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第一章 第二の覇道、見出したり
第2話 異世界へ
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「痛つつつ……。どうして俺は生きている……?」
男は焦げ臭いヘリの残骸を掻き分けて立ち上がる。
「どこだここは……。スマホどころか衛星電話すら通じないぞ……」
男は周囲を見渡す。そこには米軍もヴァルカン社の傭兵もいない。
それどころかアゼルバイジャン紛争地域の荒野とはかけ離れた自然豊かな森の中だった。
「ヘリはそんなに飛んでないはずだが……」
男は元居たところに戻り、生存者を探す。
「無意味だと思った回避行動のお陰で直撃は免れたか……。近接信管でエンジンは吹き飛んでいるが武器は無事だな。我が社の耐衝撃ケースは伊達じゃないな」
貨物室は比較的損傷が軽微だったが、前のめりに墜落したようでコックピットはぺしゃんこになっていた。
「それにしても、何故俺だけ無傷で生き残っている? パイロットの死体はどこだ? どうしてアメリカ軍は俺を捕まえない? KIAの報告もなしに撤退などするはずもないだろう」
男は頭を整理するためにブツブツと呟きながら、護身用のハンドガンを確認する。そして更なる戦闘に備え、商品の中からチェストリグとAR15を取り出して装備した。
「久しぶりの感覚だな……」
武器を手にした男の目に、殺意の揺らめきが宿る。
男は周囲を警戒しつつ探索に出た。
しかしどこまで行っても人っ子一人見当たらず、人工物すら存在しなかった。
「仕方ない。遭難した前提で本格的に行動するか……」
男は草木でヘリを隠し、かつて学んだサバイバル知識を思い出す。
「水の確保が最優先として、小川を辿って行くか」
手持ちのナイフで草木を打ち払い、迷うことなくひたすら進んで行った。
それから二時間ほど道なき道を歩いた頃、人の声が聞こえてきた。男は敵であることを警戒して銃を構える。
慎重に声の方へ近づくと、声は全て女のもので、どうやら叫び声を上げているようだった。
トラブルに巻き込まれるのは御免だったが、情報が欲しいのもまた事実であった。一瞬の逡巡の後、男は彼女らとコンタクトを取ることに決めた。
「早く逃げるぞ!」
「駄目ですわ! 逃げずに戦うのよ!」
「今回は諦めよう……! 命があればまた来れるから……!」
「日本語だと……!?」
地球では見たこともない植生に見たこともない地形であったが、女たちの声は間違いなく日本語だった。
「──ど、どうしてここに人が!?」
「貴方、早くお逃げなさい!」
「走って……!」
「コスプレ……? それとも映画の撮影か……?」
男の方へ走って来る三人組の女は、まるでゲームの中の冒険者のような格好をしていた。
先頭のゲルマン系の女は鮮やかな緑色のワンピースを身にまとい、その上から金属の胸当てを着けている。
長い茶髪は風になびき、腰には小さなポーチがぶら下がっていた。足元は厚底の革製ブーツで、革の手袋をした両手で長剣を握っている。
弓を持つスラヴ系の女は、どこぞの貴族の令嬢のような縦ロールとドレスという格好であった。
そして最後の一人が日本人のようなアジア系。彼女はまるで魔法使いのような格好をしており、木の杖を持っていた。
一件共通点も無さそうな三人組であったが、不思議なことにその全員が流暢な日本語を操っている。
「もうダメ……! 走れない……!」
「そんな!」
「やっぱり戦うしかないんですわ! そこのお方! 危ないのでお下がりくださいまし!」
先頭の女は剣を構えて振り返る。金髪の女は背負っていた弓を手に取り、矢を番えた。
ブカブカのローブを纏う黒髪の女は杖のような木の棒を取り出す。
訳も分からず立ち尽くす男の前に、女たちを追い詰めていた存在が現れた。
「は……? 何なんだありゃ……」
「あれはジャイアントマンティス! 討伐等級は第三級! この辺りで二番目に強力なモンスターです!」
「ジャイアント……? 討伐等級……? モンスター……? あの馬鹿デカいカマキリがか……?」
男はまだ彼女らの言うことを信じてはいなかった。それもそのはずである。そのカマキリ型のモンスターは体長五メートル以上もあった。こんな生物は地球上に存在しない。
男は未だに特撮映画の撮影だと思っていた。
しかしその幻想はいとも容易く打ち砕かれた。
