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エキセントリック・メイドドリーム
プロローグ01
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「あぁんっ、いけませんわアンデスト様! 私は卑しい身分のメイドです!」
私はそんな声をあげる。少し大袈裟な言い回しだろうか。
「そんなの関係ない! 君がいいんだ! ベル!」
アンデストの声が響く……私が声を変えていっているだけだけど、それでも妄想には十分だった。私は、自分の両肩を自分で抱きしめて悶えながら、床をゴロゴロと転がって、同じ場所を往復した。溢れんばかりの妄想が止まらなくて、ジッとはしてられないのだ。
「はぁんっ、アンデスト様!」
「ベル! 愛している!」
気持ちが盛り上がってきて、もう一度妄想の中のアンデストと愛の言葉を交わした。そうするとキュンとしてしまって、もう一度ゴロゴロと転がりまくる。
不意に部屋のドアが開いた。同僚のメイドであるエルラが蔑む様な視線を向けている。
「朝から何してるの? しかも外まで聞こえてるんだけど」
盛り上がりすぎて、声のボリュームが上がりすぎてしまったらしい。アンデストとの秘め事が聞かれてしまった。申し訳ありません、アンデスト様。私は努めて何もなかったように言葉を返した。
「べべべべべつに! なにも、しししししてませんが?!」
なぜか言葉に詰まりまくってしまったけど、冷静に対処できたらしい。エルラからは蔑みの視線は消えて、仕事モードの顔になっている。
「まぁいいけど……そろそろ皆さん起き始める頃だよ、アホな事してないで仕事着に着替えなさいよ」
アホな事ではない。朝の愛の挨拶である。王子たちに尻尾を振るだけの犬には理解できまい。私は立ち上がり、部屋の角にあるタンスからメイド服を取り出して、素早く寝間着から着替える。早着替えは得意だ。できるだけ長く寝るためだったり、妄想に浸るために必須だったから。
着替え終わって、机にある小さな鏡を覗き込む。そして少しあざとく見えてしまうけど、可愛らしくガッツポーズをした。手の甲を顔の方に向けて、腰を少し突き出して、チャームポイントを少し強調する。ガッツポーズに見え辛いけど、私はこれの方が似合うだろう。
「今日も頑張ろう」
それを見たからなのか、エルラが後ろで鼻で笑ったのが聞こえる。まだいたのか。私がエルラの方を振り向いて、不満を込めて「なによ」と言葉を投げつけてやった。
「アンデスト様はそういうのは好きじゃない、私みたいにクールビューティーが好みよ」
クールぶったポージングを、時間をかけて決めるエルラ。耳がチャームポイントと思っていらしく、メイドキャップで隠れてしまわない様にしている。形のいい耳のおかげか、クールビューティーに見えなくもない。私はそれに対して、お返しとばかりに鼻で笑ってやる。あまり時間もないので、それだけに留めてやった。
エルラと別れて私は、今日の当番の場所に向って歩き始める。私達メイドは、だいたいみんなライバルだ。身分の低い私達は、みんな身分の高い人間に見染められて玉の輿に乗ることを夢見てメイドになる。メイドドリーム。それを目指しているのだ。
ちなみに私が勤めているのは王城である。夢は大きく、王族狙いなのだ。
私はそんな声をあげる。少し大袈裟な言い回しだろうか。
「そんなの関係ない! 君がいいんだ! ベル!」
アンデストの声が響く……私が声を変えていっているだけだけど、それでも妄想には十分だった。私は、自分の両肩を自分で抱きしめて悶えながら、床をゴロゴロと転がって、同じ場所を往復した。溢れんばかりの妄想が止まらなくて、ジッとはしてられないのだ。
「はぁんっ、アンデスト様!」
「ベル! 愛している!」
気持ちが盛り上がってきて、もう一度妄想の中のアンデストと愛の言葉を交わした。そうするとキュンとしてしまって、もう一度ゴロゴロと転がりまくる。
不意に部屋のドアが開いた。同僚のメイドであるエルラが蔑む様な視線を向けている。
「朝から何してるの? しかも外まで聞こえてるんだけど」
盛り上がりすぎて、声のボリュームが上がりすぎてしまったらしい。アンデストとの秘め事が聞かれてしまった。申し訳ありません、アンデスト様。私は努めて何もなかったように言葉を返した。
「べべべべべつに! なにも、しししししてませんが?!」
なぜか言葉に詰まりまくってしまったけど、冷静に対処できたらしい。エルラからは蔑みの視線は消えて、仕事モードの顔になっている。
「まぁいいけど……そろそろ皆さん起き始める頃だよ、アホな事してないで仕事着に着替えなさいよ」
アホな事ではない。朝の愛の挨拶である。王子たちに尻尾を振るだけの犬には理解できまい。私は立ち上がり、部屋の角にあるタンスからメイド服を取り出して、素早く寝間着から着替える。早着替えは得意だ。できるだけ長く寝るためだったり、妄想に浸るために必須だったから。
着替え終わって、机にある小さな鏡を覗き込む。そして少しあざとく見えてしまうけど、可愛らしくガッツポーズをした。手の甲を顔の方に向けて、腰を少し突き出して、チャームポイントを少し強調する。ガッツポーズに見え辛いけど、私はこれの方が似合うだろう。
「今日も頑張ろう」
それを見たからなのか、エルラが後ろで鼻で笑ったのが聞こえる。まだいたのか。私がエルラの方を振り向いて、不満を込めて「なによ」と言葉を投げつけてやった。
「アンデスト様はそういうのは好きじゃない、私みたいにクールビューティーが好みよ」
クールぶったポージングを、時間をかけて決めるエルラ。耳がチャームポイントと思っていらしく、メイドキャップで隠れてしまわない様にしている。形のいい耳のおかげか、クールビューティーに見えなくもない。私はそれに対して、お返しとばかりに鼻で笑ってやる。あまり時間もないので、それだけに留めてやった。
エルラと別れて私は、今日の当番の場所に向って歩き始める。私達メイドは、だいたいみんなライバルだ。身分の低い私達は、みんな身分の高い人間に見染められて玉の輿に乗ることを夢見てメイドになる。メイドドリーム。それを目指しているのだ。
ちなみに私が勤めているのは王城である。夢は大きく、王族狙いなのだ。
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