32 / 93
第三章 覇道、歩む仲間
第32話 運び屋
しおりを挟む
領地境の紛争から一ヶ月、またオフィジェンからの依頼は来なかった。
その間、ヴァルカンは拠点拡張に熱意を注いでいた。
「そのソファは向こうの居住区画に。椅子と長机は本部の方だ」
「ジェイ様、門なんですが、改めて測距してみたら若干傾斜がかかっていまして、勝手に閉まってしまう可能性がありそうです」
「整地するならいくらだ?」
「そうですねぇ、今回は工事とセットですので金貨15枚でどうでしょうか」
「ならいい。勝手に開くのは問題だが、閉まる分にはいい。代わりにストッパーにでもなるものを作ってくれ」
「へい。それならお安くできます」
武器や訓練の様子を外に見せたくないジェイの意向により、工事は急ピッチで進められた。
町大工への指示は基本的にアインたちへ任せていたが、最終的にはジェイへ確認が来るので彼も休む暇がなかった。
そもそも響き渡る建設音でとてもゆっくり休めるような状況ではなかった。
それでも訓練が休みになったドライとフィーアは、ここぞとばかりにすやすや眠っていた。
そして最終的に工事は金貨365枚、期間にして一ヶ月半を要して新たな民間軍事会社ヴァルカンの拠点が出来上がった。
「あの掘っ建て小屋から随分立派になったものだな。よし、今日は竣工祝いとするか!」
「あの社長……大変申し上げにくいのですが……資金が底をついておりまして……」
「…………」
一ヶ月半、まともに冒険者ギルドの方の依頼も出来なかったヴァルカンは、工事費や生活費諸々で資金難に陥っていた。
「それは仕方ない……な。大人組には俺が隠し持っていた年代物の酒を振舞おう……。ズィーベンは子供たちのためにジュースでも買ってきてくれ……」
結局、彼らが生きる道はこのような安全な拠点ではなく、死と隣り合わせの戦場しかないのだ。
そしてそんなタイミングを見計らったかのように、ヴァルカンの元へオフィジェンからの依頼が来る。
「では今回の仕事について説明する。今回は輸送の護衛任務だ。機密保持のため行先は聞かされていないが期間は往復で二週間とのことらしい。報酬は一人頭金貨10枚の合計80枚」
家具も新調され、生まれ変わった本部の会議室。眩いばかりに光り輝くランプのは対照的に、彼らの顔は濁っていた。
「そいつは……ちょっと割に合わない仕事じゃないでしょうかボス……。俺たちなら冒険者ギルドでもっと稼げますよ。今は金もないんだし……」
「いや、駄目だ。今はひたすら傭兵ギルドの名前と恩を売る場面だ。仕事を選んでいられない。──クソ、オフィジェンめ足元見やがって……!」
ジェイは露骨に溜息を吐く。
「で、でも、並の護衛任務よりは若干報酬もいいですよ! ……二級冒険者ヴァルカンに頼むなら安すぎますけど……」
ズィーベンも帳簿を見て肩を落とす。
「俺としても断りたかったが、諸々の事情を鑑みて受けることにした。いずれにせよ、俺たちに来る依頼ということはそれなりに危険で、裏の事情がある仕事ということだ。それに、運び屋との繋がりというのは今後のビジネスにも繋がる」
「今後のビジネス、ですか……」
「ああ。将来的には武器の販売を主な商売にしたい。自分たちの命を売る仕事をいつまでもやっていられないからな」
ジェイが将来を語った時、アインの中には僅かな不安が生まれていた。
自分はジェイの手駒として買われ訓練を施された。
では兵士が要らなくなった時、自分の居場所は変わらずにそこにあるのだろうか。
「まあ今ある武器には限りがある。武器生産の見込みもないのに武器販売を見越すのは取らぬ狸の皮算用だがな。──だがこの仕事が次の仕事に繋がる可能性が高いのは事実だ。報酬はしょぼいが気を抜かずに取り掛かるぞ」
「了解しました」
全員が頷いたのを確認したジェイは机の上に紙を放り投げた。
「軍隊に求められるのは“自己完結”できることだ。その資料を参考に二週間分の物資を各々で準備するように。出発は明後日の明朝。それまでに各自取り掛かれ!」
「は!」
ジェイの号令で一斉に本部を飛び出すヴァルカンメンバー。
ジェイは任務に対する姿勢を訓戒したが、実際はそこまで心配していない。むしろ気がかりは一際幼いドライとフィーアが初の遠征任務に着いてこれるかということ一点だった。
「ま、なんとかなるか……」
アインとズィーベンに付き添われ準備しているドライとフィーアの様子を見ていたジェイは、心配もそこそこに、自身の準備をすべく街へ向かった。
その間、ヴァルカンは拠点拡張に熱意を注いでいた。
「そのソファは向こうの居住区画に。椅子と長机は本部の方だ」
「ジェイ様、門なんですが、改めて測距してみたら若干傾斜がかかっていまして、勝手に閉まってしまう可能性がありそうです」
「整地するならいくらだ?」
「そうですねぇ、今回は工事とセットですので金貨15枚でどうでしょうか」
「ならいい。勝手に開くのは問題だが、閉まる分にはいい。代わりにストッパーにでもなるものを作ってくれ」
「へい。それならお安くできます」
武器や訓練の様子を外に見せたくないジェイの意向により、工事は急ピッチで進められた。
町大工への指示は基本的にアインたちへ任せていたが、最終的にはジェイへ確認が来るので彼も休む暇がなかった。
そもそも響き渡る建設音でとてもゆっくり休めるような状況ではなかった。
それでも訓練が休みになったドライとフィーアは、ここぞとばかりにすやすや眠っていた。
