変態ストーカーの専属BGにはなりません!

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Just the way it is ⑩

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「ちょっと、すみません」

 晃良は相手を威圧しないように、努めて明るい声で話しかけた。

「ここは駐車場構内なので、ずっと立っていると危ないですよ」

 そう言いながら、間近で男の顔を観察する。間違いない。リストで見た男の特徴である目尻の大きなホクロ。それがはっきりと確認できた。

 男は何も答えずにじっと晃良を見ていた。その目は、常軌を逸した目をしていて、晃良を見つめながらも実際には見ていないような印象を受けた。一気に警戒が高まる。晃良は先ほどの明るい対応を抑えて、相手に警告を与える声音に変えた。

「あなた……確か、上野さんですよね」

 はっきりと男の名前を出す。すると、男が一瞬目を見開いたのが分かった。先ほどまで反応が見えなかった目に鈍い光が入った。晃良は素早く自分の警棒に手を掛ける。

 男が静かにジャージの前ファスナーを開けて、右手を入れた。ゆっくりと出された手には刃渡り10cm前後のサバイバルナイフが握られていた。突然、男が叫んだ。

「邪魔すんじゃねえぇえええ!!」

 晃良がそのナイフを認識したのと同時に、男が右手を振りかざして晃良へと向かって来た。民間BGには、警棒以外の武器所有は認められていない。不審者が攻撃してきた場合、退避が難しい場合には警棒でできる限り応戦するしかない。

 しゅっ、と乾いた音を立てて繰り出されるナイフの刃を、間合いを取って警棒を駆使しながらかわしていく。男はもう正気を保ってはいないようだった。叫び声を上げながらナイフを振り回している。尚人が周辺の人たちに被害が及ばないよう距離を置くために誘導しているのが視界に入った。

 いつもの晃良ならば、集中さえしていればナイフを所持している不審者に対して、警棒1本でなんとか応戦できただろう。しかし今日は勝手が違った。体が思うように俊敏に動いてくれない。早く動こうとすると、軽いめまいのようなものが襲ってきてふらついてしまう。ナイフが晃良のすれすれを通り、スーツがどころどころ裂けた。風邪の影響を直に受けている体に、心の中で舌打ちする。熱があるのか、息も上がってきて息苦しくなる。

「うわぁぁあああ!!!」

 男が奇声を上げて大きく踏み出してきた。ナイフの届かないギリギリの距離を保とうと後ろに下がる。が。後ろに踏み出した途端、ぐらっと体が傾いた。

 避けきれないっ!

 ナイフが晃良の腹辺りを目掛けて突き出されるのを、まるでスローモーションのように見ていた。これはかなりの覚悟が要る状況かもしれない。ただの怪我じゃ済まされないだろうと、まるで人ごとのようにぼんやりと思ったその時。

「晃良くんっ!!」

 間一髪のタイミングで尚人が男の手をつかんだ。軽くもみ合いになる。尚人は鮮やかな動きで男の手からナイフを落とすと、そのまま男を地面にねじ伏せた。他のBGたちも次々と駆けつけた。
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