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領主編
132 領主編26 ダロン4強襲
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SIDE:アノイ要塞 アキラ (一人称)
嫁ーずの活躍でダロン4産の艦の情報が手に入った。
そのパトロール艦の艦歴は第8皇子の正規軍から配下のブィコフスキー男爵に払い下げられ、しばらく領軍の主力艦として働いた後に予備役となり、その後警邏隊に配備された老朽艦ということだった。
『このデータ及び微量サンプルからクローンの専用艦の系統であるX母親系であることが確認されました。
武装の遺伝系もX遺伝系と同じ。従ってクローンの専用艦の生産地はダロン4であろうと推定されます』
工場惑星の鑑定により嫁ーずが採取して来たデータ及び微量サンプルからダロン4産の艦とクローンの専用艦の系統が同一であることが確認された。
ダロン星系はゲイル研究所からのクローンの出荷先であり、さらに専用艦が建造された地だった。
この状況証拠だけで地球人誘拐に深く関わっていると断定して構わないだろう。
相手が第8皇子という立場でも、少なくとも事情説明の要求ぐらいは出来るだろう。
「先日出したクローン襲撃事件の調査要求には返事も来て無いんだよね?」
「はい。疑惑に利用されただけならば、慌てて調査協力をしてもいいものを、否定も肯定もなく無視されています」
「なら、クローン専用艦の製造に関する調査要求を出してみて」
「了解しました」
なんだか最近の愛さんは帝国のサポートAIというより、僕の秘書じみて来たな。
裁判の時も、自らに課せられた行動抑制を跳ね返して協力してくれた感じがあるし、元は旧帝国のシステムらしいから、今は現帝国より僕に従ってくれているのかもしれない。
・
・
・
・
調査要求の回答期限が切れた。今回も完全無視。
これはもう決闘してでも叩かなければならないかもしれない。
この回答期限が逆に第8皇子側に準備期間を与えてしまったとなると、相手側からの攻撃も危惧しないとならない。
しかし、一桁皇子の星系に手を出すとなると他の皇子達の動きが怖い。
第1皇子、第2皇子、第3皇子の3人は、地球人奪還に協力的だけど、それは人道的な面もあるだろうが、自分達の脅威となる皇子の力を削げるからでもあるはずだ。
もし僕の方が脅威だと認定されれば、その矛先はこっちに向くかもしれない。
せめて向こうに協力しないだけでもありがたいのだが……。
そのためにも、こちらの正当性をアピールするべきだろうな。
「帝国ネットワークに今回の顛末をアップしろ。調査に協力しない第8皇子を僕の名で批判。
クローンの出荷先が第8皇子主星系ダロン星系であること、専用艦がダロン4で建造されたことを公表する。
第8皇子から正式な納得のいくコメントが公開されなければ、こちらは決闘も辞さないと公式に表明せよ!」
「了解しました」
さあ、こちらはやる気だぞ。どうする第8皇子?
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
SIDE:某所 仮想空間内会議室 8 9 (三人称)
2人欠けた四天王の椅子の前に、今回は総帥の玉座が据えられていた。
いま廃嫡された13の席には11が座っているはずだったが、状況を知って逃げたようだ。
10はアキラと争ったせいで相変わらず次元通信不通であり連絡が取れず事実上の蟄居状態だった。
9こと第9皇子は総帥のお越しを今か今かと待っているようだ。
彼と同格の四天王である8こと第8皇子はアキラに名指しされ窮地に陥っていた。
アキラは帝国ネットワークにクローン襲撃事件の顛末を全公開し、第8皇子を名指しで批判した。
帝国内でも忌避される行為の主犯という汚名は、中立の諸侯はおろか味方までが離れる材料となった。
廃嫡されたケインは置いておいて、四天王仲間である第8皇子、第9皇子、蟄居中の第10皇子、運悪く新たな四天王となってしまった第11皇子は最早一蓮托生だった。
この4人の皇子の戦力を全て動員してもアキラの軍の戦力には敵わなかった。
