デス13ゲーム ~死神に命を懸けた者たち~

鷹司

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第一部 始動

第24話  響く銃声

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 ――――――――――――――――

 残り時間――7時間49分  

 残りデストラップ――9個

 残り生存者――10名     
  
 死亡者――2名   

 重体によるゲーム参加不能者――1名

 ――――――――――――――――


 つい数時間前には、警察署に護送されるところだったというのがウソみたいだった。隠れていた駐車場で紫人の話にのったときは、まさかこんな展開が待ち受けているとは考えもしなかった。ただ、追跡中の警察の目から逃れたいが為に、このゲームに参加しただけなのに。

 デストラップの恐怖はあったが、前兆さえ見逃さなければいいだけである。デストラップの犠牲になった三人は、注意力がなかっただけの間抜けだと思っている。

 ヒロユキにしてみれば、デストラップよりも、警察に見付かることの方が恐怖であった。それもこの病院内にいるかぎりは安全だろう。だったら今はこの状況を楽しむに限る。

 腹ごしらえは終わったので、次は性欲を満たす時間だ。テーブルの上には愛莉が横たわっている。これ以上ないくらいの状況だ。

 ヒロユキは銃口の先を、愛莉の首元に突きつけた。

「うぐっ」

 愛莉の喉元が小さく動いた。

「へへへ、王様にでもなった気分だぜ」

 ヒロユキは愛莉の反応を楽しむように、さらに銃口を下へと動かしていく。大きく盛り上がった胸元の間を銃口が通る。鼓動のたびに胸元が大きく上下に動く。その姿が妙にそそられた。

「なんだよ。鼓動が早いぜ。感じてんのかよ」

 ヒロユキの挑発に対して、愛莉は唇を噛みしめて堪えている。

「いつまで耐えられるか見ものだな」

 ヒロユキは銃口を腹のあたりまで下げた。銃口を愛莉のシャツの下に潜り込ませる。そのままゆっくりと、今度は逆に上の方へと銃口を持ち上げていく。

 シャツが徐々に捲られていき、愛莉の肌が晒されていく。真っ白い肌には汗が浮いており、より一層愛莉の肢体を淫らに見せた。

 さらに銃口を上げようとしたが、そこでなにかに引っかかってしまった。

 ヒロユキはさらにイヤらしく笑みを深くした。銃口がブラジャーに引っかかったと分かったのだ。

「このでかい胸のせいで、これ以上銃が上がらねえよ」

 銃口の先で胸を小突くようにした。ヒロユキは拳銃を持っていない左手でブラジャーをずらそうとしたが、愛莉の胸が大きすぎるせいか、がっちりとブラジャーが肌に食い込んでいて、ずらすことが出来なかった。

「しかたがねえな。焦らすのはここまでにするか」

 ヒロユキは拳銃を隣のテーブルの上に置いた。両手を使ってブラジャーを外すことにしたのだ。まずは愛莉の胸をブラジャー越しに何回か揉んだ。

「すげーな。最高の胸だぜ。でも、やっぱりこのままじゃ下着がジャマだよなあ」

「くっ……」

 愛莉が苦悶の声をあげて、首を左右に振る。

「そんなにジタバタするなよ。今から気持ち良くさせてやるからよ。――それじゃ、実物を見せてもらうとするか」

 ヒロユキは指先をブラジャーの下に潜り込ませた。そのまま上に引き上げれば、ブラジャーからこぼれ落ちた愛莉の胸が見えるはずだった。


 ――――――――――――――――


 今までこの巨乳のせいで、キャバクラでどれだけエロイ目で見られてきたか。しかし、今日だけは巨乳で良かったと心底思った。

 ヒロユキに胸をもまれたときは心の底からゾッと寒気が走ったが、このチャンスを逃すつもりはない。

 今のヒロユキは両手をブラの下に潜り込ませて、完全に両手がふさがった状態になっている。苦しそうな表情を浮かべたのも相手をダマすためにワザとしたものだった。


 今しかない!


 愛莉は両手を支えにしてテーブルから素早く上半身を持ち上げた。

 ヒロユキは咄嗟にブラジャーにかけていた両手を外すような仕草をしたが、ブラジャーの淵に指が引っかかってしまって、両手が使えない。

 上半身を完全に起こした愛莉の目と、驚いたままなにも出来ずにいるヒロユキの目が、同じ高さで交差した。

「クソ野郎っ! 人様の大事な商売道具を勝手に揉んでじゃねえよっ!」

 愛莉は頭を一回大きく後ろにそらすと、次の瞬間、躊躇することなくヒロユキの額目掛けて、渾身の頭突きをかました。

「うぐっぎゅっ……」

 ヒロユキが呻き声を残して後方に崩れ落ち、そのままテーブルから落下した。

 愛莉はすぐさま隣のテーブルに手を伸ばした。拳銃を掴みかけたとき、床に倒れていたヒロユキが思い切り強くテーブルの脚を蹴飛ばした。テーブルの上から拳銃が床に滑り落ちていく。

