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自由浮遊惑星編
182 自由浮遊惑星編3 レオナルドの残したもの
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side:ラスティ星系 工場惑星内居住区晶羅邸 アキラ視点
僕は工場惑星を次元跳躍させてラスティ星系に来ていた。
クロウニー星系で無力化していたニアヒューム艦の隔離専用母艦への隔離作業が終わったのだ。
ニアヒュームと言語コミュニケーションをとるという大仕事は、ゲールの一言で簡単に解決してしまった。
『ニアヒュームは帝国語が理解できるぞ?』
そういや、僕とカイルは、イーサンを乗っ取ったニアヒュームと普通に会話出来ていたんだった。
その時はイーサンが肉体――脳も含めて――をニアヒュームに乗っ取られていたてめに、イーサンの言語能力が利用されて会話が成立しているものと思っていた。
しかし、よくよく考えたら元々ニアヒュームは帝国民を生体部品として取り込んでいたので、あたかも外部記憶装置にアクセスしてデータを取るかの如く帝国の言語知識を手に入れていたのだ。
しかも、帝国には自動翻訳ナノマシンがある。
それもニアヒュームの手に渡っているということは、僕らが使っている日本語の知識を持っていることになる。
その言語知識が群で共有されているのなら、群全てのニアヒュームが帝国語や日本語を理解出来るということだ。
いや、SFOランカーには英語圏や仏語圏の人達もいた。
たしかSFOには一部のネット制限がある国を除いて世界各国からプレイヤーが参加していたはずだ。
傭兵さんなんかも、明らかに欧米人主流だったからな。
その全ての言語を相互翻訳できる能力がナノマシンにはあった。
つまり、この翻訳ナノマシンを手に入れたニアヒュームの群は地球の言語も理解出来るという事になる。
嫁ーずが趣味で各種コンテンツを帝国語に翻訳してくれていたが、ニアヒュームは原語のままでも理解出来てしまうと判明したのだ。
隔離されたニアヒュームには地球の文化というものを思う存分味わってもらおう。
隔離区画ごとに違う文化に触れたニアヒュームの群が、どのような差異を持つのか、また違う文化に触れたニアヒュームの群同士が接触した時にどのような反応を示すのか興味は尽きない。
その点にはゲールも興味津々だった。今後の実験はゲールに任せようと思う。
「さて小母艦級からコアを分離して隔離専用母艦に改造しないとならないな。
今はAK-E002が無力化はしているんだよね?」
『無力化は問題ないよ。
でも、あの数の小母艦級を全てドック区画に納めるのは無理があるねー』
工場惑星によると小母艦級はニアヒューム艦を3万艦搭載できる大きさだという。
それに加えて次元跳躍機関や修理ドックを持つとなると、全ての小母艦級を格納して改造するのは無理だろう。
ん? 何もいま全ての小母艦級を改造しなければいけないわけじゃないんだよな。
問題は小母艦級を全て格納できないとニアヒュームの隔離が完了しないということで……。
クロウニ―星系では要塞艦に接続された小母艦級のコアは、要塞艦を無力化するために破壊したから問題なかったけど、こっちも破壊するとなると修理で余計な手間がかかるな。
そうだ。コアだけ切り取って隔離してしまおう。
残った小母艦級の残骸は今後大量の隔離が必要になった時までそこらへんに浮かばせておけばいい。
「元々目的はニアヒュームの隔離なんだから、コアだけ収納すればいいんじゃないか?」
『それなら簡単だよ。収納フィールドを変形させてコアを切り取ってしまえばいいね』
「問題はコアの切り取りを敵対行動と取られて、他のニアヒューム艦が攻撃態勢に入ってしまう可能性か……」
「ラスティ星系のニアヒュームはプリンスが去ったせいで待機命令が解けかけていたんでしょ?
AK-E002が無力化したけどさ」
綾姫が話に割り込んでくる。何か考えがあるようだ。
「そうだね。クロウニー星系は交戦状態を強引に押さえた形だからちょっと様子が違うかもね」
「それってプリンス達がラスティ星系を離れるにあたり、ニアヒュームが勝手に人を汚染しないようにしたということじゃない?」
「つまり?」
「戦闘になるクロウニー星系より、ラスティ星系の方が厳しい命令が出ていたということだと思う」
「戦闘に参加させたいニアヒュームと、余計なこともさせたくないニアヒュームで命令が違っているだろうということか」
「だから、そのまま待機命令を継続させれば良いんじゃないの?
