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アイドル編
048 アイドル編25 中衛戦顛末
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緊急招集による防衛戦が終了した。
『すてるす』を回収し、帰還の隊列を組む。
中心に鹵獲戦艦、その右舷にくっついた僕の専用艦。その右に鹵獲ステルス艦。
鹵獲戦艦の左舷側にアヤメ艦。その左を推力を失った鹵獲巡洋艦がアヤメ艦の左腕に掴まれて曳航されている。
僕らの艦隊は戦艦1巡洋艦1ステルス艦1を鹵獲し、巡洋艦1駆逐艦2の撃墜権を確保した。
これでおそらく綾姫の借金も完済出来ることだろう。
問題は僕の専用艦の損傷修理と鹵獲戦艦との癒着状態の解消費用だ。
同じ方向を向いていたなら双胴艦扱いで運用する道もあるのだが、僕の専用艦と鹵獲戦艦は前後逆の反航する形で癒着している。
「どうしてこうなった!」
僕の専用艦と鹵獲戦艦が、このような状態になった原因と思われるのは2点。
僕の専用艦の右舷が戦艦の大口径ビーム砲で損傷していたことと、鹵獲戦艦の右舷に侵食弾が着弾し侵食中であったこと、これらが相乗効果を表したものと予想している。
敵戦艦に侵食弾を撃ち込んだ時に通常より侵食が遅くて僕は危機に陥った。
その原因は戦艦の分厚い装甲にあったのではないかと思う。
現在癒着している鹵獲戦艦の装甲部分は、どうやら侵食で繋いだデータリンクの主たる経路ではないようなのだ。
主に繋がっているのは『すてるす』が、鹵獲戦艦の艦橋に撃ち込んだ侵食弾からの経路だ。
戦艦の電子・量子機器が集中している艦橋に侵食弾を撃ち込んだことが、侵食を加速させた要因だと思われる。
それと侵食弾を過信してはいけないという教訓を得た。
侵食弾は敵艦内のネットワークを侵し支配することで敵艦の制御系を無力化する。
制御系からの指令を遮断する効果しかなく、敵戦艦の電脳は生きたままだ。
敵戦艦の電脳は、こちらが敵戦艦のデータを吸い上げようとした経路を使って、侵食弾の遮断を打ち破り僕の専用艦の電脳にハッキングして来た。
さすが戦艦の電脳は性能が違うといったところか。
今後は侵食弾を撃つ箇所を考慮したうえ、上位の電脳を持つ艦には躊躇わずにナーブクラックをかける必要があるだろう。
話を戻すが、その厚い装甲に撃ってしまった侵食弾の、中途半端な侵食が僕の専用艦にも影響して、今の癒着状態になっているのだと思われる。
僕の専用艦は鹵獲戦艦に引きづられる形でステーションまで帰って来た。
後ろ向きで運ばれる姿は恥ずかしいものがある。
その横を鹵獲ステルス艦が遮蔽フィールドを解除して付いて来る。
アヤメ艦も鹵獲巡洋艦を左腕で掴んで引っ張って来ている。
ステーション手前の警戒宙域に停止すると臨検の艦を待つ。
ステーションから発進した戦艦が2艦、僕達の前後の進路を交差するような位置取りをする。
2艦の射線がお互いにかからないようにし、ステーションへの進行を阻害するような位置だ。
戦艦の大口径レールガンとビーム砲が僕達をロックオンする。
ロックオン警報がCICに響く。煩いので切る。
『アキラ様! なんですかそれは!』
仮想画面の端に通信用の小画面が開きプリンスの声が響く。
「やあ、プリンス。また鹵獲しちゃったよ」
プリンスが画面の中であんぐりと口を開いている。
『臨検します。接触しているアキラ艦も対象です!』
「了解」
まあ、臨検はお約束だから我慢しましょう。
まずアヤメ艦が拿捕している鹵獲巡洋艦に臨検担当の戦艦がデータリンクする。
電脳と各種兵装へエネルギーを分配するエネルギー分配器の破損が確認される。
外部からセンサービームが当てられ自立型ミサイルの存在が否定され無害化が認められた。
鹵獲巡洋艦は行政府との契約で、そのまま引き渡されタグボートで運ばれる。
