死の商人、異世界にて暗躍す〜裏切られた武器商人は奴隷少女と銃器の力で成り上がる〜

駄作ハル

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第四章 覇道、手にする力

第53話 交渉

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「──それで、和解とはどういう風の吹き回しだ?」

 今回の3000は帝国にとって小手調べであると考えていた。
 それを一度退けただけで和解を申し出るとは、なにかの策略ではないかとジェイは疑っていた。

「我々はこれ以上の戦争の継続は無益であると判断しました。そもそも、帝国はヴァルカン様と敵対するつもりはありませんでした。そこでヴァルカン様がドワーフの国と結んでいるなら、無理やりドワーフの国を攻めずとも和解という道を選ぼうという考えです」

「ふむ……。しかしそれでは、ドワーフの技術を手に入れるという帝国の目的は果たせないのではないか?」

「仰る通りです。ですがそれ以上の技術を持つヴァルカンとの和平には、それ以上の価値も見いだせる、という判断です」

「なるほどな」

 ある程度の論理性を持った話に、ジェイはますます疑いを深める。
 この交渉はただの時間稼ぎで、数万の帝国軍本軍が押し寄せている可能性もある。

「詳しい交渉内容は是非代表者様にお越しいただき、直接お話出来ればと思っています。いかがでしょうか、……ジェイ様」

「俺の名前を知っている者がいるのか。それとも、こちらのことは全て調査済みか?」

「さて、それはどうでしょう……」

 捕虜の身でありながらやけに堂々としている使者に、ジェイはこれ以上何かを問うのは時間の無駄であると判断した。

「まあいい。俺をご指名なら応えてやろうじゃないか」

 使者は不敵な笑みを浮かべる。

「ありがとうございます。一応我々はまだ戦争中ですので護衛は数名のみでお願いします」

「構わない。場所もそちらが指定していい」

「──危険ですジェイ様!」

「心配は不要だアイン。俺を殺した所で戦争は終わらないと帝国も分かっているはずだ」

「ですが!」

 噛み付くアインをジェイは手で静止する。

「そちらで話をまとめる時間が必要そうですね。明日の朝、お迎えに参ります。……それでは私はこれで」

 使者は淡々と自分の仕事を終え、無数の銃口の中を涼しい顔で颯爽と過ぎ去っていった。

「……アイン、俺たちに話し合いは必要か?」

「だって、いくらジェイ様でも帝国の精鋭部隊に囲まれれば──!」

「アイン、言葉を変えてもう一度言おう。お前は俺のすることに異議を唱えるつもりか?」

「そ、それは……」

 ジェイの厳しい口ぶりに、アインはしゅんと俯いた。

「お前が俺のことを心配してくれているのはよく分かる。だがそれが足枷になってはならない。時には危険を犯すこともあるだろう。……そもそも、俺たちの仕事とはそういうものだ」

 アインはそれ以上ジェイに反論することはなかった。

「フュンフ、後で俺の所へ来い。万が一俺の身に何かあった時、ヴァルカンがどう動くべきか伝えておく」

「……分かりましたボス」

「よし。では他の者は負傷者の手当と休息だ。捕虜も明日の交渉で解放するまで丁重に扱えよ」

「了解!」

 それからジェイは宿泊施設の自室へ、一人で戻っていった。




 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆





「おはようございます。それでは参りましょうか」

 関所の前では、昨日と同じ堂々とした使者がジェイたちを待ち構えていた。

「ああ。案内頼む」

 ジェイはアインとツヴァイを護衛に連れていくことに決めた。
 護衛としての戦力、そして残していくヴァルカンを動かす組織力のバランスを鑑みての判断だった。
 少なくとも、そういう建前でジェイは自らの護衛にアインを選出した。

「行くぞアイン、ツヴァイ。繰り返しにはなるが、絶対に俺の許可無く発砲するなよ」

「はいジェイ様」

「……分かっている」

 使者は背後で行われる密談など微塵も気にしていないような様子で黙々と歩く。





 それから十数分歩いた先に、交渉の場が用意されていた。

「はは! これが俺たちを出迎える態度と言う訳か」

 なんとそこには、街道上に野ざらしの状態でテーブルと椅子が設置されていた。
 周囲には帝国軍の黒服部隊が配置されており、まるでここが帝国の地であることを主張するように帝国旗が翻っていた。

「お気を悪くなさらないでください。これは我々なりの誠意です。隠し立てはせず、全てをオープンにする。……例えば、向かい側の山からでもこちらが分かるほどに、ですよ……」

「…………」

 ジェイは待機させていたフュンフに向け、素早く無線機をオンオフさせ、撤退のモールス信号を送った。

「ささ、どうぞお座りください。間もなく代表の者が参ります」

 ジェイは使者に促されるまま、座り心地の悪い粗末な木の椅子に腰を下ろした。

 それから更に数分後、遂に目的の人物が姿を現した。

「お前は……!」

「私はシュテルクスト帝国侵攻軍、先遣隊隊長のズヒャハイトです。……と、挨拶は不要でしたね。お久しぶりですジェイ殿?」

 以前帝国の都市ヴィヒテヒで出会った時とは打って変わってやけに腰の低いズヒャハイトの様子に、ジェイはかえって顔を顰めた。
 ズヒャハイトは座っているジェイに向かって、立ったまま上から手を差し出す

 警備隊長としてやや高圧的な態度が板についていた彼が、わざとらしい柔らかな笑みを浮かべ慇懃無礼な態度を取る様子に、アインとツヴァイも自然と銃を握る手に力が籠る。

「前置きはいい。俺は交渉事において時間を無駄にするのが一番嫌いだ。早く本題に入ろう」

「そうですか。では──俺の口から帝国の要求を伝えよう」

 ズヒャハイトの蛇のような目に、いつものギラつきが戻った。ジェイもそれを見て背筋を伸ばす。

「…………」

「端的に言う。ヴァルカンは今すぐドワーフの国から手を引け」

「断る」

 ここに、交渉は一瞬にして決裂した。
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