剣と閃の虚偽剣(バルムンク)

Fran@新人賞がんばる

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第1話 紅い悪魔

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「ゼクスよ、お前はあまりにも強大すぎる。今後『剣』を使用することを禁止する」
俺、ゼクスが爺ちゃんの言葉を聞いたのはこれが最後だった。母さん父さんも反対することなく、俺は『剣』を持つことを禁じられた。
この時年は13歳。中学一年と同時に禁じられたのだった。
ゼクス・シューベルト。それが俺の名前。
紅い毛の髪、ワックスをつけたようなぼさぼさの天然髪である。
実はシューベルト家の忌まわしい過去がある。
それは生まれつき『最強』である。古の大戦でマキス・シューベルトという人物がいた、そうだ。そいつは『紅い聖剣』を使って魔物の大軍をたった一人で倒してしまうという偉業をなしてげてしまう。
人は彼を『紅聖』とよび、またあるものは『紅い悪魔』とも呼ばれたそうだ。なぜ紅い悪魔と呼ばれるのか?
それは先ほどにも言った通り、『たった一人で』、大軍を倒した。これは人の領域を超えているに他ならない。現世でいう『チート』というものだ。マキスは偉業を果たすとともに一生怨み続けられる異名をつけられたのだ。
では、現代に戻り。爺ちゃんの言葉を告げられて約2年ほどたったある日。父さん、シュディ・シューベルトからあるものをもらった。学園の入学案内だった。
「父さん、こんなのどうして?」
ゼクスは不思議で仕方なかった。父はシステム事業の会社員で、あまり人によらない人だったからだ。そして父はこういった。
「実は父さん、その学園の学園長と知り合いで。あっ、不倫とかそういうのじゃなくてな」
父よ、これは疑われるぞ。
取り出して学園長の写真が載っていたので確認すると、完全な女性だった。
「父さんな、ずっと前からお前の事見てた。お前は『剣』、好きなんだろ?」
父からそんな言葉が出るとは思ってもいなった。俺は、父を見てこういった。
「好きだよ。・・・でももう持っちゃいけないんだ」
つい本音をこぼしてしまった。『剣』は「護る」もの、『剣』は「暴力」ではない。
かつてこんな事を爺ちゃんは言っていた。ゼクスはその言葉が好きで、『剣』を持ったのだ。しかし、ゼクスの遺伝子に禁忌の力が宿っていた。それに気づいた爺ちゃんはあの時言ったのだろう。だが、父さんはそれをも覆す、一生の中で忘れらないだろう言葉をいってくれた。
「いいや、『持って』いいんだ。形じゃくなても、お前の『剣』は『心』の中にある。その心さえあれば、『紅い悪魔』ってなんだ関係ない。お前はお前だゼクス。お前のありのまま生きてほしい。母さんだってそう思っているはずだ。だから、この学園に行ってみないか?」
その言葉は、俺の心を突き動かし、この学園に通うきっかけとなったある一つの物語の始まりである。


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「おお、これが外国ってやつですか」
二ホン郊外、アリャシュトル付近、電車内。ゼクス・シューベルトはあの『誓いの日』から数か月後、中学を卒業し、父さんからもらったある学園の試験に見事合格し、本日は寮に住むということで、その学園の寮に向かっている途中であった。
「えーと、確か次の駅で降りるのだっけ、アルディスアーケード駅前だったっけか」
パンフレットを見ながら電車内にある路線表を確認する。いきいきと興味を示す俺は、ほかの人にとっては『紅い悪魔』だの、気持ち悪いだの、多分思っていることだろう。だが気にしない。関わるだけ面倒ということだ。父さんの言う通り、俺は心に剣をもって行動する事を父さん、母さんに誓ったのだ。それこそが『誓いの日』である。

二ホンと別の大陸が統合されできた『二ホンオルクディスア大陸』。
2030年に二ホンは絶望的な危機的状況に陥い、島全体が闇に葬られそうになった。しかし、2031年突如として出現した、『別の大陸』。これをオルクディスア大陸と名付けられた。この大陸に希望を託し、二ホン国家はこのオルクディスア大陸に移し、二ホンの領土として領地を行っていった。これが歴史学史上の改革「二ホン改革」である。
現在2050年。20年たった今ではオルクディスア大陸は前年以上に盛んになっていた。資源も前年の反省をもとに、安定した経済を回している。最も一番の理由は若い人間たちがこのオルクディスア大陸に移住してきたことだ。そして、『剣士』になるためにここアルディスアーケードに集まってくる。その理由は、ここ、アルディスには学園があるのだ。

