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遠征編
139 遠征編4 軍議
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「教えてあげないw」
カイルが笑顔で言う。
「その方が面白いし」
カイルがイタズラっぽい顔をする。何そのイケメン。
しかし困ったぞ。今更皇帝を名前で呼ぶような場面に遭遇するとは思えない。
サポートAIの愛さんも、皇帝絡みの情報にロックがかかっていて教えてくれないし。
皇帝にだけは名前を知らないことを気付かれてはならないぞ。
あ、獣人の人達なら普通に知ってるのか。だが彼らには恥ずかしくて聞けないな。
嫁か。嫁なら……笑われるな。
それでも訊けば教えてくれるだろう。
「まあ、そのうちわかるんだからいいか」
思考を巡らせ唸っている僕を横目にカイルが慰める。
いやカイルがいま教えてくれれば丸く収まるんだからね?
「さて、そろそろ軍議に向かった方がいいと思うよ。服装はこのままでいい」
「軍議というと、どのような話をするの?」
「戦地の説明と戦況報告。攻略のための進軍経路。今後の予測。そして戦場の担当決めかな」
「僕が口出しするような事は無さそうだ」
「いや皇帝陛下が態々呼んだということは、何らかの意見を聞かれるから覚悟をしておくことだ」
僕がイヤーな顔をするとカイルは笑って僕の背中をバンバン叩いてきた。
血は全くつながってないけど、なんかお兄ちゃんって感じがする。
今日始めて会ったのに仲良く出来そうで、ぼっち期間の長かった僕はちょっとうれしくなった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
「これより軍議を始める!」
ジ◯ン軍の制服を中世の騎士服に寄せたような軍服を身にまとった武官が軍議の開始を宣言する。
作戦室の正面には大きな壁面スクリーンがあり、空中にも仮想スクリーンが複数浮いている。
その壁面スクリーンに向かって国会の議場に似た弧を描くような配置で座席が階段状にある。
中央最後尾に皇帝、その前の席に正規軍の将軍達。そして将軍の席の左右に僕ら皇子が座っている。
その前の座席は所属により分けられ、階級の高い順に座席が下になっていく。
僕ら皇子の前には領軍を従えて馳せ参じた貴族達が座っている。
これも爵位の高い順で座席が下になっているが、派閥で固まってもいるようだ。
僕の座席の目の前には仮想スクリーンが展開されていて各種資料を映すようになっている。
この仮想スクリーンはナノマシンにより直接脳に映像が映し出されている。
軍議に呼ばれたのは第1から第3皇子と僕。第2皇子ヘンリーと第3皇子イーサンは僕達の反対側に座っている。
第1皇子は僕の隣の皇帝側。第4皇子は軍議には呼ばれていない。
そして第5皇子と第7皇子は期日に間に合わないと作法に則り上洛を辞退したそうだ。
第8皇子、第9皇子は死亡。
第10皇子以下の10番代皇子は呼ばれなかったそうだ。
「敵ニアヒュームが攻めて来たのは皇帝陛下直轄領である第8管区です。
第8管区は帝都からハブ次元跳躍門を使用して1週間の距離で、現在次元跳躍門を敵に使われないようにロックをかけています。
それも敵がシステムに干渉してコントロールを奪おうとしている形跡がありますので突破は時間の問題でしょう。
敵の数は50万前後、母艦級が10艦は存在すると思われます」
作戦参謀――たぶん――が立ち上がり敵の現在の状況を報告する。
僕は敵の事をあまりにも知らなさすぎる。
敵がニアヒュームと呼ばれていることも初めて知った。
「第8管区か、次元跳躍門を使わず銀河腕を渡って進入されたか」
壁面スクリーンに敵の侵入経路がCGで表示されている。
どうやら第8管区はこの銀河腕の端にあるらしい。
隣の銀河腕から第8管区に向けて矢印が描かれている。
「おそらく短距離次元跳躍を繰り返して進入したものと思われます」
その言葉に合わせて矢印が点線で表示された。中継点を表現しているようだ。
「第8管区には所属星系が8つある。各星系に名前はあるが作戦の便宜上8A星系から8H星系と呼称する。
ハブ次元跳躍門は8A星系にあり、敵は8H星系より侵攻中だ」
作戦参謀が操作すると壁面スクリーンと目の前の仮想スクリーンに第8管区の詳細星系図が表示され現在の敵の侵攻ルートが表示された。
敵は8H星系を攻略し短距離次元跳躍で隣の8G星系へ向かっているようだ。
「我々帝国正規軍主力は100万の艦艇で8G星系に展開、敵を正面から迎え撃つべきと進言いたします」
壁面スクリーンの前に立っていた作戦参謀が当たり前すぎる作戦を進言する。
敵を上回る戦力で敵を力技でねじ伏せる王道といえば王道、普通といえば普通の作戦だった。
