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第四章
229話 発展
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そうして『人類共同世界政府』という巨大な組織による外交、全貴族の軍を統合し中央集権を図った内政。共に順調に事が運んでいた。
もちろん、その裏では国家保安局や帝国情報局の活躍があったことを忘れてはならない。
「皇帝だけじゃなく世界政府の議長までやってるのに意外と暇なのね」
議長就任から三ヶ月が過ぎようとしていた。
もう間もなく私も十八だ。
ちなみに年月日が国ごとに違うのも不都合を生じるため「統一歴」を制定した。今日は統一歴元年八月九日である。
私の誕生日は紀元前十八年九月一日であり、過去の話は紀元前となり分かりずらいが、いつまでも日本で言う皇暦を使う訳にもいかないので帝国内でも帝国歴を廃止し、統一歴で統一することとした。
「世界政府は会議の要求があった時以外は年に一回の定例予算会議のみだからな。それに皇帝の方も大幅に権利を下に渡した。私は基本的には国会での決定にサインするだけだ」
「ふうん……。まあ、私としては貴方が暇な方が嬉しいけど」
「忙しくなるのは戦争の時だからな。世界政府の安全保障理事会に帝国での対応などでこんな時間はなくなる」
「戦争なんて起きないわよ。貴方に逆らえる存在はこの世にないわ」
「はは! その通りだ!」
私はまた始めた趣味の書き物をする手を止め、エルシャの頭を撫でた。
半ば無理矢理ではあるものの、世界征服してしまえば戦争は起きないのだ。反乱が起きる可能性はあるしれないが、未然に防ぐ努力をすればよい。
風通しの悪い世界にはなるが、なるべく民主化を進めるなどして改善していきたい。
なにせ「民主主義は最悪の政治形態である。過去の他のあらゆるものを除けば」とウィンストン・チャーチルが言ったように、まだ民主主義というヤツはマシな政治形態らしいのだから。
「もう、お義父様のことは大丈夫?」
「……ああ。問題ない」
父の葬儀は帝国式の国葬であったが、異例中の異例で王国から聖教会の教皇らも参列した。
それはまさに信教の自由や国境を越えた繋がりを象徴するものであった。
「それにしても貴方って、税収は増えたのに全然贅沢したがらないわよね」
「技術革新や貿易の自由化で得た税収は全て軍事研究費に注ぎ込んでるからな。……何か欲しいものがあるのか?」
「いえ、そういう訳じゃないけれど」
「私はもう欲しいものを全て手に入れているよ」
私はエルシャを撫でる手でそのまま彼女を抱き寄せた。
美しい妻、優秀すぎる部下、全てが上手く回る国。間違いなく私がこの世界で一番の幸せ者だろうと自負する。
「魔王領は?」
「……流石にこのままウィルフリード、つまり母上に任せることはできない。本当は国連軍……じゃなくて、世界軍で行くべきだが、武器を渡しても練度の劣る他国の軍を連れていくのは危険だから帝国軍だけで行っている。歳三が特殊作戦部隊五万の兵を率いてな」
特殊作戦部隊は歳三が選抜したエリートの集団である。
厳しい戒律によって成り立っており、命令違反──特に敵前逃亡などは一発で死刑という歳三流のやり方を採用している。
それでも最新の武器・兵器の運用を任され、その危険な任務内容から高給と社会的地位が約束されているため人気は高い。
隊長に歳三、副隊長にカワカゼを据え、隊員には旧近衛騎士、宮廷魔導師、最高ランク冒険者などの実力者が集っている。
「本当の意味での世界征服は魔王領を全て解明してからって、前も言っていたわよね」
「ああ。父上までの代が解き明かした43%に加え、歳三ら特殊作戦部隊の21%、合わせて64%が調査済み。14%が整備され実質地図上帝国に編入して差し支えない状態となっている」
「昔はただ襲ってくるモンスターたちを追い返すだけで精一杯だったのに、逆に攻め入るなんてね」
「……若干その点が気がかりでもあるんだがな。どうして十年程前までは活発だった魔物やモンスターの動きが鈍っているのか。人類が今まで未踏の地だった、むしろ脅威だった魔王領をこんな簡単に調査・開発できているのか」
街の近くであったり森の中の魔物などは依然として活動を続けており、冒険者らの仕事がなくなるようなことは今のところない。一方で北方二貴族は仕事が減ったと喜んでおり、歳三の調査も順調である。
父上の北伐が約八年前であり、それ以来パタリと動きを見せていないのがなんとも不気味だ。
「貴方が前に言っていた通り、伝説は所詮伝説なのかもね」
「いや、どの国の歴史書でも共通して魔王の存在が記されているから流石にそれはないと思うんだが……」
「でも私も貴方も、今生きている人は誰も見たことがないのよ? 本当にいないかも」
「……そうだな」
長命であるエルフに聞けば生きている人もいるかもしれないと思ったが、エルフの寿命が二百歳であるのに対して伝説では魔王出現が五百年前とされている。
どれだけエルフのご長寿さんを探しても、寿命の二倍以上の生き字引には出会えないだろう。
いくら私が心配性の悲観主義者と言えど存在しないものまで恐れはしない。