そうすればラスティ星系のニアヒュームは切り取られても動かないんじゃないかと思ったんだ」
「ダメもとでやってみる価値はあるな。
ダメなら殲滅に切り替えてもいい」
コア切り取りの実行を躊躇する僕の背を綾姫が押してくれた。
最悪、小母艦級のコアを撃ちぬいてしまっても良いのだし、やってみれば良かったんだ。
「よし行ってくる」
「私もいくよ?」
僕達の後ろでBRメンバーと嫁ーずの目が光った。
僕は専用艦を出撃させると小母艦級のコアを次元格納庫に取り込むべく移動する。
僕の周囲には不測の事態を想定してBRメンバーと嫁ーずが専用艦で出撃してくれていた。
特に綾姫は僕の後ろを守ってくれている。
小母艦級に近付くと次元格納庫の収納フィールドを変形させコアの位置に伸ばしていく。
丁度ストローを突き刺すような感じで奥へ奥へと伸ばす。
その先端がコアを包む。そのまま境界で切り取るモードで収納をかける。
結果、何の心配もいらずに切り取りが成功した。
しばらく後、ニアヒューム艦4万と共に小母艦級のコア24個が次元隔離施設を搭載した隔離専用母艦2番艦に収納された。
これでロレンツォ領とレオナルド領に侵攻して来たニアヒュームは全て隔離か駆除された。
今後ニアヒューム対策は同様の無力化隔離措置が取られるようになるだろう。
「やってみたら何の心配もいらなかった。
ありがとう綾姫」
「うん。どういたしまして」
慎重になりすぎるのも良くないな。
勢いで押すのも時には必要だ。
『アキラ、終わったようだな。星系領主としてお礼を言うよ』
頃合いを見計らって、ロレンツォから通信が入った。
『ロレンツォか。まだニアヒュームの侵攻は継続中だ。気をつけてくれ』
僕はニアヒュームの脅威を侮らないように釘を刺す。
『わかっているよ。要塞艦の修理も感謝する。これで少しは戦える』
『AK-Eシリーズも優先的に引き渡そう。
ニアヒュームとも無力化してしまえば楽に戦えるだろう』
『何から何まで助かる。
そこでなんだが、レオナルドから手に入れた星系の1つをアキラに譲りたい』
『え?』
僕にはロレンツォの意図が汲み取れなかった。
『陛下の意向で私とレオナルドの紛争扱いになってしまったが、アキラがいなかったらレオナルドには勝てなかった。
本来ならレオナルドの支配星系全てをアキラに渡したかったんだが、建前上そうもいかなくてな』
『いらないよ。飛び地なんて領地経営がめんどくさい』
はい。本音です。
距離が遠いということは反乱の危険もあるし、何かあった時の対処も後手にまわる。
面倒この上ない。
『なら、レオナルドの要塞艦から助けた臣下を代官にすればいい』
『知ってたのか!?』
レオナルド座乗の要塞艦を反物質粒子砲で撃つ時に、僕は司令室が巻き込まれないように手加減をした。
親衛艦隊5千の艦も余波で破壊したが、航宙士は要塞艦に転送救助されるようになっている。
その転送室の破壊も避け、航宙士も保護したいた。
レオナルドが独裁でやらかしただけで、臣下は嫌々ながら従っていたある意味被害者なのだ。
臣下に罪はないとは言わないが、命ぐらいは助けてあげようと思っていた。
『実はレオナルドも私が討ったのではないのだ。
私がレオナルド星系に到着した時にはレオナルドは臣下により処刑されていた。
その死体はDNAレベルで本人であると確認した。奴は臣下にも嫌われていたのだ。
その時にアキラによって臣下が助けられていることを知った。よくぞ救ってくれた』
僕は驚いた。ロレンツォにとってはレオナルドの臣下は自分の臣下を殺めた共犯者だ。
僕は勝手な事をして怒られるのかと思っていたのに、ロレンツォはレオナルドの臣下を許す気のようだ。
そして救った臣下を送り届ける話がロレンツォに筒抜けだった。
レオナルドの臣下も嘘がつけないバカ(褒め言葉)なやつだ。
『すまないな。ロレンツォ。