「アキラどう思う」
やっぱり来たか。カイルの予想通り皇帝が僕に意見を聞いて来た。
どうする? まあどうせ採用されないだろうから思ったことを言っておくか。
「敵の侵攻ルートである8G星系で敵を正面から迎え撃つ作戦が王道でしょう。
しかし敵は次元跳躍門のシステムに干渉しようとしています。
もし敵に次元跳躍門のシステムを掌握されたら、おそらく主戦場は8Aと8B星系になります。
敵の戦略目的は帝国中枢への侵攻でしょう。
敵はハブ次元跳躍門を狙うと思います。
戦力の分散は愚策と言いますが、8Cから8F星系の防衛以上に8Aと8B星系に戦力を置くべきかと愚考します」
うん。よくもまあ、こんな憶測を話せたもんだと自分でも思う。
どうせ皇帝も違う角度からの話を聞きたかったか、僕の能力を見たいだけだろうからこれでいい。
「なるほど。8A星系は元々後詰の予備戦力を置くつもりだが、8B星系はなぜか?」
「ハブ次元跳躍門がロックされていれば8A星系には入れません。
となれば敵は8A星系と物理的に近い8B星系から短距離次元跳躍をして来るでしょう。
その前に8B星系進入を阻止するのが上策かと思います」
「8G星系の動きは掴めていないのだな?」
僕の意見に頷いた皇帝が作戦参謀に確認をする。
「母艦全艦の短距離次元跳躍を確認しましたが、50万の艦全てが母艦に格納されたのかは不明です。
ですが、次元跳躍門のシステムへの工作は継続されています」
「ふむ。では8B星系の防衛はカイル軍とアキラに任せようか」
あら、カイルを巻き込んじゃったよ。最前線で戦いたいなら悪いことをしたかも。
まあ、僕単艦で守れと言われなくて僕的には良かったんだが……。
「我が軍全軍は8A星系に進出、ハブ次元跳躍門より8G星系に正規軍100万を派遣し敵を迎え撃つ。
8A星系には予備戦力10万を配置する。8B星系はカイルとアキラの4万で防衛、8Cから8F星系は各1万の防衛戦力を置く。
ハブ次元跳躍門は各艦隊跳躍後命令あるまでロック。敵を帝都に向かわせるな。以上だ」
皇帝から作戦指示が出る。うーん、僕の意見を採用はしていないけど一部取り入れてくれた。
僕達は命令に従い戦場に向かうしかない。
「これは貧乏くじを引いたかな?」
カイルの言葉は8G星系の主戦場に出られないことを意味しているのか、8B星系を4万で守らされる危機感を意味しているのか、僕にはわからなかった。
そして僕は専用艦のみの単艦行動。おそらく戦力的に皇帝には何の期待もされてない。
カイルが笑顔で言う。
「その方が面白いし」
カイルがイタズラっぽい顔をする。何そのイケメン。
しかし困ったぞ。今更皇帝を名前で呼ぶような場面に遭遇するとは思えない。
サポートAIの愛さんも、皇帝絡みの情報にロックがかかっていて教えてくれないし。
皇帝にだけは名前を知らないことを気付かれてはならないぞ。
あ、獣人の人達なら普通に知ってるのか。だが彼らには恥ずかしくて聞けないな。
嫁か。嫁なら……笑われるな。
それでも訊けば教えてくれるだろう。
「まあ、そのうちわかるんだからいいか」
思考を巡らせ唸っている僕を横目にカイルが慰める。
いやカイルがいま教えてくれれば丸く収まるんだからね?
「さて、そろそろ軍議に向かった方がいいと思うよ。服装はこのままでいい」
「軍議というと、どのような話をするの?」
「戦地の説明と戦況報告。攻略のための進軍経路。今後の予測。そして戦場の担当決めかな」
「僕が口出しするような事は無さそうだ」
「いや皇帝陛下が態々呼んだということは、何らかの意見を聞かれるから覚悟をしておくことだ」
僕がイヤーな顔をするとカイルは笑って僕の背中をバンバン叩いてきた。
血は全くつながってないけど、なんかお兄ちゃんって感じがする。
今日始めて会ったのに仲良く出来そうで、ぼっち期間の長かった僕はちょっとうれしくなった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◆
「これより軍議を始める!」
ジ◯ン軍の制服を中世の騎士服に寄せたような軍服を身にまとった武官が軍議の開始を宣言する。
作戦室の正面には大きな壁面スクリーンがあり、空中にも仮想スクリーンが複数浮いている。
その壁面スクリーンに向かって国会の議場に似た弧を描くような配置で座席が階段状にある。
中央最後尾に皇帝、その前の席に正規軍の将軍達。そして将軍の席の左右に僕ら皇子が座っている。
その前の座席は所属により分けられ、階級の高い順に座席が下になっていく。
僕ら皇子の前には領軍を従えて馳せ参じた貴族達が座っている。
これも爵位の高い順で座席が下になっているが、派閥で固まってもいるようだ。
僕の座席の目の前には仮想スクリーンが展開されていて各種資料を映すようになっている。
