16 / 25
⑮
しおりを挟む
狭い6畳一間ぐらいのアパートだった。玄関を開けてすぐ右手に台所があり、真正面に扉1枚隔ててリビングと寝室を併用しているらしい部屋があった。台所とリビングを分ける引き戸は開けられていた。
哲也は靴を脱ぐことも忘れて、土足のまま上がり込んだ。真っ直ぐに陸の元へと向かう。
「哲也さ……」
陸が哲也の名前を呼び終える前に、陸を力任せに抱き締めた。
「……ごめん」
「…………」
「すぐに助けにこれなくてごめん」
「……っ」
陸がぐっと哲也の胸に顔を押しつけてきた。陸の体が震えだす。声も出さず、息を殺して泣いているのが分かった。泣くのを我慢する癖がついている陸がどうしてものときにする泣き方だった。
しばらくの間、そのままの状態で抱き合っていた。震える陸の体から段々と力が抜けていく。ようやく陸が落ち着いて、そっと顔を上げた。泣きはらした目でじっと哲也を見つめる。
「俺のこと、思い出してくれたんだな」
「……ここに連れてこられてすぐ思い出したんだけど……。もう、逃げられなくて」
そう言われて、哲也は改めて陸の全身を見た。左足首に拘束用の足かせが付けられていた。チェーンで繋がっており、それがベッドのパイプ部分に接合されている。
ベッドの周りの陸が動ける範囲内に、空になったコンビニ弁当の箱や、ペットボトル、あと、介護用に使うような簡易トイレのようなものも置いてあった。
その、まるでペットか何かを扱うような状況に、哲也は益々不快な気持ちになった。
「細かいことは後にして、とりあえず、ここから出よう」
そう言って、足かせを外そうとしてみるが鍵付きタイプのもので、鍵がないと外せなかった。もちろん鍵は見回せる範囲にはない。
しかし、その足かせ自体は安物っぽく、薄い合成皮か何かでできていたので、頑丈なハサミさえあればなんとかなりそうだった。
「陸。ハサミないか?」
「キッチンに肉切り用のハサミがあると思う」
ベッドから降りてキッチンへとハサミを探しにいく。あの足かせはSMとかの娯楽用に見えた。きっと道具など使えば陸でも外すことができただろう。
だからチェーンで陸の動ける範囲を制限して、その範囲には必要最低限のものしか置いてなかったのではないか。
肉切り用のハサミは引き出しから見つかった。それを掴んでベッドに再び戻ると、足かせの皮の部分を陸の足首に傷つけないように慎重に切っていく。するりと陸の足首から足かせが滑り落ちた。
「陸。他に服は?」
「……ジーンズがどこかにあると思うけど……隠されてるから分かんなくて……」
「ほんと……ムカつくわ」
哲也は部屋がぐちゃぐちゃになるのもお構いなしに、部屋のあちこちに怒りをぶつけながら陸が着られるような服を探した。洋服ダンス用に使っているらしい、カラーボックスの中に、スウェットの上下が出てきた。
男の物を使わせるのは不本意だが、それよりも早くこの不快な場所から出たい。
「陸。悪いけど、これで我慢してくれる? 帰ったらすぐ着替えたらいいから」
「うん、分かった」
陸はスウェットを受け取ると素早く着替えを済ました。
哲也は靴を脱ぐことも忘れて、土足のまま上がり込んだ。真っ直ぐに陸の元へと向かう。
「哲也さ……」
陸が哲也の名前を呼び終える前に、陸を力任せに抱き締めた。
「……ごめん」
「…………」
「すぐに助けにこれなくてごめん」
「……っ」
陸がぐっと哲也の胸に顔を押しつけてきた。陸の体が震えだす。声も出さず、息を殺して泣いているのが分かった。泣くのを我慢する癖がついている陸がどうしてものときにする泣き方だった。
しばらくの間、そのままの状態で抱き合っていた。震える陸の体から段々と力が抜けていく。ようやく陸が落ち着いて、そっと顔を上げた。泣きはらした目でじっと哲也を見つめる。
「俺のこと、思い出してくれたんだな」
「……ここに連れてこられてすぐ思い出したんだけど……。もう、逃げられなくて」
そう言われて、哲也は改めて陸の全身を見た。左足首に拘束用の足かせが付けられていた。チェーンで繋がっており、それがベッドのパイプ部分に接合されている。
ベッドの周りの陸が動ける範囲内に、空になったコンビニ弁当の箱や、ペットボトル、あと、介護用に使うような簡易トイレのようなものも置いてあった。
その、まるでペットか何かを扱うような状況に、哲也は益々不快な気持ちになった。
「細かいことは後にして、とりあえず、ここから出よう」
そう言って、足かせを外そうとしてみるが鍵付きタイプのもので、鍵がないと外せなかった。もちろん鍵は見回せる範囲にはない。
しかし、その足かせ自体は安物っぽく、薄い合成皮か何かでできていたので、頑丈なハサミさえあればなんとかなりそうだった。
「陸。ハサミないか?」
「キッチンに肉切り用のハサミがあると思う」
ベッドから降りてキッチンへとハサミを探しにいく。あの足かせはSMとかの娯楽用に見えた。きっと道具など使えば陸でも外すことができただろう。
だからチェーンで陸の動ける範囲を制限して、その範囲には必要最低限のものしか置いてなかったのではないか。
肉切り用のハサミは引き出しから見つかった。それを掴んでベッドに再び戻ると、足かせの皮の部分を陸の足首に傷つけないように慎重に切っていく。するりと陸の足首から足かせが滑り落ちた。
「陸。他に服は?」
「……ジーンズがどこかにあると思うけど……隠されてるから分かんなくて……」
