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放浪編
100 放浪編19 捕虜尋問
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アノイ要塞の会議室で、今回の奇襲攻撃についての戦闘報告が行われていた。
出席者は要塞司令コマンダー・サンダースを筆頭に、ノア、ハンター、ジョンの3領軍の司令、地球から神澤社長と傭兵代表でタカヲ氏、そして僕が参加していた。
「客人が無事で良かったよ。まさかその時間に合わせて襲撃されるとは思わなかった」
今回、僕が次元跳躍門まで客人を迎えに行ったことは、アノイ要塞の中では周知の事実だった。
客人は僕に協力してくれる勢力の代表であり、話がまとまればプリンスの持つ戦力に対抗し得るのではないかという重要な会談となるはずだった。
その情報が漏れていたために、襲撃者は客人の排除ならびに戦力増強の阻止、加えて迎えに出ていた僕の殺害を諮っていたようだ。
「どう見てもアノイ要塞内に内通者がいる」
いったいどこから情報が漏れたのか?
それを調べなければならない。
「それを調べるには捕虜を尋問するのが速い。
いったいどこの手の者か―ーまあプリンスだろうが――確定する必要がある」
コマンダー・サンダースも自分が管理しているアノイ要塞内に内通者がいるとなると穏やかではない。
僕が捕虜を手に入れたという報告が上がっていたので、捕虜を尋問しようと提案して来た。
その背後関係がわかれば、その縁者などアノイ要塞内のスパイを特定出来るかもしれないのだ。
「そうですね。捕虜を尋問して、奇襲により攻めて来たのがどこの勢力の者なのか聞き出すことにしましょう」
電脳を服従させた捕虜の乗っている艦は次元格納庫から取り出し隔離格納庫に出してあった。
総数35艦。捕虜は艦を動かすこともCICの中から出ることも出来なくしてあった。
捕虜は完全にアノイ要塞の管理下にあった。
尋問か、僕たち地球人のメンタルで出来るだろうか?
「そのような裏仕事は、若が関わることではございません。
我らラーテル族にお任せ下さい」
ジョンが僕の気持ちを慮ってくれたようだ。
地球人のメンタルで厳しい尋問が出来るのは傭兵さんでも一部専門家だけなのだ。
僕には出来るはずもない。
「そうだな。僕らには無理かもしれない。ジョン、頼めるか?」
「尋問はわれらの得意とするところ。喜んで務めさせていただきます」
ジョンの言葉に甘えて尋問はラーテル族に任せることにした。
獣人族でも最強と謳われるラーテル族の恐ろしい面を見てしまったのかもしれない。
ラーテル族が味方で良かった。
僕達に変わって汚い仕事をやってくれるラーテル族には感謝の気持ちしかない。
隔離格納庫にラーテル族の陸戦隊が集結している。
全員ボディアーマーを装着しサブマシンガンで武装している。
準備が整うと、ハッチのロックを強制解除してラーテル陸戦隊が艦内へと突入をする。
その様子を僕らは会議室の仮想スクリーンで見ていた。
「確保!」
捕虜35人はラーテル陸戦隊に全員が確保された。
捕虜たちは拘置所と付属の尋問室へと連れていかれた。
これで次は尋問だな。
その様子はどうしようか。見た方がいいのか? それとも結果だけ聞くか?
だが、事はそれ以前の段階で簡単に終わった。
「やめてくれ! 何でも話すから、ラーテルの尋問だけは勘弁してくれ!」
捕虜が1秒で落ちた。
顔を見合わせて呆れる僕ら。
捕虜はいったいどんな尋問を想像して落ちたのだろうか?
