死の商人、異世界にて暗躍す〜裏切られた武器商人は奴隷少女と銃器の力で成り上がる〜

駄作ハル

文字の大きさ
2 / 93
第一章 第二の覇道、見出したり

第2話 異世界へ

しおりを挟む
「痛つつつ……。どうして俺は生きている……?」

 男は焦げ臭いヘリの残骸を掻き分けて立ち上がる。

「どこだここは……。スマホどころか衛星電話すら通じないぞ……」

 男は周囲を見渡す。そこには米軍もヴァルカン社の傭兵もいない。
 それどころかアゼルバイジャン紛争地域の荒野とはかけ離れた自然豊かな森の中だった。

「ヘリはそんなに飛んでないはずだが……」

 男は元居たところに戻り、生存者を探す。

「無意味だと思った回避行動のお陰で直撃は免れたか……。近接信管でエンジンは吹き飛んでいるが武器は無事だな。我が社の耐衝撃ケースは伊達じゃないな」

 貨物室は比較的損傷が軽微だったが、前のめりに墜落したようでコックピットはぺしゃんこになっていた。

「それにしても、何故俺だけ無傷で生き残っている? パイロットの死体はどこだ? どうしてアメリカ軍は俺を捕まえない? KIAの報告もなしに撤退などするはずもないだろう」

 男は頭を整理するためにブツブツと呟きながら、護身用のハンドガンを確認する。そして更なる戦闘に備え、商品の中からチェストリグとAR15を取り出して装備した。

「久しぶりの感覚だな……」

 武器を手にした男の目に、殺意の揺らめきが宿る。

 男は周囲を警戒しつつ探索に出た。
 しかしどこまで行っても人っ子一人見当たらず、人工物すら存在しなかった。

「仕方ない。遭難した前提で本格的に行動するか……」

 男は草木でヘリを隠し、かつて学んだサバイバル知識を思い出す。

「水の確保が最優先として、小川を辿って行くか」

 手持ちのナイフで草木を打ち払い、迷うことなくひたすら進んで行った。

 それから二時間ほど道なき道を歩いた頃、人の声が聞こえてきた。男は敵であることを警戒して銃を構える。
 慎重に声の方へ近づくと、声は全て女のもので、どうやら叫び声を上げているようだった。

 トラブルに巻き込まれるのは御免だったが、情報が欲しいのもまた事実であった。一瞬の逡巡の後、男は彼女らとコンタクトを取ることに決めた。

「早く逃げるぞ!」
「駄目ですわ! 逃げずに戦うのよ!」
「今回は諦めよう……! 命があればまた来れるから……!」

「日本語だと……!?」

 地球では見たこともない植生に見たこともない地形であったが、女たちの声は間違いなく日本語だった。

「──ど、どうしてここに人が!?」
「貴方、早くお逃げなさい!」
「走って……!」

「コスプレ……? それとも映画の撮影か……?」

 男の方へ走って来る三人組の女は、まるでゲームの中の冒険者のような格好をしていた。

 先頭のゲルマン系の女は鮮やかな緑色のワンピースを身にまとい、その上から金属の胸当てを着けている。
 長い茶髪は風になびき、腰には小さなポーチがぶら下がっていた。足元は厚底の革製ブーツで、革の手袋をした両手で長剣を握っている。

