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第二章
159話 進展
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皇女が来たからと行って私の仕事がなくなるわけではない。
それから数ヶ月間は、エルシャとの新しい生活スタイルと相変わらず山積みである仕事の間で押し潰されるような日々であった。
政治の中枢を担う建物の改築が完了したことにより、とりあえず使っていた兵舎からまた移動しファリア中心に新たな庁舎が生まれた。
それに合わせ孔明や役人たちもその近くに移り住み、今まで多少不便だったものが一挙に解決された。
三階建ての庁舎はファリアで屋敷に並んで一番高い建物である。部屋数も屋敷並にあり、執務室に会議室、更には応接室や事務室といった全ての政治機能を集約した新庁舎として相応しいものであった。
「レオ、それは何をしているの?」
「これは建築許可証だな。だが私はただサインするだけさ。街づくりに関しては大枠は決まっているから、あとは素人が変に指示をするより、孔明みたいな本職の人間に任せた方がいい」
「貴方はそれでいいの?」
「……? ファリアがそれだけ大きく成長したということだ。喜ばしい限りだよ」
改築した昔の屋敷はあくまでもその場しのぎでしかなかった。新しい屋敷も完成してからは、私たちはすぐに綺麗でより大きいこっちの屋敷に引っ越した。
ちょうど収穫の季節ということもあって、まとまった収入があったので装飾品も揃えることができた。まあ当のエルシャ本人はそこまで気にしていなかったようだが、高貴な血筋である自分の婚約者を無下に扱うわけにもいかなかったので自己満足ではあるがそれなりのものを用意した。
しかしせっかく裏庭や美術品の展覧室まで用意したのにエルシャはこうやってよく私の仕事部屋へ来る。
皇族なだけあって彼女の教養の高さにはしばしば驚かされた。
政治の舵取りに口出しをすることは絶対になかった。だが文書の中にある小さな間違いや計算のズレ、微妙に抜けた法律の穴などを的確に指摘してくれた。
「れ、レオ様……、こちら次の書類になりますにゃ……」
「ありがとう。──そこの机にある書類は全て終わったものだ。向こうに送っといてくれ」
「かしこまりましたにゃ……」
エルシャが私の横にいることでミーツはいつもビクビクしていた。
しかしいつだかのように下世話な話をされることもなくなったので仕事がしやすくていい。
「……どれどれ。……これはヘクセルとシフからか。…………なるほど、これは顔を出した方がいいな」
「どこか行くの?」
「ああ。私に直接見てもらいたいものがあるらしいからな。これからヘクセルの研究所に行ってくる」
「そう。私もついて行っていい?」
「……まあいいと思うが、君が見て楽しいものはないと思うぞ」
「じゃあ一緒に行くわ。一緒に歩くのが楽しいから。……準備するからちょっと待ってて」
こうしてエルシャは私の出先にまでついてくる。
「エルシャ様、お元気ですか」
「ええ。あなたも元気そうで良かったわヘルムート」
「デートの邪魔して悪いがこれも仕事なのでな、許してくれよレオ?」
「私も仕事で出てるんだ。茶化すな歳三」
旧知の関係ということもあり、私とエルシャが並んで歩く両脇には、彼女側には団長と旧近衛騎士の兵士、私側には歳三とカワカゼら妖狐族が護衛についた。
左右で武器から服装まで和洋に分かれているのはなんとも珍妙な見た目である。
私一人なら歳三と二人で行動できるのだが、エルシャと一緒にここまでの護衛を付けて歩けば街も軽く騒ぎになるので少々厄介だ。
だがエルシャはそんな騒ぎもどこか楽しんでいるようで、街の人に手を振ったり出店に寄って見たりと既に打ち解けていた。
私が屋敷にいる時は別に外出もしないが、こうした時は抑圧された皇都から飛び出した自由を満喫しているらしい。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
内政やエルシャとの関係は良好に進展していたが、帝国国内の情勢は依然として不安定なままだ。相変わらず国内で紛争が頻発しているが、ヘルムート団長なき現近衛騎士団だけでそれを解決できずわざわざ帝国軍本軍を動かしてやっとの状態らしい。