だがさすがラーテルだ。仕事が速くて助かる。
あまり見たくない現場は見なくて済んだようだ。
これなら様子を見ていても大丈夫だろう。
「お前達はどこの所属か!」
ラーテルの尋問官が問いかけるも、捕虜は震えるだけで言葉が出ないようだった。
ラーテル族がいることに恐怖で話せなくなるようだ。
悪いがラーテル族には退室してもらった。
僕やアノイ要塞幹部は仮装スクリーンに映る映像で尋問の様子を観察している。
尋問は強面の犬族尋問官に代わった。
捕虜はラーテル族への恐怖だけで何でも話すという。
「貴様の所属はどこだ」
ラーテルの尋問官と同様の直球の質問を犬族尋問官がする。
そこはもっと簡単な質問からじゃないのか?
「俺はボイス男爵家の家臣だ」
吐いたよ。この人簡単に吐いたよ。
ラーテルの存在半端ないな。
「ボイス男爵って、誰の関係者だ?」
「ギルバート伯爵ですな」
僕の質問にコマンダー・サンダースが答える。
襲撃者とギルバート伯爵の関わりが簡単に発覚したぞ。
後はその上はどうなのかってことだな。
「ボイス男爵というとギルバート伯爵の寄り子だな。首魁は誰だ。
伯爵の子飼いだけの軍の規模じゃないだろ」
犬族尋問官が突っ込む。
「俺は知らない。ギルバート伯爵から出陣要請がボイス男爵に来て、男爵の臣下の俺はただ出撃しただけだ」
「バカな事をしたな。お前らが狙ったのは第6皇子だぞ」
捕虜は愕然として項垂れる。
「旗艦には誰が乗っていた?」
「わからない。見たことのない戦艦だった。
ギルバート伯爵の戦艦なら見たことがあるから違う」
そりゃそうだろう。ギルバート伯爵の戦艦は接収してアノイ要塞にある。
既に技術工廠で占有権を解除されてアノイ要塞で誰でも乗れるレンタル艦になっている。
これは上位階位で権限を持つ者が介在するなら解除可能なのだそうだ。
つまりステーションで僕が鹵獲した艦の占有権を解除出来なかったのは、僕より上の階位の権限を持つ者が居なかったということだ。
あのプリンスでさえ僕より下の権限なのだと、あの時点でもう認識していたということだ。
そういや、あの時僕は1億Gの借金を背負わされて苦労していたんだった。
今思うとその借金をたてに貧民に落とされていた可能性があったんだな。
「ギルバート伯爵かそれより上位の者は見たのか?」
「いや、見てない。そもそも俺のような下っ端の家臣にまで顔を見せるようなお方達ではない」
「つまり、ギルバート伯爵もしくはそれより上位の者が、あの軍を集めたということだな」
「それ以外にボイス男爵が係る理由がない。あの……男爵様は処罰されるのでしょうか?」
捕虜は自分の証言によりボイス男爵が処罰されることに気付き青くなった。
このままじゃ口を噤んでしまうかもしれない。
僕は専用艦経由で尋問室の中に通じているスピーカーに音声を送る。
「ボイス男爵が僕への襲撃を知らずにやったのなら、騙した親玉の責任だ。僕に恭順するなら助けよう。
だが、知った上での襲撃参加なら容赦はしない。そうでないことを証明してみせろ」
「今のは?」
「皇子様だ」
「わかりました。知っていることを全て話します。男爵の減刑をお願いします」
捕虜が完落ちした。
「そういや、名前を聞いてなかったな」
「俺はブライアン=セーブル。二級騎士です」
「知っている騎士はいたか? その寄り親は?」
「ダグラス伯爵に連なる寄り子の騎士を見ました」
「ギルバート伯爵とダグラス伯爵では、ダグラス伯爵の方が古く力があるな。それら伯爵家があがめるのは誰だ」
「第12皇子を支援しているというのは聞いたことがあります」
「ブライアン、それはいつの話だ」
「もう2年ぐらい前だと思う」
あー確定か。