つまり僕にレオナルドの臣下をその星系で保護しろってことだね?』
『ははは。さすがに領内の民全てを納得させることは出来ないのだよ。
臣下達はアキラに渡す星系に行ってもらう。
そこでどうなろうともはや他領の事だ。好きにしてくれ』
ロレンツォは悪い顔をしようと努力するも好青年の顔を崩すことは出来なかった。
『これは内密に頼むが、レオナルドには娘がいる。
レオナルドの嫁は皇帝の姫――皇女――だから、その子はつまり皇帝陛下の孫娘だ。
私にとっては腹違いの妹の子。つまり姪になる。アキラにとっても嫁の姪だ。
自然発生皇子は例外なく皇女と婚姻することになっている。
その婚姻による落とし子ということだ。皇帝陛下はその孫娘を助けたかったらしい』
なるほど、皇帝はレオナルドの臣下を助けるというより孫娘を助けたかったのか。
『皇女と娘は帝都に向かった。後は日陰の身で一生を過ごすことになるだろう』
『さすがにレオナルドの遺児を持ちだして一旗揚げようなんてアホは現れないでしょ?』
『そうなんだが。これもケジメだ』
『本人は悪くないのにね』
『全くだ……』
しんみりとしたが、僕にはどうすることも出来ない。
誰も彼も救うことなんて出来ない。
臣下を集めた星系に皇女と娘を置くわけにもいかない。
『そうえいば、自由浮遊惑星の話は聞いたか?』
『いや、全然』
『ふむ。アキラの所に情報が行ってないとなるとニアヒューム絡みではないのだな』
『ニアヒューム絡みでないなら、僕はのんびりさせてもらうよ』
『まあ、知らせがないなら気にすることもないか』
その時僕は疲れすぎていたんだ。
だって、レオナルドの臣下の僕に対する忠誠度が高すぎて困っていたんだ。
独裁から解放された反動なんだろうけど怖い。
僕は工場惑星を次元跳躍させてラスティ星系に来ていた。
クロウニー星系で無力化していたニアヒューム艦の隔離専用母艦への隔離作業が終わったのだ。
ニアヒュームと言語コミュニケーションをとるという大仕事は、ゲールの一言で簡単に解決してしまった。
『ニアヒュームは帝国語が理解できるぞ?』
そういや、僕とカイルは、イーサンを乗っ取ったニアヒュームと普通に会話出来ていたんだった。
その時はイーサンが肉体――脳も含めて――をニアヒュームに乗っ取られていたてめに、イーサンの言語能力が利用されて会話が成立しているものと思っていた。
しかし、よくよく考えたら元々ニアヒュームは帝国民を生体部品として取り込んでいたので、あたかも外部記憶装置にアクセスしてデータを取るかの如く帝国の言語知識を手に入れていたのだ。
しかも、帝国には自動翻訳ナノマシンがある。
それもニアヒュームの手に渡っているということは、僕らが使っている日本語の知識を持っていることになる。
その言語知識が群で共有されているのなら、群全てのニアヒュームが帝国語や日本語を理解出来るということだ。
いや、SFOランカーには英語圏や仏語圏の人達もいた。
たしかSFOには一部のネット制限がある国を除いて世界各国からプレイヤーが参加していたはずだ。
傭兵さんなんかも、明らかに欧米人主流だったからな。
その全ての言語を相互翻訳できる能力がナノマシンにはあった。
つまり、この翻訳ナノマシンを手に入れたニアヒュームの群は地球の言語も理解出来るという事になる。
嫁ーずが趣味で各種コンテンツを帝国語に翻訳してくれていたが、ニアヒュームは原語のままでも理解出来てしまうと判明したのだ。
隔離されたニアヒュームには地球の文化というものを思う存分味わってもらおう。
隔離区画ごとに違う文化に触れたニアヒュームの群が、どのような差異を持つのか、また違う文化に触れたニアヒュームの群同士が接触した時にどのような反応を示すのか興味は尽きない。
その点にはゲールも興味津々だった。今後の実験はゲールに任せようと思う。
「さて小母艦級からコアを分離して隔離専用母艦に改造しないとならないな。