この仮想スクリーンはナノマシンにより直接脳に映像が映し出されている。
軍議に呼ばれたのは第1から第3皇子と僕。第2皇子ヘンリーと第3皇子イーサンは僕達の反対側に座っている。
第1皇子は僕の隣の皇帝側。第4皇子は軍議には呼ばれていない。
そして第5皇子と第7皇子は期日に間に合わないと作法に則り上洛を辞退したそうだ。
第8皇子、第9皇子は死亡。
第10皇子以下の10番代皇子は呼ばれなかったそうだ。
「敵ニアヒュームが攻めて来たのは皇帝陛下直轄領である第8管区です。
第8管区は帝都からハブ次元跳躍門を使用して1週間の距離で、現在次元跳躍門を敵に使われないようにロックをかけています。
それも敵がシステムに干渉してコントロールを奪おうとしている形跡がありますので突破は時間の問題でしょう。
敵の数は50万前後、母艦級が10艦は存在すると思われます」
作戦参謀――たぶん――が立ち上がり敵の現在の状況を報告する。
僕は敵の事をあまりにも知らなさすぎる。
敵がニアヒュームと呼ばれていることも初めて知った。
「第8管区か、次元跳躍門を使わず銀河腕を渡って進入されたか」
壁面スクリーンに敵の侵入経路がCGで表示されている。
どうやら第8管区はこの銀河腕の端にあるらしい。
隣の銀河腕から第8管区に向けて矢印が描かれている。
「おそらく短距離次元跳躍を繰り返して進入したものと思われます」
その言葉に合わせて矢印が点線で表示された。中継点を表現しているようだ。
「第8管区には所属星系が8つある。各星系に名前はあるが作戦の便宜上8A星系から8H星系と呼称する。
ハブ次元跳躍門は8A星系にあり、敵は8H星系より侵攻中だ」
作戦参謀が操作すると壁面スクリーンと目の前の仮想スクリーンに第8管区の詳細星系図が表示され現在の敵の侵攻ルートが表示された。
敵は8H星系を攻略し短距離次元跳躍で隣の8G星系へ向かっているようだ。
「我々帝国正規軍主力は100万の艦艇で8G星系に展開、敵を正面から迎え撃つべきと進言いたします」
壁面スクリーンの前に立っていた作戦参謀が当たり前すぎる作戦を進言する。
敵を上回る戦力で敵を力技でねじ伏せる王道といえば王道、普通といえば普通の作戦だった。
「アキラどう思う」
やっぱり来たか。カイルの予想通り皇帝が僕に意見を聞いて来た。
どうする? まあどうせ採用されないだろうから思ったことを言っておくか。
「敵の侵攻ルートである8G星系で敵を正面から迎え撃つ作戦が王道でしょう。
しかし敵は次元跳躍門のシステムに干渉しようとしています。
もし敵に次元跳躍門のシステムを掌握されたら、おそらく主戦場は8Aと8B星系になります。
敵の戦略目的は帝国中枢への侵攻でしょう。
敵はハブ次元跳躍門を狙うと思います。
戦力の分散は愚策と言いますが、8Cから8F星系の防衛以上に8Aと8B星系に戦力を置くべきかと愚考します」
うん。よくもまあ、こんな憶測を話せたもんだと自分でも思う。
どうせ皇帝も違う角度からの話を聞きたかったか、僕の能力を見たいだけだろうからこれでいい。
「なるほど。8A星系は元々後詰の予備戦力を置くつもりだが、8B星系はなぜか?」
「ハブ次元跳躍門がロックされていれば8A星系には入れません。
となれば敵は8A星系と物理的に近い8B星系から短距離次元跳躍をして来るでしょう。
その前に8B星系進入を阻止するのが上策かと思います」
「8G星系の動きは掴めていないのだな?」
僕の意見に頷いた皇帝が作戦参謀に確認をする。
「母艦全艦の短距離次元跳躍を確認しましたが、50万の艦全てが母艦に格納されたのかは不明です。
ですが、次元跳躍門のシステムへの工作は継続されています」
「ふむ。では8B星系の防衛はカイル軍とアキラに任せようか」
あら、カイルを巻き込んじゃったよ。最前線で戦いたいなら悪いことをしたかも。
まあ、僕単艦で守れと言われなくて僕的には良かったんだが……。
「我が軍全軍は8A星系に進出、ハブ次元跳躍門より8G星系に正規軍100万を派遣し敵を迎え撃つ。
8A星系には予備戦力10万を配置する。8B星系はカイルとアキラの4万で防衛、8Cから8F星系は各1万の防衛戦力を置く。
ハブ次元跳躍門は各艦隊跳躍後命令あるまでロック。敵を帝都に向かわせるな。以上だ」
皇帝から作戦指示が出る。うーん、僕の意見を採用はしていないけど一部取り入れてくれた。
僕達は命令に従い戦場に向かうしかない。
「これは貧乏くじを引いたかな?」
カイルの言葉は8G星系の主戦場に出られないことを意味しているのか、8B星系を4万で守らされる危機感を意味しているのか、僕にはわからなかった。
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