上 下
2 / 15

圭輔の遊び心と楽しむ前日

しおりを挟む
朝、圭輔が起きると、部屋に紗綾はもういない。親と朝の料理を作っているのだ。

「おはようございます」
「あぁ、おはよう」

 圭輔が挨拶したのはここの一家の主、飯塚利生。彼は怒ると怖いが、基本無口である。

「料理出来たわ」

 朝食は体のことに気を使って作った優しいご飯だ。

「美味しそう」

 圭輔が言うと、階段から降りる音が聞こえてきた。

「お義兄ちゃん。おはよう」
「はあぁ、圭君、おはよう」

 咲と沙也加だった。沙也加はパジャマから右肩をはだけさせていた。

「姉さん。だらしないわ」

 紗綾は沙也加を叱責したが、聞く耳持たずだった。
 圭輔はそのだらしない彼女と紗綾に挟まれて、朝ごはんを食べる。
 流石に許嫁がいる身とはいえ、思春期真っ只中の圭輔にとって、同い年の彼女のその格好は少々刺激的だった。

「あら、どうしたの圭君。そんなに見つめて」

 沙也加はニヤニヤし、圭輔は隣の許嫁に耳を引っ張られた。
 さてもう着替えている圭輔は先に家を出る。
 自転車をこいでいると、晴美と遭遇する。

「お早う圭ちゃん」
「お早う、晴美ちゃん」
「ちょっと聞いてよ」
「どうした?」
「昨日さ、タピオカ飲んだんだけどさ、これがめちゃくちゃ美味しくて」
「そうなんだ」
「一緒に行こうよ」
「うーん。悪い話じゃないな」
「でしょ。だから行こうよ」
「いいけど、僕には紗綾が」
「紗綾ちゃんには私から言っとくから」
「……」

 昼休み。

「小谷君」
「やぁ、中条さん」
「宿題は終わってるの?」
「今日は宿題は終わってる」
「そう……。あのね。小谷君。来週の土曜日一緒に城公園を散歩しない」
「いいけど僕には紗綾がいるから」
「紗綾ちゃんには私から言っとくから」

 部活の休み時間。

「やぁ、圭輔君」
「明美さん」
「今週の13:00に定食屋さんに行かない?」
「いいけど、僕には……」
「紗綾ちゃんには私から連絡しとくから」

 帰宅後。紗綾に事情を説明すると、

「また断れなかったの?」
「いや~、年頃の女子に頼まれたら無下にも出来ず」
「もう、貴方は天性のタラシね」
「済みません。あと、連絡あった?」
「いつもの三人からLineが来たわ」

 この三人は圭輔と紗綾の関係を知っており、三人とも紗綾とは良好関係である。
 しかし、この三人は許嫁反対派であり、血気盛んな年頃でかつ好きな男子を縛っているのが反対なのだ。
 そして、圭輔も女子とは遊びたい盛りなのだ。
 そこで、三人が紗綾に言う常套句がある。

(『遊びたい時に、遊ばないと男は将来妻を大切にしないわ』)

「全く、貴方の許嫁になると大変ね」

 紗綾は言った。

「私は監視役として付いていくから」
「えっ? う、うん。好きなようにしなよ」
「誰のせいか分かってるのかしら」
 彼女は不機嫌になりながら言った。
「で、いつなの?」
「それが……」
「えっ、全て土曜日?!」
「そうなんだよ。困ってるんだ。一応、時間はずらしてるんだけど」
「うーん」

 なぜか紗綾まで考えていると、

「話は聞かせて貰ったわ」
「姉さん」
「沙也加ちゃん」
「ここは私に任せなさい」
「え、本当に? 有難う。沙也加ちゃん」

 圭輔は喜んだ。
(姉さんに任せて大丈夫なのかしら)
 しかし、紗綾は不安に駆られた。
 そして、次の日(金曜日)。
 圭輔は朝にそれぞれ個別にLineで予定を送った。
 そして、圭輔は自転車で通学していると、
晴美が来た。

「お早う。圭ちゃん」
「晴美ちゃんか。Line見てくれた?」
「見た見た。大丈夫だよ」
「それなら大丈夫だ」
「けど何か遅いね」
「夕方前は予定があって」
「……ふーん」
そして圭輔は自分のクラスに行くと、
「お早う。小谷君」
「あぁ、お早う。中条さん。予定は大丈夫?」
「うん。大丈夫よ。けどこれだけしか時間取れないの?」
「そうなんだ。どうしても外せない予定が入ってしまって」
「ふーん。そっ」

 放課後。部活の休み時間。

「小谷君。これで大丈夫だから」
「そう、それは良かった」
「けど、ちと短くない?」
「ごめん。どうしても外せない予定が入って」
「ふーん……」

 圭輔、帰宅。そして食事後、圭輔と沙也加は入念な計画をたてた。
 とはいえ、別に大した計画ではない。内容に合わせて普通に組んだだけだ。
 部活後、部活を終えた圭輔と明美は一緒に定食屋さんに行って、ご飯を食べる。
 その後、圭輔と明美は分かれ、次は14:30頃から美咲と城公園を散歩する。
 そして、16:00に運動後、晴美とタピオカを飲みに行く。

「完璧な計画ね」
「あぁ、完璧な計画だ」
「それと、私に手伝ったお礼を頂戴ね」

 するっと、膝丈のスカートから成熟前の太ももを露わにした。

「します。します。何でもします」
「じゃあ、楽しんで頂戴」
「了解」
 そして、圭輔は沙也加の部屋から出て行った。

「ふふっ、楽しみだわ」

 そして、圭輔は紗綾の部屋に戻って、さっさと布団敷いて、

「よし。早めに寝る」
「あらあら、健康的だこと」
 紗綾は皮肉交じりに言った。
「いい、圭輔さん。これだけは言って置くわ。」
「はい」
「彼女達に手を出したら……」

 溜ながら続けた。

「折檻よ。分かってるわね!」
しおりを挟む

処理中です...