それと同時にアヤメ艦は開放される。
「戦利品の分配とかの件もあるし、反省会も含めてこの後会おう。連絡する」
「うん、わかった。それじゃ晶羅、後で会おうね」
アヤメ艦が格納庫へ帰還していく。
続けて問題の僕の方。
鹵獲ステルス艦が調べられ、電脳の服従を確認。ナーブクラックの支配下にあると無害化が認められた。
逆にあっさりしていて気持ちが悪い。
鹵獲戦艦も自立ミサイルの有無が同様に調べられ、無害化が認められる。
そして、鹵獲戦艦と癒着している僕の専用艦も敵からの汚染がないかと調べられてしまった。
『どうやら大丈夫なようですね。帰還を認めます』
「いや、でもこれじゃ格納庫に入れないし」
『ドック入りしてください。ステルス艦はこちらで引き取り、規定通りに分配します』
「綾姫の借金は、完済出来そうなの?」
『ドックでの修理費次第ですね』
そうだった。修理費がいくらかかるか頭の痛い所だ。
「でも、この戦艦を売れば余裕だよね?」
『売れればですけどね……』
プリンスは何か含むところがあるようだ。
こうして僕の専用艦はドック入り1ヶ月――見積予想だが――となってしまった。
とりあえずその間は艦をレンタルして活動するしかないな。
「拙いぞアイドル活動がいきなり休止になりかねない!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
鹵獲戦艦と専用艦をドック入りさせた後、綾姫と事務所で会うことにした。
専用艦のドック入りの話を社長ともしないといけないからね。
事務所につき社長室を目指す。
「やあ、待っていたよ。晶羅ちゃん」
ドアがオープンになっている社長室に入ると神澤社長が抱きつこうとしてくる。
僕は咄嗟に避ける。
一応、話はしたいとアポはとっていたけど、なんでこんなノリなのかわからない。
「戦艦を鹵獲したんだって?」
神澤社長が椅子に腰掛けながら言う。目が¥マークになっている。
おそらく前回艦載機を手に入れたことで、やる気を出しているのだろう。
僕もソファーに腰掛けてから間を置かずに断わる。
「鹵獲したけど、やらんぞ」
「何かあったら相談にのるからな。
SFO行政府との交渉は、この俺にまかせておけ」
「いや、交渉の末に全部社長に持って行かれたら本末転倒だから……」
神澤社長のプッシュに僕は腰が引けながらお断りをする。
そもそも、そのために神澤社長と話そうとしていたわけではない。
「実は、今後のアイドル活動に問題が発生したんで相談しに来たんだ」
僕のその一言に神澤社長の表情が曇る。
「何があったんだ」
一瞬で社長が優秀なビジネスマンモードになった。
僕もそこは真剣に事情を話す。
「僕の専用艦が損傷してドック入りした。アイドル活動に使うことが出来ない」
神澤社長はその言葉に椅子に深く腰掛け身体を預け、安堵のため息を漏らす。
「それなら大丈夫だ。専用艦が存在する限り、模擬戦はデータで参加出来る。
なんのための仮想空間だ」
「そうだった。仮想空間の便利さを忘れてた!」
僕は目から鱗が落ちた気分だった。
真剣な話も終わり、僕と神澤社長は雑談モードに入った。
「今回、3艦も鹵獲したんだって?」
「戦艦とステルス艦は電脳をダメにしてしまったから半値以下だと思うよ」
「そりゃ残念だな」
ナーブクラックのことは神澤社長には濁しておく。
「巡洋艦をエネルギー分配器の無力化で鹵獲したんだ。こいつは丸々売却できる。
これの売上で綾姫の借金は大分減ると思う」
「それだけ稼いでまだ無くならないのか?」
「綾姫の借金は会社一つの負債丸々らしいからね。
僕も返済までは艦隊を組んだ責任として付き合うよ。
僕は文字通りプロゲーマーとして金を稼ぐだけだ」
「俺も綾姫にはできるだけ早く実戦からは引いて欲しいと思っている。
よろしく頼む」
神澤社長が頭を下げる。
