死の商人、異世界にて暗躍す〜裏切られた武器商人は奴隷少女と銃器の力で成り上がる〜

駄作ハル

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第五章 覇道、穿つ真実

第60話 報告書

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「社長、今期の収支報告です」

 ズィーベンはいつになく笑顔で書類をジェイに差し出す。
 ジェイも普段は事務作業に嫌気が差すところだが、この日は違った。

「ああ。見させてもらおうか」

 ヴァルカンの拠点本部は、かなり家具や装飾品で充実していた。
 この社長室もそれなりの調度品が揃えられ、ジェイの啜るコーヒーも帝国から取り寄せた一級品に格上げされていた。

「先月の“特別収入”により財政面はかなり改善しました。また郵便事業も順調に拡大出来ています。まだ投資が必要ですが既に黒字化に成功しています。今月はエルボル男爵懲罰戦争に関わる傭兵業の依頼が複数あり、そちらの収入も含めると来期でも順調に業績が伸ばせると予想されます」

「ふむ。その調子で頼む。それと積極的に各街の商店の買収を進めろ。物流を抑えつつある今、その物流拠点を確保すれば更に円滑な業務が期待できる」

「なるほど、かしこまりました」






「ボス、俺からも報告が」

「聞かせろ」

 ズィーベンが下がり、フュンフがジェイに資料を手渡す。

「共和国での選挙は中央貴族たちの乱戦の様相です。誰が勝つか分かりませんが、誰が王位に就いても内戦は避けられないでしょう」

「権力の集中を避けるための選挙がこれではな。何故貴族共和政が廃れたか分かる」

「それと帝国の動向を探っていましたが、最近軍需品を買い集めているようです。兵も共和国側に集結しつつあり、訓練も開始された模様。軍事侵攻はそう遠くありません」

「そうか。共和国が体勢を崩せばすぐにでも、といった感じだな。再来月の総選挙がターニングポイントになるだろう……。そろそろこちらもその準備をしておくか」

 ジェイはペラペラと資料を捲り、いくらかメモしたものをズィーベンに渡した。







「次に俺からいいか」

「どうしたアハト。珍しいな」

 アハトはやけに凝った装飾をした小箱をジェイに差し出す。

「先の戦争の勝利祝いとお礼を兼ねて、ドワーフの国から贈り物が届いた」

「そうか。ありがたく受け取るとしよう」

 ジェイは小箱の蓋を慎重に開ける。

 その中から出てきたのは銃身が10インチはあろうという大口径のマグナムリボルバーだった。リボルバーは美しく白銀に輝いており、その全面に金細工の彫刻エングレーブが施されていた。
 その脇には数発の弾薬がケースにはめ込まれている。

「ほう、これは凄いな。ドワーフたちが独力で作ったのか」

「ああ。自分たちで作れる銃を考えた時、その形が浮かんだそうだ。素材は主にミスリル合金。グリップは木製だ。弾薬の予備も別に届いていた」

「それは助かるが、流石に50口径は普段使いには厳しいところがあるぞ」

 ジェイはシリンダーを取り外し銃口を覗き込んでいる。

「身体強化魔法を使えば多少は何とかなるだろう。……ちなみにその装飾は俺がこっちでやったものだ。気に入らなければ作り直す」

 アハトは腰に提げたハンマーをガチャリと鳴らす。

「……いや、このまま使わせて貰う。GLOCKも使うがな」

「そうか。好きにするといい。──それと、ドワーフの国が武器や防具を人間側に売りたいらしい。銃を作り続ける資金が足りなくなってきてな」

「それは俺たちにとっても他人事ではない問題だな。それに帝国との協約もある。……分かった、その仲介引き受けよう。上手いこと運送と販売の手を回す」

「助かる。では祖国にはそのように報告する」

 アハトはぺこりと頭を下げると、武器の整備を請け負っている自分の工房へと戻っていった。






「指揮官、最後に私からも一つ」

「なんだゼクス」

「は。現在ヴァルカン直属の社員が587名、うち493名が兵士です。また傭兵ギルドに所属する下請けの傭兵が200弱います」

「人員は順調に拡充されているな。何か問題か?」

 ゼクスは顔の古傷をさすり気まずそうな表情で言葉を続ける。

「はい。端的に言うと訓練不足です。今までは私とフュンフ、そして指揮官を中心にアインやツヴァイにも手伝って貰いながら訓練を行って来ました。しかしこの人数となると兵士に対して教官が足りておらず、銃を持たせるのも危険な状態です」

「それは困ったな」

「は。ですのでここで一つ指揮官にお願いが」

「なんだお願いとは」

「は。それは優秀な一般社員の昇格です。指揮官直々に試験を行って頂き、一部社員を幹部相当に昇格して頂きたいのです。そして彼らに分隊の指揮や訓練を任せたいと思います」

「ううむ……」

 ジェイは腕を組んで天を仰ぐ。

 彼とてそうした人材育成の大切さはよく理解していた。
 かつての民間軍事会社ヴァルカンは全世界数万人規模の大企業であり、組織の運営に関してはプロフェッショナルである自負があった。

「確かに入社して日は浅いですが、共に帝国戦を戦い生き残った戦友たちです。私は彼らを信頼してあげたい」

「…………。分かった。だが試験内容は俺が決める。相当厳しいものにするが、合格したものにはヘリから異世界製の高品質な銃器を貸与する。給与も見合ったものにしよう。……その条件でどうだ」

「指揮官の命令に異議などございません。良い案かと」

 ゼクスは仏頂面を崩し、部下たちの未来を拓けたことを素直に喜んだ。

「では候補者をリストアップして後日俺の所へ持ってこい」

「は。それでは失礼します」






「ヴァルカンは順調に成長していますね」

「……そうだな」

 ジェイはアインの淹れたコーヒーを啜るが、その表情は何処か不満気だった。

「すみません、熱かったでしょうか」

「ん? ああいや、お前が淹れてくれるコーヒーはいつも美味しいぞ。……ちょっと考えごとをしていてな」

「あ、ありがとうございます! ……それで、何をお考えだったのでしょうか」

 アインはさり気なくジェイの向かいに座る。

「防護魔法の破り方だ。今までのやり方もいつまで通用するか分からない。これから起こる大規模な正規戦を見越すなら、我々は対抗手段を持っていなければならないだろう」

「あるのでしょうか、そんなものが」

「不確かなものに頼りたくはない。だが、頼みの綱はそれしかない」

「それは何でしょうか」

「優れた魔法技術を持つという、エルフとやらの存在だ」
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