英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル

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第一章

7話 異世界の英雄

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 そこは見慣れた街だった。体も元に戻り、私はまた同じ視点の高さで仮設された台の上に立っていた。
 
 横では不思議そうに父がこちらを見ている。
 
 前と違うことは、父とは反対側の私の隣に歳三が立っていることだ。
 
 貴族を含めその場にいる全員が警戒の目を歳三に向けていた。それもそのはずだ。人間を召喚するというのは、記録上この世界で初めての出来事だ。
 
 見慣れぬ軍服に、腰に提げた日本刀『和泉守兼定』。顔立ちもこの世界の人々とは大きく異なる。
 
「こ、こちらは異世界の英雄、土方歳三です!」
 
 なにをどう説明すればいいか分からないのでとりあえず名前だけでもと思い、歳三を紹介した。
 
 当の本人はニコニコして手を振っている。
 
「レオはこの力を持って皆の者を確かに導くであろう!これにて閉会とする!」
 
 父が半ば強引に終わらせた。前例のない人間の召喚が実現するとは父も予想していなかったのだろう。
 
 母の合図で軍楽隊が再びファンファーレを吹いたところで、ざわめきが歓声に変わり、なんとか終了の格好がついた。
 
「き、君はひじかた、と言ったかね?」
 
「あぁ、俺は土方歳三だ。あんたは?」
 
「私はレオの父で、この街の領主ウルツ=ウィルフリードだ」
 
「へぇ、なかなか腕が立ちそうな感じだな?」
 
 未だ警戒を緩めない父とは対照的に、歳三は好奇心を全面に父の服装や街を眺めている。
 
「ち、父上!立ち話もなんですので、一度帰って改めて紹介します。ここでは色々な人の目がありますので……」
 
「うむ、それもそうだな……」
 
 母は貴族たちの対応をしていた。
 
「アルガー、この後のことは頼んだぞ」
 
「はい、確かに」
 
「今晩は貴族の方々をうちへ招いての晩餐会よ」
 
「警護の兵は既に手配してあります」
 
 簡単に今後の打ち合わせを済ませた後、後のことはアルガーに任せて私たちは帰ることにした。
 
 
 馬車に乗ると、歳三は私の隣に座った。刀は邪魔なので手で持っている。
 
 屋敷までの間、無言の時間が続いたが、歳三だけは流れる景色を楽しんでいるようだった。
 
 母は何か話しかけようとしていたが、さすがに異世界からの英雄にかける言葉が見つからないようだった。



◆ ◇ ◆ ◇ ◆


 
「お帰りなさいませ。……そちらは?」
 
「ほう、これは綺麗なお嬢さんだ」
 
「まぁ……!なんなんですかこの人は!」
 
 屋敷に着くなり歳三の放った一言目がそれで、マリエッタも珍しく顔を赤く染めている。
 
 それは初対面に失礼なことを言う男への怒りなのか、それとも……。
 
「と、歳三!とりあえず中に入って父たちと話をしましょう!」
 
「ん、あぁそうだな」
 
 父と母の顔色を伺ってもあまりよろしく無さそうだ。異世界の人間などと言われてもピンと来ないのも確かだ。
 
 まぁその異世界の人間を六年育てている二人な訳だが……。
 
 
「そ、それでは改めて紹介します。こちらは異世界の英雄的な軍人である土方歳三です」
 
「えぇと、土方さんはどちらからいらしたのかしら?」
 
「産まれは武蔵国だが、俺は函館で既に死んでいるからな。こっちへはそこから来たとも言える」
 
「まぁ!あなたは死者の亡霊と言うことですか?」
 
「そうなるのかもしれねェな!」
 
 歳三は楽しそうに答える。
 
 第二の人生を楽しもうとしている彼と対照的に、私の額にはじんわりと冷や汗が滲む。
 
 
 それからも歳三は父と母からの質問攻めにつらつらと答えていった。
 
 
 一通りの身の上話が済んだ後、
 
「君は軍人だと言ったな。それにその不思議な形をした剣……。是非一度手合わせをしてみたいものだ」
 
「ち、父上!いくらなんでもそれは!」
 
 いくら歳三自身も剣術に覚えがあるからといっても、父の『魔剣召喚』などというチートスキルとは渡り合うのは不可能だ。
 
「面白そうじゃねェか。イイぜ、受けて立とう」
 
「歳三まで!」
 
 これで歳三が負けたりしたら……。いや、最悪死ぬかもしれない。
 
「レオ、やらせてあげましょう」
 
「そんなぁ……」
 
 最後の頼みの綱である母まで……。
 
「いい?レオ?確かにあなたの『英雄召喚』は人を召喚することが出来たわ。だけど、「異世界の英雄」なんて言われても誰も本当か分からないのよ」
 
 母は真剣な眼差しで続ける。
 
「それなら、土方歳三さんが本当に英雄と呼ばれるだけの力があるのか示さないと」
 
「よし、では晩餐会の前に貴族たちを招き、前座として模擬戦を行おう」
 
 父はすっかりやる気である。
 
「マリエッタ、そっちの準備も頼むわ」
 
「かしこまりました」
 
 もはや引き返すことは出来ないようだ。ここまで来たら歳三の力を信じるしかない。
 
「そうと決まれば俺ァちょっくら肩慣らしに行ってくるぜ。まだこの体に慣れてないもんでな」
 
 そう言うと後ろ手に手を振り、歳三はどこかへ消えていった。
 
「それでは俺も軽く体を動かしておこう。アルガーを呼ぶか」
 
 もはや私に出来ることはなにもなかった。
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