入ったばかりのアイドルにそこまで肩入れするとは、社長も悪い人ではないんだよな。
僕の実戦はいいのかという思いはあったけど、僕の能力に信頼を置いてくれているのだろうと思うことにした。
ブラッシュリップスの今後のことやらを話していると綾姫が社長室に顔を出した。
「こんにちわ。晶羅来てますか?」
「いるよー」
振り向いて答える。
神澤社長は立ち上がって綾姫に抱きつこうとしている。
すかさず綾姫が避ける。
懲りないおっさんだ。
「社長、会議室借りるね」
「お、おう」
僕は立ち上がるとそのまま綾姫の腕を取って会議室に向かった。
会議室はダンスレッスンでも使用するので片側の壁面が全て鏡張りになっている。
今は中心に長机が置かれ、黒い背もたれの高い高級事務椅子っぽい椅子が取り囲んでいる。
僕と綾姫は長机の端で隣り合って椅子に腰掛けた。
部屋が広すぎるが、一応お金の話なので当事者だけで話すためには仕方がない。
「第一回分配会議を始めます。はい、拍手。パチパチパチ」
「パチパチパチ」
僕に釣られて綾姫も拍手をする。
「今回の収穫は戦艦1巡洋艦1ステルス艦1の鹵獲と巡洋艦1駆逐艦2の撃墜権です」
「はい」
「まずは巡洋艦の鹵獲と戦艦とステルス艦の鹵獲の違いを説明したいと思います」
「どうぞ」
僕のノリに綾姫も付き合ってくれている。やりやすくてありがたい。
「巡洋艦はエネルギー分配器を破壊して武装解除のうえ鹵獲しました。
これにより電脳の書き換えと簡単な修理で巡洋艦が丸々手に入ります。
ステーションではこの鹵獲を完品とみなします」
「はい、わかります」
「次に戦艦とステルス艦ですが、危機的状況だったため、僕がナーブクラックを使ってしまいました。
これによりこの2艦の電脳は僕に服従してリセット出来なくなってしまいました。
そのため2艦は部品取り扱いで半値以下になります。ごめんなさい」
「いえいえ、その2艦を仕留めたのは晶羅一人だよ。私に謝る必要なんかないよ」
綾姫が困ったような表情をする。
僕は綾姫が良い子だとの確信を持った。
「そう言ってもらえると助かる。
次にSFO行政府にしている借金の返済方法なんだけど、売ってからお金で返すと税金分だけ損をするんだ。
そこでSFO行政府は物納を推奨している」
「物納ですか?」
「そう。だから巡洋艦は丸々物納しようと思う。
取り分は僕と綾姫で半々。安くても1人1億Gは行くと思う」
「え、そんなに?」
「うん。僕が弁償することになってしまった回収艦は20m級だったけど3艦の修理で1億Gしたんだ。
それと比べたら200m級の戦闘艦ならそれぐらい軽く行くはずだ」
綾姫が目を丸くしている。あと何艦鹵獲すれば借金完済か頭で計算していることだろう。
「僕は前回に150m級のステルス艦を鹵獲しているんだけど、ナーブクラックで電脳周りの基幹部品の買取を拒否されて半値以下になってしまったんだ。
その時の収入が5千万Gだから、150m級が完品なら1億G以上だったはずだ」
「今回もステルス艦を鹵獲してるね」
「うん、たぶん同じぐらいの売値になるから、それも折半しよう」
だが僕の言葉に綾姫が首を振る。
「だめだよ。ステルス艦と戦艦は晶羅個人が命を張って鹵獲したものだよ。
私は一切関わってないしもらうわけにはいかないよ」
「だけど艦隊の収入は折半と決めたじゃないか」
「だめ! 私は自分の力で稼ぎたい。
艦隊に入ったからって活躍に応じた分配にして欲しい。
私は巡洋艦の分配が折半だというのも私の取りすぎで納得してない。
だいたい私の任務の護衛任務を全うできなかった!」
僕は綾姫の勢いに圧倒されてしまった。
「じゃあ、巡洋艦と撃墜権の分配だけでも貰って欲しい。
ステルス艦の方の収入はブラッシュリップス艦隊の強化に使おうか」
「うん。わかった。ありがとう」
さて、戦艦の取り分が浮いてしまったぞ。どうしよう。
そう思案していると腕輪に通信が入った。
