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第二章
138話 未来地図
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この数日間、主に軍事面で大きく成長を遂げたファリアであった。
ルーデルとハオランを中心にした新制ファリア空軍。
ヘクセルが発明した通信機を利用した軍の統制。
特に通信機と空軍のシナジーは素晴らしいものがあった。
空からの偵察情報を受け取り、それが孔明ら司令部に届きリアルタイムで軍全体が三次元的な集団行動が可能となった。これは狼煙や伝令に頼っていた従来の戦争から大きく時代を飛び越したものだ。
ルーデルは一日のほとんどを空の上で過ごしていたが、食事の時だけは地上にいるのでその頃合を見計らって孔明が彼の元を何度も尋ねていた。
もう一つルーデルや竜人がもたらしてくれたものがある。
それは地図だ。
今までは「馬で何日」「歩兵では行軍に何日」といった経験則に基づく大雑把な目安しかなかった。
しかし、上空から地形の把握に加えルーデルの尋常ならざる経験から来るほとんどズレがないであろう目測により、極めて正確な地図が完成した。
これは内政だけでなく軍事における事前準備でも最重要になる情報である。無駄のない物流や兵員輸送を行うに当たって書かせないものだ。
地図作成の“任務”という建前でルーデルを飛ばし続けたのでこの辺りの地図はほとんど埋まった。
これを見た孔明はとても喜んでおり、地政学や占星術と組み合わせた機能も縁起も良い街づくりが捗るそうだ。
しかしルーデル閣下は軍人である。ただの遊覧飛行で満足する質ではない。
閣下は武装をお望みだ。
「──という訳だ。ヘクセル、君の作った手榴弾はかなり有効だった。この調子でそれを単に大型化するだけでなく、大型化に伴って更に威力を向上させたものを用意して欲しい。できるか?」
ルーデルにしつこく詰められ、二人でヘクセルの元を訪ねていた。
「うーん……。火薬と魔石粉末の在庫はあるんだけど、とりあえずそれを樽にでも入れて見るかい?」
「いや、それなら金属の容器に入れた方がいいな」
爆弾や大砲ってのは、その爆発で人を殺しているのではない。爆発の際に何百メートル先までも金属の破片をばら撒き、それが当たって死ぬのだ。
「木の樽では50kg爆弾も厳しいんじゃないか? ……まぁ試作品ということで中に適当な金属片でも入れて用意してくれ。とにかく何事もやってみることが大事だ」
ルーデルが言う、この火薬と金属片をブレンドした兵器というのは紛争地帯でよく見られる。
お手製の大砲に炸薬を詰め、フォークや釘をそこに突っ込む。もちろんまともに飛びやしないが、紛争地帯の市街地などでは巨大な散弾銃のように正面の建物を穴だらけにしたり大通りを一掃したりとかなり凶悪な活躍をしている。
「それなら酒屋と鍛冶屋を回ってきてくれるかい? 火薬は用意するから酒屋が使うような大樽と、鍛冶屋の出した屑鉄を集めておいてくれ」
「すぐに用意させよう」
屑鉄入りの大樽爆弾。多分30kgぐらいだろう。
一応戦中ドイツに10kg爆弾ってのがあったはずだが、仮にも近代の軍が開発した火薬のそれと比べるとこの30kg樽爆弾は威力が劣るかもしれない。
この世界の要素である魔石粉末とやらがどれほど威力に寄与するのかも気になるところだ。
だが威力を試そうにも人で試す訳にはいかないし、ただ木を目印にするのも味気ないので、冒険者ギルドから適当にゴブリンの退治依頼を貰ってきた。
「──おっ! あれ見てェだな」
せっかくなので歳三、孔明はもちろん、ヘクセル、ミラ、ハオランも連れてきた。
それと爆風がどれほどか分からないのでタリオを筆頭に盾持ちや爆弾の輸送係として数名兵士にもついてきてもらった。
「総員止まれ! すぐに準備に取り掛かれ。……ルーデルは五分休止!」
私たちは森の奥にある洞窟に住んでいるというゴブリンの群れを見つけ、少し離れた所に馬を止めた。
兵士らが荷馬車から慎重に爆弾を下ろし、私たちの前に一列に並び盾で壁を作った。
ゴブリンたちは私たちの様子に気が付いていないようだ。
それにしてもよくもまあ都合よく知能が低く目も悪い、それでいて人間より多少小さいが人型であるという実験台に丁度いいモンスターがいたもんだ。