僕が皇子認定されてプリンスの皇位継承順位が1つ落ちたって愛さんに聞いたからね。
今が第13皇子なら、2年前は第12皇子だったはずだ。
プリンス自身か、子飼いの暴走かわからないけど、第13皇子派の仕業ということは確定だ。
「黒幕はプリンスで確定だね。少なくとも第13皇子派が敵であることは確定だ」
「プリンス皇子は晶羅様の皇子認定で第12皇子から第13皇子に格下げされてましたな」
「うん。だからブライアンの言う第12皇子はプリンスだよ」
コマンダー・サンダースが思い出すように補足してくれる。ありがたい。
とりあえず、この後の尋問は犬族尋問官に任せよう。
残り34人も一応尋問して裏をとってもらう。
僕達は尋問室を映した仮装スクリーンを閉じた。
「プリンスの勢力は思ったより強大みたいだ。
今回で8000艦を動員して来ている。
4500艦は落としただろうから、残り3500艦」
「他にも10000程度の戦力は保持しているはずだ」
コマンダー・サンダースが軍事情報を教えてくれる。
合計13500艦か。
「となると、ここで守る分にはギリギリ互角というところか。
よし、アノイ要塞で防衛しつつ、戦力増強をはかろう」
「そうせざるを得ませんな」
今後の方針が決まり、全員解散となった。
さて、これからどうするか。
真・帝国の軍を加えれば、おそらくプリンスの軍には勝てるだろう。
だが、プリンスとの戦いに真・帝国を使い、その正体がバレたら他の皇子や帝国自体と敵対関係になりかねない。
真・帝国を表に出すのは今じゃない。
僕はまだ帝国と事を構えるわけにはいかない。
まだまだ帝国の皇子だとアピールして生き残らなければならない。
「となると、戦力として期待出来るのは野良の宇宙艦だな。
そういえば、愛さんに頼んだ帝国への申請はどうなっているんだろう」
そんなことを考えながら歩いていると、今回の戦闘のきっかけがスパイによる情報漏洩に端を発しているであろうことを思い出した。
僕は仮装スクリーンを開いて尋問室のスピーカーに声を届ける。
「もう一つ質問したい。今回の襲撃の切っ掛けは何だ?
なぜこのタイミングだったんだ?」
尋問室の中に僕の声が響くとブライアンと犬族尋問官が驚く。
犬族尋問官がブライアンに返答を促す。
「出撃準備で艦隊を集結させ始めたのは数日前だったと思います。
次元跳躍門の前に艦がいるから絶対に撃沈しろと命令され出撃したのは今日のことでした」
「つまり、僕が単艦出撃することを把握していたわけだね」
「はい。確実に仕留めろと。撃沈した者には賞金まで出るはずでした」
「その情報源は知らないよね」
「はい。情報源は俺の立場ではわかりません」
「ありがとう」
あー。アノイ要塞にスパイが居ることも確定だわ。
プリンスにはミーナが仕えていた。猫族はプリンスと近いのか?
猫族を疑っていたらキリがないな。特に犬族に相談するわけにはいかないぞ。
また不仲になってしまったら面倒だ。
それともサポートAIの有機端末である愛さんか?
愛さんは帝国の備品だからなぁ。
帝国の情報もネットで閲覧しているみたいだし、愛さんのシステムをハックされてそこから漏れたか?
僕は事務所に帰ると意を決して愛さんに質問した。
「愛さんは帝国に忠誠を誓っているんだよね?」
「いいえ。私はサポートAIですので、質問に答えることしか出来ません」
「でも、人によって答える内容を制限してる」
「それは管理者権限を持つ者が制限設定をしただけで、そこに個人の意思は存在していません」
「つまり管理者が設定すれば、ここで話した内容も管理者の質問で話すということだよね?」
「はい。そうなります」
うわー。やっぱりそうなのか?