閃銘アルディス学園。剣と剣のぶつかり合い、そして切磋琢磨に成長していくをモットーに設立された学園である。学園長シュティス・オーリディアはかの有名な『聖王』アーサー・ディスアルカディアの側近であり、異名は『魔神』とも呼ばれる人である。
後でこれは知ったのだが、爺ちゃんが言っていた『剣』は『護る』もの、『剣』は『暴力』ではない、これは『聖王』アーサーの言葉そうだ。
そんな側近であった『魔神』がこの学園を設立した理由、それは亡き『聖王』の願望そのものであるとパンフレットには書かれていた。『剣』とは何のために存在するものなのか、『正義』とは、というのを若い世代に知ってもらうため、設立したと記されていた。
『正義』とは。俺にもその大きな課題に興味があり、入学したというのも過言ではない。
そう考えながら、自分のバッグから父さんと母さんからもらったお守りを出した。
「剣は護るもの、剣は暴力ではない・・・それを体現できるようにしないとな」
そう呟きながら、アルディスアーケードにつくまで電車の椅子に座って景色を眺めていた。

***

「次は――、アルディスアーケード、お降りの際は忘れ物がないようにご注意ください」
来た。いよいよのゼクスの始まり場所にやってきた。といっても表面の話だが。
荷物がいっぱいのゼクスは、両手ふさがり、コロコロをギリギリもてる状況だった。そんなところに手を差し伸べてきた人がいた。
「よろしければ、お荷物持ちましょうか?」
よく見れば、パンフレットでみたアルディスの生徒だった。登校中だったのか、また思いやりを大事にしているアルディスの『生徒』であるのか、はたまたは気まぐれなのか。一人で何もかもこなしてきたゼクスにとって、不必要である。
「すみません、結構です」
当然の回答だ。知らない奴に持たせるほど、俺は安い人間ではない。大事なものだってはぃっているのだ。見ず知らずの人間に手伝わすほどゼクスもヤワではないのだ。
「・・・あれ、君ってまさか、ゼクス君?」
なぜ名前を知っておるのだ。
言葉に発そうと思ったが、ここは電車だ。あまり大きな声では話せない。
「・・・お前誰だ」
向こうの反応が非常にびっくりしていた。俺は人と関わるのは避けていた人であったので知っているなど相当のものだし、そして相手にもしないはずだ。
「私!ほら中学の時クラス委員長だったレヴィ・シャルル!」
そんな奴いたな、とふと思った。ゼクスをクラスとして認めるという運動に全力を注いで自滅していった委員長。その委員長も絶望的な人生を送ってきたのだと思う。知ったことではないが。やってほしいなどと、言ったこと一つもないというのに彼女レヴィは卒業の最後まで運動を続けていたそうだ。
「まさか、ゼクス君アルディスの学園に入るの?」
放って欲しい。このまま気楽に寮に行くつもりが、同じ学校の人間に会うという絶望かつ最悪な状況に陥った。話さないわけにもいかないので、ゼクスは相槌作戦へと出た。
「まあ、な」
質問を相槌だけでやり過ごし、電車から降りる瞬間を狙い、気を紛らわせ即降りて逃げる。完璧な作戦だ。さすが、勉強はした甲斐はある。
「そうなんだ!私もアルディスに入学するんだ。よかった、ゼクス君も一緒なんだね」
一緒にするでない。俺はやるべきことをやるためにここに来ただけだ。
お友達ごっこをしに来たのでないし、そもそもこの学園の特徴は生徒同士が『剣』と『剣』で切磋琢磨に成長していくことであって、お友達になろうとしていくような学園ではないはずだ。何を勘違いしているのだろうか。
まあどうでよいい。もうそろそろ、彼女との会話は終わりだ。電車は駅に近づくにつれて少しづつストップを聞かせていく。停止線にきちんと合うように合わせれていく。そして、電車は完全に停止し、扉が寸前に開こうとしていた。
今だ。
「あっ、あそこに猫が!やばい助けてあげないと~」
とんでもなく下手な法螺の吹き方だ。だが、純粋に、天然な人間ほどこんな下手な法螺でも引っかかるというものだ。人間の心理上の本を熟知しておいて正解であった。
「えっ!猫、どこ?」
成功だ。視線が俺のほうから完全に消えさった。このチャンスを逃さまいと、電車を一気に駆け抜けるように出た。人間でいえば可哀想なことをした、なんていうことがあるが、実際のコミュ障はそんなことも微塵の欠片も思ったことはない。その理由付けができるのは俺の実際談であるからだ。
それはさておき、とりあえず中学時代の人間を放置して、アルディスアーケードに着いた。ここからは新たな出会いが待っているのだろう。なんて、お調子くれるが、寮の案内に今日は父の知り合いという学園長自らの寮案内があるのだった。
「待ち合わせ場所はどの辺だったけか・・・」
メモには『カフェcatmeet』という文字だけである。住所も記載されておらず、アルディスアーケードに来ればわかるということだけしか、父さんは言わなかった。
「ノーヒントでのこの仕打ちはないだろ・・・」
フぅ、とため息はつくものの、たくさんの並ぶ店から、カフェの名前を探し出すことに専念したのだった。

