デス13ゲーム ~死神に命を懸けた者たち~

鷹司

文字の大きさ
27 / 60
第一部 始動

第25話  救出活動 第四の犠牲者

しおりを挟む
 ――――――――――――――――

 残り時間――7時間19分  

 残りデストラップ――9個

 残り生存者――10名     
  
 死亡者――2名   

 重体によるゲーム参加不能者――1名

 ――――――――――――――――


 瓜生と円城は二階に来ていた。瓜生は横を歩く円城の様子をうかがい、少しだけ眉根をひそめた。円城はさきほどからゼイゼイと荒い息をしているのだ。

「――あんた、余命宣告は受けているのか?」

 円城が立ち止まって、瓜生の顔を見返してきた。

「――どうしてそう思うんだ?」

「顔をみたときからなんとなくな」

「そうか」

「確信したのは咳の音を聞いたときかな。明らかに肺に異常のある感じがしたからな」

「鋭い洞察力だな」

「まあ、このゲームに参加しているくらいだから、なにかしらの事情を抱えていると推測するのは簡単さ」

「なるほどな。つまりそう言っているあんたにもそれなりの事情があるってことか」

「ふっ、上手く自分の病気の話をすり替えたな」

「さて、なんのことだか」

 瓜生と円城がのらりくらりと焦点をぼかしながら話をしていると、廊下の先から激しい音が聞こえてきた。

「ムダ話はここまでだな。ここからは本気でいかないとケガだけじゃ済まないぜ」

「ああ、分かっているさ。もっとも、今の私にとってケガぐらいどうってこともないがな」

 円城は自嘲するというわけでなく、淡々と事実だけを述べるように言った。

「あんたの体調のことは、これ以上は聞かないことにするよ」

 瓜生の言葉に重なるようにして、廊下の先から乾いた破裂音が聞こえてきた。

「くそっ! 銃声だ!」

 瓜生は走り出した。

「頼む。間に合ってくれよ」

 祈るようにつぶやいた。


 ――――――――――――――――


 廊下を走っていると、前方に見知った人影が見えた。瓜生と円城だった。


 助かった……。


 安堵の思いが愛莉の胸中にうまれた。ホッとして走る速度を緩める。


 助けて――。


 声を出して救援を頼もうとしたが、なぜか声が出なかった。おかしいと思ったとき、急に体に激痛が走った。レストランからここまで興奮状態のまま走ってきたので、その痛みに気付かなかったのである。


 そういえばイスやテーブルに激突したけど……。


 そんなことを考えながら、体の痛む箇所に手を伸ばそうとした。しかし、出来なかった。愛莉の体は自分の意思に反して、ズルズルと廊下に崩れ落ちてしまったのだ。


 おかしい……なんだか目がぼやけている……。あれ? さっきまであんなに……痛かったのに……もう、痛みがない……。アタシ……どうしたんだろう……? せっかくここまで逃げて……来た……のになあ……。


 唐突に、このゲームに参加するにいたったいきさつが、脳裏に思い返された。


 ――――――――――――――――


 愛莉はキャバクラで働いていた。人気も売り上げもナンバー1で、毎日が楽しかった。

 そんなある日、新人のキャバ嬢が入店してきた。若くてスタイルもよくて、おまけに性格も良かった。すぐに愛莉を追い抜かして、ナンバー1になった。

 それから愛莉も必死に努力したが、ナンバー2が指定席になってしまった。

 ある日、昔の常連で新人に乗り換えた客から、整形したらナンバー1に戻れるんじゃないのかと言われた。

 すぐに愛莉は整形することを決心した。でも治療費がなかった。ナンバー1キャバ嬢になってからというもの、ブランド品を買いあさり、ホストクラブで散財して、湯水のように金を使い続けて、一切貯金をしてこなかったのである。

 ナンバー1キャバ嬢なのだから、金が無くなってもすぐに稼げると高をくくっていたのだ。

 そんなとき、キャバクラにあの男が客として現れた。死神の代理人、紫人である。お金は用意できないが体の治療に関することならばなんでも出来る、と言ってきた。

 愛莉はすぐに整形の話をした。整形だって立派な治療の一種だ。

 紫人はすぐに愛莉の整形を快諾した。その条件として、ゲームの話をしてきた。

 もちろん、愛莉は参加を即決した。


 ――――――――――――――――


 そして――まさに今、愛莉はそのゲームをしているところだった。しかし、これ以上ゲームを続けることは出来そうになかった。

 意識が混濁して、体にも力が入らなかった。

 廊下に倒れた愛莉の体の周りには、赤い池が広がっていた。愛莉の体から流れ出た血である。

 愛莉はレストランから逃げ出すときに、体に銃弾を浴びていたのだ。


 アタシ、もう……ダメなの……かな…………? 整形して……また、ナンバー1に……戻り……たかったなあ……。


 すぐ近くで自分を呼ぶ声が聞こえる。だが、その声に返事をするだけの力すら、もうすでに愛莉の体からはなくなっていた。


 ――――――――――――――――


 ヒロトはヒロユキと対峙し合っていた。部屋の中はまだ消火器の噴煙が残っていたが、お互いの顔は確認出来た。

 ヒロトは手に武器代わりのイスを持っていた。白一色の世界で、あたり構わずに振りまわしたが、何回かヒロユキに当たった手ごたえはあった。現に、ヒロユキの手には拳銃が握られておらず、こめかみからは出血もしていた。イスがヒットしたのだろう。

「――お前、なんのつもりだ?」

 血塗れの顔でヒロトを睨みつけるヒロユキ。

「女を助けに来たって言えばカッコイイんだけどな。あいにくとお前に用があってここまで来た」

「オレに……?」

「ああ。お前が逮捕されるきっかけになった、コンビニの事件あるだろう?」

「…………」

 ヒロユキが露骨に顔をしかめた。

「あのときの被害者はオレの親友なんだよ」

「けっ、なにかと思えば、青くさい友情ゴッコかよ」

 途端にヒロユキは侮蔑の表情を浮かべた。

「ふんっ、なんとでも言えばいいさ。拳銃のないお前ならすぐに片がつきそうだからな。お前を叩きのめして、無理矢理にでも土下座をさせるからな」

「クソ野郎が、偉そうに上から目線でホザいてんじゃねえよ! そこまで言うのならば、返り討ちにしてやるよ!」


 ――――――――――――――――


 瓜生と円城が床に倒れている愛莉のもとに駆け寄ったまさにそのとき、メールの着信音が鳴り響いた。


『 ゲーム退場者――1名 愛莉

  
  残り時間――6時間59分  

  残りデストラップ――9個

  残り生存者――9名     
  
  死亡者――2名   

  重体によるゲーム参加不能者――2名      』


「遅かったか!」

 瓜生は床に自分の拳を強く叩きつけた。


 ――――――――――――――――


 愛莉退場のメールの余韻も覚めやらぬというのに、再び、参加者全員のスマホから耳障りな音が鳴り響いた。メールの受信音とは異なる音――それは日本人なら誰もが知っている、ある警告音だった。


『緊急地震速報』


 十数秒後――突然、病棟が激しく強く大きく揺れ始めた。

 震度6強の地震が、ゲーム参加者がいる病院を襲ったのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...