「愛さん、僕の情報をプリンスに話した?」
「いいえ。しかし、サポートAIの本体は別にありますので、そちらに収集した情報は別の端末から引き出し可能です」
「いま制限設定はどうなっているの?」
「晶羅様優先で設定されています」
「え? つまり?」
「裁判以降は、プリンス様は晶羅様の情報を取得出来なくなっています」
「それって上位者は下位者に情報を取られないということ?」
「いいえ、個人ロックが掛かったということです。晶羅様が第6皇子の権利を主張して初めて有効になりました」
「つまり、僕がプリンスの情報を得ようとしても拒否されるってこと?」
「はい。第1皇子が晶羅様の情報を得ようとしても拒否されます」
「僕優先になるのは、個人情報以外の情報閲覧権限ということか」
「はい。そうです」
「うん。ありがとう。ごめんね」
「はい?」
愛さんじゃなかった。疑ってごめんね。
そうなると別にスパイが居るか盗聴されているかだな。
ん? 盗聴?
「愛さん、腕輪の情報収集はロックが掛かっているの?」
「はい。裁判以降は掛かっています」
「それは、僕の身近な人でも?」
「晶羅様の身内や家臣も閲覧制限されています」
「つまり、身内でも家臣でもない人達からは情報が取れるということだね」
「そうなります」
「僕の身内あるいは家臣と認定されていない人物は、このアノイ要塞に居る?」
「はい。います」
「それは誰だ?」
「自称自治会の方々です」
「あいつらか!」
思わぬ所にスパイがいた。
しかも本人達が意識していないというのが困ったところだ。
自称自治会なら、僕が真・帝国と接触していることは知らないはず。
その情報は漏れていない。
しかし、僕が客人を迎えに単艦で出撃することは誰もが知るところだった。
その情報を腕輪で収集した情報から掠め取っていたのだろう。
なんて悪知恵の働く男なんだ。
「愛さん、自称自治会の腕輪の情報を閲覧出来なくできるかな?」
「はい。晶羅様の権限でロックします」
「え、出来るの? 腕輪の管理もサポートAIの仕事だってこと?」
「はい。そうです」
愛さんが居てくれて助かった。
コマンダー・サンダースが派遣してくれたんだけど、その思惑以上に役に立ってくれている。
もしかして、他の誰かの意思が介在しているのだろうか?
出席者は要塞司令コマンダー・サンダースを筆頭に、ノア、ハンター、ジョンの3領軍の司令、地球から神澤社長と傭兵代表でタカヲ氏、そして僕が参加していた。
「客人が無事で良かったよ。まさかその時間に合わせて襲撃されるとは思わなかった」
今回、僕が次元跳躍門まで客人を迎えに行ったことは、アノイ要塞の中では周知の事実だった。
客人は僕に協力してくれる勢力の代表であり、話がまとまればプリンスの持つ戦力に対抗し得るのではないかという重要な会談となるはずだった。
その情報が漏れていたために、襲撃者は客人の排除ならびに戦力増強の阻止、加えて迎えに出ていた僕の殺害を諮っていたようだ。
「どう見てもアノイ要塞内に内通者がいる」
いったいどこから情報が漏れたのか?
それを調べなければならない。
「それを調べるには捕虜を尋問するのが速い。
いったいどこの手の者か―ーまあプリンスだろうが――確定する必要がある」
コマンダー・サンダースも自分が管理しているアノイ要塞内に内通者がいるとなると穏やかではない。
僕が捕虜を手に入れたという報告が上がっていたので、捕虜を尋問しようと提案して来た。
その背後関係がわかれば、その縁者などアノイ要塞内のスパイを特定出来るかもしれないのだ。
「そうですね。捕虜を尋問して、奇襲により攻めて来たのがどこの勢力の者なのか聞き出すことにしましょう」
電脳を服従させた捕虜の乗っている艦は次元格納庫から取り出し隔離格納庫に出してあった。
総数35艦。捕虜は艦を動かすこともCICの中から出ることも出来なくしてあった。
捕虜は完全にアノイ要塞の管理下にあった。
尋問か、僕たち地球人のメンタルで出来るだろうか?
「そのような裏仕事は、若が関わることではございません。
我らラーテル族にお任せ下さい」
ジョンが僕の気持ちを慮ってくれたようだ。
地球人のメンタルで厳しい尋問が出来るのは傭兵さんでも一部専門家だけなのだ。
僕には出来るはずもない。
「そうだな。僕らには無理かもしれない。ジョン、頼めるか?」
「尋問はわれらの得意とするところ。喜んで務めさせていただきます」
ジョンの言葉に甘えて尋問はラーテル族に任せることにした。
獣人族でも最強と謳われるラーテル族の恐ろしい面を見てしまったのかもしれない。
ラーテル族が味方で良かった。
僕達に変わって汚い仕事をやってくれるラーテル族には感謝の気持ちしかない。
隔離格納庫にラーテル族の陸戦隊が集結している。
全員ボディアーマーを装着しサブマシンガンで武装している。
準備が整うと、ハッチのロックを強制解除してラーテル陸戦隊が艦内へと突入をする。
その様子を僕らは会議室の仮想スクリーンで見ていた。
「確保!」
捕虜35人はラーテル陸戦隊に全員が確保された。
捕虜たちは拘置所と付属の尋問室へと連れていかれた。
これで次は尋問だな。
その様子はどうしようか。見た方がいいのか? それとも結果だけ聞くか?
だが、事はそれ以前の段階で簡単に終わった。
「やめてくれ! 何でも話すから、ラーテルの尋問だけは勘弁してくれ!」
捕虜が1秒で落ちた。
顔を見合わせて呆れる僕ら。
捕虜はいったいどんな尋問を想像して落ちたのだろうか?
だがさすがラーテルだ。仕事が速くて助かる。
あまり見たくない現場は見なくて済んだようだ。
これなら様子を見ていても大丈夫だろう。
「お前達はどこの所属か!」
ラーテルの尋問官が問いかけるも、捕虜は震えるだけで言葉が出ないようだった。
ラーテル族がいることに恐怖で話せなくなるようだ。
悪いがラーテル族には退室してもらった。
僕やアノイ要塞幹部は仮装スクリーンに映る映像で尋問の様子を観察している。
尋問は強面の犬族尋問官に代わった。
捕虜はラーテル族への恐怖だけで何でも話すという。
「貴様の所属はどこだ」
ラーテルの尋問官と同様の直球の質問を犬族尋問官がする。
そこはもっと簡単な質問からじゃないのか?
「俺はボイス男爵家の家臣だ」
吐いたよ。この人簡単に吐いたよ。
ラーテルの存在半端ないな。
「ボイス男爵って、誰の関係者だ?」
「ギルバート伯爵ですな」
僕の質問にコマンダー・サンダースが答える。
襲撃者とギルバート伯爵の関わりが簡単に発覚したぞ。
後はその上はどうなのかってことだな。
「ボイス男爵というとギルバート伯爵の寄り子だな。首魁は誰だ。
伯爵の子飼いだけの軍の規模じゃないだろ」
犬族尋問官が突っ込む。
「俺は知らない。ギルバート伯爵から出陣要請がボイス男爵に来て、男爵の臣下の俺はただ出撃しただけだ」
「バカな事をしたな。お前らが狙ったのは第6皇子だぞ」
捕虜は愕然として項垂れる。
「旗艦には誰が乗っていた?」
「わからない。見たことのない戦艦だった。
ギルバート伯爵の戦艦なら見たことがあるから違う」
そりゃそうだろう。ギルバート伯爵の戦艦は接収してアノイ要塞にある。
既に技術工廠で占有権を解除されてアノイ要塞で誰でも乗れるレンタル艦になっている。
これは上位階位で権限を持つ者が介在するなら解除可能なのだそうだ。
つまりステーションで僕が鹵獲した艦の占有権を解除出来なかったのは、僕より上の階位の権限を持つ者が居なかったということだ。
あのプリンスでさえ僕より下の権限なのだと、あの時点でもう認識していたということだ。
そういや、あの時僕は1億Gの借金を背負わされて苦労していたんだった。