そして最終的に工事は金貨365枚、期間にして一ヶ月半を要して新たな民間軍事会社ヴァルカンの拠点が出来上がった。
「あの掘っ建て小屋から随分立派になったものだな。よし、今日は竣工祝いとするか!」
「あの社長……大変申し上げにくいのですが……資金が底をついておりまして……」
「…………」
一ヶ月半、まともに冒険者ギルドの方の依頼も出来なかったヴァルカンは、工事費や生活費諸々で資金難に陥っていた。
「それは仕方ない……な。大人組には俺が隠し持っていた年代物の酒を振舞おう……。ズィーベンは子供たちのためにジュースでも買ってきてくれ……」
結局、彼らが生きる道はこのような安全な拠点ではなく、死と隣り合わせの戦場しかないのだ。
そしてそんなタイミングを見計らったかのように、ヴァルカンの元へオフィジェンからの依頼が来る。
「では今回の仕事について説明する。今回は輸送の護衛任務だ。機密保持のため行先は聞かされていないが期間は往復で二週間とのことらしい。報酬は一人頭金貨10枚の合計80枚」
家具も新調され、生まれ変わった本部の会議室。眩いばかりに光り輝くランプのは対照的に、彼らの顔は濁っていた。
「そいつは……ちょっと割に合わない仕事じゃないでしょうかボス……。俺たちなら冒険者ギルドでもっと稼げますよ。今は金もないんだし……」
「いや、駄目だ。今はひたすら傭兵ギルドの名前と恩を売る場面だ。仕事を選んでいられない。──クソ、オフィジェンめ足元見やがって……!」
ジェイは露骨に溜息を吐く。
「で、でも、並の護衛任務よりは若干報酬もいいですよ! ……二級冒険者ヴァルカンに頼むなら安すぎますけど……」
ズィーベンも帳簿を見て肩を落とす。
「俺としても断りたかったが、諸々の事情を鑑みて受けることにした。いずれにせよ、俺たちに来る依頼ということはそれなりに危険で、裏の事情がある仕事ということだ。それに、運び屋との繋がりというのは今後のビジネスにも繋がる」
「今後のビジネス、ですか……」
「ああ。将来的には武器の販売を主な商売にしたい。自分たちの命を売る仕事をいつまでもやっていられないからな」
ジェイが将来を語った時、アインの中には僅かな不安が生まれていた。
自分はジェイの手駒として買われ訓練を施された。
では兵士が要らなくなった時、自分の居場所は変わらずにそこにあるのだろうか。
「まあ今ある武器には限りがある。武器生産の見込みもないのに武器販売を見越すのは取らぬ狸の皮算用だがな。──だがこの仕事が次の仕事に繋がる可能性が高いのは事実だ。報酬はしょぼいが気を抜かずに取り掛かるぞ」
「了解しました」
全員が頷いたのを確認したジェイは机の上に紙を放り投げた。
「軍隊に求められるのは“自己完結”できることだ。その資料を参考に二週間分の物資を各々で準備するように。出発は明後日の明朝。それまでに各自取り掛かれ!」
「は!」
ジェイの号令で一斉に本部を飛び出すヴァルカンメンバー。
ジェイは任務に対する姿勢を訓戒したが、実際はそこまで心配していない。むしろ気がかりは一際幼いドライとフィーアが初の遠征任務に着いてこれるかということ一点だった。
「ま、なんとかなるか……」
アインとズィーベンに付き添われ準備しているドライとフィーアの様子を見ていたジェイは、心配もそこそこに、自身の準備をすべく街へ向かった。
6
あなたにおすすめの小説
やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?
石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます!
主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。
黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。
そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。
全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。
その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。
この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。
貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。
最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~
KABU.
ファンタジー
平凡な高校生・篠原蓮は、クラスメイトと共に突如異世界へ召喚される。
女神から与えられた使命は「魔王討伐」。
しかし、蓮に与えられたスキルは――《リサイクル》。
戦闘にも回復にも使えない「ゴミスキル」と嘲笑され、勇者候補であるクラスメイトから追放されてしまう。
だが《リサイクル》には、誰も知らない世界の理を覆す秘密が隠されていた……。
獣人、エルフ、精霊など異種族の仲間を集め、蓮は虐げられた者たちと共に逆襲を開始する。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる