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第二章 覇道、その一歩
第23話 創立
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「傭兵ねぇ……。国としては冒険者を雇える以上、わざわざあんなゴロツキ紛いの奴らを雇う必要などないんだよ」
かの思想家ニッコロ・マキャヴェッリは『君主論』の中で傭兵を酷く嫌った。「傭兵を使う者は領土を失う」と説き、常備軍の重要性を語る。
それもそのはず、マキャヴェッリの時代の傭兵とは、ほとんどが略奪で生計を立てる盗賊のようなものだった。
平時には自国を、戦時には敵国を略奪するという違いしかない。
アジアでは傭兵から皇帝まで成り上がった三国志の劉備のイメージで傭兵が美化される一方、中世ヨーロッパにおける傭兵のイメージは蛮族とイコールであったと言える。
この世界では傭兵ギルドというものはなく、冒険者ギルドという形で似たような仕事が斡旋されていた。
平時には便利屋、そして文字通りの冒険者として。戦時にはそれなりの練度を持つ傭兵として。
しかしジェイはそこに明確な商機を見出していた。
「我々が提供するのは「軍事力」だ。冒険者のような中途半端なものではなく、現状の傭兵たちのようなものでもない。完璧に統率された「戦争」のプロフェッショナル集団。それが我々ヴァルカンだ」
「……しかし、それなら冒険者ギルドに所属して戦争へだけ参加すれば良いだろう。お前はギルドからの仲介手数料が嫌なだけだろう」
オフィジェンはジェイの熱いプレゼンを淡々と突っぱねる。
しかし、ジェイはその反応すらも織り込み済みだった。
「正直に言って、もちろんそれもある。だがこれはそちらにも利がある提案だ」
ジェイの語り口調にも熱が入る。
「例えば冒険者ギルドでの仕事の受注はあの掲示板を通して行われる。掲示板は誰でも見れる。冒険者以外の人間がギルドに入っても問題はない。……しかし、国にはそういった衆人の目に触れさせたくない事案も無数に抱えている……。違うか?」
「…………」
沈黙は肯定。ジェイはそう受けとった。
「現在ではそういった仕事を引き受けてくれる人間をその都度探しているだろう。必要に応じて彼らを消すことで秘密を守っているような、非効率的なやり方でな」
ジェイはオフィジェンの後ろに控える兵士をチラリと見る。
ジェイは戦場の後方にいた彼らこそが、戦果を報告し、逆に造反者を取り締まる、言わば軍の汚れ仕事を引き受ける特戦隊であると睨んでいた。
「──だが我々はそれら全てを引き受ける。守秘義務も契約で明示する。暗殺、危険地帯の護衛、戦争への参加……なんでもやろう。実力は今回の戦争で十分証明できたはずだ」
ジェイはじっとオフィジェンを見据える。
ジェイのナイフのように鋭く冷酷な目線に、オフィジェンは身震いした。
「……尚のこと分からないな。そこまで仕事後欲しいなら、ギルドのような団体を設立せず、個人で仕事を取ればいい。……実際、仕事の内容はともかくとして、実力者が居れば仕事を回すことは現在もしている」
「駄目だ。あくまでもオフィシャルな存在としてこの仕事を確立させたい。……我々が相手にするのは国だけではない。貴族や、そして個人からの依頼も引き受ける。いずれは武器の販売も行う予定だ」
「ううむ……」
拒絶が葛藤に変わった時、それは押せばいける時だと、ジェイは知っていた。
「もちろんタダでとは言わない。最初にも言ったがこの白金貨を使う。五枚を全てくれてやろう。それで正式な組織としての認可、国からの依頼の斡旋、それと個人的な繋がりを……。これでどうだ」
「…………」
オフィジェンは腕を組みながら目を瞑り、天を仰いで数十秒考え込んだ。
それから視線をジェイに戻すと、ゆっくりと白金貨の入った箱へ手を伸ばす。
「いいだろう。その条件を飲もう。こちらとしては何の損もない取引だ。ただし冒険者ギルドとのパイの奪い合いになる。そこの衝突までは面倒を見きれないがいいか」
「ああ、初めから衝突は避けられない運命だったからな」
「よし。それじゃあ後は私に任せろ。全て手配する」
その一言を聞いたジェイはほくそ笑んだ。