今思うとその借金をたてに貧民に落とされていた可能性があったんだな。
「ギルバート伯爵かそれより上位の者は見たのか?」
「いや、見てない。そもそも俺のような下っ端の家臣にまで顔を見せるようなお方達ではない」
「つまり、ギルバート伯爵もしくはそれより上位の者が、あの軍を集めたということだな」
「それ以外にボイス男爵が係る理由がない。あの……男爵様は処罰されるのでしょうか?」
捕虜は自分の証言によりボイス男爵が処罰されることに気付き青くなった。
このままじゃ口を噤んでしまうかもしれない。
僕は専用艦経由で尋問室の中に通じているスピーカーに音声を送る。
「ボイス男爵が僕への襲撃を知らずにやったのなら、騙した親玉の責任だ。僕に恭順するなら助けよう。
だが、知った上での襲撃参加なら容赦はしない。そうでないことを証明してみせろ」
「今のは?」
「皇子様だ」
「わかりました。知っていることを全て話します。男爵の減刑をお願いします」
捕虜が完落ちした。
「そういや、名前を聞いてなかったな」
「俺はブライアン=セーブル。二級騎士です」
「知っている騎士はいたか? その寄り親は?」
「ダグラス伯爵に連なる寄り子の騎士を見ました」
「ギルバート伯爵とダグラス伯爵では、ダグラス伯爵の方が古く力があるな。それら伯爵家があがめるのは誰だ」
「第12皇子を支援しているというのは聞いたことがあります」
「ブライアン、それはいつの話だ」
「もう2年ぐらい前だと思う」
あー確定か。
僕が皇子認定されてプリンスの皇位継承順位が1つ落ちたって愛さんに聞いたからね。
今が第13皇子なら、2年前は第12皇子だったはずだ。
プリンス自身か、子飼いの暴走かわからないけど、第13皇子派の仕業ということは確定だ。
「黒幕はプリンスで確定だね。少なくとも第13皇子派が敵であることは確定だ」
「プリンス皇子は晶羅様の皇子認定で第12皇子から第13皇子に格下げされてましたな」
「うん。だからブライアンの言う第12皇子はプリンスだよ」
コマンダー・サンダースが思い出すように補足してくれる。ありがたい。
とりあえず、この後の尋問は犬族尋問官に任せよう。
残り34人も一応尋問して裏をとってもらう。
僕達は尋問室を映した仮装スクリーンを閉じた。
「プリンスの勢力は思ったより強大みたいだ。
今回で8000艦を動員して来ている。
4500艦は落としただろうから、残り3500艦」
「他にも10000程度の戦力は保持しているはずだ」
コマンダー・サンダースが軍事情報を教えてくれる。
合計13500艦か。
「となると、ここで守る分にはギリギリ互角というところか。
よし、アノイ要塞で防衛しつつ、戦力増強をはかろう」
「そうせざるを得ませんな」
今後の方針が決まり、全員解散となった。
さて、これからどうするか。
真・帝国の軍を加えれば、おそらくプリンスの軍には勝てるだろう。
だが、プリンスとの戦いに真・帝国を使い、その正体がバレたら他の皇子や帝国自体と敵対関係になりかねない。
真・帝国を表に出すのは今じゃない。
僕はまだ帝国と事を構えるわけにはいかない。
まだまだ帝国の皇子だとアピールして生き残らなければならない。
「となると、戦力として期待出来るのは野良の宇宙艦だな。
そういえば、愛さんに頼んだ帝国への申請はどうなっているんだろう」
そんなことを考えながら歩いていると、今回の戦闘のきっかけがスパイによる情報漏洩に端を発しているであろうことを思い出した。
僕は仮装スクリーンを開いて尋問室のスピーカーに声を届ける。
「もう一つ質問したい。今回の襲撃の切っ掛けは何だ?