通信画面を空中にIR表示する。プリンスの顔が映る。
『晶羅様、困ったことが起きたので至急専用艦のドックまで来ていただけませんか?』
「直ぐに行きます! 綾姫ごめん、緊急事態みたいだ」
通信を切ると綾姫に断って部屋を出た。
ドック区。そこはステーションの底面に位置する艦船の修理建造をする区画だ。
その修理用ドックに鹵獲戦艦と癒着してしまった僕の専用艦が入っている。
僕はプリンスからの連絡でそのドックに急いだ。
中央広場の転送ポートを使いドックへ向かう。
ドックに着くとドック脇の待機室に向かう。
その中ではプリンスとドックの関係者が窓の外を見ている。
僕は挨拶をすると窓の外を見た。
「何ですかこれは!」
僕はプリンスに問いかけざると得なかった。
そこには繭で包まれた塊があった。
その繭は鹵獲戦艦と専用艦を合わせて包んだたような大きさだった。
プリンスが答える。
「分離作業を始めようとしたところ、晶羅さんの専用艦と鹵獲戦艦が融合を始めてしまいました」
「なんだってーーーーーーーーーーーーー!!」
僕はまた頭を抱えることになった。
融合するということはお金にならないということだからね。
『すてるす』を回収し、帰還の隊列を組む。
中心に鹵獲戦艦、その右舷にくっついた僕の専用艦。その右に鹵獲ステルス艦。
鹵獲戦艦の左舷側にアヤメ艦。その左を推力を失った鹵獲巡洋艦がアヤメ艦の左腕に掴まれて曳航されている。
僕らの艦隊は戦艦1巡洋艦1ステルス艦1を鹵獲し、巡洋艦1駆逐艦2の撃墜権を確保した。
これでおそらく綾姫の借金も完済出来ることだろう。
問題は僕の専用艦の損傷修理と鹵獲戦艦との癒着状態の解消費用だ。
同じ方向を向いていたなら双胴艦扱いで運用する道もあるのだが、僕の専用艦と鹵獲戦艦は前後逆の反航する形で癒着している。
「どうしてこうなった!」
僕の専用艦と鹵獲戦艦が、このような状態になった原因と思われるのは2点。
僕の専用艦の右舷が戦艦の大口径ビーム砲で損傷していたことと、鹵獲戦艦の右舷に侵食弾が着弾し侵食中であったこと、これらが相乗効果を表したものと予想している。
敵戦艦に侵食弾を撃ち込んだ時に通常より侵食が遅くて僕は危機に陥った。
その原因は戦艦の分厚い装甲にあったのではないかと思う。
現在癒着している鹵獲戦艦の装甲部分は、どうやら侵食で繋いだデータリンクの主たる経路ではないようなのだ。
主に繋がっているのは『すてるす』が、鹵獲戦艦の艦橋に撃ち込んだ侵食弾からの経路だ。
戦艦の電子・量子機器が集中している艦橋に侵食弾を撃ち込んだことが、侵食を加速させた要因だと思われる。
それと侵食弾を過信してはいけないという教訓を得た。
侵食弾は敵艦内のネットワークを侵し支配することで敵艦の制御系を無力化する。
制御系からの指令を遮断する効果しかなく、敵戦艦の電脳は生きたままだ。
敵戦艦の電脳は、こちらが敵戦艦のデータを吸い上げようとした経路を使って、侵食弾の遮断を打ち破り僕の専用艦の電脳にハッキングして来た。
さすが戦艦の電脳は性能が違うといったところか。
今後は侵食弾を撃つ箇所を考慮したうえ、上位の電脳を持つ艦には躊躇わずにナーブクラックをかける必要があるだろう。
話を戻すが、その厚い装甲に撃ってしまった侵食弾の、中途半端な侵食が僕の専用艦にも影響して、今の癒着状態になっているのだと思われる。
僕の専用艦は鹵獲戦艦に引きづられる形でステーションまで帰って来た。
後ろ向きで運ばれる姿は恥ずかしいものがある。
その横を鹵獲ステルス艦が遮蔽フィールドを解除して付いて来る。
アヤメ艦も鹵獲巡洋艦を左腕で掴んで引っ張って来ている。
ステーション手前の警戒宙域に停止すると臨検の艦を待つ。
ステーションから発進した戦艦が2艦、僕達の前後の進路を交差するような位置取りをする。
2艦の射線がお互いにかからないようにし、ステーションへの進行を阻害するような位置だ。