レヴィはというと。
「あれ、ゼクス君いないじゃない・・・ってあれ?」
完全に嘘を教えられたことに気付かず、探し回っていたが、後で気づくのであった。
「まあ、学園に行けば、会えるよね。きっと・・・」
レヴィは何を思ったか、少し悲しげな顔で空を見上げていた。

***

さて、視点をもどして。
ゼクスはアーケードの入り口前にあるお店を見た。風がアンティーク調で、落ち着いている小さなお店。名前は。
「あった!カフェcatmmet!」
手間取ったが、なんとか待ち合わせの時間帯と、場所にたどり着くことができた。
学園長という人は中にいるのだろうか。不安と緊張と、なにより期待をもち、カフェの中へと入っていった。
「いらっしゃいませ」
お店の店員さんだ。ゼクスはとりあえず、中を探すことにした。髪の長い、新緑のある色、そして年に似合わぬ妖艶さ。大人のお姉さんを匂わす特徴ある人物を二階まであるカフェを探し回った。
しかし、そんな人物は影すらもいなかったのだ。時間を間違えたか、もしくは場所を間違えたか。こういうお店は同じところが何件も存在するので、そちらの可能性が高い。だが、両方の可能性を無効にする方法が、ひとつだけあった。それは『店員に聞く』ということだ。『聖王』の側近であった彼女に知らない人間など存在しない筈だ。むしろ知らないほうが、びっくりである。とにかくさっきの時間と場所の可能性を否定しつつ、店員に聞くことにした。
「あの、すいません」
無難な聞き方で店員を振り向かす。
「はい、なんでございましょうか」
「ここに、シュティス・オーリディアっていう人来ていませんでしたか?」
これでいないとなったら完全に場所と時間だ。どちらの考えが間違えっていたのか後で問いただせねばならない。だが、ここは賭けるしかない。『いる』という可能性にゼクスは賭けた。
「ああ、シュティス様の生徒様ですね、お聞きしています、こちらどうぞ」
賭けは勝った。時間と場所の否定が確定した。良かった、と一安心し店員さんに誘導してもらうのだった。