「獣人たちが住むことになるこの森の掃除、そして爆弾の実地試験を兼ねた特別作戦を実行する。……ルーデル、やれ」
ルーデルとハオランを中心にした新制ファリア空軍。
ヘクセルが発明した通信機を利用した軍の統制。
特に通信機と空軍のシナジーは素晴らしいものがあった。
空からの偵察情報を受け取り、それが孔明ら司令部に届きリアルタイムで軍全体が三次元的な集団行動が可能となった。これは狼煙や伝令に頼っていた従来の戦争から大きく時代を飛び越したものだ。
ルーデルは一日のほとんどを空の上で過ごしていたが、食事の時だけは地上にいるのでその頃合を見計らって孔明が彼の元を何度も尋ねていた。
もう一つルーデルや竜人がもたらしてくれたものがある。
それは地図だ。
今までは「馬で何日」「歩兵では行軍に何日」といった経験則に基づく大雑把な目安しかなかった。
しかし、上空から地形の把握に加えルーデルの尋常ならざる経験から来るほとんどズレがないであろう目測により、極めて正確な地図が完成した。
これは内政だけでなく軍事における事前準備でも最重要になる情報である。無駄のない物流や兵員輸送を行うに当たって書かせないものだ。
地図作成の“任務”という建前でルーデルを飛ばし続けたのでこの辺りの地図はほとんど埋まった。
これを見た孔明はとても喜んでおり、地政学や占星術と組み合わせた機能も縁起も良い街づくりが捗るそうだ。
しかしルーデル閣下は軍人である。ただの遊覧飛行で満足する質ではない。
閣下は武装をお望みだ。
「──という訳だ。ヘクセル、君の作った手榴弾はかなり有効だった。この調子でそれを単に大型化するだけでなく、大型化に伴って更に威力を向上させたものを用意して欲しい。できるか?」
ルーデルにしつこく詰められ、二人でヘクセルの元を訪ねていた。
「うーん……。火薬と魔石粉末の在庫はあるんだけど、とりあえずそれを樽にでも入れて見るかい?」
「いや、それなら金属の容器に入れた方がいいな」
爆弾や大砲ってのは、その爆発で人を殺しているのではない。爆発の際に何百メートル先までも金属の破片をばら撒き、それが当たって死ぬのだ。
「木の樽では50kg爆弾も厳しいんじゃないか? ……まぁ試作品ということで中に適当な金属片でも入れて用意してくれ。とにかく何事もやってみることが大事だ」
ルーデルが言う、この火薬と金属片をブレンドした兵器というのは紛争地帯でよく見られる。
お手製の大砲に炸薬を詰め、フォークや釘をそこに突っ込む。もちろんまともに飛びやしないが、紛争地帯の市街地などでは巨大な散弾銃のように正面の建物を穴だらけにしたり大通りを一掃したりとかなり凶悪な活躍をしている。
「それなら酒屋と鍛冶屋を回ってきてくれるかい? 火薬は用意するから酒屋が使うような大樽と、鍛冶屋の出した屑鉄を集めておいてくれ」
「すぐに用意させよう」
屑鉄入りの大樽爆弾。多分30kgぐらいだろう。
一応戦中ドイツに10kg爆弾ってのがあったはずだが、仮にも近代の軍が開発した火薬のそれと比べるとこの30kg樽爆弾は威力が劣るかもしれない。
この世界の要素である魔石粉末とやらがどれほど威力に寄与するのかも気になるところだ。
だが威力を試そうにも人で試す訳にはいかないし、ただ木を目印にするのも味気ないので、冒険者ギルドから適当にゴブリンの退治依頼を貰ってきた。
「──おっ! あれ見てェだな」
せっかくなので歳三、孔明はもちろん、ヘクセル、ミラ、ハオランも連れてきた。
それと爆風がどれほどか分からないのでタリオを筆頭に盾持ちや爆弾の輸送係として数名兵士にもついてきてもらった。
「総員止まれ! すぐに準備に取り掛かれ。……ルーデルは五分休止!」
私たちは森の奥にある洞窟に住んでいるというゴブリンの群れを見つけ、少し離れた所に馬を止めた。
兵士らが荷馬車から慎重に爆弾を下ろし、私たちの前に一列に並び盾で壁を作った。
ゴブリンたちは私たちの様子に気が付いていないようだ。
それにしてもよくもまあ都合よく知能が低く目も悪い、それでいて人間より多少小さいが人型であるという実験台に丁度いいモンスターがいたもんだ。
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