戦艦の大口径レールガンとビーム砲が僕達をロックオンする。
ロックオン警報がCICに響く。煩いので切る。
『アキラ様! なんですかそれは!』
仮想画面の端に通信用の小画面が開きプリンスの声が響く。
「やあ、プリンス。また鹵獲しちゃったよ」
プリンスが画面の中であんぐりと口を開いている。
『臨検します。接触しているアキラ艦も対象です!』
「了解」
まあ、臨検はお約束だから我慢しましょう。
まずアヤメ艦が拿捕している鹵獲巡洋艦に臨検担当の戦艦がデータリンクする。
電脳と各種兵装へエネルギーを分配するエネルギー分配器の破損が確認される。
外部からセンサービームが当てられ自立型ミサイルの存在が否定され無害化が認められた。
鹵獲巡洋艦は行政府との契約で、そのまま引き渡されタグボートで運ばれる。
それと同時にアヤメ艦は開放される。
「戦利品の分配とかの件もあるし、反省会も含めてこの後会おう。連絡する」
「うん、わかった。それじゃ晶羅、後で会おうね」
アヤメ艦が格納庫へ帰還していく。
続けて問題の僕の方。
鹵獲ステルス艦が調べられ、電脳の服従を確認。ナーブクラックの支配下にあると無害化が認められた。
逆にあっさりしていて気持ちが悪い。
鹵獲戦艦も自立ミサイルの有無が同様に調べられ、無害化が認められる。
そして、鹵獲戦艦と癒着している僕の専用艦も敵からの汚染がないかと調べられてしまった。
『どうやら大丈夫なようですね。帰還を認めます』
「いや、でもこれじゃ格納庫に入れないし」
『ドック入りしてください。ステルス艦はこちらで引き取り、規定通りに分配します』
「綾姫の借金は、完済出来そうなの?」
『ドックでの修理費次第ですね』
そうだった。修理費がいくらかかるか頭の痛い所だ。
「でも、この戦艦を売れば余裕だよね?」
『売れればですけどね……』
プリンスは何か含むところがあるようだ。
こうして僕の専用艦はドック入り1ヶ月――見積予想だが――となってしまった。
とりあえずその間は艦をレンタルして活動するしかないな。
「拙いぞアイドル活動がいきなり休止になりかねない!」
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
鹵獲戦艦と専用艦をドック入りさせた後、綾姫と事務所で会うことにした。
専用艦のドック入りの話を社長ともしないといけないからね。
事務所につき社長室を目指す。
「やあ、待っていたよ。晶羅ちゃん」
ドアがオープンになっている社長室に入ると神澤社長が抱きつこうとしてくる。
僕は咄嗟に避ける。
一応、話はしたいとアポはとっていたけど、なんでこんなノリなのかわからない。
「戦艦を鹵獲したんだって?」
神澤社長が椅子に腰掛けながら言う。目が¥マークになっている。
おそらく前回艦載機を手に入れたことで、やる気を出しているのだろう。
僕もソファーに腰掛けてから間を置かずに断わる。
「鹵獲したけど、やらんぞ」
「何かあったら相談にのるからな。
SFO行政府との交渉は、この俺にまかせておけ」
「いや、交渉の末に全部社長に持って行かれたら本末転倒だから……」
神澤社長のプッシュに僕は腰が引けながらお断りをする。
そもそも、そのために神澤社長と話そうとしていたわけではない。
「実は、今後のアイドル活動に問題が発生したんで相談しに来たんだ」
僕のその一言に神澤社長の表情が曇る。
「何があったんだ」
一瞬で社長が優秀なビジネスマンモードになった。
僕もそこは真剣に事情を話す。
「僕の専用艦が損傷してドック入りした。アイドル活動に使うことが出来ない」
神澤社長はその言葉に椅子に深く腰掛け身体を預け、安堵のため息を漏らす。
「それなら大丈夫だ。専用艦が存在する限り、模擬戦はデータで参加出来る。
なんのための仮想空間だ」
「そうだった。仮想空間の便利さを忘れてた!」