ケインに貸した戦力がそのまま丸ごと帰って来なかったからだ。
そのため総帥にも出張ってもらうことにしたのだった。
総帥こと第4皇子は、彼ら下位皇子をまとめ、上位3皇子に下克上を行おうとする存在だった。
第9皇子は、このような時こそ総帥自らが陣頭に立って戦ってくれるものと信じていた。
9「来ぬな……」
8「我らは見捨てられたのやもしれぬな」
第8皇子が落胆の声を上げる。
第8皇子と第9皇子は同い年の皇子だ。
父は当たり前だが皇帝、母は違うが同じ年に産まれたという立場故に仲が良かった。
そのため、皇位継承争いから脱落した後も、2人で同じ主君に仕えることにしたのだ。
9「第1、第2、第3皇子がアキラ支援の援軍を派遣するそうだ」
8「総帥は逃げたか」
9「そうなるな……」
8「降伏するか」
9「今ならまだ決闘を申し込まれておらぬからな」
決闘になっていたら、第8皇子は降伏したとしても即廃嫡だっただろう。
決闘前の今降伏するならば領地ぐらいは安堵してもらえるに違いない。
その時は第4皇子も一緒に引きずり落ろしてやろうと彼らは考えていた。
彼ら二人は皇位継承を諦める代わりに、第4皇子の庇護を受けるという条件のもと延命治療さえも受けていなかった。
完全なる恭順の意思。だからこそ守ってもらえるはずだった。
それが反故にされたとなると第4皇子を恨んで当然だった。
8「ん? 誰か来たようだ……落ちるぞ」
9「こっちもだ。降伏は早めにな」
◇ ◇ ◇ ◆ ◇
SIDE:アノイ要塞→ダロン星系 アキラ (一人称)
こちらの公式発表に対し、第1、第2、第3皇子は僕の支持を表明、第8皇子を批判した。
表面的な味方ということかと思っていたら援軍まで送ってくれるらしい。
まだ第8皇子からの返事はない。
いよいよタイムリミットがやってくる。最早決闘を申し込むしかない。
上位3皇子には感謝の言葉とともに援軍派遣を丁重にお断りした。
僕達の力だけで敵は叩く。
決闘が正式に宣言され、第8皇子主星系ダロン星系に僕らは軍を進めた。
ハブ次元跳躍門手前の亜空間から堂々と宣戦布告をするが応答なし。
僕は専用艦の遮蔽フィールドを展開し次元跳躍でダロン星系に進入する。
遮蔽フィールド(中型)は工場惑星が生産していたので再装備したレア装備だ。
SFOランカー戦で重宝していたので、いつか再装備したいと思っていたけど、なかなか手に入らなかったものだ。
それを工場惑星が製造していたので飛びついたというわけだ。
身を隠して次元跳躍することで敵情視察が容易だという利点に気付いたため便利使いしている。
僕の専用艦は、次元格納庫内の無人艦隊も使えば、単艦行動から艦隊単位での敵勢力圏強襲が出来る。
そのため久しぶりに単艦行動している。
ダロン星系に専用艦を次元跳躍アウトすると、そこは既に終わった戦場だった。
工業惑星は爆撃され、軌道上の生産設備も壊滅していた。
第8皇子の艦隊は残骸を晒している。
その戦場に残るは優美な装飾を施した専用艦のみ。
僕は専用艦の遮蔽フィールドを解くと、その専用艦に通信を送る。
『こちら第6皇子アキラだ。これはどういうことだ?』
相手は不信艦だが、砲塔の仰角を下げレールガンも後方に回していて争うつもりが無い事を示していた。
なので僕も争わずに通信を送ったというわけだ。
『やあ、こちらは第4皇子ルーカスだ。第8皇子と第9皇子のアホは始末しておいた』
『え?』
僕が驚いたのは、第4皇子からさらっと言われた衝撃の告白に対してでもあり、ある一点が気にかかったからでもあった。
『地球人誘拐に、そのクローン兵化は忌避されるべき許せん暴挙だ。
僕の正義が奴らを許せなかった。なのでサクッと狩っておいた。
まあ、僕が勝手に助太刀したと思ってくれ。
これでも決闘は成立する。決闘の正当な権利として星系は君のものだ。
なに、礼には及ばん。1つ貸しにしておくよ。では、さらばだ』
ルーカスの専用艦は次元跳躍で消えていった。
親切な第4皇子だ……なんて僕は思いはしない。
いま奴の言った第9皇子を始末したという言葉。
僕はまだ第9皇子が地球人誘拐の仲間だなんて知らなかった。
知っていたら連名で決闘を申し込んでいただろう。
犯人側にしか知り得ない事実、つまり秘密の暴露。
「主犯はお前じゃないかルーカス!」
嫁ーずの活躍でダロン4産の艦の情報が手に入った。
そのパトロール艦の艦歴は第8皇子の正規軍から配下のブィコフスキー男爵に払い下げられ、しばらく領軍の主力艦として働いた後に予備役となり、その後警邏隊に配備された老朽艦ということだった。
『このデータ及び微量サンプルからクローンの専用艦の系統であるX母親系であることが確認されました。
武装の遺伝系もX遺伝系と同じ。従ってクローンの専用艦の生産地はダロン4であろうと推定されます』
工場惑星の鑑定により嫁ーずが採取して来たデータ及び微量サンプルからダロン4産の艦とクローンの専用艦の系統が同一であることが確認された。
ダロン星系はゲイル研究所からのクローンの出荷先であり、さらに専用艦が建造された地だった。
この状況証拠だけで地球人誘拐に深く関わっていると断定して構わないだろう。
相手が第8皇子という立場でも、少なくとも事情説明の要求ぐらいは出来るだろう。
「先日出したクローン襲撃事件の調査要求には返事も来て無いんだよね?」
「はい。疑惑に利用されただけならば、慌てて調査協力をしてもいいものを、否定も肯定もなく無視されています」
「なら、クローン専用艦の製造に関する調査要求を出してみて」
「了解しました」
なんだか最近の愛さんは帝国のサポートAIというより、僕の秘書じみて来たな。
裁判の時も、自らに課せられた行動抑制を跳ね返して協力してくれた感じがあるし、元は旧帝国のシステムらしいから、今は現帝国より僕に従ってくれているのかもしれない。
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調査要求の回答期限が切れた。今回も完全無視。
これはもう決闘してでも叩かなければならないかもしれない。
この回答期限が逆に第8皇子側に準備期間を与えてしまったとなると、相手側からの攻撃も危惧しないとならない。
しかし、一桁皇子の星系に手を出すとなると他の皇子達の動きが怖い。
第1皇子、第2皇子、第3皇子の3人は、地球人奪還に協力的だけど、それは人道的な面もあるだろうが、自分達の脅威となる皇子の力を削げるからでもあるはずだ。
もし僕の方が脅威だと認定されれば、その矛先はこっちに向くかもしれない。
せめて向こうに協力しないだけでもありがたいのだが……。
そのためにも、こちらの正当性をアピールするべきだろうな。
「帝国ネットワークに今回の顛末をアップしろ。調査に協力しない第8皇子を僕の名で批判。
クローンの出荷先が第8皇子主星系ダロン星系であること、専用艦がダロン4で建造されたことを公表する。
第8皇子から正式な納得のいくコメントが公開されなければ、こちらは決闘も辞さないと公式に表明せよ!」
「了解しました」
さあ、こちらはやる気だぞ。どうする第8皇子?
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
SIDE:某所 仮想空間内会議室 8 9 (三人称)
2人欠けた四天王の椅子の前に、今回は総帥の玉座が据えられていた。
いま廃嫡された13の席には11が座っているはずだったが、状況を知って逃げたようだ。
10はアキラと争ったせいで相変わらず次元通信不通であり連絡が取れず事実上の蟄居状態だった。
9こと第9皇子は総帥のお越しを今か今かと待っているようだ。
彼と同格の四天王である8こと第8皇子はアキラに名指しされ窮地に陥っていた。
アキラは帝国ネットワークにクローン襲撃事件の顛末を全公開し、第8皇子を名指しで批判した。
帝国内でも忌避される行為の主犯という汚名は、中立の諸侯はおろか味方までが離れる材料となった。
廃嫡されたケインは置いておいて、四天王仲間である第8皇子、第9皇子、蟄居中の第10皇子、運悪く新たな四天王となってしまった第11皇子は最早一蓮托生だった。
この4人の皇子の戦力を全て動員してもアキラの軍の戦力には敵わなかった。
ケインに貸した戦力がそのまま丸ごと帰って来なかったからだ。
そのため総帥にも出張ってもらうことにしたのだった。
総帥こと第4皇子は、彼ら下位皇子をまとめ、上位3皇子に下克上を行おうとする存在だった。