今はAK-E002が無力化はしているんだよね?」
『無力化は問題ないよ。
でも、あの数の小母艦級を全てドック区画に納めるのは無理があるねー』
工場惑星によると小母艦級はニアヒューム艦を3万艦搭載できる大きさだという。
それに加えて次元跳躍機関や修理ドックを持つとなると、全ての小母艦級を格納して改造するのは無理だろう。
ん? 何もいま全ての小母艦級を改造しなければいけないわけじゃないんだよな。
問題は小母艦級を全て格納できないとニアヒュームの隔離が完了しないということで……。
クロウニ―星系では要塞艦に接続された小母艦級のコアは、要塞艦を無力化するために破壊したから問題なかったけど、こっちも破壊するとなると修理で余計な手間がかかるな。
そうだ。コアだけ切り取って隔離してしまおう。
残った小母艦級の残骸は今後大量の隔離が必要になった時までそこらへんに浮かばせておけばいい。
「元々目的はニアヒュームの隔離なんだから、コアだけ収納すればいいんじゃないか?」
『それなら簡単だよ。収納フィールドを変形させてコアを切り取ってしまえばいいね』
「問題はコアの切り取りを敵対行動と取られて、他のニアヒューム艦が攻撃態勢に入ってしまう可能性か……」
「ラスティ星系のニアヒュームはプリンスが去ったせいで待機命令が解けかけていたんでしょ?
AK-E002が無力化したけどさ」
綾姫が話に割り込んでくる。何か考えがあるようだ。
「そうだね。クロウニー星系は交戦状態を強引に押さえた形だからちょっと様子が違うかもね」
「それってプリンス達がラスティ星系を離れるにあたり、ニアヒュームが勝手に人を汚染しないようにしたということじゃない?」
「つまり?」
「戦闘になるクロウニー星系より、ラスティ星系の方が厳しい命令が出ていたということだと思う」
「戦闘に参加させたいニアヒュームと、余計なこともさせたくないニアヒュームで命令が違っているだろうということか」
「だから、そのまま待機命令を継続させれば良いんじゃないの?
そうすればラスティ星系のニアヒュームは切り取られても動かないんじゃないかと思ったんだ」
「ダメもとでやってみる価値はあるな。
ダメなら殲滅に切り替えてもいい」
コア切り取りの実行を躊躇する僕の背を綾姫が押してくれた。
最悪、小母艦級のコアを撃ちぬいてしまっても良いのだし、やってみれば良かったんだ。
「よし行ってくる」
「私もいくよ?」
僕達の後ろでBRメンバーと嫁ーずの目が光った。
僕は専用艦を出撃させると小母艦級のコアを次元格納庫に取り込むべく移動する。
僕の周囲には不測の事態を想定してBRメンバーと嫁ーずが専用艦で出撃してくれていた。
特に綾姫は僕の後ろを守ってくれている。
小母艦級に近付くと次元格納庫の収納フィールドを変形させコアの位置に伸ばしていく。
丁度ストローを突き刺すような感じで奥へ奥へと伸ばす。
その先端がコアを包む。そのまま境界で切り取るモードで収納をかける。
結果、何の心配もいらずに切り取りが成功した。
しばらく後、ニアヒューム艦4万と共に小母艦級のコア24個が次元隔離施設を搭載した隔離専用母艦2番艦に収納された。
これでロレンツォ領とレオナルド領に侵攻して来たニアヒュームは全て隔離か駆除された。
今後ニアヒューム対策は同様の無力化隔離措置が取られるようになるだろう。
「やってみたら何の心配もいらなかった。
ありがとう綾姫」
「うん。どういたしまして」
慎重になりすぎるのも良くないな。
勢いで押すのも時には必要だ。
『アキラ、終わったようだな。星系領主としてお礼を言うよ』
頃合いを見計らって、ロレンツォから通信が入った。
『ロレンツォか。まだニアヒュームの侵攻は継続中だ。気をつけてくれ』
僕はニアヒュームの脅威を侮らないように釘を刺す。
『わかっているよ。要塞艦の修理も感謝する。これで少しは戦える』