「こちらでございます」
連れられるがままに案内されたが、ここってどう考えても普通に使える場所ではないところにやってきた気がする。怖いが聞いてみることにした。
「あのー、ここって・・・」
「はい、シュティス様専用のvipルームにございます」
こんなところを買収してるのか。変わっている。
なんて思っている暇があるのであれば早く入らねば。
ゼクスは、目の前にある大きな扉を力強く押した。
「やあ、やっときたかね」
扉を開けるとそこにはいかにも富豪が座りそうな椅子に座り、とても高そうで高級感あふれるティーセットに、千円以上しそうなお菓子のバラエティ。「お金持ち」と一発で発していいくらいの場所に一人の女性がいた。
「あなたが、シュティスさん・・・?」
特徴は完全にとらえられている。パンフレットそのままの絵を描き出したかのようだった。
「フフ。まあまあ、こっちに来たまえ。立っていては疲れるであろう?」
誘うような言い方。ゼクスは取り込まれそうだったが、一瞬にして我に返った。危ない危ない、というように首をふり、もう一つの椅子に座った。
「ほう、催眠術を試していたのだが耐性があるのだな。なるほど、勉強になる」
本当に試されてたのか。扉を開ける前からなぜかと大きな魔力が漂ってはいたが。
「さて、今日は寮の案内だったなゼクス君。学園については何か質問はあるかい?」
質問は家を出る前にいろいろと考えていた。後で知って解決したことは多々あるがそれでも聞いておきたいことは結構あったが、大きな質問だけに絞った。
「ああ。そもそも学園は本当に魔力を使わず剣と剣の戦いを執り行っているんだな?」 
剣と剣で戦いを行っているのか。これは気になっているところだった。能力次第もありだろうし、何よりも実力で成り上がっている者はいるのか。先ほどのように魔力を使ってルール違反をしようとする輩はいつの世にも存在する。
「ああ、そうだ。その戦いを決めるのが『剣神祭』でもある」
『剣神祭』。剣の頂点を決める2人1組のトーナメント式の公式大会である。優勝者は前年度の優勝者とエキシビジョンマッチを組める。それさえも勝てれば剣神祭優勝者として最高峰の頂の戦い『真剣・神王祭』のチケットを獲得することができる。ここまで来れば神に挑戦するということなので常識的に一般の常人は勝てない。
興味はないが、一応学園の提供している行事なので勉強はしておいた。
「その剣神祭には興味はないが、それは魔力を使っていないとでも言えるのか」
「君は魔力魔力言っているのだが、何の怨念なのだ・・・」
少し困っていたが、改めるようにシュティスは咳払いをした。
「――――とにかく。剣と剣との闘い『剣闘』については純粋な剣の戦いだ。だが、最近はそうもいかなくてもな。能力と能力とのぶつけ合いが多い。剣神祭で執り行っているのは『剣闘』ではなく能力のぶつかり合い、『戦闘』を適用している」
「戦闘ね・・・」
かくいう自分も魔力に近い、そして能力でもあるものはある。『紅聖』の能力。
この能力は剣を所持し、抜刀しているものに限る能力だ。常人の約数億倍の超人能力を手に入れ、『紅い聖剣』の使用を許可される。その剣は、一言でいうと『破壊』。
その気になれば世界を滅ぼすことも可能である恐ろしい能力で、のめりこんでしまうと暴走し、本当の『紅い悪魔』となり果ててしまうのだ。
爺ちゃんに封印の施しはされてはいるが、いつ暴走を起こしてもおかしくはない。
「その――知っていると思うんだが、俺みたいな『能力』持っている奴も学園にいるってことなのか?」
正直、自分が『能力者』という仮定するなら、その他にも能力を持った人間がいてもおかしくない。例えば、時間を操作したりだとか、自由に火や水、風などの地水火風にのっとった能力の使用など。
「――――いるにはいる。だが、それはあくまで能力であり、現実世界に大きく影響出る規模のものではない。君みたいな『異例』はいない」
異例。かつてマキス・シューベルトの死から三年もたたない頃に闇の組織にマキスの死体を使って『紅い悪魔』を呼び起こした災厄があったと聞いたことがある。
その戦いに彼女シュティスの先祖も参加していた。
「なるほど、二ホンができる前からこの大陸、存在してたって感じだな」
「過去には、そうだ。だが古の大戦が終わって間もなくで一度この大陸は沈んで世界地図からは消えていたのだ。そしてまた出現した。その出現によって同じタイミングで、世界に能力をもった人間たちが、そう今の君たちの世代が生まれたんだ」
「納得しざるを得ない、嫌な話だな」
納得、というのは『俺たちが災厄になりかねない』ということに値する。古の大戦を再び引き起こすことが可能なのだ。
「―――重い話はこれでよそう。他にないかね、ハーレム人生は送れますか、とか」
「ぶっ!」
思わずすすっていたレモンティーを吹いてしまった。
「フフッ、男の子は正直者だな。して欲しいのなら手を貸してやるぞ?」
「結構です」
そもそも話す機会など、まして学園長と話すなどあまりない。相手がどう思っているかなど知ったことでもないのだ。あくまでゼクスの話であるが。
「抱きたい女も選ぶべきだ、ゼクス君。それもまた人生だろう?」
「はしたない話はやめてくれよ!」
完全にからかいに走り出した。ハハハ、とシュティス大笑いしている。
「ごめん、ごめん、ついついな。最近暇だったからさ、いつでもここに来てくれていいんだぞ?」
「二度とゴメンだ」
こんな店に来て、いつでもいいおやつが食えるとか。
「―――さて。本題の寮の案内だったな。そろそろ生徒も下校している頃合いだろう」
気が付けば、もう三時を越していた。話していると時間がたつのが早い。シュティスは重い腰をよっ、と上げガラス越しの外を見渡す。
「言っていなかったが、今日は私休みでな。今日君の部屋で泊まっていいかい?」
俺は腹の底から黒いオーラを発し。
「帰ってくださいね?」
ずいっ、と彼女の近距離で注意した。