「キジャァァァァァァ!!!」
モンスターは巨大な鎌で木々を薙ぎ払う。
「ミサキ! 魔法を!」
「う、うん……! 火花の舞い踊る魔力の海よ、我に集いし炎の力を与えん……! ファイヤーボール……!」
黒髪の女が呪文のようなものを唱えると、杖のような木の棒からサッカーボール大の火の玉が勢いよく飛び出した。
「ジギャャャァァァ!!!」
火の玉はモンスターの顔面に命中し、モンスターは不快な金切り声を轟かせる。
「いくら日本でも、こんなものは造れないな……」
「貴方何を言ってるんですの!?」
「いいから戦うよソフィア!」
「ええ! 私は左から援護を! オリビアは右から!」
どうやらオリビアという茶髪の女がリーダーのようだ。オリビア一人が前衛で、後の二人が後衛というパーティだった。
ソフィアと呼ばれる金髪の女の矢はモンスターの外骨格に弾かれ、まともなダメージを与えられていない。オリビアの剣もガキンガキンと火花を散らす程強く叩きつけるが、肝心のモンスターは最初の火の玉以外の攻撃は感知すらしていないようだった。
「キジャァァァ!!!」
「オリビアさん離れて! 攻撃が来ますわよ!」
「ミサキ魔法を早く!」
「ごめん……! 魔力がまだ……!」
魔法だのなんだの有り得ないことを言う三人組に、男はもはや疑いの目を向けてはいなかった。
目の前の化け物から放たれる純粋な狂気と、三人組を取り巻く緊張感が本物であると察してから、男は脳内で作戦を練っていた。
「顔が、弱点なんだな?」
「ええ! そうですわ!」
「あなたも……魔法を……?」
「まあ、そんなもんさ」
男はAR15のにマウントされた二倍ドットサイトを覗き込み、モンスターの眼球に照準を合わせる。
「ジャァァァァ!!!」
「オリビアさん避けて!」
「なッ――!」
「いや……!」
モンスターが鎌を振りかぶった瞬間、男は立て続けに五発発砲した。
サプレッサーを装備したアサルトライフルがタン、タン、タン、タン、タンと無機質な音を発する。
「ギェェェェェ!?」
五発全弾がモンスターに命中。両眼に一発ずつ、眉間に三発撃ち込まれたモンスターはその巨体ごと地面に崩れ落ちた。
「やったんですの……?」
男は死にかけの虫のようにピクピクと脚を動かすモンスターに近づき、更に二発、脳天に銃弾を叩き込んだ。
「終わり、だな――」
男は焦げ臭いヘリの残骸を掻き分けて立ち上がる。
「どこだここは……。スマホどころか衛星電話すら通じないぞ……」
男は周囲を見渡す。そこには米軍もヴァルカン社の傭兵もいない。
それどころかアゼルバイジャン紛争地域の荒野とはかけ離れた自然豊かな森の中だった。
「ヘリはそんなに飛んでないはずだが……」
男は元居たところに戻り、生存者を探す。
「無意味だと思った回避行動のお陰で直撃は免れたか……。近接信管でエンジンは吹き飛んでいるが武器は無事だな。我が社の耐衝撃ケースは伊達じゃないな」
貨物室は比較的損傷が軽微だったが、前のめりに墜落したようでコックピットはぺしゃんこになっていた。
「それにしても、何故俺だけ無傷で生き残っている? パイロットの死体はどこだ? どうしてアメリカ軍は俺を捕まえない? KIAの報告もなしに撤退などするはずもないだろう」
男は頭を整理するためにブツブツと呟きながら、護身用のハンドガンを確認する。そして更なる戦闘に備え、商品の中からチェストリグとAR15を取り出して装備した。
「久しぶりの感覚だな……」
武器を手にした男の目に、殺意の揺らめきが宿る。
男は周囲を警戒しつつ探索に出た。
しかしどこまで行っても人っ子一人見当たらず、人工物すら存在しなかった。
「仕方ない。遭難した前提で本格的に行動するか……」
男は草木でヘリを隠し、かつて学んだサバイバル知識を思い出す。
「水の確保が最優先として、小川を辿って行くか」
手持ちのナイフで草木を打ち払い、迷うことなくひたすら進んで行った。
それから二時間ほど道なき道を歩いた頃、人の声が聞こえてきた。男は敵であることを警戒して銃を構える。
慎重に声の方へ近づくと、声は全て女のもので、どうやら叫び声を上げているようだった。
トラブルに巻き込まれるのは御免だったが、情報が欲しいのもまた事実であった。一瞬の逡巡の後、男は彼女らとコンタクトを取ることに決めた。
「早く逃げるぞ!」
「駄目ですわ! 逃げずに戦うのよ!」
「今回は諦めよう……! 命があればまた来れるから……!」