だからこそその隙に私たちは軍備や外交関係を整える。
亜人・獣人を組み込んだ新制ファリア軍の指揮権。それは以下のようになった。
総指揮 レオ=ウィルフリード
軍師 諸葛亮(孔明)
歩兵 土方歳三
騎兵 ヘルムート=ヤーヴィス
弓兵 タリオ=シュリン/シャルフ=バルデマー
空軍 ハオラン=リューシェン
一応建前として総指揮権は私にあるが、実質孔明が指揮を執っている。私が無理を言ってそれを叶えるのが孔明の仕事のようなものだ。
歩兵には元からあったファリア軍に加えて、カワカゼ指揮下の妖狐族抜刀隊、アイデクス指揮下の蜥蜴人族槍兵が含まれる。
タリオには父アルガーと同じシュリンという名と共に準貴族位を与えた。そして弓兵の指揮という大役も任せた。
タリオならウィルフリード一万の副将であるアルガーのように大成すると信じている。
ここで注意したいのが弓兵と空軍の指揮系統である。
弓兵には何故かよく分からないがエルフの王子様シャルフが加わっている。そして彼は彼で別にエルフ弓兵を指揮している。
弓兵の指揮はタリオなのだがシャルフはタリオの指揮下にない。貴族であり盟友である私が直接指揮しないと聞かないそうだ。
指揮系統の混乱を招くのでやめて欲しいが、彼らのプライドを優先してでもエルフの弓術は手に入れたい。そのため正確には弓兵は二つの部隊に分かれ、タリオとシャルフが別々に指揮を執ることになった。
そして空軍。
本来はルーデルに任せるつもりだったが、空軍と言いつつ実質竜人なのでハオランに指揮を執って貰った方が円滑にことが運ぶ。
そして何よりルーデル自体が私の想像以上に好き勝手やるので指揮官には向かないと判断した。ルーデルには特別任務と称して無茶を押し付けるぐらいが丁度良さそうである。
軍備と外交に関して、地方貴族派閥の中で私たちはかなり重要な地位にある。
それはヘクセルとドワーフたちによる武器だ。
本当は帝国法で武器の製造は制限されており、協商連合に忖度もあって皇都経由で協商連合に売りつけられた武器を使うことになっているが、もはや中央に帝国法を守らせるだけの力はなかった。
よって私たちが製造するヘクセルの創意的な兵器や高品質なドワーフ製の武器や防具は人気が高く、高価で取引されている。
確実に“その時”は私たちの前まで迫ってきていた。
それから数ヶ月間は、エルシャとの新しい生活スタイルと相変わらず山積みである仕事の間で押し潰されるような日々であった。
政治の中枢を担う建物の改築が完了したことにより、とりあえず使っていた兵舎からまた移動しファリア中心に新たな庁舎が生まれた。
それに合わせ孔明や役人たちもその近くに移り住み、今まで多少不便だったものが一挙に解決された。
三階建ての庁舎はファリアで屋敷に並んで一番高い建物である。部屋数も屋敷並にあり、執務室に会議室、更には応接室や事務室といった全ての政治機能を集約した新庁舎として相応しいものであった。
「レオ、それは何をしているの?」
「これは建築許可証だな。だが私はただサインするだけさ。街づくりに関しては大枠は決まっているから、あとは素人が変に指示をするより、孔明みたいな本職の人間に任せた方がいい」
「貴方はそれでいいの?」
「……? ファリアがそれだけ大きく成長したということだ。喜ばしい限りだよ」
改築した昔の屋敷はあくまでもその場しのぎでしかなかった。新しい屋敷も完成してからは、私たちはすぐに綺麗でより大きいこっちの屋敷に引っ越した。
ちょうど収穫の季節ということもあって、まとまった収入があったので装飾品も揃えることができた。まあ当のエルシャ本人はそこまで気にしていなかったようだが、高貴な血筋である自分の婚約者を無下に扱うわけにもいかなかったので自己満足ではあるがそれなりのものを用意した。
しかしせっかく裏庭や美術品の展覧室まで用意したのにエルシャはこうやってよく私の仕事部屋へ来る。
皇族なだけあって彼女の教養の高さにはしばしば驚かされた。
政治の舵取りに口出しをすることは絶対になかった。だが文書の中にある小さな間違いや計算のズレ、微妙に抜けた法律の穴などを的確に指摘してくれた。
「れ、レオ様……、こちら次の書類になりますにゃ……」
「ありがとう。──そこの机にある書類は全て終わったものだ。向こうに送っといてくれ」
「かしこまりましたにゃ……」
エルシャが私の横にいることでミーツはいつもビクビクしていた。
