死の商人、異世界にて暗躍す〜裏切られた武器商人は奴隷少女と銃器の力で成り上がる〜

駄作ハル

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第一章 第二の覇道、見出したり

第9話 しきたりと実力

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「──やったぞ、ワイルドウルサス……!」

 ギルドに着いたジェイは真っ先に受け付けへ向かい、カウンターの上にドスンとワイルドウルサスの耳を放り投げた。

「し、少々お待ちください……! すぐに確認して参ります!」

 ギルドの掲示板には第一級の依頼は三つ、第二級は八つしかなかった。それだけ危険かつ稀な依頼なのだろう。

 暫くして受付嬢は以前チラッと見たギルド長と思しき初老の男性を連れて戻ってきた。

「……ふむ。これは確かにワイルドウルサスの耳だ。この森には他にこのような巨大なモンスターはいないからな……」

 ギルド長は丸眼鏡をカチャリと鳴らしながらよく観察し、その結果を告げた。

「で、ではこちらの報告書に記入を……。すぐに報酬をご用意します」

「ああ」

 報告書はいくつも記入箇所があり面倒だった。
 だがジェイは、あの依頼書にあったワイルドウルサスの生息地についての情報などがこうした先人たちの積み重ねであったと察し、報酬には関係なくとも後続のためできる限りの情報を書き記した。

 ジェイが書き終わり羽根ペンを置く頃、忙しなく働く受付嬢が今度は重そうなものが満杯に入った袋を持ってきた。

「ほっ──! ふう……! こちらが報酬の金貨五十枚です! ご確認ください!」

 討伐等級第三級のジャイアントマンティスで金貨五枚、第二級のワイルドウルサスで五十枚。
 数発の銃弾で倒れたジャイアントマンティスから報酬は十倍に増えていたが、強さもしっかりと十倍だった。

 第三級の依頼では奴隷、もとい兵士を買うのにギリギリだったため第二級の依頼にしたが、二度と第二級の依頼などやるかと決心した。

 そして確かに金貨が五十枚あることを確認したジェイは袋ごと金貨を受け取りギルドを去ろうとする。
 しかし周りで見ていた他の冒険者たちがそうはさせなかった。

「よお新入りの兄ちゃん! あんたすげえな第二級討伐なんてよ!」
「どうだ、今夜はその金でパーッと祝いの席にしようじゃないか!」
「そいつはいい!」

 酒の匂いをまとった柄の悪い冒険者たちが、ジェイの肩に手を置く。

「勝手に盛り上がっているところ悪いが、この後行くところがあるしこの金はそこで使う予定だ」

 ギルドの二階が酒場になっているのは冒険者同士の交流のためだろう。そしてこうした時に金をばら撒けばそのうち役に立つことがあるかもしれない。
 だがジェイとしては一刻も早くギルドに依存した生活をやめて暮らしたかったため、ここで冒険者たちと繋がりを持つメリットは薄かった。

 ジェイは肩に乗せられた手を打ち払い出口へ向かったが、そんな彼の前に、今度は別の四人組の冒険者が立ちはだかる。

「なあ新入り。お前は来たばっかりでよく分かってねぇようだから俺たちが教えてやろう。ここにはここのルールってもんがある。先輩は敬うべきだぜ?」
「ええ、そうですね。そうやって私たちは支え合ってきたのです」
「悪いことは言わん。ここは皆で楽しもうじゃないか」
「そうだよ! その方がいいよ!」

 酒など飲まなさそうな少女すら同意する始末である。
 ジェイは黙って押し通ろうとしたが四人に退ける気配はない。一番端の魔法使い少女なら無理やり押し倒せそうだったが、気が引けた。

 ジェイは憤りを隠そうとはしなかった。彼は何よりもこの状況を静観しているギルド職員に対し腹を立てていた。

「分かった。じゃあこいつでどうだ──」

「え──」

 ジェイは四人組のリーダーらしき巨漢を背負い投げの要領で投げ飛ばした。ギルドの木の壁にヒビが入るほどの勢いで投げられた男は完全に気を失っていた。

「あなた何して──痛い痛い!」

 眼鏡をかけた細身の男が手を出してきたのでそのまま腕を絡み取り組み伏せる。

「離さんか!」

 髭面の冒険者がジェイに掴みかかってきたが細身の男をぱっと離して蹴り転がすと、髭面はそれに引っかかって一緒に転んだ。

「……で、君もやるか?」

「…………!!!」

 魔法使いの少女はブンブン首を横に振って必死に否定した。

 ギルドの規約によれば、冒険者同士のいざこざは全て自己責任。特に賠償金やら慰謝料などは裁判などではなく、負けた方が全て負担というとんでもないルールになっている。
 危険な依頼先のトラブルまで関与しないということだろうが、ジェイはギルドに登録した際にこのルールを見逃していなかった。

「それじゃあまた今度」

「は、はい……」

 今度こそジェイはギルドを後にして奴隷商の店へ向かった。
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