『AK-Eシリーズも優先的に引き渡そう。
ニアヒュームとも無力化してしまえば楽に戦えるだろう』
『何から何まで助かる。
そこでなんだが、レオナルドから手に入れた星系の1つをアキラに譲りたい』
『え?』
僕にはロレンツォの意図が汲み取れなかった。
『陛下の意向で私とレオナルドの紛争扱いになってしまったが、アキラがいなかったらレオナルドには勝てなかった。
本来ならレオナルドの支配星系全てをアキラに渡したかったんだが、建前上そうもいかなくてな』
『いらないよ。飛び地なんて領地経営がめんどくさい』
はい。本音です。
距離が遠いということは反乱の危険もあるし、何かあった時の対処も後手にまわる。
面倒この上ない。
『なら、レオナルドの要塞艦から助けた臣下を代官にすればいい』
『知ってたのか!?』
レオナルド座乗の要塞艦を反物質粒子砲で撃つ時に、僕は司令室が巻き込まれないように手加減をした。
親衛艦隊5千の艦も余波で破壊したが、航宙士は要塞艦に転送救助されるようになっている。
その転送室の破壊も避け、航宙士も保護したいた。
レオナルドが独裁でやらかしただけで、臣下は嫌々ながら従っていたある意味被害者なのだ。
臣下に罪はないとは言わないが、命ぐらいは助けてあげようと思っていた。
『実はレオナルドも私が討ったのではないのだ。
私がレオナルド星系に到着した時にはレオナルドは臣下により処刑されていた。
その死体はDNAレベルで本人であると確認した。奴は臣下にも嫌われていたのだ。
その時にアキラによって臣下が助けられていることを知った。よくぞ救ってくれた』
僕は驚いた。ロレンツォにとってはレオナルドの臣下は自分の臣下を殺めた共犯者だ。
僕は勝手な事をして怒られるのかと思っていたのに、ロレンツォはレオナルドの臣下を許す気のようだ。
そして救った臣下を送り届ける話がロレンツォに筒抜けだった。
レオナルドの臣下も嘘がつけないバカ(褒め言葉)なやつだ。
『すまないな。ロレンツォ。
つまり僕にレオナルドの臣下をその星系で保護しろってことだね?』
『ははは。さすがに領内の民全てを納得させることは出来ないのだよ。
臣下達はアキラに渡す星系に行ってもらう。
そこでどうなろうともはや他領の事だ。好きにしてくれ』
ロレンツォは悪い顔をしようと努力するも好青年の顔を崩すことは出来なかった。
『これは内密に頼むが、レオナルドには娘がいる。
レオナルドの嫁は皇帝の姫――皇女――だから、その子はつまり皇帝陛下の孫娘だ。
私にとっては腹違いの妹の子。つまり姪になる。アキラにとっても嫁の姪だ。
自然発生皇子は例外なく皇女と婚姻することになっている。
その婚姻による落とし子ということだ。皇帝陛下はその孫娘を助けたかったらしい』
なるほど、皇帝はレオナルドの臣下を助けるというより孫娘を助けたかったのか。
『皇女と娘は帝都に向かった。後は日陰の身で一生を過ごすことになるだろう』
『さすがにレオナルドの遺児を持ちだして一旗揚げようなんてアホは現れないでしょ?』
『そうなんだが。これもケジメだ』
『本人は悪くないのにね』
『全くだ……』
しんみりとしたが、僕にはどうすることも出来ない。
誰も彼も救うことなんて出来ない。
臣下を集めた星系に皇女と娘を置くわけにもいかない。
『そうえいば、自由浮遊惑星の話は聞いたか?』
『いや、全然』
『ふむ。アキラの所に情報が行ってないとなるとニアヒューム絡みではないのだな』
『ニアヒューム絡みでないなら、僕はのんびりさせてもらうよ』
『まあ、知らせがないなら気にすることもないか』
その時僕は疲れすぎていたんだ。
だって、レオナルドの臣下の僕に対する忠誠度が高すぎて困っていたんだ。
独裁から解放された反動なんだろうけど怖い。
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