「ほんと……ムカつくわ」
哲也は部屋がぐちゃぐちゃになるのもお構いなしに、部屋のあちこちに怒りをぶつけながら陸が着られるような服を探した。洋服ダンス用に使っているらしい、カラーボックスの中に、スウェットの上下が出てきた。
男の物を使わせるのは不本意だが、それよりも早くこの不快な場所から出たい。
「陸。悪いけど、これで我慢してくれる? 帰ったらすぐ着替えたらいいから」
「うん、分かった」
陸はスウェットを受け取ると素早く着替えを済ました。
0
あなたにおすすめの小説
君が僕を好きなことを知ってる
大天使ミコエル
BL
【完結】
ある日、亮太が友人から聞かされたのは、話したこともないクラスメイトの礼央が亮太を嫌っているという話だった。
けど、話してみると違和感がある。
これは、嫌っているっていうより……。
どうやら、れおくんは、俺のことが好きらしい。
ほのぼの青春BLです。
◇◇◇◇◇
全100話+あとがき
◇◇◇◇◇
【完結】俺はずっと、おまえのお嫁さんになりたかったんだ。
ペガサスサクラ
BL
※あらすじ、後半の内容にやや二章のネタバレを含みます。
幼なじみの悠也に、恋心を抱くことに罪悪感を持ち続ける楓。
逃げるように東京の大学に行き、田舎故郷に二度と帰るつもりもなかったが、大学三年の夏休みに母親からの電話をきっかけに帰省することになる。
見慣れた駅のホームには、悠也が待っていた。あの頃と変わらない無邪気な笑顔のままー。
何年もずっと連絡をとらずにいた自分を笑って許す悠也に、楓は戸惑いながらも、そばにいたい、という気持ちを抑えられず一緒に過ごすようになる。もう少し今だけ、この夏が終わったら今度こそ悠也のもとを去るのだと言い聞かせながら。
しかしある夜、悠也が、「ずっと親友だ」と自分に無邪気に伝えてくることに耐えきれなくなった楓は…。
お互いを大切に思いながらも、「すき」の色が違うこととうまく向き合えない、不器用な少年二人の物語。
主人公楓目線の、片思いBL。
プラトニックラブ。
いいね、感想大変励みになっています!読んでくださって本当にありがとうございます。
2024.11.27 無事本編完結しました。感謝。
最終章投稿後、第四章 3.5話を追記しています。
(この回は箸休めのようなものなので、読まなくても次の章に差し支えはないです。)
番外編は、2人の高校時代のお話。
【完結】嘘はBLの始まり
紫紺
BL
現在売り出し中の若手俳優、三條伊織。
突然のオファーは、話題のBL小説『最初で最後のボーイズラブ』の主演!しかもW主演の相手役は彼がずっと憧れていたイケメン俳優の越前享祐だった!
衝撃のBLドラマと現実が同時進行!
俳優同士、秘密のBLストーリーが始まった♡
※番外編を追加しました!(1/3)
4話追加しますのでよろしくお願いします。
孤毒の解毒薬
紫月ゆえ
BL
友人なし、家族仲悪、自分の居場所に疑問を感じてる大学生が、同大学に在籍する真逆の陽キャ学生に出会い、彼の止まっていた時が動き始める―。
中学時代の出来事から人に心を閉ざしてしまい、常に一線をひくようになってしまった西条雪。そんな彼に話しかけてきたのは、いつも周りに人がいる人気者のような、いわゆる陽キャだ。雪とは一生交わることのない人だと思っていたが、彼はどこか違うような…。
不思議にももっと話してみたいと、あわよくば友達になってみたいと思うようになるのだが―。
【登場人物】
西条雪:ぼっち学生。人と関わることに抵抗を抱いている。無自覚だが、容姿はかなり整っている。
白銀奏斗:勉学、容姿、人望を兼ね備えた人気者。柔らかく穏やかな雰囲気をまとう。
【完結済】俺のモノだと言わない彼氏
竹柏凪紗
BL
「俺と付き合ってみねぇ?…まぁ、俺、彼氏いるけど」彼女に罵倒されフラれるのを寮部屋が隣のイケメン&遊び人・水島大和に目撃されてしまう。それだけでもショックなのに壁ドン状態で付き合ってみないかと迫られてしまった東山和馬。「ははは。いいねぇ。お前と付き合ったら、教室中の女子に刺されそう」と軽く受け流した。…つもりだったのに、翌日からグイグイと迫られるうえ束縛まではじまってしまい──?!
■青春BLに限定した「第1回青春×BL小説カップ」最終21位まで残ることができ感謝しかありません。応援してくださった皆様、本当にありがとうございました。
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
春風の香
梅川 ノン
BL
名門西園寺家の庶子として生まれた蒼は、病弱なオメガ。
母を早くに亡くし、父に顧みられない蒼は孤独だった。
そんな蒼に手を差し伸べたのが、北畠総合病院の医師北畠雪哉だった。
雪哉もオメガであり自力で医師になり、今は院長子息の夫になっていた。
自身の昔の姿を重ねて蒼を可愛がる雪哉は、自宅にも蒼を誘う。
雪哉の息子彰久は、蒼に一心に懐いた。蒼もそんな彰久を心から可愛がった。
3歳と15歳で出会う、受が12歳年上の歳の差オメガバースです。
オメガバースですが、独自の設定があります。ご了承ください。
番外編は二人の結婚直後と、4年後の甘い生活の二話です。それぞれ短いお話ですがお楽しみいただけると嬉しいです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる