。
初等部で土精ノームと契約し、十五才で土の大精霊グラン・ノームと契約した。
帝国史上最年少の大精霊契約者として上級大衆へと昇級した。
ゴーレム師団「蹂躙」の師団長付精霊士に抜擢された。
大衆は彼を「土に愛された少年」と持てはやした。
少年――シノシュは未来が明るいと信じていた。
現実を思い知るまでは。
まず上級大衆の上に特級大衆という階級が新設された。
事実上シノシュが市民階級に上がる道が閉ざされたのだが、このときはまだ「遠のいた」程度の認識だった。
次に人類史上最年少の大精霊契約者は二年前、十才で成し遂げた事を知った。
グラン・シルフと契約したその少年は「風に愛された少年」と呼ばれていた。
自分の通り名が真似であること以上に、変える労さえ惜しまれる程度の扱いであると知ったことの方がショックだった。
そしてとどめが、自分より遥かに能力が劣る者の市民階級への昇格である。
親が市民階級である以外の理由は考えられなかった。
シノシュは全てを悟った。
サントル帝国が掲げる「能力ある者が登る社会」は建前でしかないことを。
市民階級に生まれなければ市民になれないことを。
帝国も封建国家と同じく生まれで将来が決まる「遅れた」階級社会であることを。
その事実を隠している分、帝国は「他国より悪辣」であることを。
シノシュは全てを諦めた。
市民階級に上がることを。
幸せになる事を。
彼より二年早く大精霊と契約した少年に勝負を挑むことを。
市民になる見込みが無い以上、シノシュの最優先は家族の安全となった。
市民を怒らせれば大衆は即座に罰せられる。
その際、家族が連座させられることは良くあった。
下手に目立って市民に嫉妬されてはいけない。
かと言って怠慢で処罰されてもいけない。
可もなく不可もなく与えられた任務をこなし、無事軍役を勤め上げ年金をもらうことが、シノシュが望みうる最善の将来であった。
そして二年の歳月が流れた。
人類史上最年少の大精霊契約者ルークス・レークタが新型ゴーレムを開発し「単基で敵六十基を撃破鹵獲した」との衝撃的な情報が帝国にもたらされた。
それを聞いたシノシュは、別段何の感情も抱かなかった。
彼にとりルークスという名はただの情報でしかない。
たとえ戦場で相まみえたとしても、敵の一人としか認識しないだろう。
そもそも敵とは何か?
自らと家族に危害を及ぼすと言う意味では、他国の精霊士などより自国の市民の方が遙かに脅威なのだから。
色素が薄く、肌は白く髪は銀、目が赤かった。
言葉を覚えるとすぐ精霊と会話しはじめた。
初等部で土精ノームと契約し、十五才で土の大精霊グラン・ノームと契約した。
帝国史上最年少の大精霊契約者として上級大衆へと昇級した。
ゴーレム師団「蹂躙」の師団長付精霊士に抜擢された。
大衆は彼を「土に愛された少年」と持てはやした。
少年――シノシュは未来が明るいと信じていた。
現実を思い知るまでは。
まず上級大衆の上に特級大衆という階級が新設された。
事実上シノシュが市民階級に上がる道が閉ざされたのだが、このときはまだ「遠のいた」程度の認識だった。
次に人類史上最年少の大精霊契約者は二年前、十才で成し遂げた事を知った。
グラン・シルフと契約したその少年は「風に愛された少年」と呼ばれていた。
自分の通り名が真似であること以上に、変える労さえ惜しまれる程度の扱いであると知ったことの方がショックだった。
そしてとどめが、自分より遥かに能力が劣る者の市民階級への昇格である。
親が市民階級である以外の理由は考えられなかった。
シノシュは全てを悟った。
サントル帝国が掲げる「能力ある者が登る社会」は建前でしかないことを。
市民階級に生まれなければ市民になれないことを。
帝国も封建国家と同じく生まれで将来が決まる「遅れた」階級社会であることを。
その事実を隠している分、帝国は「他国より悪辣」であることを。
シノシュは全てを諦めた。
市民階級に上がることを。
幸せになる事を。
彼より二年早く大精霊と契約した少年に勝負を挑むことを。
市民になる見込みが無い以上、シノシュの最優先は家族の安全となった。
市民を怒らせれば大衆は即座に罰せられる。
その際、家族が連座させられることは良くあった。
下手に目立って市民に嫉妬されてはいけない。
かと言って怠慢で処罰されてもいけない。
可もなく不可もなく与えられた任務をこなし、無事軍役を勤め上げ年金をもらうことが、シノシュが望みうる最善の将来であった。
そして二年の歳月が流れた。
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それを聞いたシノシュは、別段何の感情も抱かなかった。
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たとえ戦場で相まみえたとしても、敵の一人としか認識しないだろう。
そもそも敵とは何か?
自らと家族に危害を及ぼすと言う意味では、他国の精霊士などより自国の市民の方が遙かに脅威なのだから。
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