僕は目から鱗が落ちた気分だった。
真剣な話も終わり、僕と神澤社長は雑談モードに入った。
「今回、3艦も鹵獲したんだって?」
「戦艦とステルス艦は電脳をダメにしてしまったから半値以下だと思うよ」
「そりゃ残念だな」
ナーブクラックのことは神澤社長には濁しておく。
「巡洋艦をエネルギー分配器の無力化で鹵獲したんだ。こいつは丸々売却できる。
これの売上で綾姫の借金は大分減ると思う」
「それだけ稼いでまだ無くならないのか?」
「綾姫の借金は会社一つの負債丸々らしいからね。
僕も返済までは艦隊を組んだ責任として付き合うよ。
僕は文字通りプロゲーマーとして金を稼ぐだけだ」
「俺も綾姫にはできるだけ早く実戦からは引いて欲しいと思っている。
よろしく頼む」
神澤社長が頭を下げる。
入ったばかりのアイドルにそこまで肩入れするとは、社長も悪い人ではないんだよな。
僕の実戦はいいのかという思いはあったけど、僕の能力に信頼を置いてくれているのだろうと思うことにした。
ブラッシュリップスの今後のことやらを話していると綾姫が社長室に顔を出した。
「こんにちわ。晶羅来てますか?」
「いるよー」
振り向いて答える。
神澤社長は立ち上がって綾姫に抱きつこうとしている。
すかさず綾姫が避ける。
懲りないおっさんだ。
「社長、会議室借りるね」
「お、おう」
僕は立ち上がるとそのまま綾姫の腕を取って会議室に向かった。
会議室はダンスレッスンでも使用するので片側の壁面が全て鏡張りになっている。
今は中心に長机が置かれ、黒い背もたれの高い高級事務椅子っぽい椅子が取り囲んでいる。
僕と綾姫は長机の端で隣り合って椅子に腰掛けた。
部屋が広すぎるが、一応お金の話なので当事者だけで話すためには仕方がない。
「第一回分配会議を始めます。はい、拍手。パチパチパチ」
「パチパチパチ」
僕に釣られて綾姫も拍手をする。
「今回の収穫は戦艦1巡洋艦1ステルス艦1の鹵獲と巡洋艦1駆逐艦2の撃墜権です」
「はい」
「まずは巡洋艦の鹵獲と戦艦とステルス艦の鹵獲の違いを説明したいと思います」
「どうぞ」
僕のノリに綾姫も付き合ってくれている。やりやすくてありがたい。
「巡洋艦はエネルギー分配器を破壊して武装解除のうえ鹵獲しました。
これにより電脳の書き換えと簡単な修理で巡洋艦が丸々手に入ります。
ステーションではこの鹵獲を完品とみなします」
「はい、わかります」
「次に戦艦とステルス艦ですが、危機的状況だったため、僕がナーブクラックを使ってしまいました。
これによりこの2艦の電脳は僕に服従してリセット出来なくなってしまいました。
そのため2艦は部品取り扱いで半値以下になります。ごめんなさい」
「いえいえ、その2艦を仕留めたのは晶羅一人だよ。私に謝る必要なんかないよ」
綾姫が困ったような表情をする。
僕は綾姫が良い子だとの確信を持った。
「そう言ってもらえると助かる。
次にSFO行政府にしている借金の返済方法なんだけど、売ってからお金で返すと税金分だけ損をするんだ。
そこでSFO行政府は物納を推奨している」
「物納ですか?」
「そう。だから巡洋艦は丸々物納しようと思う。
取り分は僕と綾姫で半々。安くても1人1億Gは行くと思う」
「え、そんなに?」
「うん。僕が弁償することになってしまった回収艦は20m級だったけど3艦の修理で1億Gしたんだ。
それと比べたら200m級の戦闘艦ならそれぐらい軽く行くはずだ」
綾姫が目を丸くしている。あと何艦鹵獲すれば借金完済か頭で計算していることだろう。
「僕は前回に150m級のステルス艦を鹵獲しているんだけど、ナーブクラックで電脳周りの基幹部品の買取を拒否されて半値以下になってしまったんだ。
その時の収入が5千万Gだから、150m級が完品なら1億G以上だったはずだ」
「今回もステルス艦を鹵獲してるね」
「うん、たぶん同じぐらいの売値になるから、それも折半しよう」