同様にアインたちも緊張で張り詰めていた顔を思わず綻ばせ、その喜びを分かちあった。
この世界に居場所のなかった彼らが、その実力で自分の居場所を掴み取った瞬間だった。
かの思想家ニッコロ・マキャヴェッリは『君主論』の中で傭兵を酷く嫌った。「傭兵を使う者は領土を失う」と説き、常備軍の重要性を語る。
それもそのはず、マキャヴェッリの時代の傭兵とは、ほとんどが略奪で生計を立てる盗賊のようなものだった。
平時には自国を、戦時には敵国を略奪するという違いしかない。
アジアでは傭兵から皇帝まで成り上がった三国志の劉備のイメージで傭兵が美化される一方、中世ヨーロッパにおける傭兵のイメージは蛮族とイコールであったと言える。
この世界では傭兵ギルドというものはなく、冒険者ギルドという形で似たような仕事が斡旋されていた。
平時には便利屋、そして文字通りの冒険者として。戦時にはそれなりの練度を持つ傭兵として。
しかしジェイはそこに明確な商機を見出していた。
「我々が提供するのは「軍事力」だ。冒険者のような中途半端なものではなく、現状の傭兵たちのようなものでもない。完璧に統率された「戦争」のプロフェッショナル集団。それが我々ヴァルカンだ」
「……しかし、それなら冒険者ギルドに所属して戦争へだけ参加すれば良いだろう。お前はギルドからの仲介手数料が嫌なだけだろう」
オフィジェンはジェイの熱いプレゼンを淡々と突っぱねる。
しかし、ジェイはその反応すらも織り込み済みだった。
「正直に言って、もちろんそれもある。だがこれはそちらにも利がある提案だ」
ジェイの語り口調にも熱が入る。
「例えば冒険者ギルドでの仕事の受注はあの掲示板を通して行われる。掲示板は誰でも見れる。冒険者以外の人間がギルドに入っても問題はない。……しかし、国にはそういった衆人の目に触れさせたくない事案も無数に抱えている……。違うか?」
「…………」
沈黙は肯定。ジェイはそう受けとった。
「現在ではそういった仕事を引き受けてくれる人間をその都度探しているだろう。必要に応じて彼らを消すことで秘密を守っているような、非効率的なやり方でな」
ジェイはオフィジェンの後ろに控える兵士をチラリと見る。
ジェイは戦場の後方にいた彼らこそが、戦果を報告し、逆に造反者を取り締まる、言わば軍の汚れ仕事を引き受ける特戦隊であると睨んでいた。
「──だが我々はそれら全てを引き受ける。守秘義務も契約で明示する。暗殺、危険地帯の護衛、戦争への参加……なんでもやろう。実力は今回の戦争で十分証明できたはずだ」
ジェイはじっとオフィジェンを見据える。
ジェイのナイフのように鋭く冷酷な目線に、オフィジェンは身震いした。
「……尚のこと分からないな。そこまで仕事後欲しいなら、ギルドのような団体を設立せず、個人で仕事を取ればいい。……実際、仕事の内容はともかくとして、実力者が居れば仕事を回すことは現在もしている」
「駄目だ。あくまでもオフィシャルな存在としてこの仕事を確立させたい。……我々が相手にするのは国だけではない。貴族や、そして個人からの依頼も引き受ける。いずれは武器の販売も行う予定だ」
「ううむ……」
拒絶が葛藤に変わった時、それは押せばいける時だと、ジェイは知っていた。
「もちろんタダでとは言わない。最初にも言ったがこの白金貨を使う。五枚を全てくれてやろう。それで正式な組織としての認可、国からの依頼の斡旋、それと個人的な繋がりを……。これでどうだ」
「…………」
オフィジェンは腕を組みながら目を瞑り、天を仰いで数十秒考え込んだ。
それから視線をジェイに戻すと、ゆっくりと白金貨の入った箱へ手を伸ばす。
「いいだろう。その条件を飲もう。こちらとしては何の損もない取引だ。ただし冒険者ギルドとのパイの奪い合いになる。そこの衝突までは面倒を見きれないがいいか」
「ああ、初めから衝突は避けられない運命だったからな」
「よし。それじゃあ後は私に任せろ。全て手配する」
その一言を聞いたジェイはほくそ笑んだ。
同様にアインたちも緊張で張り詰めていた顔を思わず綻ばせ、その喜びを分かちあった。
この世界に居場所のなかった彼らが、その実力で自分の居場所を掴み取った瞬間だった。
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