俺の弟は世界一可愛い

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01.春哉視点《夏の気配》

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高校にあがってから数ヵ月が経ち、身体を包み込む空気もどんどんと暑くなってきた。
学校の奴らは、もう少ししたら始まるであろう体育祭練習よりも、目前の夏休みの計画をたてることに全勢力をまわしているといった状態だ。とにかくテンションが高くて騒がしい。
だが正直、この季節はあまり好きではない。何故なら・・・


「あー…。なつが足りねぇ…」
「なぁなぁはるぴ、教室について開口一番がそれってどうなの?」
「おー…辻おはよー」
「あら、はるぴ呼びに反応しないほど飢えてるの??大丈夫?おっぱい揉む?」
「おめぇの胸なんて揉んでも満たされねぇよ。なつの胸揉ませろ…」
「それは夏樹ちゃん本人にお願いして・・・、ってあぁなるほど!そういや夏樹ちゃん超暑がりやったな!くっつこうとしても嫌がられるんか」
「・・・・・・あぁ・・・」

そう、なつは超暑がりのためこの季節になると毎年くっつかれるのを嫌がるんだ・・・。
いつも俺の腕枕で寄り添って同じベッドで寝てるのに、この時期になるとベッドの端っこのエアコンの風がよく当たるところに丸まって寝るし、
朝いつもみたいにキスしてお触りしてイチャイチャしながら起こそうとすると『・・・暑い、離れて・・・』と真顔で拒否されてしまう、そんな日々に俺は欲求不満が募る一方だった。

相変わらずなつとの関係は『兄弟』から進展無しだし・・・。
どうやったら俺のことを一人の男として見てくれるのだろうか。
あー・・・なつの柔らかい唇を貪って慎ましやかな乳首に吸い付き美しいペニスから思い切り精液を絞り尽くしてやりたい。そしてその奥の蕾をこじ開けて俺自身で思い切り中を突いてやりたい。
指一本も動かせないほどに抱き潰して俺の腕の中に閉じ込めておきたい。
なつ、俺の、俺だけのなつ・・・

「はるぴ、顔がオオカミさんになっとるで。周りの女子がうるさいからその顔やめて」
「あ?」

辻の言葉に軽く周りに視線をやると教室中の女子がこちらをガン見していた。いや、廊下からも見られてる。そんな血走った目で見られたら流石に恐いからやめてくれ。
教室を見回したときに俺と目が合ったと思い込む女子たちが次々と悲鳴を上げていき何人かがその場に崩れ落ちたので、中々カオスな空間が出来上がっていた。

「あひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!今日も絶好調やな~っひひっ!!」
辻が腹を抱えて他人事のように大笑いしている。いや、実際他人事なんだが。
ムカつくので一発殴っておこう。
『いったーー!!ひどいわはるぴ~~~!!』と騒いでいる辻を無視して窓の外を眺めた。

澄み切った青空を見つめながら自分の煩悩を沈めることに集中していると、廊下の方から『はる~!』と声が聞こえた。その声の主を一瞬で頭のなかに思い浮かべ光の速さでそちらの方向を向く。

「ーーっ!なつ!わざわざ3年の教室までどうしたんだ?」
背後に大量の花を咲かせながらなつに駆け寄るとなつを思い切り抱きしめた。あぁ柔らかいしいい匂い…いつもの匂いに加えて汗の匂いがする、おっとダメだダメだ興奮してきた落ち着こう。
「はるあついよ~!」
なつがいやいやをするのでしぶしぶ開放すると、可憐な美少年が俺の目の前でふわっと笑う。ああああああもうその表情!!!いい!!今すぐ空き教室に連れ込んでぐちゃぐちゃにしてやりたい!!!
「…ーってね。あれ、はるちゃんと聞いてた?」
「え?あぁごめんちょっと考え事してて聞いてなかった」
「もー!だからね、今日の放課後は斎藤と遊んでから帰るから先に帰っててって言いに来たの!」
「・・・え?あ、あぁ・・・、分かった・・・」

じゃぁねー!と教室を後にするなつを見送りながらズーンと気分が落ち込んでいった。

「・・・・・・まぁ、元気だせや!学食一番高いやつ奢ったるから!」
「・・・デザートもつけろ」
「遠慮ないな!?」

辻に励まされているうちに教師がやってきて授業が始まる。授業中なつのことを考えたり、今日の放課後なつが家に返ってくるまでどうやって時間を潰そうか考えていたらあっという間に放課後になっていた。
いつもはもっとしゃんとしているのだが、どうやら深刻ななつ不足になると俺の思考はポンコツになってしまうらしい。


(はぁー、家でなつの好物でも作って帰ってくるのを待つかな…)
溜息を零しながら席を立つのと同時に「はるくん!ちょっといい?」と声をかけられた。
こいつは確か、隣のクラスの女子を牛耳ってる奴・・・だった気がする。ちょうど暇だから少し付き合ってやるか。
スタスタと前を歩く女子の後ろをついていくと人通りの少ない廊下に連れてこられた。

「で、なんだよ?」
「うふふ!あのね、はるくんにご褒美を貰いに来たの!」
「は?ご褒美?」
「舞ね、先週弟くんに告白しようとしてた女の子6人阻止してあげたよ!だからご褒美ちょうだい♪」
「・・・・・・・。あー・・・そういうこと」

ようやく話の主旨が理解できた。
この学校の女子の間では変な話が出回っていて、その内容が『瀬野春哉のために瀬野夏樹に変な虫がつかないように動いたら春哉からご褒美がもらえる』という一体どこから湧いたのか分からない噂だった。
まぁ、俺もなつに変な虫がつかないのは有り難いし、噂話に対して特に否定をしなかったからこんなふうに俺に『ご褒美』を催促に来る女がちょこちょこ現れていた。
なつの身代わりでもいいから抱いてほしいなんて言われるから今までも何人か相手にしてきた。



「んで、ご褒美って何してほしいわけ?」
「そんなの決まってるじゃない?」
そう言いながら俺の身体に正面からピタリと寄り添ってくると、自分の胸を俺の身体に押し付けてくる。自分より低い奴を見るために自然と下を向くと、第三ボタンまで開けられたYシャツからご自慢の胸の谷間が嫌でも目に入ってくる。

んー、どうするかなぁ。全然タイプから外れているわけではないし、恐らく身体だけの関係と割り切れるタイプの人間だ。そして俺は今すごく欲求不満だ。それに加えて今日の放課後は暇を持て余している。

「・・・・・・・別に構わねぇけど、俺からは動かねえぞ。あと声は出すなよ」
なつのことを考えてヤるのにお前の声を聞いたら萎えちまうから
「やったーーー♪心配しなくても舞の悩殺ボディでがむしゃらに動きたくしてあ・げ・る」

バチンっとウインクを添えて自信満々な返事が返ってきた。あ、少しイラッとしたぞ。

「・・・じゃあこの理科室でいいな」
一番近いその教室を覗き込んで人がいないのを確認してから中に入る。
この時間帯に理科室に人が来ることは殆ど無いし、この教室がある廊下自体人通りが少ない。さっさと終わらせるなら問題ないだろう。

「きゃーーっ!ようやくはるくんとエッチできるなんて舞嬉しいっ!きゃはっ」
「・・・・・。」
鬱陶しすぎてちゃんと勃つか少し心配になってきた・・・。

その時、はしゃぐ女子に気を取られていた俺は、そのやり取りを少し離れたところでなつに聞かれていたことに気付くことが出来なかった。
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