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クローバー
亜貴のこと
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「おお、洋介。間に合ったやん」
教室に滑り込んで席に着いた途端、隣に座る飯塚哲夫が話しかけてきた。
「走ったからな」
「お前なんやかんやでいっつも間に合うよなぁ」
「まあ……うるさいのがおるからな」
哲夫は、コンビニで買ってきたであろう菓子パンをかじりながらこちらを見た。
「亜貴のおかげやろ? お前の世話係やからな」
「お節介の間違いやろ? 世話されとるつもりないねんけど」
「お節介でもええやん。面倒見てくれるやつがおるだけでも」
「まあ……」
「俺なんか、面倒見てくれるやつも彼女もおれへんし~。このままブクブクして寝たきりになるんちゃうかと思うわ」
「安心しろ。そうなる前に亜貴が世話を買って出るわ」
「そうかもなぁ。ほんま、善を絵に書いたような性格やしな」
「あいつは、生き物やったらなんでも友達やと思うてるからな」
「そういや、志望、獣医やった? 亜貴」
「いや、飼育係。動物園の」
「まじか……。亜貴らしいけどな」
「おん。やから、動物系の専門学校行く気らしいけどな」
「植物とかにも詳しいんやろ?」
「まあ……あいつん家、花屋やからな」
そう言ったところで、1限目の担当教員が教室へと入ってきたので、話が中断された。
教員の抑揚のない古文の朗読を聞きながら、ぼうっと先ほど隣のクラスへ手を振って入っていった亜貴のことを考える。
亜貴の家は俺が生まれる前から花屋をしていた。花屋を開業するために俺の家の隣に引っ越してきて、うちの親と知り合いになったのだ。亜貴の母親は自然をこよなく愛する人で、その流れで当然のごとく花屋を開いたらしい。そして父親はそんな母親をサポートすべく会社勤めを辞めて一緒に花屋を手伝っている。
亜貴の両親は、2人ともおっとりした雰囲気の優しい性格で、困っている人がほっとけないような人たちだった。そんな両親から生まれた亜貴がこんなお節介焼きになったのはなるべくしてなったと言っても過言ではないだろう。
お互い一人っ子で、同い年。両親同士も仲が良ければ、当然俺たちも一緒にいる時間が多くなった。
まさかそこで、俺が亜貴を女の子だと勘違いして惚れてしまうとは。よくよく考えてみれば、亜貴がスカートを履いていることなんてなかったし、幼稚園でもお遊戯会で女の子と組まされていたし、気づける要素は沢山あったのに。アホな俺は全く気づかなかった。いや、もしかすると、潜在意識の中で気づいてはいたが、亜貴に女であって欲しいと思っていたのかもしれない。
とにもかくにも、それがこの歳になるまで自分の一番の悩みの種になるとは思ってもみなかった。
教室に滑り込んで席に着いた途端、隣に座る飯塚哲夫が話しかけてきた。
「走ったからな」
「お前なんやかんやでいっつも間に合うよなぁ」
「まあ……うるさいのがおるからな」
哲夫は、コンビニで買ってきたであろう菓子パンをかじりながらこちらを見た。
「亜貴のおかげやろ? お前の世話係やからな」
「お節介の間違いやろ? 世話されとるつもりないねんけど」
「お節介でもええやん。面倒見てくれるやつがおるだけでも」
「まあ……」
「俺なんか、面倒見てくれるやつも彼女もおれへんし~。このままブクブクして寝たきりになるんちゃうかと思うわ」
「安心しろ。そうなる前に亜貴が世話を買って出るわ」
「そうかもなぁ。ほんま、善を絵に書いたような性格やしな」
「あいつは、生き物やったらなんでも友達やと思うてるからな」
「そういや、志望、獣医やった? 亜貴」
「いや、飼育係。動物園の」
「まじか……。亜貴らしいけどな」
「おん。やから、動物系の専門学校行く気らしいけどな」
「植物とかにも詳しいんやろ?」
「まあ……あいつん家、花屋やからな」
そう言ったところで、1限目の担当教員が教室へと入ってきたので、話が中断された。
教員の抑揚のない古文の朗読を聞きながら、ぼうっと先ほど隣のクラスへ手を振って入っていった亜貴のことを考える。
亜貴の家は俺が生まれる前から花屋をしていた。花屋を開業するために俺の家の隣に引っ越してきて、うちの親と知り合いになったのだ。亜貴の母親は自然をこよなく愛する人で、その流れで当然のごとく花屋を開いたらしい。そして父親はそんな母親をサポートすべく会社勤めを辞めて一緒に花屋を手伝っている。
亜貴の両親は、2人ともおっとりした雰囲気の優しい性格で、困っている人がほっとけないような人たちだった。そんな両親から生まれた亜貴がこんなお節介焼きになったのはなるべくしてなったと言っても過言ではないだろう。
お互い一人っ子で、同い年。両親同士も仲が良ければ、当然俺たちも一緒にいる時間が多くなった。
まさかそこで、俺が亜貴を女の子だと勘違いして惚れてしまうとは。よくよく考えてみれば、亜貴がスカートを履いていることなんてなかったし、幼稚園でもお遊戯会で女の子と組まされていたし、気づける要素は沢山あったのに。アホな俺は全く気づかなかった。いや、もしかすると、潜在意識の中で気づいてはいたが、亜貴に女であって欲しいと思っていたのかもしれない。
とにもかくにも、それがこの歳になるまで自分の一番の悩みの種になるとは思ってもみなかった。
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