 弓を持つスラヴ系の女は、どこぞの貴族の令嬢のような縦ロールとドレスという格好であった。

 そして最後の一人が日本人のようなアジア系。彼女はまるで魔法使いのような格好をしており、木の杖を持っていた。


 一件共通点も無さそうな三人組であったが、不思議なことにその全員が流暢な日本語を操っている。

「もうダメ……! 走れない……!」
「そんな!」
「やっぱり戦うしかないんですわ! そこのお方! 危ないのでお下がりくださいまし!」

 先頭の女は剣を構えて振り返る。金髪の女は背負っていた弓を手に取り、矢を番えた。
 ブカブカのローブを纏う黒髪の女は杖のような木の棒を取り出す。

 訳も分からず立ち尽くす男の前に、女たちを追い詰めていた存在が現れた。

「は……? 何なんだありゃ……」

「あれはジャイアントマンティス! 討伐等級は第三級! この辺りで二番目に強力なモンスターです!」

「ジャイアント……? 討伐等級……? モンスター……? あの馬鹿デカいカマキリがか……?」

 男はまだ彼女らの言うことを信じてはいなかった。それもそのはずである。そのカマキリ型のモンスターは体長五メートル以上もあった。こんな生物は地球上に存在しない。
 男は未だに特撮映画の撮影だと思っていた。

 しかしその幻想はいとも容易く打ち砕かれた。

「キジャァァァァァァ!!!」

 モンスターは巨大な鎌で木々を薙ぎ払う。

「ミサキ! 魔法を!」
「う、うん……! 火花の舞い踊る魔力の海よ、我に集いし炎の力を与えん……! ファイヤーボール……!」

 黒髪の女が呪文のようなものを唱えると、杖のような木の棒からサッカーボール大の火の玉が勢いよく飛び出した。

「ジギャャャァァァ!!!」

 火の玉はモンスターの顔面に命中し、モンスターは不快な金切り声を轟かせる。

「いくら日本でも、こんなものは造れないな……」

「貴方何を言ってるんですの!?」
「いいから戦うよソフィア!」
「ええ! 私は左から援護を! オリビアは右から!」

 どうやらオリビアという茶髪の女がリーダーのようだ。オリビア一人が前衛で、後の二人が後衛というパーティだった。

 ソフィアと呼ばれる金髪の女の矢はモンスターの外骨格に弾かれ、まともなダメージを与えられていない。オリビアの剣もガキンガキンと火花を散らす程強く叩きつけるが、肝心のモンスターは最初の火の玉以外の攻撃は感知すらしていないようだった。

「キジャァァァ!!!」

「オリビアさん離れて! 攻撃が来ますわよ!」
「ミサキ魔法を早く!」
「ごめん……! 魔力がまだ……!」

 魔法だのなんだの有り得ないことを言う三人組に、男はもはや疑いの目を向けてはいなかった。
 目の前の化け物から放たれる純粋な狂気と、三人組を取り巻く緊張感が本物であると察してから、男は脳内で作戦を練っていた。

「顔が、弱点なんだな?」

「ええ! そうですわ!」
「あなたも……魔法を……?」

「まあ、そんなもんさ」

 男はAR15のにマウントされた二倍ドットサイトを覗き込み、モンスターの眼球に照準を合わせる。

「ジャァァァァ!!!」

「オリビアさん避けて!」
「なッ――!」
「いや……!」

 モンスターが鎌を振りかぶった瞬間、男は立て続けに五発発砲した。
 サプレッサーを装備したアサルトライフルがタン、タン、タン、タン、タンと無機質な音を発する。

「ギェェェェェ!?」

 五発全弾がモンスターに命中。両眼に一発ずつ、眉間に三発撃ち込まれたモンスターはその巨体ごと地面に崩れ落ちた。

「やったんですの……?」

 男は死にかけの虫のようにピクピクと脚を動かすモンスターに近づき、更に二発、脳天に銃弾を叩き込んだ。

「終わり、だな――」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.
ファンタジー
平凡な高校生・篠原蓮は、クラスメイトと共に突如異世界へ召喚される。 女神から与えられた使命は「魔王討伐」。 しかし、蓮に与えられたスキルは――《リサイクル》。 戦闘にも回復にも使えない「ゴミスキル」と嘲笑され、勇者候補であるクラスメイトから追放されてしまう。 だが《リサイクル》には、誰も知らない世界の理を覆す秘密が隠されていた……。 獣人、エルフ、精霊など異種族の仲間を集め、蓮は虐げられた者たちと共に逆襲を開始する。

1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!

マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。 今後ともよろしくお願いいたします! トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕! タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。 男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】 そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】 アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です! コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】 マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。 見てください。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...