だが僕の言葉に綾姫が首を振る。
「だめだよ。ステルス艦と戦艦は晶羅個人が命を張って鹵獲したものだよ。
私は一切関わってないしもらうわけにはいかないよ」
「だけど艦隊の収入は折半と決めたじゃないか」
「だめ! 私は自分の力で稼ぎたい。
艦隊に入ったからって活躍に応じた分配にして欲しい。
私は巡洋艦の分配が折半だというのも私の取りすぎで納得してない。
だいたい私の任務の護衛任務を全うできなかった!」
僕は綾姫の勢いに圧倒されてしまった。
「じゃあ、巡洋艦と撃墜権の分配だけでも貰って欲しい。
ステルス艦の方の収入はブラッシュリップス艦隊の強化に使おうか」
「うん。わかった。ありがとう」
さて、戦艦の取り分が浮いてしまったぞ。どうしよう。
そう思案していると腕輪に通信が入った。
通信画面を空中にIR表示する。プリンスの顔が映る。
『晶羅様、困ったことが起きたので至急専用艦のドックまで来ていただけませんか?』
「直ぐに行きます! 綾姫ごめん、緊急事態みたいだ」
通信を切ると綾姫に断って部屋を出た。
ドック区。そこはステーションの底面に位置する艦船の修理建造をする区画だ。
その修理用ドックに鹵獲戦艦と癒着してしまった僕の専用艦が入っている。
僕はプリンスからの連絡でそのドックに急いだ。
中央広場の転送ポートを使いドックへ向かう。
ドックに着くとドック脇の待機室に向かう。
その中ではプリンスとドックの関係者が窓の外を見ている。
僕は挨拶をすると窓の外を見た。
「何ですかこれは!」
僕はプリンスに問いかけざると得なかった。
そこには繭で包まれた塊があった。
その繭は鹵獲戦艦と専用艦を合わせて包んだたような大きさだった。
プリンスが答える。
「分離作業を始めようとしたところ、晶羅さんの専用艦と鹵獲戦艦が融合を始めてしまいました」
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彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
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オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
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剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
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今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
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50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
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これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
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初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
現代ダンジョンの苦情係 〜元クレーム処理担当の俺、魔物の言葉がわかるので菓子折り一つで世界を救う〜
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