今はエルシャの言葉を信じることとして、無言で彼女の腕の中へ飛び込むのだった。
もちろん、その裏では国家保安局や帝国情報局の活躍があったことを忘れてはならない。
「皇帝だけじゃなく世界政府の議長までやってるのに意外と暇なのね」
議長就任から三ヶ月が過ぎようとしていた。
もう間もなく私も十八だ。
ちなみに年月日が国ごとに違うのも不都合を生じるため「統一歴」を制定した。今日は統一歴元年八月九日である。
私の誕生日は紀元前十八年九月一日であり、過去の話は紀元前となり分かりずらいが、いつまでも日本で言う皇暦を使う訳にもいかないので帝国内でも帝国歴を廃止し、統一歴で統一することとした。
「世界政府は会議の要求があった時以外は年に一回の定例予算会議のみだからな。それに皇帝の方も大幅に権利を下に渡した。私は基本的には国会での決定にサインするだけだ」
「ふうん……。まあ、私としては貴方が暇な方が嬉しいけど」
「忙しくなるのは戦争の時だからな。世界政府の安全保障理事会に帝国での対応などでこんな時間はなくなる」
「戦争なんて起きないわよ。貴方に逆らえる存在はこの世にないわ」
「はは! その通りだ!」
私はまた始めた趣味の書き物をする手を止め、エルシャの頭を撫でた。
半ば無理矢理ではあるものの、世界征服してしまえば戦争は起きないのだ。反乱が起きる可能性はあるしれないが、未然に防ぐ努力をすればよい。
風通しの悪い世界にはなるが、なるべく民主化を進めるなどして改善していきたい。
なにせ「民主主義は最悪の政治形態である。過去の他のあらゆるものを除けば」とウィンストン・チャーチルが言ったように、まだ民主主義というヤツはマシな政治形態らしいのだから。
「もう、お義父様のことは大丈夫?」
「……ああ。問題ない」
父の葬儀は帝国式の国葬であったが、異例中の異例で王国から聖教会の教皇らも参列した。
それはまさに信教の自由や国境を越えた繋がりを象徴するものであった。
「それにしても貴方って、税収は増えたのに全然贅沢したがらないわよね」
「技術革新や貿易の自由化で得た税収は全て軍事研究費に注ぎ込んでるからな。……何か欲しいものがあるのか?」
「いえ、そういう訳じゃないけれど」
「私はもう欲しいものを全て手に入れているよ」
私はエルシャを撫でる手でそのまま彼女を抱き寄せた。
美しい妻、優秀すぎる部下、全てが上手く回る国。間違いなく私がこの世界で一番の幸せ者だろうと自負する。
「魔王領は?」
「……流石にこのままウィルフリード、つまり母上に任せることはできない。本当は国連軍……じゃなくて、世界軍で行くべきだが、武器を渡しても練度の劣る他国の軍を連れていくのは危険だから帝国軍だけで行っている。歳三が特殊作戦部隊五万の兵を率いてな」
特殊作戦部隊は歳三が選抜したエリートの集団である。
厳しい戒律によって成り立っており、命令違反──特に敵前逃亡などは一発で死刑という歳三流のやり方を採用している。
それでも最新の武器・兵器の運用を任され、その危険な任務内容から高給と社会的地位が約束されているため人気は高い。
隊長に歳三、副隊長にカワカゼを据え、隊員には旧近衛騎士、宮廷魔導師、最高ランク冒険者などの実力者が集っている。
「本当の意味での世界征服は魔王領を全て解明してからって、前も言っていたわよね」
「ああ。父上までの代が解き明かした43%に加え、歳三ら特殊作戦部隊の21%、合わせて64%が調査済み。14%が整備され実質地図上帝国に編入して差し支えない状態となっている」
「昔はただ襲ってくるモンスターたちを追い返すだけで精一杯だったのに、逆に攻め入るなんてね」
「……若干その点が気がかりでもあるんだがな。どうして十年程前までは活発だった魔物やモンスターの動きが鈍っているのか。人類が今まで未踏の地だった、むしろ脅威だった魔王領をこんな簡単に調査・開発できているのか」
街の近くであったり森の中の魔物などは依然として活動を続けており、冒険者らの仕事がなくなるようなことは今のところない。一方で北方二貴族は仕事が減ったと喜んでおり、歳三の調査も順調である。
父上の北伐が約八年前であり、それ以来パタリと動きを見せていないのがなんとも不気味だ。
「貴方が前に言っていた通り、伝説は所詮伝説なのかもね」
「いや、どの国の歴史書でも共通して魔王の存在が記されているから流石にそれはないと思うんだが……」
「でも私も貴方も、今生きている人は誰も見たことがないのよ? 本当にいないかも」
「……そうだな」
長命であるエルフに聞けば生きている人もいるかもしれないと思ったが、エルフの寿命が二百歳であるのに対して伝説では魔王出現が五百年前とされている。
どれだけエルフのご長寿さんを探しても、寿命の二倍以上の生き字引には出会えないだろう。
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今はエルシャの言葉を信じることとして、無言で彼女の腕の中へ飛び込むのだった。
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