なぜこのタイミングだったんだ?」
尋問室の中に僕の声が響くとブライアンと犬族尋問官が驚く。
犬族尋問官がブライアンに返答を促す。
「出撃準備で艦隊を集結させ始めたのは数日前だったと思います。
次元跳躍門の前に艦がいるから絶対に撃沈しろと命令され出撃したのは今日のことでした」
「つまり、僕が単艦出撃することを把握していたわけだね」
「はい。確実に仕留めろと。撃沈した者には賞金まで出るはずでした」
「その情報源は知らないよね」
「はい。情報源は俺の立場ではわかりません」
「ありがとう」
あー。アノイ要塞にスパイが居ることも確定だわ。
プリンスにはミーナが仕えていた。猫族はプリンスと近いのか?
猫族を疑っていたらキリがないな。特に犬族に相談するわけにはいかないぞ。
また不仲になってしまったら面倒だ。
それともサポートAIの有機端末である愛さんか?
愛さんは帝国の備品だからなぁ。
帝国の情報もネットで閲覧しているみたいだし、愛さんのシステムをハックされてそこから漏れたか?
僕は事務所に帰ると意を決して愛さんに質問した。
「愛さんは帝国に忠誠を誓っているんだよね?」
「いいえ。私はサポートAIですので、質問に答えることしか出来ません」
「でも、人によって答える内容を制限してる」
「それは管理者権限を持つ者が制限設定をしただけで、そこに個人の意思は存在していません」
「つまり管理者が設定すれば、ここで話した内容も管理者の質問で話すということだよね?」
「はい。そうなります」
うわー。やっぱりそうなのか?
「愛さん、僕の情報をプリンスに話した?」
「いいえ。しかし、サポートAIの本体は別にありますので、そちらに収集した情報は別の端末から引き出し可能です」
「いま制限設定はどうなっているの?」
「晶羅様優先で設定されています」
「え? つまり?」
「裁判以降は、プリンス様は晶羅様の情報を取得出来なくなっています」
「それって上位者は下位者に情報を取られないということ?」
「いいえ、個人ロックが掛かったということです。晶羅様が第6皇子の権利を主張して初めて有効になりました」
「つまり、僕がプリンスの情報を得ようとしても拒否されるってこと?」
「はい。第1皇子が晶羅様の情報を得ようとしても拒否されます」
「僕優先になるのは、個人情報以外の情報閲覧権限ということか」
「はい。そうです」
「うん。ありがとう。ごめんね」
「はい?」
愛さんじゃなかった。疑ってごめんね。
そうなると別にスパイが居るか盗聴されているかだな。
ん? 盗聴?
「愛さん、腕輪の情報収集はロックが掛かっているの?」
「はい。裁判以降は掛かっています」
「それは、僕の身近な人でも?」
「晶羅様の身内や家臣も閲覧制限されています」
「つまり、身内でも家臣でもない人達からは情報が取れるということだね」
「そうなります」
「僕の身内あるいは家臣と認定されていない人物は、このアノイ要塞に居る?」
「はい。います」
「それは誰だ?」
「自称自治会の方々です」
「あいつらか!」
思わぬ所にスパイがいた。
しかも本人達が意識していないというのが困ったところだ。
自称自治会なら、僕が真・帝国と接触していることは知らないはず。
その情報は漏れていない。
しかし、僕が客人を迎えに単艦で出撃することは誰もが知るところだった。
その情報を腕輪で収集した情報から掠め取っていたのだろう。
なんて悪知恵の働く男なんだ。
「愛さん、自称自治会の腕輪の情報を閲覧出来なくできるかな?」
「はい。晶羅様の権限でロックします」
「え、出来るの? 腕輪の管理もサポートAIの仕事だってこと?」
「はい。そうです」
愛さんが居てくれて助かった。
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「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
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剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
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ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
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初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
現代ダンジョンの苦情係 〜元クレーム処理担当の俺、魔物の言葉がわかるので菓子折り一つで世界を救う〜
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