死の商人、異世界にて暗躍す〜裏切られた武器商人は奴隷少女と銃器の力で成り上がる〜

駄作ハル

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第七章 覇道、世界を統べる

第79話 懇願

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「更に第一皇子から第四皇子まで同時に暗殺を完了したとの事です!」

「ふむ。……良くやった、帰還せよ、と伝えろ」

「かしこまりました!」

 ドタバタと拠点内を社員たちが駆け回る。

「ジェイ様、これは一体……!?」

「しばしの休暇もこれまでだアイン! これから忙しくなるぞ!」






 ジェイの言葉は、皇帝暗殺の二週間後、その事実が世間に知られた頃、現実のものとなる。

 皇帝の崩御に加え、跡継ぎの全てを失った帝国は混乱に包まれた。
 それに伴い共和国の王都に迫っていた帝国軍の進軍も停止。しかしあくまでも悲願である共和国征伐を完遂しようと主張する軍閥と、次期皇帝を狙い策謀を巡らす政界との間で対立が勃発し、帝国には危機が訪れていた。

「社長、共和国から社長にお会いしたいという方々がお見えです」

「誰を遣いに寄越した? せめて執政官クラスは──」

「貴族の方々が直々にやって来ました。既に応接室にお通ししています」

「……ほう。すぐに行く」

 応接室には確かに共和国貴族の面々が揃い踏みだった。
 しかし彼らの様相はジェイの知る高慢ちきなものではなく、装飾こそあれど簡素な軍服に身を包み、顔も無数の戦場を越えてきた険しい表情をしていた。

「お待たせしてしまい申し訳ない。私は民間軍事会社ヴァルカンの社長を務めているジェイと──」

「前置きは結構だ。時は一刻を争う。帝国の足元が崩れたこの奇跡にも近い好機を逃す訳にはいかないのだ。どうか今は貴族や平民といった立場も一切忘れ、交渉の場に就いて欲しい」

「……話が早くて助かる」

 ジェイはいつものように最奥の椅子に腰掛けた。

 自己紹介すら飛ばし、駆け足での交渉が始まる。

「軍事力の直接的な提供が出来ないということはよく分かった」

「ああ。我々はあくまで一企業。契約に縛られる弱い存在だ」

「戯れはよしてくれ。君たちはこの戦争の趨勢を握っている。それは間違いない」

「……まあ、そうだろうな」

 この中では立派な髭を蓄えた貴族が最高位の中心人物らしく、主な交渉を担う役割を果たしていた。

「それでは代わりのものを提供して欲しい」

「代わりのものか?」

「ああ。それは──」

 その時、突如廊下から言い争う声が聞こえてきた。その声はどんどん近づいてくる。

「どうなっているんだヴァルカン!!!」

「……ズヒャハイト、今は商談の途中だ。後にしろ」

 なんと、髪もボサボサで顔を真っ赤にした鬼の形相のズヒャハイトが応接室の扉を蹴破り乱入してきたのだった。

「申し訳ありません社長! 契約上こちらから手を出すことも出来ないので……」

「ああ。正しい対応だ」

「そんなことより貴様! 貴様だろう! 皇帝陛下及び皇太子殿下らを暗殺したのは!」

 激昂するズヒャハイトの唾がシャツに染みを付ける。ジェイは黙ったままハンカチでそれを拭った。

「……はて、なんの事だかさっぱり。ああ、皇帝一家の不幸にはお悔やみ申し上げるよ」

「しらばっくれるのもいい加減にしろ! ──これが皇帝陛下の玉座に埋まっていた!」

 そう言ってズヒャハイトは机の上に小さな金属の塊を投げつける。

「これはかつてお前たちとドワーフの国周辺で戦った時、騎士の鎧に埋まっていたものと酷似している! 間違いなく、お前たちが使う金属を打ち出す魔法の武器が、皇帝陛下暗殺に関わっているんだぞ!」

「ふむ……。確かに似ているかもしれないが、それは俺たちがやった事の証拠にはならない。その金属に俺の名前でも書いてあれば別だがな」

 ジェイはニタリと笑いズヒャハイトを見つめる。対するズヒャハイトは歯が折れるのではないかという程に歯を食いしばっていた。

「……しらばっくれるなら皇帝陛下の件は置いておいてやる! それよりも、……我々は元老院議員共の暗殺を依頼する! そして元老院が集めた軍との戦いの時には我々軍閥派と共に戦うことを約束しろ!」

「ズヒャハイト、見て分からないか。さっきも言ったが今はこちらの商談中だ。後にしろ」

「……!? その紋章、共和国の貴族か!」

 社員たちに拘束されてもなお、ズヒャハイトは応接室から出ようとしない。
 それならばと、ジェイはむしろこの男の前で共和国貴族との商談を進めてしまおうという悪魔のような発想が浮かんだ。

「さて、こちらの不手際で話が逸れて申し訳ない。──それで、軍事力の代わりとは?」

「あ、ああ……。それは、君たちの使う武器だ」

 髭面の共和国貴族は困惑しながらも話を続けた。

「武器ねえ」

「ああ。武器はただのモノ。それを提供することは問題ないはずだ」

「馬鹿を言うな! その武器こそがこいつらの特権だ! そんな武器を提供することなど──」

「いいだろう」

 ズヒャハイトが口を挟むのを遮り、ジェイは頷いた。

「な、なんだと……?」

「我々民間軍事会社ヴァルカンは、共和国の各貴族に対して銃を提供する契約を結ぶ、と言っているんだ」

 応接室でただ一人、ジェイは心の底からの笑顔を浮かべていた。
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