英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜

駄作ハル

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第三章

218話 英雄、堕つ

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「……は?」

「ウルツ様は魔王領にて討死されました……!」

「は? 何を言っているんだお前は。つまらない冗談はやめろ」

「決して冗談などではございません! 魔王領にて上位種との交戦中、王国軍の挟撃によって調査軍は壊滅! ウルツ様は殿しんがりとして最期まで前線に残られそのまま戦死しました!」

 タリオの言葉が頭をそのまますり抜けていく。脳が理解を拒絶しているのだった。

「そんなはずはない。父上はそんなことでは死なない。……帝国の英雄なんだぞ? かの大戦でも王国を退けた救国の英雄だ。そんな簡単に死ぬはずがないだろうッ!!!」

「……いいえレオ様! 残念ですがウルツ様は……!」

「くどいわッ!!! 父上は死なない! 何度言えば分かる!」

「レオ様……!」

「──ああ、わかったぞタリオ! お前、エルに会いたくなったのだろう! ああ、そういうことか! だったらそんな適当な嘘な吐かずとも私に言えば会って話すぐらいは別に構わないぞ。お前のことは信用しているからな」

「レオ様!!! 信用して下さっているなら、私の言葉も信じて下さい!」

「だから父上は──」

 その時、部屋に置かれた通信機の呼び鈴が鳴り始めた。
 私用、仕事用、そして緊急連絡用の全てが一斉に鳴り始める。それがただ事じゃない現状を顕著に表していた。

「レオ様大変ですにゃ!」
「レオ様!」
「陛下!」

「……は?」

 次々に配下の者がなだれ込んでくる。もはやこれはタリオのタチの悪い冗談などと言い訳できない。

「……あ。……え…………?」

「れ、レオ……」

 後ろからエルシャもやってくる。
 彼女の顔を見て僅かに冷静さを取り戻した私は、途端に頭の中でタリオの口から告げられた言葉の意味が反芻される。

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ! 嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッ!」

「落ち着いてレオ!」

 エルシャに後ろから抱き締められる。
 しかし私の脳は体を平行に保つことすらできず、私はその場に倒れ込んでしまった。

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙! ──はッ! はッ! ッァァア゙! はァッ! がッ……!」

「……! レオ様お気を確かに! ──過呼吸だ! 至急宮廷魔導師の中から治癒魔導師を!」

「は、はいにゃ……!」

 掠れる意識の中、ミーツの言葉と私を抱き抱えるタリオの姿だけが、私の頭の中を反響していた。






 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆




「──は!」

 私は強く手を握られる感覚で目を覚ました。
 ベッドのすぐ横にはエルシャがいて、その後ろには各大臣が勢揃いだ。

「レオ!」

「エル……」

 私はエルシャから手を離し体を起こす。
 するとすぐにナポレオンが来て私の両肩に手を乗せた。

「気を確かに持て」

 私の目を真っ直ぐ見て一言言葉を掛けられると、急に私の中に不確かな自信が湧いてきた。これも彼のスキルである『葡萄月ヴァンデミエール将軍』の能力か。

「もう大丈夫だ……」

 そう言いながらも私は頭を抱え顔を覆っていた。

「おいしっかりしろ! お前がそんなんだと、まだまだ人は死ぬぞ!」

 歳三は私の胸ぐらを掴み無理やり私を立たせた。

「大丈夫だ歳三……。──それで、その王国軍とやらはどうなっている」

「はい。帝国は王国による侵略を受けています。問題の魔王領ですが、そちらの防備は強固であるため侵攻を諦めたようです」

 孔明が淡々と紙を読み上げる。

「その一方で最も危険なのは南方、特に協商連合と王国のどちらとも近接しているウィルフリードでしょう。王国との間には要塞があるため時間稼ぎにはなりますが、軍の空いたウィルフリードに王国軍が集中すれば陥落も時間の問題かと。協商連合側は依然動きはありませんが、万が一参戦してきた場合そちらからの迂回路もあります」

「ウィルフリード……。──そうだ母上! 母上はどうなっている!?」

「ですので現在は母君が僅かな手勢を率いてウィルフリード防衛に当たっております。恐らく敵の狙いは単にウィルフリードを手に入れることではなく、皇帝の実母を攫い交渉を優位に進めようという考えでしょう。既に国境付近に配備された即応部隊が救援に向かっていますが、それだけでは不十分でしょう」

「……国有軍と全ての貴族が持つ軍隊をもってして王国を捻りつぶせ! 協商連合の軍などたかが知れている! 最低限残して全軍王国の首都へ向かえ!」

「……それは王国軍の撃退ではなく、王国の征服が最終目標ということでよろしいでしょうか」

「その通りだ! 私は何度も彼らにチャンスを与えた! その結果がこれだ! もはや慈悲はない! 我が道を阻むものは全て轢き殺せ!」

 怒りで我を忘れていた。後からはそうなんとでも言える。
 だがこの時はそれ以外の選択肢が浮かんでこなかった。

「了解致しました。指揮はレオ自身で執りますか?」

「……今はそんな気分ではないし冷静な判断もできる自信がない。全てお前たちに任せる」

「十分冷静な判断だ。ではこの全権委任法にサインを」

 ナポレオンが厚紙を差し出す。

「……期限は王国が滅ぶまで、と書き足すぞ」

「……前言撤回する。お前は不気味なまでに冷静沈着だ」

 私は自分で一部法令の内容を書き換えた上でサインした。

「ではこちらで全て片付けて起きます。レオ、今はゆっくり休みなさい」

「ああ。ありがとう孔明。後は任せた」

 孔明は力強く頷き部屋を後にしようとする。
 私はその背中に今思い付いたことを投げかけた。

「王国の首脳部は殺すな。生きたまま捕獲しろ。……私が直々に処分する。その血をもって罪を贖うのだ」

「……了解だぜ」

 歳三は手をヒラヒラさせてそう応じた。

 これから人類史上最大となる、世界大戦が幕を開けようとしていた。
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