変態ストーカーの専属BGにはなりません!

文字の大きさ
72 / 239

Going out with you ⑰

しおりを挟む
 数秒、沈黙が流れた。集団の1人の男の子が、下を向いて黙っている男の子の腕を取った。

「行こう」

 そうして、集団はすごすごとその場を去っていった。黒埼はその少年たちには目もくれず、黒埼を見上げている背の高い少年へと向き合った。

「なあ。もし本当に、お前がその子のこと本気で大切に思ってるんだったら、一生、離れずに守ってやれよ」

 背の高い少年がじっと黒埼を見返した。黒崎が腰をかがめ、少年の目をのぞき込むようにして言葉を続けた。

「何があっても、離れんなよ」

 少年は意志の籠もった目で黒埼を見つめたまま、小さく頷いた。

 黒埼のその一言に、晃良の心が揺すぶられる。

『何があっても、離れんなよ』

 その言葉は、自分に向けられたような気がした。自分の中にいる、幼い頃の自分に。

 晃良は、泣いたまま座っている小さな少年へと近づいて、しゃがみ込んだ。散らばってしまったたこ焼きを拾っていく。少年は顔を上げて晃良を見てから、晃良の抱えているぬいぐるみにちらりと目を留めた。

「たこ焼き、汚れて残念だったな」
「うん……。あいつらに落とされたから」
「そうか……。なあ、おじさんたちな、さっきたこ焼き買ったんだけど、もう腹いっぱいになっちゃったんだよ。よかったら食べてくれないかな?」

 そう言って、晃良は買っていたたこ焼きを差し出した。その子は戸惑うように晃良を見た。

「でも……」
「食べずに捨てたりしたらもったいないし。な?」

 そう言うと、その男の子は困ったように背の高い男の子を見た。すると、見られた男の子が小さくその子に頷(うなず)いた。小さい方の男の子はおずおずと晃良からたこ焼きの入ったパックを受け取った。

「ありがとう」
「どういたしまして。こっちも食べてもらえると助かるから」

 あ、そうそう、とついでのように装って、晃良は抱いていたぬいぐるみも男の子へと差し出した。

「これも、もらってくれるかな?」
「え?? でも……」
「俺な、本当は、他の……そうそう、白ブタのぬいぐるみが欲しかったんだよ。後から白ブタにすればよかったって後悔してたところでさ。だからこれは、本当に欲しい子にあげたいなと思って。これ、欲しかったんだろ?」
「なんで知ってるの?」
「偶然、聞いたんだ。欲しいって言ってるの。店の前で」
「でも……お兄ちゃん、白ブタのぬいぐるみも取れるの?」
「取れる。あのな、あの、眼鏡かけたおじさんの友達な、男前なだけじゃなくて、射的も凄く上手いんだよ。だから、また白ブタも取ってくれるって信じてるから。大丈夫」
「そうなの?」
「うん。だから。これはもらってくれるかな?」
「……ありがとう」

 男の子はうれしそうにぬいぐるみを受け取った。大事そうにぎゅっと抱き締める。もう1人の男の子が晃良に向けて小さくお辞儀をした。笑顔を返してそれに応えた。

 さてと、と立ち上がる。黒埼の方を向く。せっかく取ってくれたぬいぐるみと、黒埼が楽しみにしていたたこ焼きを勝手に譲ってしまったので、怒っているだろうかと思ったが、黒埼は怒った様子もなく少し微笑んでこちらを見ていた。

 もしかしたら、最初からできればこの男の子にぬいぐるみをあげようと思っていたことに気づいていたのかもしれない。

「行くか」
「ん」

 黒埼に声をかけると、少年たちに手を振ってから2人並んで歩き出す。

「あのっ!」

 後ろから大きな声で呼び止められて振り返った。背の高い少年が、深々と頭を下げていた。

「ありがとうございました!」

 大きな声で礼を言われる。晃良と黒埼は顔を見合わせて、ふっと笑い合った。バイバイ、と少年たちに声をかけ、再び歩き出す。

「さ、アキちゃん、早く行こ」
「は? どこに?」
「どこって、射的んとこに決まってんじゃん。白ブタ取るから」
「いや、あれは、とっさに言っただけで……」
「なんせ男前の俺をアキちゃんが大好きで120%信じてくれてるんだから、取らないと」
「なんか勝手に尾びれ背びれが付いてんだけど……」
「たこ焼きもまた買わないといけないから時間ないし、急ご」

 全然、話聞いてねぇな。

 もの凄い勢いで射的の店へと急ぐ黒埼の背中を、あきれながら眺める。本当に自分勝手な男だ。だけど。

 けっこう熱いとこもあるんだな。

 少年たちへと割って入った黒崎を思い出して、ふと笑う。

「アキちゃん! 早く!」
「わかったって」

 離れたところから大声で叫ばれる。見失わないように少し早足で、その姿を追いかけた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

隣の席のイケメンに懐かれた

しょうがやき
BL
隣の席のイケメンに懐かれた平凡男子の話

エリート上司に完全に落とされるまで

琴音
BL
大手食品会社営業の楠木 智也(26)はある日会社の上司一ノ瀬 和樹(34)に告白されて付き合うことになった。 彼は会社ではよくわかんない、掴みどころのない不思議な人だった。スペックは申し分なく有能。いつもニコニコしててチームの空気はいい。俺はそんな彼が分からなくて距離を置いていたんだ。まあ、俺は問題児と会社では思われてるから、変にみんなと仲良くなりたいとも思ってはいなかった。その事情は一ノ瀬は知っている。なのに告白してくるとはいい度胸だと思う。 そんな彼と俺は上手くやれるのか不安の中スタート。俺は彼との付き合いの中で苦悩し、愛されて溺れていったんだ。 社会人同士の年の差カップルのお話です。智也は優柔不断で行き当たりばったり。自分の心すらよくわかってない。そんな智也を和樹は溺愛する。自分の男の本能をくすぐる智也が愛しくて堪らなくて、自分を知って欲しいが先行し過ぎていた。結果智也が不安に思っていることを見落とし、智也去ってしまう結果に。この後和樹は智也を取り戻せるのか。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...