ここ掘れわんわんから始まる異世界生活―陸上戦艦なにそれ?―

北京犬(英)

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第二章 逃亡生活

068 決戦、ポイント11①

「クランド、操縦は任せるにゃ」

 ミーナの自信満々な顔に、俺はミーナが肯定的な意味で言っているんだろうなと理解した。
ミーナの「にゃ」は「な」の代わりと、語尾として付く。
つまり「任せるな」という否定の言葉と「任せるのだ」という肯定の言葉の2つの可能性があるのだ。
それを俺はミーナの顔色で判断しなければならない。
今回は間違いなく後者だと俺は確信した。

「頼むぞ。ミーナが作戦の要だからな」

「頼まれたにゃ」

 このミーナの訛り、実は他の皆にはそうは聞こえていない。
俺の異世界言語スキルが勝手にそう翻訳して聞かせているということに、俺は最近気が付いたのだ。
これは日本語の方の問題だと言えよう。
ミーナのようなネコ耳獣人の言葉は「にゃ言葉」で当たり前であるという共通認識の影響が出ているのだろう。

 ミーナの戦闘機も修復が終わり、陸上戦艦も空賊のアジトに接近した。
ついに陸上戦艦の魔導レーダーの範囲にポイント11=空賊のアジトが入ったのだ。

『魔道レーダーに感なし。
上部構造物、存在しません。
識別信号発信。応答なし』

 陸上戦艦の修理補給基地として存在しているポイント11は、その上部構造物を失っていた。
つまり魔導通信機のアンテナ類が失われ、送受信が困難な状況にあるということだった。
陸上戦艦も管理者を失い魔導機関がスクラム状態の時は、艦体が左に傾いたままだったおかげで修理ゴーレムが左舷側に落ちて活動出来ていなかった。
その状態では破壊されたレーダーや通信機のアンテナも修理が出来ず、艦の電脳は外の様子を数百年も知ることが出来なかったのだ。
まさにポイント11も同じ状態にあるようだった。

『地中探知レーダー作動。
ポイント11の存在を確認しました。
識別信号、最大出力で発信してもよろしいでしょうか?』

 システムコンソールが俺に許可を求めて来た。
つまりそれは、人工知能が勝手にやってはいけない行為ということなのだろう。

「人体に影響があるのか?」

『はい。こちらの乗員は保護されていますが、ポイント11側には少なからぬ問題があります』

 電波レーダーはレーダー波を高出力で放出すると、放出先は電子レンジの中と同じになるという。
では魔導通信波の場合はどうなるのだろうか?
問題があるとシステムコンソールが言うからには嫌な予感しかしない。

「放出先はどうなる?」

『魔力波を浴びて魔力の強い者ほど魔力酔いの症状が出ます』

 俺は胸を撫で下した。
その程度なら、むしろ空賊相手ならば問題ない。
いや、もっと強力ならば逆に武器として使えたかもしれない。
空賊相手なら問答無用で殺して良いのがこの世界なのだ。

 だが俺はその考えを頭から捨てた。
もし空賊に捕まった無関係の人がそこにいた場合、取り返しのつかないことになるからだ。

「後遺症が残らないならやってくれ」

『問題ありません。
影響があるとしたら地上に居る者だけです。
建物や密閉空間の中なら、ある程度症状は緩和されます。
それでは、識別信号最大出力で発信。
受信信号反応なし』

 これはポイント11が受信していても発信できないということも有り得た。
だが、ポイント11の電脳が味方だと識別してさえくれれば、攻撃を停止し受け入れ態勢に入ってくれる可能性があった。
そうなれば、脅威は空賊に鹵獲され、識別装置を壊された武器だけとなる。

「大丈夫なのか?
空賊の方が偉い立場でお前に命令できるとかないんだろうな?」

『管理者クランドの指揮命令権限ならば問題ありません』

 システムコンソールが言うには、俺の権限はDNAにより確認した結果、最高権限に近いらしい。
俺はガイア帝国の正当後継者だとDNAによって確定しているのだとか。
そういやガイアベザル帝国も正当後継者だと主張しているんだったな……。
嫌な予感しかしない。
まさかと思うが、ガイア帝国もガイアベザル帝国も異世界転移者や、俺みたいに肉体を元のDNAで再生された転生者の関係者か?
ガイアベザル帝国がこの世界には珍しいという黒髪黒目に拘るのも、元が日本人絡みと思えば納得できる。
まあ、ここは空賊に日本人がいないことを祈るとしよう。

「あ、日本人がいたなら、あの戦闘機に乗るか」

 おそらく空賊の最大戦力であるあの戦闘機を使えるのは、空賊のボス以外はいないだろう。
部下に渡してしまったら、そいつに裏切られたら終わりだからな。
あの死体がボスだったとすると、どう見ても日本人からはかけ離れていた。
となると、ポイント11は俺の方に従う可能性が高かった。

「システムコンソール、魔導レーダーで敵の存在は確認できるか?」

『ワイバーンと人の存在を確認。
人はほとんどが倒れています』

 魔力の強いもの限定という割には被害が大きいんじゃないだろうか?
まあ、識別信号最大出力のおかげで、どうやら脅威の制圧が楽になりそうだ。

『脅威を確認。
ラスコー級戦車2、生きています。
識別信号出ていません。
敵として対処する必要があります』

 ラスコー級戦車なら700番台ゴーレムと同等の性能のはずだ。
こちらにはその700番台ゴーレムが数十体いる。
勝ったな。こちらにはタンクキラーとなり得る航空戦力もある。

「ラスコー級戦車への攻撃を許可する。
ミーナの戦闘機ならば対地ミサイルで一発だな?」

『FA69は発進不能です』

「は?」

 俺はそのシステムコンソールの言葉にモバイル端末を二度見した。

『飛行甲板が農園により使用不能です。
戦闘機を発進させるなら艦を止めて外に出す必要があります。
更に地上に滑走路を整備しなければ飛び立てません』

 FA69は垂直離着陸の出来ない普通の短距離離着陸機だったのだ。
しかも飛行甲板は俺が農園として使用中。

「盲点だったわ!」

 いや、俺がレビテーションで機体を浮かせて、そこから飛ばせば発進可能だろう。

「俺がレビテーションで機体を浮かす。
そこから発信は可能か?」

『右舷後方の搬出口から出せば可能です』

「やるぞ、ミーナ! 出撃だ。
戦車を破壊しろ」

 ミーナはシミュレーションで対地攻撃ミッションも経験済みだった。

「任せるにゃ」

 顔を見る限りやる気満々だ。
これも肯定の意味だろう。
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