フェイク

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やっぱり

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 充電器に繋げてあったタブレットを取り上げて、使用履歴を見る。

 やっぱり。

 使用履歴に上がった一番上のリンクを開くと、〇〇市場のホームページへと飛んだ。オンラインで買い物ができる大手通販サイトだ。

 自分のアカウントにログインして購入履歴を確認すると、身に覚えはないが、人形専門店から人形を一体購入していることが判明した。注文受付日は昨晩の夜中になっている。

 都内だからかもしれないが、夜中に注文したものがこんなに早く届くことにも驚きだった。しかも週末なのに。

「また、やっちまった……」

 はあっ、と大きな溜息を吐く。

 実は明石は、究極に酔うと記憶を無くす上、なぜかネットショッピングで要らない商品を購入するという奇行に走ることがある。

 以前にも何度か似たようなことをやらかしているのだ。女性物の同じTシャツを色違いで五枚注文してしまったり、入れ歯用の洗浄剤を一年分購入したり。使えるものならばまだ消費のしようもあるが、毎回なんでこれ? という品物ばかりなのだ。

 覚えていないので、どうしてそれを選んだのかは不明なままだ。だから今回も、なぜ自分がこの人形店のホームページに辿り着いて、購入ボタンを押してしまったのかは謎だった。

 注文の詳細部分を確認してみる。

『セール企画! どんな子が届くかは開けてからのお楽しみ!』と冒頭に書かれていて、商品紹介の箇所には写真が掲載されていなかった。その代わり、大きなハテナマークが載っており、下に小さく『お楽しみ企画商品のため事前に外見をお伝えすることはできません(希望はできる限りお受け致します)』とあった。

 あんな大きな箱に入る人形を購入してしまったのだから、さぞかし高かっただろうと心配したが、意外にもちょっと高性能な電子レンジが買えるぐらいの値段だった。とはいえ、一般サラリーマンには気軽に購入できるほどでもない。もし、値段を顧みず手に入れたのであれば、自分はこの商品のどこかに惹かれたのだろう。

 人形って、どういう人形だろう。あれか、あの、ラブドール的なものと間違えたのだろうか。いや、そんな趣味は自分にはないし。あ、でも、酔っ払っていたから判断力がなくなっているだろうし、そういったものに頼ろうとした可能性もあるか。確かにもう何年も恋愛関係はご無沙汰だし。人肌恋しくなったのだろうか。人形でもなんでもいい、と思ったとか?

 しばらくあれこれ考えてみたが、自分が人形を買う納得のいく理由はやはり浮かばなかった。
 
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