「日本語だと……!?」
地球では見たこともない植生に見たこともない地形であったが、女たちの声は間違いなく日本語だった。
「──ど、どうしてここに人が!?」
「貴方、早くお逃げなさい!」
「走って……!」
「コスプレ……? それとも映画の撮影か……?」
男の方へ走って来る三人組の女は、まるでゲームの中の冒険者のような格好をしていた。
先頭のゲルマン系の女は鮮やかな緑色のワンピースを身にまとい、その上から金属の胸当てを着けている。
長い茶髪は風になびき、腰には小さなポーチがぶら下がっていた。足元は厚底の革製ブーツで、革の手袋をした両手で長剣を握っている。
弓を持つスラヴ系の女は、どこぞの貴族の令嬢のような縦ロールとドレスという格好であった。
そして最後の一人が日本人のようなアジア系。彼女はまるで魔法使いのような格好をしており、木の杖を持っていた。
一件共通点も無さそうな三人組であったが、不思議なことにその全員が流暢な日本語を操っている。
「もうダメ……! 走れない……!」
「そんな!」
「やっぱり戦うしかないんですわ! そこのお方! 危ないのでお下がりくださいまし!」
先頭の女は剣を構えて振り返る。金髪の女は背負っていた弓を手に取り、矢を番えた。
ブカブカのローブを纏う黒髪の女は杖のような木の棒を取り出す。
訳も分からず立ち尽くす男の前に、女たちを追い詰めていた存在が現れた。
「は……? 何なんだありゃ……」
「あれはジャイアントマンティス! 討伐等級は第三級! この辺りで二番目に強力なモンスターです!」
「ジャイアント……? 討伐等級……? モンスター……? あの馬鹿デカいカマキリがか……?」
男はまだ彼女らの言うことを信じてはいなかった。それもそのはずである。そのカマキリ型のモンスターは体長五メートル以上もあった。こんな生物は地球上に存在しない。
男は未だに特撮映画の撮影だと思っていた。
しかしその幻想はいとも容易く打ち砕かれた。
「キジャァァァァァァ!!!」
モンスターは巨大な鎌で木々を薙ぎ払う。
「ミサキ! 魔法を!」
「う、うん……! 火花の舞い踊る魔力の海よ、我に集いし炎の力を与えん……! ファイヤーボール……!」
黒髪の女が呪文のようなものを唱えると、杖のような木の棒からサッカーボール大の火の玉が勢いよく飛び出した。
「ジギャャャァァァ!!!」
火の玉はモンスターの顔面に命中し、モンスターは不快な金切り声を轟かせる。
「いくら日本でも、こんなものは造れないな……」
「貴方何を言ってるんですの!?」
「いいから戦うよソフィア!」
「ええ! 私は左から援護を! オリビアは右から!」
どうやらオリビアという茶髪の女がリーダーのようだ。オリビア一人が前衛で、後の二人が後衛というパーティだった。
ソフィアと呼ばれる金髪の女の矢はモンスターの外骨格に弾かれ、まともなダメージを与えられていない。オリビアの剣もガキンガキンと火花を散らす程強く叩きつけるが、肝心のモンスターは最初の火の玉以外の攻撃は感知すらしていないようだった。
「キジャァァァ!!!」
「オリビアさん離れて! 攻撃が来ますわよ!」
「ミサキ魔法を早く!」
「ごめん……! 魔力がまだ……!」
魔法だのなんだの有り得ないことを言う三人組に、男はもはや疑いの目を向けてはいなかった。
目の前の化け物から放たれる純粋な狂気と、三人組を取り巻く緊張感が本物であると察してから、男は脳内で作戦を練っていた。
「顔が、弱点なんだな?」
「ええ! そうですわ!」
「あなたも……魔法を……?」
「まあ、そんなもんさ」
男はAR15のにマウントされた二倍ドットサイトを覗き込み、モンスターの眼球に照準を合わせる。
「ジャァァァァ!!!」
「オリビアさん避けて!」
「なッ――!」
「いや……!」
モンスターが鎌を振りかぶった瞬間、男は立て続けに五発発砲した。
サプレッサーを装備したアサルトライフルがタン、タン、タン、タン、タンと無機質な音を発する。
「ギェェェェェ!?」
五発全弾がモンスターに命中。両眼に一発ずつ、眉間に三発撃ち込まれたモンスターはその巨体ごと地面に崩れ落ちた。
「やったんですの……?」
男は死にかけの虫のようにピクピクと脚を動かすモンスターに近づき、更に二発、脳天に銃弾を叩き込んだ。
「終わり、だな――」
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