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Q1.謎解きの街の新生活
不思議ないとこ
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えっ。それは確かに、なんでだろう。
見たくもないほど嫌なところに、毎日通うなんて。
「何か心変わりでもあったのかな?」
「いや、あのおじいさんは今でもショッピングモールのことが嫌いだぜ。そっちの方に向いてる家の窓を家具でふさいじゃったぐらいには」
それって、相当嫌いじゃないの。本当に見たくすらないのね……
……あっ。気づいてしまえば、簡単な話じゃないの。
「わかったわ。ショッピングモールの中に入っちゃえば、ショッピングモールの外観を見なくて済むから、ってこと?」
「正解。さすがすずめだな」
小さく拍手する鷹くん。って、さすがって何よ。
「でも、本当に? 確かに外観は見なくて済むかもだけど」
「まあそう思うよなあ。少なくともあのおじいさんはそれを理由にして毎日通ってるけど。……ところですずめ」
鷹くんの顔が、また笑顔になる。
「すずめ、俺の問題にちゃんと考えてくれたな」
「えっ?」
「やっぱりこういうこと考えるの好きだろ」
まさか褒めてくれると思わなかった。
鷹くんは右耳にかかった髪を自分で軽くかき上げ、わたしに視線を戻す。
なんだか、まじまじと見つめられてるかのよう。
「まあ、とりあえず安心した。行こう、すずめ」
鷹くんはまた歩き出す。
もしかして、鷹くんも初対面のわたしに対して、色々気になるところがあるのかしら?
駅前から鷹くんの案内に従って、一緒にバスへ。
10分ほど乗って、住宅街の中のバス停で降りる。
「ここから少し歩くけど、大丈夫?」
鷹くんは肩に掛けたバッグからペットボトルのジュースを取り出し、開けて一口。
その開けた右手をそのまま、わたしのスーツケースに伸ばそうとする。
「あっ、荷物は大丈夫だから」
いとこ同士とはいえ、ついさっき会ったばかりの男子に勝手に自分の荷物を持たれるのは、ちょっと抵抗がある。
わたしがスーツケースを自分の方に寄せると、鷹くんはまたジュースを飲んだ。
そういえば、今日は5月並みの暖かさだってスマホのニュースに書いてあった気がする。わたしのセミロングの髪もうっすら湿ってきたし、のどが乾くのは仕方ないだろう。
と思ったら。
「あっやばっ、トイレ行きたくなってきた」
鷹くんが急にもじもじしだす。
「えっ……」
「大丈夫。ちょっとそこの公園のトイレ行ってくる。すぐ終わるから」
そう言って、鷹くんはバス停の目の前にある公園の公衆便所に入っていった。
ふう。
鷹くん、すごい距離が近い。
同い年だし、いとこ同士だから当たり前なのかもしれないけど、まさかすぐに下の名前で呼び捨てされるとは思わなかった。
しかも急に問題を出されるし。
パズルやミステリが好きな謎解きの街、なんて言われたら気にはなるが、だからっていきなり出題されてもちょっとまごつく。鷹くんも、変わったことを言うんだな……
「お待たせ」
わたしは1人になって考えようとしたが、本当にあっという間に鷹くんは帰ってきた。
仕方ない、鷹くんについて考えるのは後だ。
「さ、行こう」
鷹くんは左手でわたしを手招きするように歩き始める。
その様子は、どこかかっこいい。
平日の午前中ということもあり、人通りのほとんどない道を歩いていく。
途中見かけた掲示板にも、『謎解きの街・海老川』と書かれたポスターが貼ってあった。
「謎解きの街って、本当なのね……」
「ああ、江戸時代からの伝統があるんだ。海老川は、たくさんの謎で彩られた街なんだぜ」
「へえ、さっきのショッピングモールとおじいさんの話は?」
あれもまあ、謎解きみたいな話ではある。
「ショッピングモール、うん、そうだね。あれもこの海老川の伝統が生んだものだよ」
やや間があって、鷹くんが答える。
「あっそうだ、せっかくだからもう1問出題しよう」
「えっ、また?」
「海老川ではこうやって、謎やパズルを出題し合うのはよくあることなんだ。すずめも慣れたほうが良いかも」
慣れたほうがと言われても。よくあることと言われても。
やっぱり、どういうこと?