しかしいつだかのように下世話な話をされることもなくなったので仕事がしやすくていい。
「……どれどれ。……これはヘクセルとシフからか。…………なるほど、これは顔を出した方がいいな」
「どこか行くの?」
「ああ。私に直接見てもらいたいものがあるらしいからな。これからヘクセルの研究所に行ってくる」
「そう。私もついて行っていい?」
「……まあいいと思うが、君が見て楽しいものはないと思うぞ」
「じゃあ一緒に行くわ。一緒に歩くのが楽しいから。……準備するからちょっと待ってて」
こうしてエルシャは私の出先にまでついてくる。
「エルシャ様、お元気ですか」
「ええ。あなたも元気そうで良かったわヘルムート」
「デートの邪魔して悪いがこれも仕事なのでな、許してくれよレオ?」
「私も仕事で出てるんだ。茶化すな歳三」
旧知の関係ということもあり、私とエルシャが並んで歩く両脇には、彼女側には団長と旧近衛騎士の兵士、私側には歳三とカワカゼら妖狐族が護衛についた。
左右で武器から服装まで和洋に分かれているのはなんとも珍妙な見た目である。
私一人なら歳三と二人で行動できるのだが、エルシャと一緒にここまでの護衛を付けて歩けば街も軽く騒ぎになるので少々厄介だ。
だがエルシャはそんな騒ぎもどこか楽しんでいるようで、街の人に手を振ったり出店に寄って見たりと既に打ち解けていた。
私が屋敷にいる時は別に外出もしないが、こうした時は抑圧された皇都から飛び出した自由を満喫しているらしい。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
内政やエルシャとの関係は良好に進展していたが、帝国国内の情勢は依然として不安定なままだ。相変わらず国内で紛争が頻発しているが、ヘルムート団長なき現近衛騎士団だけでそれを解決できずわざわざ帝国軍本軍を動かしてやっとの状態らしい。
だからこそその隙に私たちは軍備や外交関係を整える。
亜人・獣人を組み込んだ新制ファリア軍の指揮権。それは以下のようになった。
総指揮 レオ=ウィルフリード
軍師 諸葛亮(孔明)
歩兵 土方歳三
騎兵 ヘルムート=ヤーヴィス
弓兵 タリオ=シュリン/シャルフ=バルデマー
空軍 ハオラン=リューシェン
一応建前として総指揮権は私にあるが、実質孔明が指揮を執っている。私が無理を言ってそれを叶えるのが孔明の仕事のようなものだ。
歩兵には元からあったファリア軍に加えて、カワカゼ指揮下の妖狐族抜刀隊、アイデクス指揮下の蜥蜴人族槍兵が含まれる。
タリオには父アルガーと同じシュリンという名と共に準貴族位を与えた。そして弓兵の指揮という大役も任せた。
タリオならウィルフリード一万の副将であるアルガーのように大成すると信じている。
ここで注意したいのが弓兵と空軍の指揮系統である。
弓兵には何故かよく分からないがエルフの王子様シャルフが加わっている。そして彼は彼で別にエルフ弓兵を指揮している。
弓兵の指揮はタリオなのだがシャルフはタリオの指揮下にない。貴族であり盟友である私が直接指揮しないと聞かないそうだ。
指揮系統の混乱を招くのでやめて欲しいが、彼らのプライドを優先してでもエルフの弓術は手に入れたい。そのため正確には弓兵は二つの部隊に分かれ、タリオとシャルフが別々に指揮を執ることになった。
そして空軍。
本来はルーデルに任せるつもりだったが、空軍と言いつつ実質竜人なのでハオランに指揮を執って貰った方が円滑にことが運ぶ。
そして何よりルーデル自体が私の想像以上に好き勝手やるので指揮官には向かないと判断した。ルーデルには特別任務と称して無茶を押し付けるぐらいが丁度良さそうである。
軍備と外交に関して、地方貴族派閥の中で私たちはかなり重要な地位にある。
それはヘクセルとドワーフたちによる武器だ。
本当は帝国法で武器の製造は制限されており、協商連合に忖度もあって皇都経由で協商連合に売りつけられた武器を使うことになっているが、もはや中央に帝国法を守らせるだけの力はなかった。
よって私たちが製造するヘクセルの創意的な兵器や高品質なドワーフ製の武器や防具は人気が高く、高価で取引されている。
確実に“その時”は私たちの前まで迫ってきていた。
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