晴れ渡る青い空。澄み切った雲。春風を漂わし、桜が吹雪く校庭。
「ここが、閃銘アルディス学園だ」
ずっしりと構える校舎。校舎にアルディス学園のシンボルがあった。剣と剣を交わせているのが特徴で、学園が一発で分かる。この付近には学校がないのだが。
「学校の中に寮があるんですね」
「ああ、ついてきたまえ」
シュティスが先頭に立ち、後ろからついていく。そして、ゼクス自身が恐れていた事がすぐに目の当たりになった。
それは、生徒の目。『紅い悪魔』は勿論のこと、大有名であり、災厄だ。噂で広まっているのは紅い髪の毛はみな『紅い悪魔』の末裔だと。もっぱらな大嘘だ。紅い髪の毛の人にはホントに謝罪したいところである。が、怨みで話もできない状況なのだろう。
視線が痛い。コソコソと話し声が響いてくる。
 うちの学園に『紅い悪魔』がきたってよ。
 ホント、大迷惑。消えてくれればいいのに。
 あいつ何とか蹴落として、学園追放しようぜ。
 ああ、この学園の終わりがやってきた・・・
ダダ漏れ。ゼクスは密かに超人の能力『紅聖』を使用し、コソコソ話している内容を聞き取っていた。
「盗み聞きとはいい趣味しないね、ゼクス君」
「バレてました?」
てへへ、と笑いながらごまかす。完全な暴言であるはずなのに。慣れすぎてしまったのか、生徒の声には自然と笑いしかでない。『三下共』と思う自分が怖い。
「・・・」
シュティスはそれ以上は何も言わなかった。ゼクスの気持ちを察したのだろうか、彼女はさっき以上に堂々と歩いていた。何かを守るように。いや、『護る』ように。
「・・・君がこの先どんなことが起きようと、私が面倒みてやる。母親代わりはできないが、それなりに支援するつもりだ」
こそっとゼクスの隣に寄り添い、囁いた。最低限の保証、ということだろうか。もしくは情が移ったのだろうか。だとするとゼクスにとって情は必要はない。
なぜなら、その言葉にいつも裏切られてきたから。
「・・・まあ、それなりに受け取っておきます」
シュティスが信用に値するかは、一度剣を交えてみないとわからない。それまでは半分半分として受け取っておくことにした。

***

「さあ、ここが君の部屋となる」
二階、三〇二号室。以外と部屋は広く、何人か呼べるような部屋の構成となっていた。
これで一人部屋というのはいささか豪華すぎではないだろうか、なんて思ったりもした。
「人は呼んだりはしないが中々広くていいな」
「気に入ってもらえて何よりだ」
さっきの生徒の声が気になっているのか、シュティスは少し虚しい顔をしていた。
「・・・あんま、気にしないでください。俺は俺ですし、何よりも剣は持ってません。だから『紅い聖剣』の顕現もできないし、何もできやしない。それでいいんです」
「・・・だが、それでは君があまりにも・・・」
あんまり大人をからかうのはよくはないと思うが、それでも、とゼクスは話を続ける。
「『剣』は『護る』もの、『剣』は『暴力』ではない。――俺は、それを地で体現させたいんです」
「・・・」
「それと、父さんが言ってくれた。形だけが『剣』じゃない。想う『心』もそれは大きな『剣』になると。だから、本当に『紅聖』の力が必要になったとき、それは『護るために』
使ったんだと判断してくれていい」
あの『誓いの日』に言っていた言葉が脳裏に浮かんで言葉に発していた。
「あいつ・・・マキスは、次の世代に申し訳ない、なんて言葉を残していったそうなんだ」
「!」
聞いたこともない、マキス・シューベルトの死に際の最後の話。知っているのは側近である人たちしかきいていない。俺は今日の出来事、今日の話を忘れることはない。
「君は知らないだろうが、私はあいつの言葉を覚えてるのだ。先祖の遺伝子かもしれないが、なぜだか覚えている。記憶の詐称かもしれんな。だけど・・・君にあいつの最後を話しておいたほうがいいかもしれん」
「・・・」
ゼクスの知らないもう一つの『真実』。ゼクスは純粋に知りたかった。
「教えてくれ、もう一つの『真実』」
「・・・」
シュティスは何かを思いついたようで、ゼクスに提案を仕掛けた。
「・・・一つ、手合わせしないか?『剣闘』で」
なるほど、面白く、実に素晴らしい提案だと、ゼクスは久しぶりに心の底から思った。
「シュティスさんがいいのなら、喜んで受けさせてもらいます」
「フフ、本当に素直な子だな、君は」
微笑む姿はまさしく、天使。大人の魅力もまたいいな、とゼクスの頭の0.1割思った。
「場所を変えようか、部屋を片付けてそのまま闘技場にいくとしよう」
ぐちゃぐちゃのままではさすがにいけないな、と思い、シュティスに協力してもらい、部屋を片付けることにした。
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