第9皇子は、このような時こそ総帥自らが陣頭に立って戦ってくれるものと信じていた。
9「来ぬな……」
8「我らは見捨てられたのやもしれぬな」
第8皇子が落胆の声を上げる。
第8皇子と第9皇子は同い年の皇子だ。
父は当たり前だが皇帝、母は違うが同じ年に産まれたという立場故に仲が良かった。
そのため、皇位継承争いから脱落した後も、2人で同じ主君に仕えることにしたのだ。
9「第1、第2、第3皇子がアキラ支援の援軍を派遣するそうだ」
8「総帥は逃げたか」
9「そうなるな……」
8「降伏するか」
9「今ならまだ決闘を申し込まれておらぬからな」
決闘になっていたら、第8皇子は降伏したとしても即廃嫡だっただろう。
決闘前の今降伏するならば領地ぐらいは安堵してもらえるに違いない。
その時は第4皇子も一緒に引きずり落ろしてやろうと彼らは考えていた。
彼ら二人は皇位継承を諦める代わりに、第4皇子の庇護を受けるという条件のもと延命治療さえも受けていなかった。
完全なる恭順の意思。だからこそ守ってもらえるはずだった。
それが反故にされたとなると第4皇子を恨んで当然だった。
8「ん? 誰か来たようだ……落ちるぞ」
9「こっちもだ。降伏は早めにな」
◇ ◇ ◇ ◆ ◇
SIDE:アノイ要塞→ダロン星系 アキラ (一人称)
こちらの公式発表に対し、第1、第2、第3皇子は僕の支持を表明、第8皇子を批判した。
表面的な味方ということかと思っていたら援軍まで送ってくれるらしい。
まだ第8皇子からの返事はない。
いよいよタイムリミットがやってくる。最早決闘を申し込むしかない。
上位3皇子には感謝の言葉とともに援軍派遣を丁重にお断りした。
僕達の力だけで敵は叩く。
決闘が正式に宣言され、第8皇子主星系ダロン星系に僕らは軍を進めた。
ハブ次元跳躍門手前の亜空間から堂々と宣戦布告をするが応答なし。
僕は専用艦の遮蔽フィールドを展開し次元跳躍でダロン星系に進入する。
遮蔽フィールド(中型)は工場惑星が生産していたので再装備したレア装備だ。
SFOランカー戦で重宝していたので、いつか再装備したいと思っていたけど、なかなか手に入らなかったものだ。
それを工場惑星が製造していたので飛びついたというわけだ。
身を隠して次元跳躍することで敵情視察が容易だという利点に気付いたため便利使いしている。
僕の専用艦は、次元格納庫内の無人艦隊も使えば、単艦行動から艦隊単位での敵勢力圏強襲が出来る。
そのため久しぶりに単艦行動している。
ダロン星系に専用艦を次元跳躍アウトすると、そこは既に終わった戦場だった。
工業惑星は爆撃され、軌道上の生産設備も壊滅していた。
第8皇子の艦隊は残骸を晒している。
その戦場に残るは優美な装飾を施した専用艦のみ。
僕は専用艦の遮蔽フィールドを解くと、その専用艦に通信を送る。
『こちら第6皇子アキラだ。これはどういうことだ?』
相手は不信艦だが、砲塔の仰角を下げレールガンも後方に回していて争うつもりが無い事を示していた。
なので僕も争わずに通信を送ったというわけだ。
『やあ、こちらは第4皇子ルーカスだ。第8皇子と第9皇子のアホは始末しておいた』
『え?』
僕が驚いたのは、第4皇子からさらっと言われた衝撃の告白に対してでもあり、ある一点が気にかかったからでもあった。
『地球人誘拐に、そのクローン兵化は忌避されるべき許せん暴挙だ。
僕の正義が奴らを許せなかった。なのでサクッと狩っておいた。
まあ、僕が勝手に助太刀したと思ってくれ。
これでも決闘は成立する。決闘の正当な権利として星系は君のものだ。
なに、礼には及ばん。1つ貸しにしておくよ。では、さらばだ』
ルーカスの専用艦は次元跳躍で消えていった。
親切な第4皇子だ……なんて僕は思いはしない。
いま奴の言った第9皇子を始末したという言葉。
僕はまだ第9皇子が地球人誘拐の仲間だなんて知らなかった。
知っていたら連名で決闘を申し込んでいただろう。
犯人側にしか知り得ない事実、つまり秘密の暴露。
「主犯はお前じゃないかルーカス!」
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