「ちぇっ!」

 愛莉は舌打ちをしながら、拳銃の落ちた方に視線を飛ばした。

 床の上を拳銃が滑っていく。

 それを確認すると、手近にあったイスを掴んで、まだ床に横たわったままのヒロユキに叩きつけた。

「ぐべっ!」

 ヒロユキが悲鳴を発した。

 愛莉は悲鳴を無視して、さらに続けてイスで叩きつけた。

 ヒロユキが両腕を交差させて、イスからの衝撃を防御する。さらに足を伸ばして、愛莉の足を払いに来た。

 愛莉はテーブルに右手をついて、辛うじて床に倒れるのを防いだ。こうなってくると体力的に弱い愛莉には不利となる。

 とっさに床に落ちた拳銃の位置を確認する。手にしていたイスを投げ捨てると、拳銃に向かってダイブするように体をジャンプさせた。床の上を滑りながら拳銃に飛びつく。


 よしっ! これさえあればいける――。


 右手の先に硬い質感が伝わってきた。床の上で体を回転させて、うつ伏せから仰向けになる。同時に手にした拳銃を後方に構えた。

「遅いんだよっ!」

 そこにヒロユキが飛び掛ってきた。ヒロユキは先ほどまで愛莉が持っていたイスを手にしており、それを横殴りに振り払ってきた。

「いぎゃっ!」

 イスに強打された愛莉の手から拳銃が飛んでいく。

 ヒロユキがすぐに拳銃の元に走った。

「くぐぐぅ……」

 手に走る痛みの為、愛莉は動くのが一瞬遅れてしまった。武器を失い無防備になった愛莉は、慌てて倒れているテーブルの陰に隠れた。しかし、拳銃の前ではなんの役にもたたないのは分かりきっている。

「おい、そこにいるんだろ! おとなしく出てきやがれ! それとも一発お見舞いしないと出てこねえっていうんなら、そのテーブルごとブチ抜いてやるぜっ!」

 ヒロユキの怒声がホールにこだまする。

 愛莉は絶体絶命の状況に陥った。テーブルの影から少しだけ顔を出して、ヒロユキの姿を確認する。ヒロユキはどっしりと拳銃を構え、その銃口は一直線に愛莉の方に向けられている。これではお色気作戦も通用しないだろう。必死に頭を働かせるが、拳銃に勝てる方法などすぐに思いつくはずもなかった。

 万事休すである。

「出てこねえのなら、こっちから――」

 ヒロユキの言葉に重なるようにして、レストランの入り口のドアが突然大きな音を立てながら開いた。

 愛莉は音のした方に視線を向けた。

 ヒロユキも視線を自分の背後――ドアの方へと向けている。

「誰だか知らねえが、ヒーロー気取りで助けに来たんだったら気をつけな。一歩でもこの中に入ってきたら、この女を撃ち――」

 ヒロユキが話している途中で、レストラン内が一瞬で白い世界と化した。

 愛莉の視界も白一色となった。


 ――――――――――――――――


 中から聞こえてくる人が争っているような音を聞きながら、ヒロトは突入のタイミングを図る。激しい乱雑な音がして、一瞬の沈黙を挟み、ヒロユキの怒声が聞こえてきた。


 今だな。


 ヒロトはレストラン入り口のドアを大きく開け放った。ドアの音ははじめから気にしていない。どうせすぐに気付かれるのだ。重要なのはスピードである。

 ドアの影に隠れながら、手にしたホースをレストランの中に向けた。安全ピンはとっくに抜いてある。

 レバーを強く握り締めた。ホースの先から白煙が噴き出した。一瞬でレストラン内は白い世界と化した。

 ヒロトは躊躇することなく、消火器の中身をすべてぶちまけたのだった。


 ――――――――――――――――


 愛莉が目の前の変化に呆然としていると、白い世界から不意に現れた手に腕を掴まれた。

「お前は早く逃げるんだ!」

 白い視界の中で声だけが聞こえた。

「えっ、誰なの?」

「そんなことはいいから、ここはオレに任せろ。まっすぐ行けば入り口に出る」

「わ、わ、分かった」

 愛莉は白い世界の中、無我夢中で前に向かって走り出した。

「くそっ! ふざけたマネしやがって! 覚悟しろよ!」

 姿は見えないが、ヒロユキの怒りに満ちた声が聞こえた。


 パアンンンッ!


 風船が割れたような音がした。瞬間的に拳銃の発砲音だと悟った。

 
 早くここから逃げないと!


 視界が利かないので、足や腰にイスやテーブルがガンガンがぶつかってくるが、愛莉は無視して走り続けた。アドレナリンが分泌している為なのか、痛みは感じなかった。とにかく、ここから逃げ出さなければという思いだけで走り続けた。

「こんな見えないところで、銃なんかブッ放してんじゃねえよ!」

 さっきの声が怒鳴っている。

「誰だ、てめえ!」

 ヒロユキが怒鳴り返している。

「通りすがりの正義の味方さ」

「その声……そうか、あのボウズ野郎か!」

「お前もボウズだろうが!」

「うるせんだよっ!」

 二人の声が後方に消えていく。同時に目の前に、入り口のドアが見えた。

 愛莉は開けっ放しになっていたドアを走り抜けた。そのまま止まることなく、廊下を突き進んでいく。

 いつ背後から銃弾が飛んでくるのか分からないのだ。出来るだけレストランから離れたかった。
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