鷹くんは、わたしの疑問などよそに、かがんで靴紐がほどけたところを結ぶ。
きれいな赤い模様が入った、CMでも見かけるピカピカの靴から手を離すと、わたしに向き直った。
「すずめは今、2つの道が分かれるところに立っています。片方の道は『ほんと村』に通じていて、もう片方は『うそ村』に通じていますが、どちらがどちらに通じているかはわかりません」
『ほんと村』に『うそ村』。さすがにこれはさっきのおじいさんの話とはわけが違う。
――本当に、謎解きの問題だ。
「分かれるところに立っている人が1人います。この人は『ほんと村』か『うそ村』から来た人なのですが、ここで問題があります。『ほんと村』からの人は必ず本当のことしか言わないのですが、『うそ村』からの人は必ず嘘をつく、つまり本当のことと逆のことを言います。そしてどっちの村から来た人かは聞かないとわかりません」
実際に『うそ村』があったら迷惑極まりないが、多分そのへんをいちいち突っ込んでたらきりが無さそうだ。
「すずめは『ほんと村』へ行きたいのですが、時間がないので1回の質問で、どちらが『ほんと村』へ通じるかを聞き出さないといけません。さて、どう質問しましょう?」
見たくもないほど嫌なところに、毎日通うなんて。
「何か心変わりでもあったのかな?」
「いや、あのおじいさんは今でもショッピングモールのことが嫌いだぜ。そっちの方に向いてる家の窓を家具でふさいじゃったぐらいには」
それって、相当嫌いじゃないの。本当に見たくすらないのね……
……あっ。気づいてしまえば、簡単な話じゃないの。
「わかったわ。ショッピングモールの中に入っちゃえば、ショッピングモールの外観を見なくて済むから、ってこと?」
「正解。さすがすずめだな」
小さく拍手する鷹くん。って、さすがって何よ。
「でも、本当に? 確かに外観は見なくて済むかもだけど」
「まあそう思うよなあ。少なくともあのおじいさんはそれを理由にして毎日通ってるけど。……ところですずめ」
鷹くんの顔が、また笑顔になる。
「すずめ、俺の問題にちゃんと考えてくれたな」
「えっ?」
「やっぱりこういうこと考えるの好きだろ」
まさか褒めてくれると思わなかった。
鷹くんは右耳にかかった髪を自分で軽くかき上げ、わたしに視線を戻す。
なんだか、まじまじと見つめられてるかのよう。
「まあ、とりあえず安心した。行こう、すずめ」
鷹くんはまた歩き出す。
もしかして、鷹くんも初対面のわたしに対して、色々気になるところがあるのかしら?
駅前から鷹くんの案内に従って、一緒にバスへ。
10分ほど乗って、住宅街の中のバス停で降りる。
「ここから少し歩くけど、大丈夫?」
鷹くんは肩に掛けたバッグからペットボトルのジュースを取り出し、開けて一口。
その開けた右手をそのまま、わたしのスーツケースに伸ばそうとする。
「あっ、荷物は大丈夫だから」
いとこ同士とはいえ、ついさっき会ったばかりの男子に勝手に自分の荷物を持たれるのは、ちょっと抵抗がある。
わたしがスーツケースを自分の方に寄せると、鷹くんはまたジュースを飲んだ。
そういえば、今日は5月並みの暖かさだってスマホのニュースに書いてあった気がする。わたしのセミロングの髪もうっすら湿ってきたし、のどが乾くのは仕方ないだろう。
と思ったら。
「あっやばっ、トイレ行きたくなってきた」
鷹くんが急にもじもじしだす。
「えっ……」
「大丈夫。ちょっとそこの公園のトイレ行ってくる。すぐ終わるから」
そう言って、鷹くんはバス停の目の前にある公園の公衆便所に入っていった。
ふう。
鷹くん、すごい距離が近い。
同い年だし、いとこ同士だから当たり前なのかもしれないけど、まさかすぐに下の名前で呼び捨てされるとは思わなかった。
しかも急に問題を出されるし。
パズルやミステリが好きな謎解きの街、なんて言われたら気にはなるが、だからっていきなり出題されてもちょっとまごつく。鷹くんも、変わったことを言うんだな……
「お待たせ」
わたしは1人になって考えようとしたが、本当にあっという間に鷹くんは帰ってきた。
仕方ない、鷹くんについて考えるのは後だ。
「さ、行こう」
鷹くんは左手でわたしを手招きするように歩き始める。
その様子は、どこかかっこいい。
平日の午前中ということもあり、人通りのほとんどない道を歩いていく。
途中見かけた掲示板にも、『謎解きの街・海老川』と書かれたポスターが貼ってあった。
「謎解きの街って、本当なのね……」
「ああ、江戸時代からの伝統があるんだ。海老川は、たくさんの謎で彩られた街なんだぜ」
「へえ、さっきのショッピングモールとおじいさんの話は?」
あれもまあ、謎解きみたいな話ではある。
「ショッピングモール、うん、そうだね。あれもこの海老川の伝統が生んだものだよ」
やや間があって、鷹くんが答える。
「あっそうだ、せっかくだからもう1問出題しよう」
「えっ、また?」
「海老川ではこうやって、謎やパズルを出題し合うのはよくあることなんだ。すずめも慣れたほうが良いかも」
慣れたほうがと言われても。よくあることと言われても。
やっぱり、どういうこと?
鷹くんは、わたしの疑問などよそに、かがんで靴紐がほどけたところを結ぶ。
きれいな赤い模様が入った、CMでも見かけるピカピカの靴から手を離すと、わたしに向き直った。
「すずめは今、2つの道が分かれるところに立っています。片方の道は『ほんと村』に通じていて、もう片方は『うそ村』に通じていますが、どちらがどちらに通じているかはわかりません」
『ほんと村』に『うそ村』。さすがにこれはさっきのおじいさんの話とはわけが違う。
――本当に、謎解きの問題だ。
「分かれるところに立っている人が1人います。この人は『ほんと村』か『うそ村』から来た人なのですが、ここで問題があります。『ほんと村』からの人は必ず本当のことしか言わないのですが、『うそ村』からの人は必ず嘘をつく、つまり本当のことと逆のことを言います。そしてどっちの村から来た人かは聞かないとわかりません」
実際に『うそ村』があったら迷惑極まりないが、多分そのへんをいちいち突っ込んでたらきりが無さそうだ。
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